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「…おいしい。」

夕食の時間、レイラ様がぽつっとそんな感想を言ってくれた。

そりゃもう、名門・聖ユリア女学校、通称、超・花嫁育成学校出身ですもん、お料理だってばっちり!

…卒業できなかったけどさぁ…。

あ、いけない、思い出したら泣きそうになってきた。

そんな私の様子など意にも介さず、レイラ様は食事を進める。

レイラ様は小食らしいので、夕食と言ってもシンプルなもの。

…材料もなかったしね…。

食事の用意しようと思って保存庫見たらびっくりしたわよ。

乾物とか保存のきくもの以外ないし・・・慌てて、街まで買いに行きましたとも。

冷気だけじゃなく、時間遅延の魔法までかかってる保管庫なのに・・・もったいないなぁ・・・。

今までどうしてたのかって聞いてみたら、少し行ったところにある町から料理を毎食運ばせてたんだって。

…それじゃスープなんか冷めちゃうんだろうなぁ、とか思ったんだけど。

レイラ様のことだから気にしないのかなぁ、とか納得しちゃったり。

一人あれこれ考えながら、後ろに控えてた。

メイドだからね、一緒に食事なんてしちゃいけないんだ。…という私の考え。

多分、レイラ様だから、気にしないんだろうけど、ね。一応、さ。



そんなこんなでレイラ様の食事が終わって、席を立たれる。

「ご馳走様。悪くなかったよ。」

…褒めてるんだろう、多分。

「ありがとうございます。…あ、レイラ様、何かお好きなものなどありますか?」

「?強いて言えばエスファノ風リゾットだけど。」

…野菜たっぷりのあれかぁ…材料は…うん、なんとかなる。

「わかりました、明日、作りますよ。」

今日はちゃんと作れなかったもんね、だから、明日はご馳走だ〜とか内心意気込んでた。

だけど。

にっこり笑ってそういう私に、レイラ様は薄く冷たい笑みを浮かべて。

「…明日もいるつもりなんだ?」

…その瞬間、浮かれ気分は一気に飛んだ。

そう、そうだよ。この人は、一日でメイドが逃げ出した原因で…。

理由は、まだわからないけど…。

私の背中に冷たいものが走る。

ゆっくりと、レイラ様が体ごと振り返る。

私は、一歩下がる。

レイラ様が、一歩踏み出す。

私は、もう一歩下がる。

レイラ様がさらにもう一歩。

私は、さらに・・・もう一歩、下がれなくて。背中に、壁の感触。

逃げられない。

恐怖で、足がすくんで、立っているのがやっと。

そんな私を、レイラ様は冷たい微笑を浮かべながら見やり。私の頬に手を伸ばして…。

途端に、忘れていたプレッシャー…あの、重々しくもよどんだプレッシャーを全身に浴びる。

…今度は、物理的に、突き刺さるほどのそれを感じた…。

この人が。

この、目の前にいる人が、プレッシャーの発生源なんだ…。

「バインド」

ぽつっとつぶやかれた言葉。

途端に、私は身動きが取れなくなったのを感じた。

まさか、これって?!

なんとか動こうともがくけど、まったくの無駄…。

…間違いない。彼女は、たった一言で束縛の魔法を使ったのだ。

この魔法…個人相手とはいえ、相手の自由を完全に奪って動けなくしてしまう。

中級魔法の中でも上位にあって、呪文なしに使えるような魔法じゃない。

…普通なら。

魔力の高い人間は、初級魔法を簡易呪文で使えるという。

それの応用…中級魔法すら、そこまで簡略できる、底知れない魔力の持ち主だとしたら。

そこで私はふと思い出した。

あの強烈なプレッシャー…あれは、女学校時代、魔法の授業で宮廷魔術師が特別講師で来たときのこと。

彼が魔法を放ったときに感じた、あのプレッシャーに似ていたのだ。

…今の彼女から感じるプレッシャーに比べれば微々たる物だけど…。

わずかに動く目で彼女の顔を見る。…どうやら、全て見抜かれてるみたい・・・。

「…理解しちゃったみたいね?可哀想に。」

彼女の指先が、私の唇に触れる。

…唇だけが、自由を取り戻したのを感じる。

「馬鹿な子。料理がおいしかったから、なにもせずに帰すつもりだったのに。」

冷たい言葉と同時に…ビリィ!!っと音を立てて、服の胸元がさける。

「きゃあ?!な、なにするんですか!」

叫ぶことしかできない私。

そして、浮かべた彼女の表情を見て、悟った。

…叫ばせるために、唇だけ自由にしたんだ…私が、恐怖に震えるのを感じたいために…。

せめてもの抵抗に、唇をきつく閉じる。

だけど…。

「下手な抵抗はしないほうがいいよ?…私の魔力なら、指先一つであなたを殺せるんだから。」

例えば、虫を邪魔だからと言ってつぶす子供のように。

なんの重みもない声が、かえって私の心を恐怖で縛る。

「あ・・・あぁ・・・」

口からこぼれる恐怖の声。

その声に、満足そうな笑みを浮かべると…乱暴な手つきで、下着に包まれた私の胸をぐいとつかむ。

揉むだとか撫でるだとか、そんなニュアンスのない乱暴な触り方。

私はたまらず悲鳴をあげる。

「ひぃっ!痛いっ、やめてぇ!ゆ、許して、許してぇ!」

聞き入れられないことは、わかっていた。

でも、そうでもしないと気が狂いそうで。

なにより…彼女の機嫌を損ねたら…。

だから私は、ひたすら恐怖と、許しを請う悲鳴をあげ続ける。

もちろん、彼女は許してくれず…スカートにも手をかけると、びりびりと前を破いてしまう。

下半身が外気にさらされる感覚に、夏なのに身震いが襲う。…恐怖も、あるんだろうけど。

あの細い手の、どこにこんな力があるんだろう。

…魔法で体力を強化してるのかも、なんてぼんやりと冷静に考える自分がいたりして、ひどく滑稽に思える。

「一つ、いいこと教えてあげようか。…なんで、私が、一人でこんなところにいるか知りたくない?」

確かに、こんな田舎町の外れの森にある別荘なんかに、これだけ、綺麗で魔力に富んだ…社交界入り間違いなしの人がいるのか、疑問ではある。

だけど、私は束縛でうなずくこともできないし、口からこぼれるのは、ひぃ、ひぃ、という引きつった声だけ。

そんな私の様子を気にするでもなく、彼女は言葉を続ける。

「私の魔力が異常なのは、わかったでしょう?そこらの宮廷魔術師の10人分とも100人分とも言われるくらい・・・。」

困ったことに、それが事実であると認識できる程度には、私は敏感で、魔法にも通じていた。

無言の私を、肯定と受け取ったのか、話が続く。

「この国の国土の広さや国力に比べて、兵力が足りないことに疑問を感じたことはない?」

…その言葉に、私は雷に打たれたように、全てを理解した。

多分、体が自由に動くなら、ぶるぶると震えていただろう。

足りない兵力。

一騎当千…いや、万を越える大軍をも凌駕するであろう魔力を持つ少女。

そして、その少女は…この国を守護する公爵の娘で。

生まれながらにして、戦場で、人殺しを重ねなければならなかった少女。

私は、わけもわからず、恐怖した。

彼女の運命に。

その運命を押し付けた人々に。

私の様子に、理解されたのだとわかったのだろう、彼女は酷薄な笑みを浮かべ。

「説明がいらなくて、楽だ。…だから…少しくらい、私が好き勝手してもいいでしょう?」

そう言って…いきなり、下着をずりおろす。

大事なところが外気にさらされて…見られる羞恥に、涙がこぼれる。

そんな私に構わず、彼女は熱くたぎったものを私のそこにあてがって…

…え??

慌てて、視線を下におろしてありえない感覚の正体をさぐる。

はたして…それは、あった。

少女の外見に似つかわしくない、あまりに立派なそれ。

…よくよく見れば、光っていて…明らかに、生身のものではないのがわかる。

熱さも…人の肌の熱さとは別物で。

だからと言って…無理矢理されそうな私の恐怖が薄らぐわけでもない。それは、確かな感触を伝えてくるのだから。

私は、逃げようともがく。何も準備の整っていないところに、あんなものを入れられては…。

おまけに…私は、その…。

だけど、逃げられるわけもなくて。

彼女が、許してくれるわけもなくて。

ぐっと…何かが押し入ってくる感覚がある。

その途端、肌をちりちりと焦がすほどに強くなるプレッシャー…。

…魔力の、暴走…?

私は…この期に及んで、もう一つ理解した。

あれだけプレッシャーが外にもれでていたこと。

彼女がここに・・・隔離された理由。

おそらく、呪文の一つも唱えれば都市の一つや二つ、消し去ってしまえるだろう彼女の魔力。

…暴走…

そんな私の感慨も無視して。

彼女のそれが…私の中に割り入ってくる。

「い、いっやあああああ!!!!!」

痛かった。

体が、中心から真っ二つに裂かれるかと思うほどに…強烈な、体の奥底まで痛めつけるような、根源的な痛み。

「わかる?こんなところに閉じ込められて、連れ出されるたびに人を殺す気持ちが!!」

叩きつけられる、強烈な痛みと…悲痛な、叫び。

だけど、私には、答える余裕もなかった。

私だってこの年頃だから、そういう本を読んだこともある。

中には、無理矢理犯されて、っていう話もあった。

…でも、あんなの嘘だ。

無理矢理されて、されてるうちによくなるなんて…少なくとも、私にはわからない。

絶望を引き連れてくる痛み、それが連続して送られてくるだけで…。

心が、魂が削られる。

私の心が、死へと向かう…

そして。

中へと突き入れられる熱いそれ。その熱が、さらに高まってくるのを感じて。

私の、まだ少しだけ残っていた心が、恐怖に震える。

くる。

なにか、恐ろしいものが、来る。

全身が、魂が。恐怖に震え、引き付けにも似た声がもれる。

そして…。

下腹部で炸裂した、灼熱の何か。

それに、私の意識は焼き尽くされた。












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