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甲斐庄楠音研究16

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Date: Wed, 13 Oct 1999 19:16:35 +0900
From: mephisto <mephisto@jwg.vip.co.jp>
Subject: [gs-club:0215]『櫓のお七』@「甲斐庄、異性愛者説」

mephistoです、こんちわ。

甲斐庄楠音が、「本質的には異性愛者で、同性愛は表層的なものでしかない」という仮説に立つとしますと、

《引用はEiji Yamaneさんの「[gs-club:0179]甲斐庄の「ふたり」「その他」」から》
>「櫓のお七」昭和51頃
>http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/8284/kainoshou/m-s5101.JPG

この、『櫓のお七』という作品に託された、甲斐庄のメッセージを聞き取るこ
ともできるようになると思います。

この作品は「老人が、文楽の女性の人形を操っている」という絵です。この老人は誰でしょう?

《引用はEiji Yamaneさんの「[gs-club:0128]およそ自画像でない限り」から》
>作品は、なにを描いたとしても、深層の意味が自画像(自伝)でない限り、よい作品ではな
>い、と言えると思います。
このように、yamaneさんが、あらゆる作品は自画像であると、お書きですが、この絵、『櫓のお七』は、画家の自画像と考えていいのでしょうか?

《引用はEiji Yamaneさんの「[gs-club:0140]甲斐庄の本人の写真」から》
>65歳
>http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/8284/kainoshou/pic0106.JPG

ここの甲斐庄の顔写真と、『櫓のお七』の老人の顔は、見比べてみると、同じ顔だと言えると思います。間違いなく、『櫓のお七』し甲斐庄の自画像なのです。

そして、この絵に描かれているのは、「女姿の人形を操る男」です。つまり、「外見は女であるが、本質は、男である」という状態を表現しています。

そんなわけですので、『櫓のお七』には、甲斐庄が「自分の女性的な性質は、とってつけた人形のような、外面的なものにすぎないのだ、私は本当は男なのだ」というメッセージを込めていると、解釈することもできるでしょう。

 

From: "Masao Kohmura" <komura@cg.tuad.ac.jp>
Subject: [gs-club:0216]RE: [gs-club:0164] 兄嫁の亡霊・3人の横櫛
Date: Wed, 13 Oct 1999 21:08:32 +0900

このメールを読んでから鳥海山に滝の小屋口から登ってきました。
紅葉の登山道で考えました。

>> >第一の「横櫛」
>> >http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/8284/kainoshou/x-t0501.JPG
>
>第一作の背景の出来事もスゴイですよね。
>
>>大正4 1915 21歳
>>  この頃、東京の長兄楠香を訪ね、兄嫁らと本郷座で四代目沢村源之助が切
>>  られお富を演じる河竹黙阿弥作「処女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなの
>>  よこぐし)」を観て帰宅後、兄嫁彦子とそのポーズをまねたりしながら、
>>  作品の構想を練るか(?)。

これは京近美の島田学芸課長の推測です。楠音の手記の記述と歌舞伎「処女翫浮名横櫛」の公演記録との整合性からの推理でしょう。

>>  8月26日、長兄楠香の妻彦子東京において歿する。
>>  8月、京都・南座9月公演(8月31日−9月15日)で、四代目沢村源之助が切
>>  られお富を演じる河竹黙阿弥作「処女翫浮名横櫛」や「吉田御殿」「文七
>>  元結」が演じられる。
>>  この頃、《七妍(のち《虹のかけ橋》と改題)》《畜生塚》の制作を始め
>>  る。
>東京で、美しい兄嫁とたのしく芝居をみる。その何ヶ月か後、その兄嫁が死ぬ。直後、兄
>嫁とともに見た芝居が、京都で上演される。そして、生涯をかける大作「七妍」と「畜生
>塚」に着手する。「七妍」は女をもてあそぶ運命を描いたもの。「畜生塚」は運命に翻弄
>された女性たちの悲劇的な最期を表現しようとするもの。その翌年に楠音は「横櫛」を一
>週間で描き上げるのです。モデルの着物の柄は、桜と炎と竜です。死を暗示しているので
>はないでしょうか。目に怪しいクマもあります。死相でしょうか。
>http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/8284/kainoshou/x-t0501.JPG

確かに死相があります。横櫛2.0に比べると顔も少し太めです。襟には天女が飛んでいます。この横櫛1は「まくり」の状態で遺族のもとで発見され、京近美が買い取り、3000万円かけて修復したそうです。(96年7月3日毎日新聞夕刊・1997年3月号日経アート) この作品には手数の少なさからくる「軽やかさ」があり(これは「幻覚」大正9頃
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/8284/kainoshou/x-t0903.JPG
とも共通する点なのですが)むしろそれは好い点だと思います。楠音像全体にもかかわる問題点だと思います。それがこの絵を「たかだか1週間で描き上げた」ことの例証にもなっているように思える。

>死にとりつかれていた楠音が、トクと出会ったのは、兄嫁の死から二年たってからです。
>そして楠音は生に引きもどされた。その、生の喜びのなかで、「横櫛」のなかの炎にまみ
>れてれていた着物の模様を、芝居の柄で隠蔽し、死の恐怖を、物語のなかの出来事とし
>て、隠蔽し忘却しようとしたのかもしれません。
>http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/8284/kainoshou/yokogushiOld.JPG
>しかし、死はそう簡単に忘れられるものではないですから、背景に亡霊のように「切られ
>お富」として出現しました。生の象徴であるボタンの花を引き裂いてです。
>絵画的には不可解なこの構図も、楠音の死にとりつかれた姿を身近でみていた村上華岳ら
>には、許容されたのかもしれません。むしろ、そうあるべきだと、認められたのかもしれ
>ません。
>そし何十年かがすぎて、やっと楠音は、兄嫁の亡霊を金粉の背後に成仏させるできたので
>しょう。

金粉の背後に成仏さたのは昭和初年ですから8年後、その後昭和38年の京近美での国画創作協会回顧展で大幅な加筆された。それがこの横櫛の
>http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Kouen/8832/gs-club/kainoshou01.JPG

「横櫛胸像」大正7・
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/8284/kainoshou/x-t0702.JPG

には死相の替わりに狂相が現れています。3人の中では一番ふくよかです。

そして4つの横櫛はそれぞれが別のテーマで展開されている。(隠されてる左手に持っているもの、状態はそれぞれ完全に別なものではないか)ひょっとするとモデルも違う、最低想定されてる女性は違うという仮説はとても意味があるように思えます。

また「切られお富」が描き加えられ後に、新しい所有者の要望で消されたとされてる事情は、作者の主体性をもっと考慮して理解、たとえばヤマネ解釈とか、白翔さんの指摘も大切だ。

『一つ私にとって前提になるものをお話するのを忘れていた。「切られのお富」をは
め込んだ横櫛の絵がある。明らかに分裂していると申し上げた。画面が分裂しているんです。描いた本人の心も分裂しているんです。ゴッホが描くタンギーじいさんの後ろの壁に数枚の浮世絵が飾ってある絵があるが、これはこれで実際の様子だろうということで統一はとれているんです。絵の中に絵を描くというのも作家にとってはたとえ実際に背景に掛かっていたとしても、やりたくはない描き方だよねえ。とても自然とはいかない。何故なら、その絵が意味をもってしまうから。暗喩としての意味を持たせるなら話は別。それにしてもそれはさりげなくはめ込む。「切られのお富」横櫛のように絵を全く壊すように、呪うようには入れないものだ。絶対と言って良いほど作家はしない。錯乱しなければしないものだ。』

「多分団十郎のご贔屓だろう。大き目の座布団か布団の模様も団十郎の三升。まだ手練手管を知らない可憐さが匂う。」

この役者絵の解釈も重要な作者心理解析の手がかりになる。

久しぶりにメールを書きます.少しネットから切断されていると気分は少し楽ですですが、何故か落ち着きません。まずは復帰一便。

 

Date: Thu, 14 Oct 1999 01:58:53 +0900
From: 禰子<harupoo@geocities.co.jp>
Subject: [gs-club:0219]『櫓のお七』の人形の表情

今晩は。禰子です。

【mephistoさんの‘[gs-club:0215]『櫓のお七』@「甲斐庄、異性愛者説」’から】
>>「櫓のお七」昭和51頃
>>http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/8284/kainoshou/m-s5101.JPG
>この、『櫓のお七』という作品に託された、甲斐庄のメッセージを聞き取るこ
>ともできるようになると思います。

「櫓のお七」の人形の顔が、空とぼけた表情をしているのも、意味がありそうですね。後ろの楠音(らしきひと)があんなに力入れてるのに。

 

Date: Thu, 14 Oct 1999 03:32:25 +0900
From: mephisto <mephisto@jwg.vip.co.jp>
Subject: [gs-club:0220] Re: 『櫓のお七』の人形の表情

mephistoです、こんちわ。

《引用は禰子さんの「[gs-club:0219]『櫓のお七』の人形の表情」から》
>>>「櫓のお七」昭和51頃
>>>http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/8284/kainoshou/m-s5101.JPG
>「櫓のお七」の人形の顔が、空とぼけた表情をしているのも、意味がありそう
>ですね。後ろの楠音(らしきひと)があんなに力入れてるのに。

楠音は力んでいる、そして、女人形は飄々としている。

その通りですね。としますと、この絵のメッセージは、「わたしは、一見楽しそうにオカマをやっていますが、実はものすごい努力をしているのですよ」ということになりますか。

 

From: "Masao Kohmura" <komura@cg.tuad.ac.jp>
To: <gs-club@freeml.com>
Subject: [gs-club:0221]マルチメディアアーティスト・楠音

「日本画」画家という狭いジャンルの中だけで甲斐庄楠音を論じるべきではない。写真家としての甲斐庄楠音。身体パフォマーとしての楠音。風俗考証、衣装考証、時代考証、と位置づけられているが映画制作の中ではおそらく『振付師』の役割を担ったものと思われる。そのことの映像学的実証。ジェンダー社会批判者(そんなに声高には叫ばないが)としての彼の実践。その社会学的意義。

そこで提案があります。芸術と思想クラブの一つの中間成果発表として「甲斐庄楠音総合研究」の独立したURLを作りませんか?そこではDATABASE(アーカイブ)と加筆以前のものへの復元と行方不明絵画の着色復元。ほかの楠音研究者への呼びかけ等など。
サーバーは提供してもいいですよ。

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