高橋亨は大学二年。親元を離れ東京で一人暮らし。学費と生活費を稼ぐために、日々バイトに勤しんでいた。そんなある日、普段疎遠な父親から電話がかかってきた。バイト前で時間のない亨はすぐに切ってしまうが、バイトから帰ってくると、父親が自殺したと連絡が入る。現代物。幻想。
上手いんだか下手なんだか。出だしの文章は凄く堅い感じの文章なのに、本章にいったらよくわからない柔らか三昧だし。で、そのうちまた堅くなってくる。堅いほうがあってるし読みやすいです、間違いなく。
それにしても、余計と感じる文章が多い。目覚まし鳴ってから学校行くまで、一々全部起こした行動を書かなくてもいい。父親が死んで落ち込むのはわかるけど、くどくどしすぎじゃないかなぁ。その後、ようやく面白くなるわけだから、さっさと行っちゃえばいいのに。
話自体は「永遠の繰り返し」っていう暗くて残酷な話だけど、ちゃんと希望もある。ただ、二つの要素が絡まりあって同時進行していく形を取ったほうが、魅力的だと思う。最初のベタベタした関係は嫌い。気持ち悪い。
なかなか子供が出来ないと、両親に妻が責められているのを感じ、深山健一郎は新築分譲マンションを購入した。そこには自然が残り、広大な公園があった。健一郎は運動不足解消と、早朝のまだ暗いうちからその公園をジョギングしていたが、ある日、早朝の公園でたくさんの子供たちが遊んでいるのを目にする。現代物。
ある種「いい話」なのだけど、そのいい話のために不幸になってしまう子供がいて、しっかりと厳しさのある話だと思う。だけど、その厳しさは子供についての厳しさで、大人に対しては甘いんじゃないか。
小説なのだから、中立の立場で書くなんてことしなくていいのかもしれないけど、幼児虐待がここまで問題になってるのは、親になる資格がない奴が親になってるとか、そんな簡単な話じゃないはずで。
健一郎だって、その程度のことわかってそうなもの。ただ、彼が子供欲しさあまりにそう考えてしまったなら、わからない話ではないんだけど。でもそこに反発を感じて。それを書かないと、なぁんか大人にとっては表面上の甘いファンタジーって感じだなぁ。
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他の作品:『目撃者』
久しぶりに高校時代の友人・沢木と会うと、彼はなにやら思い悩んだ顔をしていた。論文が息詰まっているのかと思うと、そうでもないらしい。不審に思った「ぼく」に、彼は、推理小説の殺人事件が常に解決されるのを不思議に思ったことはないかと言った。ホラー。
うーん、最初の彼の提示は引き込まれたんだけどなぁ。思考ゲームみたいになっていくのかと思ったら、ただの電波さんになってわめくわめく。これがどうも飛び過ぎちゃってて付いていけない。その後の展開も予想がついちゃって、物語のなかに復帰できなかった。
彼の狂人っぷりは内容から考えて仕方ないだろうから、そのあとの「ぼく」の論理展開がもう少し丁寧であればいいのかなぁ。あくまできっかけでしかないのに、強引な気がする。信じたがってるわけでもないだろうに。
アルマダステーションで、船の整備の間だけの休暇を楽しむアイダスハンド号のメンバー。だが、メンバーの一人リッキーが誘拐されるという事件が起こる。金の持ち合わせなんてあるわけないのは相手だってわかっているはず。犯人の目的は何か。ダニエルが犯人を追う。SF。ライトタッチ。
母から子へ、歌を伝えていくというのは神秘的で、素敵な世界を見せてくれる。要素要素の繋がりと、人種によっての感情の違いなどは楽しめるのだけど、あまりにあっちこっち行きすぎ。
一章の大部分を占める人物紹介は、ほとんど本編で使われてない人の紹介でまで話がそれるし、二章以降だって初めて出て来る人がいるときはぎこちない。それ以上に、視点があっちこっちに移って、しかも全て見透かしてるんで、緊迫感も何もない。拍子抜け。
登場人物絞って、じっくり書けばそれなりのスリルもあるだろうに。
三十五世紀、人類は次々と外宇宙に向けて飛び立ち、その成果を持ち帰った。第十三回恒星間探検隊も、同じように期待され飛び立ったはずだった。だが、その行く手にあった物は……。SF。
恒星間探検隊の隊長ならば、当然人並みの天文知識と人並み以上の判断力を持ち合わせているはずで。乗組員のなかには、当然専門的な天文知識を持ち合わせた人がいるはずで。この程度のことを、その場に行くまで気づけないって言うのはないでしょ。
ましてや、「いつになく」程度じゃなく明るいので、十数光年の近さで気づかないわけがない。おかげでこの探検隊とそれを組織した世界が限りなく間抜けに見える。数億光年離れた地球からは多分目標の星は見えないと思うし。世界自体がしっくりこない。
せっかく数億光年の距離を近づいたのだから、その年月を逆上る感覚みたいのがあれば感動的にもなると思うんだけど。
「私」は、美術部の四条司にモデルになってくれと頼まれた。突然のことでどう答えていいかわからず、「私」を選んだ理由を問うと、ある人と「私」の悲しみが似ているのだという。現代物。
一年半前に読んで、その時はかなり打ちのめされたんだけど、今読んでみるとその原因がわからない。確かに痛さはあるんだけど、進行形でぐいぐい押していく話じゃない。暴露される部分以外の、ピンと張った緊張感は心地よい感じすらする。
登場する三人はそれぞれに悲しみを背負っているのだけど、「私」の悲しみが変わってきたのだと思う。初期の段階での悲しみは、明らかに「罪」を向いているように思うのだけど、愛に飢えている原因は、罪よりもむしろ家庭環境の悲しみにあるんだと思う。
成長したのかとも思うけど、どうも違う。明かされる部分のインパクトをどけてみると、「私」にとって、罪は罪じゃないんじゃないかという気がする。そう言う意味で、ちょっと「私」と司を繋ぐ糸が希薄に思えてきたのかなぁ。反面、唯一進行形の彩は重いし、全てを受け入れる言葉は響くのだけど。
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おすすめ:『光流』
「僕」とその妻・敦子は、火災で両親を失った敦子の姪・ありすを引き取ることになった。最初は心を閉ざしていたありすも、徐々に心を開き始め、「僕」とありすの間が上手くいきだした頃。敦子は、ありすの母だった姉との確執に囚われているのか、ありすに未だ馴染めないでいた。ホラー。
ホラーだから当然だけど、かなり怖い。敦子と敦子の姉の確執がなにより怖いんで、その姉と瓜二つだというありすの言動一つ一つがかなり怖い。また、敦子の姉の悪意が相当なもので、それを映す敦子から見たありすも、吐き気がするほど。
ただ、最終的な結末はどうあれ、読んで傾く言い分は確実にアチラで、またそう書いてある。映画ならばそれで「ああ、後ろにジェイソンが迫ってるよ」ってハラハラドキドキなんだろうけど、鬱陶しくて鬱陶しくて。引きつける力なのはわかるけどさ。
好き嫌いなのだろうけど、吐き気のする悪意なんで、読後感はまあ良くないでしょ。逆に、子供の悪意だから怖いのは間違いないんで、それでいいホラー好きの人は、どうぞ。
エンカーディア号は、地球人によく似た異星人を収容した。彼女の星は一億年前に、恒星系の破壊によりなくなった。彼女は家族と脱出し彷徨っていたみたいだが、弟・父親・母親と全て死に、彼女だけが生き残っていた。戦争は、いつでも、どこでも人々を傷つけていく。SF。
こんな散漫としてていいのかなぁ。特に後半部分、アクションっぽくなったときに状況が把握しづらく、また、登場人物が何を考えて、何について語っているのかよくわからないことが多いのだけど、全体を見渡してもぼんやりした印象。
収容した異星人中心で行くのかと思ったら、第二章になるとコロッと転換。他の異星人を助けに行ってた時のビデオが中心になっていくし。なら、彼女の存在ってなに? 意味深に書いてた割にあっさり。
エピソードとしては、両方とも戦争の悲惨さ。みたいなものを訴えてるのだろうけど、ぼんやり感と混乱でほとんど残ってない。あと、デカ過ぎるんだと思うなぁ。
広子は友達に占いの店に連れて行かれた。そこで、占い前に壁越しに質問を受け、その答えを紙に書いたところ、占い師に全て当てられてしまった。果たしてそれは超能力なのか。家庭教師・秋山が、そのトリックを暴く。ミステリ。
登場人物の話が希薄なんで、多分謎解き問題として読む話なのだろうけど、肝腎の謎解きに魅力が薄い。多分こういうのって、あっと驚くような、それでいてトリックを聞いたときもやられたって爽快感があると思うんですけど、そう言うのがない。文中にもあるように、「つまらない」。なんじゃそりゃと言いたくなる。
とは言えそれで確かに見抜けるわけで、成立はしてるのかもしれない。ただ、それなら伏線で、そのトリックを利用したために占い師が違うことを書くとか判別できないとか、そう言うのがあってくれると、同じトリックでも「なんじゃそりゃ」にならないと思うんだけど。どうでしょうか。
ある日、猫の首に付けられていた小瓶を見つけたことから、その猫を媒介に全く見ず知らずの二人が、マザーグースの往復書簡を始める。しかもその猫は第三者の飼われていて、その飼い主も猫の小瓶に興味を示している様子。ミステリ。
マザーグースを知らないんでどうしようかと思ったけど、そんなの関係なく楽しめた。なんでもないボトルメールのやり取り。ただ特別なのは、猫を媒介にしていることと、書いているのがマザーグースと言うこと。それだけでも充分意味深なのだろうけど、間に一人挟まれてもう全体像すら掴めなくなる。
おかげで全然展開が予想できなくて、凄く引き込まれる。三つの視点を行き来するけど、それぞれの視点に意味があるのが嬉しい。特に猫の視点はユーモラスで、乱暴な思いやりは微笑ましい。
さり気ないけど、絶対に気になる点がちゃんとした伏線で、全てが明らかになった後、そのことにちょっと感動する。上手い。
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おすすめ:『都会の海岸線』
他の作品:『機巧狂い』
レビュー:POLESTAR・最近のレビュー・短編
「星がフル時、真央ちゃんはね、お空に帰るの」五歳の娘が、キャンプ場で夜空を見上げながら言った言葉。この言葉を聞いてから、「僕」に心の休まる時はなく、心労は徐々に体を蝕んでいく。現代物。家族愛。
多分、痛さが足りないんだと思う。娘を失うのが悲しいって言うのは、まあ想像の範囲ではわかるんですけど、その娘の可愛らしさが全然出てない。小さなエピソードでも、娘の可愛らしさを伝えてくれなくちゃ、所詮人ごとレベルでしか思えない。
それと、娘の言葉にリアリティが感じられない。メルヘンな言葉だから当たり前なのかもしれないけど、少なくとも主人公はリアルに感じたわけで。そのリアルに感じた部分がわからない。おかげで、「本当にいなくなってしまう」と言う気持ちを共有できなくて、遠いまま物語が進んでしまう。
月夜・キャンプ場の自然・五歳の娘と、幻想的な素材は揃ってるのだから、あとは頷かざるおえない雰囲気が欲しい。転機は楽しめたのだけど、だとしたら尚のこと娘の可愛いエピソードは必要でしょ。
警察官になって二年目の正也は、毎日事件らしい事件もなく、だらだらと続く交番勤務にウンザリしていた。そんなある日、交番近くに人の生首を振り回す男が出現し、すぐに捕らえに向かうが、その男はなんと正也の兄だった。ホラー。なのかな。
無意味で唐突な視点変えはストレス以外の何者でもないんで、是非やめて欲しい。一瞬、そうやって読者を混乱させた罠なのかと思ったけど、そう言うわけでもないし。そうであっても自然にやるのが普通だろうけど、違うのにやられると読みにくいだけ。自分のことなのに「めんどくさそう」とか言うし。
狂った感じも笑いでしか書いてないから全然来ないし、兄を思う弟の心情だって随分と葛藤なくやっちゃうんだねぇ。ってもう別世界の出来事。なので、その後の恐怖は全然恐くない。警察との会話は笑っちゃう。
オチ自体に文句つける気はないですけど、それまでが杜撰すぎるんで、とても笑う気にはなれません。
小学校の時の友人で、しばらく疎遠だったトシアキから、一緒に卒業制作にバンドをやろうと誘われたカワラ。もう一人ケイコを加えてバンドとしての形となり、積極的なトシアキとケイコ。一人残されたカワラも、徐々に今までの自分から変わっていこうと思い始める。青春小説。
後半の、バンドの演奏の部分は丁寧に書いてるなぁと思うんだけど。如何せん前半部分薄すぎるよ。主人公が「〜だった。〜だった」みたいに語ってるだけで、主人公の生活・人格を描いてるわけじゃない。だから、変化しなくちゃと思った葛藤部分も弱いし、変化による感動だって弱い。
あそこで終わるのはいいんだけど、それなら尚のこと変化に重点を置かなきゃいけないと思うんだけど。作り込んでいく部分に色々葛藤があると思うので、そこを書けば良かったんじゃないでしょうか。
人が、汚染された地球から逃れるために作られた海底都市に住んでいる時代。藤木汐は中央官庁に勤める、海洋汚染の改善を研究する科学者だ。そんな彼は、毎日のようにアクアリウムに通い、人魚のマリィと交流を続けていた。SF(?)。
思うのが、神話の力の強さね。どちらが真実にしても、またどちらも歪められているにしても、自己正当化まで持って来ちゃう力。些細な転換自体も来るけど、それ以上に、転換の後ろにあるであろう神話の力にグッと来る。
なので、最後の数行の、両方を理解した形の文章みたいなのは余計な気が。あくまで神話に縛られてて欲しい。なんでみんな縛られてるのに、若造のお前が軽々飛び越えられちゃうんだ。そんな根が浅いものなのか。っていう気になる。それを抜かしても、妙にまとめっぽいし。
女子高生・ルキノはお爺ちゃんの残してくれた土地を確認しに、単身四国へと向かった。ところがその土地は、山奥にある小さなもの。しかも奇妙なことに星形をしていた。すぐさま使い道無いと判断したが、そこで出会った青年・四郎に言われるまま掘り返してみると、石版を発見。なにやら奇妙な文字が書いてあったが、ルキノはなぜかそれが読めるのだった。SFかファンタジーか。
これは格好いいなぁ。ライトタッチで所々笑えるのが散りばめられているんだけど、まさかこんな世界観・行動原理が格好いいのになるとはねぇ。それだけで感動もの。最初のテイストがちょっとあわないくらいでやめちゃうのは勿体ない。逆に最初のテイストがあえば、それが転化していく様をご堪能あれ。
ただ、余り現実世界の風俗・人物名が出てくるのはちょっと。色あせが心配だし。ギャグでいれるのもわかるけど、そんなことしなくても世界観がバカで面白くて格好いいんだから。充分笑えますよ。過剰にならない、もしくは過剰に見せないご都合主義、大好き。
あ、多分これまでの書き方だと誤解しちゃうかもしれませんけど、支えてる柱はしっかりしてます。太いです。
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おすすめ:『ロケットの墓場』
「僕」は産まれてからずっと過ごしていた土地を離れ、転校をすることになった。言われたのは突然で、もう引っ越しまでそれほど日時もない。友達にそのことを伝えなければと思うのだが、そんな少ない時間で何をやれと言うのだ。青春小説。
把握しづらい。もっと前から話が続いていてこの場面が来るなら、それほど苦もなく飲み込めるかもしれないけど、日常の続きに突然入れられた疎外感。登場人物同士は通じてるんだろうけど、初めて読むほうは辛い。
人間関係と人格以外にもわからないところは結構あって、例えば理想の異性の話をしているときに他の人の意見を「参考」にはしないだろうと思うんだけど。
終盤間近になって、ようやく漠然とした日常から話が絞られてくるので、随分わかりやすくなる。そこからは引っ越しの感情はなんとなくわかるし楽しめるんだけど、やっぱりそれまでの関係が掴めないので、思い出の場所を離れるっていう、一般的な感動で終わっちゃう。
七番街に雨が降りしきる中、パブに一人の男が入ってきた。いつもと変わらぬ様子を見せる彼だが、今日はあの仕事の日のはずだ。マスターは彼を気づかい、男に一杯奢った。ハードボイルド。
この話の主人公は、男でもなければマスターでもないんだと思う。時代背景は現代と言うよりも古めかしい六十年代のイメージ(知らないけどね、六十年代)で、その古き良き時代と、時代を匂わせる流行らないパブが、この話の主人公でしょ。
そうして読めば、視点のふらつきだってそれほど気にならない。単に、時代と言う主人公を描写してるだけなんだから。
ただ、主人公に感情移入してとか、この先ストーリーどうなるんだろうとか、そういう楽しみはないと思う。遠くから自分が、格好いい絵として見てる感じが近いかな。
親しかった女性・蛍池あゆみの死から二週間。三村圭司はそのショックから、なかなか立ち直れないでいた。そんなある日、学校へと続く坂道にある事故現場付近で、不意に眩暈を覚えた。薄らいだ意識を呼び戻したのは、蛍池さんの声。目覚めると、間違いなく彼女はそこにいた。SF。かな。
出だしが凄い。この話をするのに全然遠いところの、魅力のある出だし。一体どんな話が飛び出してくるのかとワクワクする。この話の最大の魅力と言っちゃってもいい。この出だしとSF的(?)な解釈で、ありきたりの話を光らせてる。
ただ、まあそれにも限度があるので、ラストはいただけない。エンドレスで続いて、徐々にずれていく世界。みたいのにしたらとんでもなく残酷で、解釈とあってるしラストもアレじゃなくて済むしで、いいと思うんだけど。
丸子のキャラと、「ベタだと思うけど」みたいな作者のいいわけっぽいのはやめて欲しいなぁ。あと、言うこと・思うことが一般論過ぎてどうも。
典型的なギャングの格好をした少年を撃ち殺した男。男は、死刑執行直前にあの時のことを思い出す。少年を撃ち殺した後、同僚の警官と対峙した、あの時のことを。
うーん、一番大事なところの意味がわからない。「お前らしい」考え方ってことは多分以前そんな話をしたんだろうし、それなのに簡単に引き下がるって言うのに納得行かない部分があるかなぁ。そんなんじゃ納得行かないから手を下したんだろうに。言葉遊びするために撃ったんじゃないでしょ。
まあ、それは意味がわかれば納得できる物なのかもしれないけど。あと、自分では余りこだわらないつもりだったんですけど、やっぱり「・・・」と「……」って受ける印象違いますね。
ある物を消すには、あったことを忘れてしまえばいい。智巳は、朱のことを知っている。幼い頃共に入院し、病院で過ごした日々のことを。だが、ある日目の前で朱は消えてしまった。驚いてそのことを人に話すと、誰一人朱のことを覚えていなかった。現代ファンタジー。
消えていく記憶が悲しいんじゃない。主人公は、みんなの記憶から抜け落ちてしまったこと、唯一の存在証明である自分の記憶が朧げになっていくことに、焦りや恐れを抱くけれど、気持ちはわかるけどそれほどのことじゃ、と言うレベル。それよりも、消えたいと望んだことが凄く痛い。
ただ、感情よりも絵的な綺麗さのほうが目立っていて、綺麗な話としてなら凄く成功している話だと思う。ただ、これがいなくなった人物の記憶が、存在が消えてしまう寂しさみたいなのを書こうとしてたなら、幻想なんかない方がいい。何もしなかったお爺ちゃんがひっそりと死んで、誰の記憶からも消えていったほうが、数倍悲しい。
この綺麗さは好きで、大木が願いを叶える話とかほんと素敵だと思うから、全然かまわないんだけど。あと、泣きすぎと「もう少し後になってから」気づきすぎ。インパクトから最初は外せないとしても、あとはいいでしょ。
参照
おすすめ:『SEASON〜消えてしまった記憶〜』