妖精は出てこない。怪獣と、それを最初に見つけた姉弟の話。
落差、と言えばこれほどの落差はそうないだろう。トトロかと思わせる出だし部分。姉と弟の仲の良さと相まってほのぼのとしているが、そこからテレビドラマのように短い場面が次から次ぎに挿入され、その迫力と展開の早さに、始めとの落差を有無を言わさず承知させられてしまう。
納得してと言うより、そのまま飲み込むしかないと言った感じの力技は凄い。
(追記)
ある日、明が山の境内で見つけた真っ黒な塊・怪獣。何でも食べ、大きくなっていったそれは、やがて街を巻き込む一大事件へと発展していく。怪獣に父親を重ねる部分は唐突で説得力を欠く気がするけど、それでも序盤の田舎町の雰囲気と旅立ちの感じ、それから終盤の悲しさはいいなぁ。
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おすすめ:『妖精は小さな塵』
目指しているところはなんとなくわかる。夢と現実を行き来する、そんな狂気と日常への回帰みたいなものを書きたかったんだと思う。
だけど、ただでさえそのような場面が頻繁に行き来する話なのだから、もっとわかるように書く努力が必要だったんじゃないでしょうか。俺、俺、と続く文章は読みづらいし、とっちらかりすぎ。「俺は人殺しだ」なんて、もはや滑稽でしかないです。
狂気と回帰を書くには、もっと心理的裏付けが必要だったと思います。
題名通りラブストーリー。掴んで放す技術とタイミングが上手い。
引き込ませていく文章も上手いとは思うけど、主人公は男友達との役割すらステレオタイプ。心理はいいが、言動がいかにも盛り上げるために見えてしまい、感情移入を妨げる。それなりの気は使うでしょ、普通。ヒロインもいかにも「女」。
テレビで溢れてるようなラブストーリーがお好きな方なら、楽しめるのではないでしょうか。
冗談のように始まって、しんみりと終わる。主人公の、人生そのものを否定されたかのような悲しみと無力感。軽妙な語り口で、話に引き込ませる力があり、転換期も、流れた歳月にふと気づくのはこんな瞬間かなと思わせる説得力がある。つまり、面白かった。
ただ、読後どうも気持ち悪く感じた箇所があって、それは、この話のほとんどは「ぼく」の人生の回顧みたいな感じで振り返っている文章なのだけど、かなり後のほうになって「たった今気づいた」とあり、そのあと明らかに現在の状況を書き(普通の一人称小説みたいに)、ここまでは全て「たった今」と言う「その時」振り返っている話だとわかる。
だけど「たった今」と言う時点は、どう考えても最初のほうの、冗談のような展開に茶々入れたり、軽く語れるような状況じゃない。そのせいで、「たった今」と言う振り返った時点が明示されてるのに、もっとあとの心の整理が出来てから振り返っているような違和感があり、結果、どの時点で振り返っている話なのか混乱させられる。
軽妙な語り口が冗談のような展開にあっているのだから、振り返っている時点をもっと後に設定したほうが良かったんじゃないでしょうか。
この文章とこの会話でまさかこの結末になるとは思わなかった。ビックリさせるだけなら成功しているとは思うけど、なんか唐突スギ。文章の展開もとっちらかってる印象。
古いのを好きなだけなのにそんなお説教しなくても。お説教自体も、物語展開から急に飛躍していて説得力無し。
言いたいことはわからないでもないけど、別に古いのに閉じこもって新しいの否定してるわけでもないだろうに。
宇宙時代、科学の発達した時代での差別問題。登場人物は、独立記念祭と、子供が産まれること双方の理由から自分たちの足元を見つめ直さなくてはならない。命を外に依存している世界観はかなり奇抜で、それに触れることに価値がある。
自らの生を否定することも容易に出来るだろうけど、彼らが生を選ぶことは、死ぬはずだった命を救う行為とも取れる。逆に、彼らもまた死ぬはずの命だった事を考えれば、その関係の微妙さが見えてくる。
それだけに、地球への憧れと恨みを直接的な言葉でなく書かれていれば、かなり面白いものになったと思う。
自分たちの足元にはどうしようもないもの悲しさがあるのだから、祭りの盛り上がりよりも祭りの後の寂しさのほうがマッチする気がする。逆に、祭りの盛り上がりとの対比を考えてなら、あまりに盛り上がりを書いてなさ過ぎる。
特に真新しいモノを書いているわけではない。むしろ、どっかで似たのを見たことあるような話。それでも読ませるのは作者の文章力でしょう。
抑えて抑えて書かれているため、退屈に感じる場面があるものの、それが最後に活きてる。それを理由に途中で投げ出すのは勿体ないかな。
文脈がおかしかったり前後してたりな感じはあるんだけど、それは最初だけ。後は安心して読むことが出来る。
引いてる視点で淡々と綴っているのはいいんだけど、たまに引きすぎているところがある。特に、クライマックスでそれをやられると一気に冷める。
少女の悲しみは、書かれているほどには感じられなかったです。端から見たら完全に少女のほうが悪い状況を書いたほうが、悲しみ自体は来るんじゃないかなぁ。
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他の作品:『マーティの話』
魔術錬金術はほとんどのものを創造できるようになり、後残すは竜とカタツムリのみ。術士フランペルは、最初に竜もしくはカタツムリを創造するために動き出す。話。
丁寧に書かれていて好感は持てるんですけど、中盤の長く続く場面は、ちょっと辛い。それを抜かせば、「竜もしくはカタツムリ」と言い本質と言い、それからちゃんと大きなショックもあるしで楽しめる。
最後たいていの読者は、寸前の出来事にもかかわらずニヤリとさせられると思う。結構残酷な話だと思うけど、そのおかげで読後感良し。
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他の作品:『星の唄』
不思議な味のある文章。この文章でもの凄い悪事とか、悲劇とかを書かれたら、かえって凄みが出て来るんだと思います。
そう言う意味で、ちょっと中途半端かなぁ。センチメンタルに寄っちゃっても良かったんじゃないでしょうか。
それにしても、抹茶栗羊羹っていう題名はどこから取ったんですかね。謎。
女を全て殺した後の男。人間の生は善か悪かの争いがあり、それと関係なく「生きているもの」を無くしていく少年。生命の可能性を自らの手で潰していく人間の話。
扱ってるテーマが教科書的というか教条的というか、とにかく時代遅れに感じる。仮に百歩譲って人間の存在自体が悪だとしても、と言う仮定すら既に成立しますかね。
悪なんて言う良く分からないモノを世の全てが受け入れ(まあ、女性は受け入れ無かったんでしょうけど、仮定を受け入れた時点で受け入れないことは不可能だと思います)、悪であることに世の全てが絶えられなくなるなんて、それだけでよほど『善』な世界だと思います。
とは言え、吐き気のする、少年の無軌道な狂気は読み応えがあり、それよって押し込められていたものから微かに射し込む光に、かなり壮大な、イメージの拓ける感じが味わえる。
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他の作品:『偶然は透明な蒼』
丁寧な言葉遣いの殺人鬼が、昨今の殺人鬼事情について愚痴る。
主人公の殺人鬼は腰が低く、ジェイソンが焼き魚をパクつくとか、そう言うギャップなり絵なりが楽しめる話で、その絵も想像しやすくて面白い。
けど、最後だけなんで急に引いたショットになってるんでしょうか。一人称の叫び、みたいにしたほうが貫徹してるし雰囲気出ると思います。
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他の作品:『夕焼けの赫』
人間の拳大もある吸血蠅に襲われ格闘となるが、しかし……と言う話で、上手く作られた魔法世界のミステリー。
魔法が出てくるものの、理路整然としていて不公平感は全くない。魔法世界そのものを上手くベールとして使っている。ほんと、よく考えてみれば分かるけど、当たり前に書かれているから全然不思議に思わなかったです。
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他の作品:『ようこそ』
最初の文章に騙されてはいけない。いや、最初だけじゃなく全編文体は同じだけど。それでも騙されては行けないと思う。
真面目な小説好きは、きっと笑うでしょう。しかも嘲笑うって言う嫌な笑い方で。でもそんな奴には笑わせておけばいい。最初の数行読んだだけで「きっとコレはダメだ」なんて決めつけちゃ楽しめないモノがあるんだい。
なんかこう書くと、最初の方の文章はそんなにダメなのかと思われるかもしれない。全然逆。むしろ最初の数行につられて読んだ。
諸悪の根元、不死身のチェーンソー男と戦う、美少女戦士綾穂とオレ。こんな無茶な設定で、小説そんなに読まない人に薦められる小説だと思って読んだ。でも違う。もちろん、文章の軽さと面白さで、小説そんなに読まない人だって楽しめる。でも、小説好きだってここまで楽しめる話はそんなに無いと思う。
地に足付けた荒唐無稽。どっぷりと向こう側に行ってないで、登場人物が諸悪の根元とか超能力とかを、恥ずかしいとうつむくバランス感覚が支えている。過剰じゃない笑いがあるのがいい。
綾穂についていくオレの心理は、正義感溢れてなくて共感できる人も多いハズ。
(追記)
二章三章終章も読みました。視点が変わるから当たり前だけど、ちょっと堅めの文章が余り馴染んでいない気がする。
特に、三人称の佐藤視点は、一章の一人称のと比べると魅力が落ちる。それに、三章の初めのほうはやけに急いでいる。二つの話が交わるところでもそんな感じなので、どうも勝手に話が進んでしまった印象。
個人的には一章のまま、なんの説明もなく終わってるほうが好き。
確かにラストは圧巻だったけど、それでもなんか、普通の話になってしまった感じ。普通の、凄い面白い話に。
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おすすめ:『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』
偶然にもテーマはひとつ前に読んだ『第十回創造者会議』と似通ってたけど、こういう風に書かれれば反発は感じないですね。大騒ぎせず、「それがどうしたの?」みたいな書き方に好感が持てます。
ただ、逆にそのせいで喉ごし良すぎて、まさに「それがどうしたの?」になっちゃってる。かと言ってものものしくすると違う話になっちゃいますし、どうすればいいんでしょ。
文字通り、創造者が集まってする会議で、地球の欠陥について指摘し続ける話。地球の創造者が責められるのは新鮮だった。
こう言うのを読むともの凄い反発を感じるんですけど、その反発が狙いだったみたいで踊ってしまった感じ。だから言うわけじゃないですけど、反発以外に残らないのは狙い通りなんでしょうか。
抽象的に逃げないで、実際の残虐行為を書けば、反発以外にも何か産まれたかも。
34.6KBあるものの、かなりの量をスタイルシートの定義とタグ乱発で食ってると思うので、数字の印象よりも短いです。
ファンタジーにありがちな、事細かな顔の描写は確かにあるし、いい人は美男美女って言うのもある。でもそれは、時代劇を見てみんな丁髷付けてるのと同じことだと思えばどうってことない。そこさえ過ぎればかなり楽しめる話なんだから。
どちらに転ぶのか、微妙なバランスを行ったり来たりする中盤からラストにかけての迫力は圧倒的。ただボンボン使って敵を倒す魔法じゃなくて、あることを成し遂げるための手助けとして、魔法を利用していることに好感。
こういう風に魔法を書いてくれれば、ファンタジー嫌いも少なくなりそうだけど。
ただ、「女として」とかは言って欲しくなかったなぁ。
(追記)
再読してみると、どうも設定に無理があるような気がする。ディディエル王国の王子アルトが隣国のフェルキアに厄介払いの形でお見合いに行くのだけど、アルトが持っているとんでもない秘密を考えたら、心の中でどう思ってようと、表面的には厚遇こそすれ、虐げ、厄介払いなんて行動はしないでしょう。あと、王家に対する考え方が、どうも。
参照
レビュー:POLESTAR・中編
惑星をイメージしていたから中盤どう展開するのかと思っていたら、現代物で肩すかし。
地元の仲間社会を惑星とは大袈裟だろうと思うけど、逆に惑星と書ける作者だからこその、心地よい文章と表現は全然嫌味にならない。それを味わうだけでも価値がある。
程良いノスタルジーに浸れる。
推理物で、問題編と解答編に分かれている。あれで自分に容疑がかからないと思う犯人がいたらおかしい。めちゃくちゃ第一の容疑者じゃない。白根河の性格も一貫してないように思う。
参照
他の作品:『花嫁は飛行機に乗って』他
なにか特別なことが起こるわけでもないし、なにか特別な転換が起こるわけでもない。でも、気丈な「私」はかなり胸に来ますわ。弟の無邪気さとの対比がまたなんとも言えない。戻ってきた母の、日常をたぐり寄せようとしている感じもいい。
(追記)
あらすじ:あの日、朝早く隠れるように出ていった母が、ようやく帰ってきた。両親のいない家で、約束通りしっかりしていた「私」。無邪気にはしゃぐ弟を横目で見る「私」の心に、複雑な思いがよぎる。現代物。
参照
おすすめ:『母帰る』
さらっと読めて、謎自体も不可解でよし。ただ、読後どうも矛盾してそうな箇所があったり、謎も段階的に明かされて行くからその分ショックが少ない。もっと大きな転機が欲しい。最後の説明ゼリフもマイナス。システム手帳には女×1男×1と書くべきでは?