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「遊びの釣り」と「釣り勝負」
                     【本木雄介】

親子そろって「釣り好き」だ、という話はよく聞く。今年のはじめに居酒屋で隣り合わせた40代のUさんもその一人だ。

「最近は親父もすっかり老けこんじゃって、釣りにも出かけなくなった」とUさんは眉をひそめて熱燗をぐびりと飲んだ。
「まあ、釣りも体力いるしね」と私。
「いやいや、口も体もじゅうぶん達者なんだけど」
「どういうこと?」
「うん。この間なんか、釣りはしょせん釣りだったなあ、なんて悟ったようなこと言ってね」
「へえ…」

よくよく聞けば、Uさん親子は釣り好きで「釣り船」にはよく乗るが「よい船長」に巡り会っていない釣り人だった。乗合船で多くの「釣り人」に混じって行くのだが、その釣果は常にCクラス。せっかく料金を支払って期待しても、波止場の釣りと同程度の釣果では嫌になっても仕方あるまい。親父さんにいたっては、30年以上もそんな「釣り人生」を歩んできたわけだ。

私は「鉄の5ヶ条」をかみくだいて話してやった。真剣に聞き入るUさんの顔つきが見る間に変わっていくのがわかった。
「そうか、その通りだ。俺たち今まで素人の船に乗ってたってわけか」
「きっと親父さんも厭きてしまったんだろうね」
「う〜ん…」
「遊びの釣りはいつかそうなるよ」
「そうだな、あんたのいう釣り勝負、ってのをやらなきゃな」

私はいいよ、と断ったが、Uさんは私の分まで支払って急ぎ足で帰ってしまった。息子に「釣り船選びの達人」を探させるんだ、と言って…。

そのUさんからメールが届いた。
【(中略)その○○丸は皆さんもきっと認める「本物の釣り漁師」の仕立て船です。1月の末に予約をとって乗りましたが、確かに今までとは違う手応えを感じました。皆さんの言われる「ポイントをズバズバついていく」という技術は今まで乗っていた船にはないものでした。(中略)その釣果を父に自慢してやると「よし、乗ってみる」とげんきんなものです。そしてこの間、父を釣れて久々に乗ってきました。天候が悪くアタリも少なかったのですが、父が41cmの真鯛を釣り上げました。もちろん、こんな大物は父も初めてで、その時の父のはしゃぎようはどう書いたらいいのか分かりません。(中略)乗合船とは違い、仕立て船は人数で割るとやや高めの出費ですが、結果的には楽しめて元も取れる、というものです。】

Uさんの船は調べてみると確かに「本物の釣り漁師」の船だった。釣果もさることながら、「釣り本来の醍醐味」も感じ取りはじめているような雰囲気が私にはうれしかった。しかしHPにも出ていないこの船をどうやって探したのか、メールでUさんに聞いてみた。
Uさんからの返信にはこう書いてあった。

【ホームページは「素人船長」が多くてだまされそうだったので、結局漁業組合に問い合わせました。最初は「インターネットに出てるとおりだから」と電話を切られかけましたが、「釣り漁師さんの船でないと絶対ダメだ」と言って押し通したんです。そうしたら真剣さが伝わったんでしょうか。1隻の船を教えてくれました。その後、その船長にも電話をして「釣りのキャリア」もしっかり確認しました。釣り歴35年のベテランでした。「達人」の言葉に従っただけですよ。】


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