[PR]子育てママさんへ:3年毎に15万円うけとれる保険?
平成のザメンホフ
2008年 6月 25日 Zacler にて HHIRO
最近は夜なかなか寝付けないようになった。いろいろと考えが浮かんで来るのだがーーー。
最近変った事。私はチェコ語の学習を始めた。この地に来てからはや7年、しかし、私は一向に現地語であるチェコ語を習っていない。家庭では私以外はチェコ語で生活しているというのに。全く怠け者の私なのだが、チェコ流に言い訳をしてみたい。全く学習しなかったわけではない。日本から持ってきた「チェコ語初級」とか辞書とか、その他何度かトライはした。難しさでは定評のこの言葉、私の頭では全く歯が立たなかった。これは私の脳の製造元、私の両親のせいで、私のせいでは無い。
どのように歯がたたなかったかというと、恥ずかしながら、「初級」の本でさえ、私には言語学者向けに書かれた本のように思えた。日本語とおよそ体系の違う言葉を、専門用語(初心者には解説、例が必要)を使ってサラサラと書いてある。初級の前に「入門」を読む必要があるらしいが、そんな本はみつからない。あるいは、「旅の会話集」。これは、私の一番苦手な丸暗記が出来ないことには話しにならない。なまじ覚えたフレーズを初対面のチェコ人にしゃべったりしようものなら、即座に10倍のチェコ語の返事が返ってくる。「いや、それ以外のフレーズは分からない」と説明するのが面倒だ。
チェコ語の難しさ(分からないから、難しいらしい、としか言えない)と、私の脳のメモリ容量不足から来る尻込みで、毎年嫁さん提案の、夏の「外国人のためのチェコ語キャンプ」の参加を断り続けてきた。それが、今年は彼女の怨念かなって、私はチェコ語学習の個人レッスンを受けることになってしまった。EUから講習費用が出るらしい。他の圧力もあって逃れようにも逃れられない。「ああー南無阿弥陀仏」(浄土真宗なんです)。というわけで5月から週一2時間のッスンに通い始めた。
発音から始めて、丁寧に進めてくれる。個人レッスンのよい点だ。先週は、動詞の語尾変化について習った。主語の人称代名詞を動詞の語尾変化(6とおりある《もっとかも》)で表す。ということは、全部の動詞の語尾変化、例外について覚える必要がある。覚えない事には動詞が使えない。そのほかにも名詞の格変化が7とおりあるようだ。動詞、名詞が6倍、7倍の記憶量を必要とする。文法の大部分が単語の語尾変化のようだ。辞書には、語尾変化の表がいくつもある。数を数えると20位あった。単語を、文法を、それにこの表を覚えるとチェコ語がしゃべれるようになる。いやならない、私には。
ーーー、深夜だが薄明かりの窓の方を見ていると、チェコ語の壁が私の後ろに立っている。斜め上から私を見下ろす嫁さんの楽しそうな顔が浮かんできた。
-----------------------------------------
私は近い人遠い人からも変人だとか言われてきた。中学校で最初から英語につまずき、さっぱり分からず、嫌いだった。しかし、国語の教科書の最後の方に、「言葉を愛しつつ」と題してエスペラントのことが載っていた。そして二十歳の頃エスペラントに首を突っ込んだ。といっても長年モノにはならなかったが。どういうわけか、私の結婚相手はチェコ人だった。言葉はエスペラント。その頃にはなんとか使えた。というのはウソで、本当は、見初めてからエスペラントをモノにした、と言うべきだろう。
私達は日本に住んだ後、チェコに引越した。私は、チェコ語を習ってチェコに引越せばよかったのだが、そこは怠け者、エスペラントに頼ってしまった。チェコに引越して、見つけた仕事では英語が作業語だった。4年ほど、英語を習いながら使うハメになった。
今はその仕事を辞め、次の仕事を始めるまで嫁さんに食わせてもらっている。そしてついにチェコ語が私に降りかかってきた。英語がダメで、だから取り付いたエスペラント。易しいはずの、共通語のはずのエスペラント。それが因果で、どうして英語、チェコ語と苦しむの。苦しまないためのエスペラントでは無かったの。「私は変人だ」といくら言い聞かせても、どこかから狂っている。私の人生、今はすっかり狂っている。私の友人曰く「前世のたたり」なんだそうだ。
-------------------------------------
少し分かりかけたチェコ語。この煩雑さから逃れるべく、私流の「簡易チェコ語」を作ったら、とアイデアだけは浮かんだ。名詞、動詞の格変化をなくして、単語は全て辞書形だけにしてーーー。でも語順は自由の方がいいーーー。チェコ人は私がしゃべる簡易チェコ語を分かってくれるとしても、チェコ人は簡易チェコ語をしゃべってくれないから、聞く方はやはりダメだな。
私はザメンホフの話を思い出して一人にやけている。ザメンホフをホマラニスモだとか持ち上げている人がいるが、本当は、彼もポーランド語(チェコ語と似ているらしい)の煩雑さにうんざりしたのではないか。特に成人が学ぶにはあまりに煩雑すぎる。それできっと共通語の考案に向かったのだろう。エスペラントの仕組みは、ポーランド語の煩雑さの裏返しとして考えたのではないか、などと思う。
「ははー! 私の体験は、彼のそれに近い」などと自分を慰めている。
終わり