ホーム〜スィートホーム〜









…私の頬を、水滴がうがつ。

その感触で、わずかに残った心が覚醒へと向かう。

ぼんやりとした意識の中、すすり泣く声が聞こえて。

無意識に、手を伸ばし、そっと撫でる。

手のひらに、びくっと震えた感触。

それを安心させるように、優しく、優しく撫でる。

…泣いてる女の子には弱いんだ…そんな、気持ちが蘇ってくる。

でも、誰が泣いてるの?

私、なにしてるんだろう…?

女の子を撫でるたびに、ゆっくりと意識が、心が覚醒する。

…夢と現の境目…その、不思議な感覚。

その中に…泣いている女の子の気持ちが、すっと入り込んできた。

…ああ…この子、寂しかったんだ…。

ゆっくりと目をあける。

目の前に、ぼろぼろと涙を流しているレイラ…様。

何かを後悔して泣いている子供の顔。

…不器用な、子供の泣き顔。

ぼんやりとした視界、霞がかったような頭。

そこに飛び込んでくる泣き顔と、すすり泣く声。

余計なフィルターのかかってない頭の中に、彼女の声そのものが響いてくる。

…正直、言葉をきちんとは聞き取れなかった。

でも、心が、響いてくる。

いつのまにか、束縛の解けていた体。

…私は、彼女を抱きしめていた。

「…寂しかったんですね?」

抱きしめる腕、かけられた言葉。

それに反応して、彼女…レイラ様の体が、びく、びく、と震える。

「誰のために、戦ってきたんですか…?なんのために…?」

問いかけに、しかし答えはなくて。

ぎゅっとしがみついてくる腕と、大きくなるすすり泣き。

それだけで、十分だった。

「…本当は、お父様やお母様…みんなが、好きだったんですね…?だから…」

だから。

つらくても、孤独でも…この人は戦ってきたのだ。

生まれつき持っていた強大すぎる魔力。公爵令嬢という地位。

その全てが…この人を縛っていた。

逃げ出したいと思ったこともあったのだろう。

…いや、思うことすら、できなかったのかも知れない。

自分の力で守れるものがあるということを知っていたから。

理解力も、思いやりもありすぎたんだ。

自分に近づくと、危険なことを知っていたから…。そして、この国のためには、そんな危険な自分でいるしかないと覚悟していたから。

魔力の暴走の可能性。他国の刺客に狙われる危険性。

…それらに人を巻き込むことを恐れて、彼女はここにいるんだ。

ただ…そんな彼女を、周囲が放っておくには彼女の生まれは…家柄は。

そして、彼女は…不器用な人で。どうしたらいいのか、わからなくて。

癇癪を起こした子供みたいに傷つけるしかできなかった。

それが、また自分を傷つけて…傷が深まる悪循環にはまっていた。

だから。

私はぎゅっと彼女を抱きしめた。

少しずつ戻ってくる感覚。

目の前にある、涙でぐしょぐしょになった、何が起こってるのかわからない、というレイラ様の顔。

…それから、まだ中にある、それ…。

無言で、つながったまま抱きしめあってる私たち。

え〜っと…その、私の…純潔を奪った、それの存在すら…今では愛しく感じる。

そう思った途端、私の、その…大事なところが、それをきゅっと締め付けた。

「んぁ?!」

突然の刺激に、びくっと震えるレイラ様。

それはそうだろうなぁ…

すっかり毒気を抜かれて、泣きじゃくっているところに、最初ほどの勢いがなくなったとはいえ、それを刺激されたんだから…。

…って、感覚、つながってるの…?

確か、本物じゃなかったはずなのに…。

興味にかられた私は、腰を揺すって、さらに刺激してみる。

…いや、はしたないって言われたら、そうなんだけど…。

「ぅあんっ!あ、やぁっ!」

腰を動かす度に…かわいい声が響く。

私だって一応年頃の娘なんだから、その手の本を読んで、知識もある程度はある。

腰をこういう風に動かすと相手が喜ぶ(らしい)とか、気持ちよかったら、こんな声が出るとか。

…声に関しては、女学校時代に、偶然聞いたことがあるのよ…どうも、生徒同士だったらしいんだけど…。

とにかく。

彼女…レイラ様が感じてるのは、間違いなかった。

それがなんだか、すごく、嬉しかった…。

おかしいでしょう?私の純潔を、無理矢理奪った相手だよ。

なのに、腕の中でこうして震えてる彼女は…可愛くて、愛しかった。

…彼女が、誰かを傷つける、その理由がわかったから?

不器用な彼女を…受け止められる私が、そこにいた。

だから…腰を動かして、しめつけて。

…そのうち、内側が熱くなってきた。

レイラ様の熱いそれを中でこすってるうちに、熱が移ってきたのだろうか。

さっきまで、そんなこと、なかったのに?

わけもわからず、ただ、体が動く。

…熱くなってくるだけじゃなかった。

内側から…とろっとしたものがあふれてくるのも、わかった。

それから…なんだが、むずがゆくなってくるような感覚。

よくわからないけど…もっと、こすってあげたかった。

ぐったりとしていたレイラ様の体が、びくっびくっと動いて…よくわからない、という顔でこっちを見つめてくる。

感情の全てをぶつけきって、虚脱して。

その後、自分を憎んでるはずの相手から送られてきた感覚。

…快感、という感覚。

それに戸惑う表情が…なんだか、とっても、可愛かった。

だから…私は微笑んで、そっとキスをした。

一瞬、ぽかんとした表情で、私を見つめて。

それから、また泣きそうな顔になって。

私にすがりつくように抱きつきながら、一生懸命に腰を動かし始めた。

その動きは、もう、私に絶望も痛みももたらさなかった。

下腹部にたまってくる熱…甘美な感覚。

多分これが…気持ちいい、という感覚…快感、というものなんだろう。

私たちは、そのことを理解していたのかどうか。

ただ、悲鳴にも似た、でも背筋にぞくぞくと甘い何かを走らせる声を、二人してあふれさせた。

「ひぁっ、あっ、ああっ!なにっ、なんなのっ、なんなのぉ?!」

「んぁっ、レイラ様、レイラ、さまぁ!」

意味など、なしていない言葉。

ただ、体の奥から口をついてあふれる言葉。

そうしていなければ、体の中になにか得体の知れないものがたまってくる、そんな気がした。

それを恐れるように。

お互いを求めるように。

私たちは声をあげ続ける。

「やぁっ!エリザ、ベスっ!!だめっ、そんなにしたら、だめぇ!」

「いやっ、だめっ、むりっ、止まらない、止まらないのぉ!レイラ様ぁ!!」

会話にならない会話。言葉にならない言葉。

私とレイラ様のつながっているところから聞こえる水の音が、やけに響く。

あ…なんだろう、この感覚。

腰が浮つくような…全身が、とけていくような…それでいて、全身へと甘い感覚が行き渡るような。

体の全ての感覚が麻痺しながら、覚醒していく、そんな感じ。

そして…なにかが、くる、どこか、一つのところへ向かう、そんな感覚に襲われて。

一人じゃ、嫌で。

私は、ぎゅっとレイラ様を抱きしめた。

ほぼ同時に抱き返してくるレイラ様。

…同じ感覚を共有している?

思わず見つめた顔。ちょうどレイラ様も見つめてきて。二人して、微笑んでしまう。

そして、重なる唇。

もう、言葉は要らない。

お互いの唇を求める音、お互いの体を求める、つながった場所の音。

重ねた肌のぬくもり、懸命な、いじらしいほどの体の動き。

それだけで、満たされていく、なにか。…そして、体の内側にたまっていく、なにか。

それが、限界に達して…越えたとき。

「ひやっ、あ、やあああ?!エリザぁ!!」

「んぁ、ああっ!レ、レイラ様ぁ!!」

お互いの名前を呼びながら…私たちの意識は、真っ白に溶けていった…。