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タイトル



『狼狩り』華猫 41.3KB
http://www.iulnet.ne.jp/~faomao/ novel 

 アルマーとモキが移り住んだ田舎の都市で、ある日の早朝、人間と犬の死体が発見された。公園を散歩中に殺されたと思われる二つの死体。なぜ? アルマーは昨晩人間しか襲っていないのに。ファンタジー。サスペンス。

 アルマーが吸血鬼で、モキが狼男。シリーズ物だからか、これとは書かれていないものだから多少分かりにくかったものの、日常で上手く書かれているから、わからなくても徐々に飲み込ませてくれる。

 そう言った設定面から想像すると、もっとコミカルだったりファンタジーだったりな物を想像しがちだけど、これは結構ハードな物。言葉づかいから何から伝わってくる、アメリカ映画っぽい雰囲気がいい。名前だけじゃなく、しっかりとそこにある感じで、そのハードさが心地いい。

 ストーリーも、アルマーが人間を襲った翌朝、その近くでアルマーが襲った以外の人と犬が死んでいたり、アクション的要素があったりと、非常に引き込まれる。前者は謎じゃなくてただの事件だけど、その話の持って行き方と後者の要素。ほんと、外国映画っぽさを感じる。ただし、いい意味で大風呂敷じゃなくSFXじゃない映画。

参照
 おすすめ:『狼狩り』


『百万分の一に賭けた想い』Tomoki 48.0KB
http://www2u.biglobe.ne.jp/~gto-z/ Novel・中編 

 二学期の始業式、哲也は学校に来なかった。代わりに来たのは、哲也の死の知らせ。哲也と幼稚園から一緒で、ずっと仲の良かった純一は、哲也が自殺したと言うことが信じられず、一人、調査を開始した。ミステリ。

 序盤から書き込みが素っ気ないんだと思う。短い場面をパッパと切り替えて行くから、自然と一場面で書き込みが少なくなって、悲しんでいる場面だろうに全然そんな感じを受けない。出来事が希薄になるのも、なかなか入り込めなくしてるんじゃないかなぁ。

 純一が、「そんな短絡的なこと」と一回首を振った推理なのに、何で次になってそれを元に調べているのかがわからない。まさに短絡的な理由なんで、それをもとに、二人いる目撃者のうち一人を疑って一人を気にもかけない。って言うのは納得行かない。

 徐々に犯人を浮かび上がらせるのが捜査だろうから、その行動に納得行かないと話自体に納得いかなくなっちゃう。おかげで推理がスリル不足で、淡々とした印象を受けてしまう。ただ、動機は結構悲しくて、短絡的な物よりも遙かに説得力がある。推理よりも動機を見るべき。

 ところで、誰か屋上でこんなことになる話知りませんか? その後の理由とかも聞いたことある気がするんで、もしかしたら以前これを読んで勘違いをしてるのかもしれないですけど。

参照
 レビュー:POLESTAR・最近のレビュー・中編


『美味しい話』烏丸大悟 26.6KB
http://www.ipc-tokai.or.jp/~ray/jewelbox/index.html 掲載作品集・作品集・ホラー 

 人生に疲れた「俺」は、今日もバイトの面接に落ちた。学生の頃の、集団でいられて個というのもがなかった時代を懐かしむ。そんなある日、大家に、友人が店のバイトを募集していると聞かされる。時給も破格。こんなに「美味しい話」はあるのだろうか。ホラー。

 意外性はないかもしれない。正直、題名でほとんどネタをばらしてしまってるような物だし、途中までの展開で、最初の想像が裏切られないことは確信しちゃう。それが勿体ない。

 精神描写で読ませていく話だろうけど、それがちょっと過剰になってて、くどい感じがする。そんなに「闇」とか「物」とかを強調しなくていいし、主人公は考えることを放棄したがってるにもかかわらず、その放棄したことを延々考えているからわからない。

 ただ、組み合わせの妙というか、このネタをこれと組み合わせてこんな話にするか。と言う点が面白い。それと、序盤の主人公の言葉には、「あ、ちゃんと生きてこ」って気分になることウケアイ。適当に過ごしてる人は。


『音楽室』藤原瑠花 25.6KB
http://fish.miracle.ne.jp/lucas/index.html 物語の帙 

 その学校の合唱部は女の子ばかり十人程度の部員しか居なかったから、大会での入賞など望むべくもなく、音楽室で練習をするというより、お喋りをするために集まっていた。少女は合唱部の中でも一番目立たない存在。お喋りの輪からいつも自由に離れ、古い楽譜を見ることが多かった。が、ある日見た楽譜の奥に、少女は幻影を見た気がした。

 長い長い文章と段落、少女たちから遠く離れた視点での淡々とした語りは、それほど映像的でも音楽的でもなく、退屈さを否めない。読んでいくのには、多少の根気強さが必要かもしれない。

 それでも、この文章で書かれたからこそだと思われる、幻影の緊張感は心地よく、なにより時の流れには感動とある種のデジャブを覚える。新校舎の様々なところで降り積もっていく歴史。教室の片隅にカメラを設置して、その映像を早送りさせているような、徐々に変わっていく教室の感覚。

 少女が音楽室の楽譜や肖像画に、死の香りを感じ取るのがその裏返しであると言われればなんとなく分かる気がするし、そう言った歴史の降り積もっていく感じを味あわせてくれただけで、幸せな気分になる。

参照
 レビュー:POLESTAR・最近のレビュー・中編


『マーティの話』湊かおる 27.3KB
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Vega/2271/ 小説 

 マーティは普段道を歩いていても、みんなから好意を受けているのが良くわかるような好青年。だけど、本当は彼の容姿なんて問題じゃなく、ただ頼まれたらいやと言えない彼の性格を、みんな知っているから寄ってくるだけなんだ。童話。ホラー。

 何の救いもない話でびっくり。なにかしらありそうなものだけど、そのまま終わっちゃって、かなりブラックな話。下の『わすれもの』とは見事な対照でしょう。周りの悪意と、主人公の中途半端な善意と悪意がマーティを責め立てて、とにかく感じ悪い。

 ラストはラストで、つまりマーティとは誰にとってもそう言う奴なんだって言うのが分かって、さらなる悪意を感じる。一番気持ち悪いのはこのラストだと思う。文章は読みやすくて、語り口も一見優しげ。正に童話って感じなんだけど、それだけにきつい。

 マーティと主人公は同じ年くらいで、マーティはまだ子供の姿をしているって言うけど、主人公の語りはちょっと大人びてる感じがする。何歳くらいなんでしょ。

 本当は怖いグリム童話とかが好きな人とかなら、結構好きな部類の話なんじゃないでしょうか。

参照
 他の作品:『The Beast』


『わすれもの』木村優麻 18.1KB
http://www.ivy.or.jp/~yu-ma/ おはなしがいっぱい 

 よく忘れ物をする「ぼく」は、反対になぜか人の忘れ物をよく見つける。ある日、塾へ行ってノートを忘れたことに気づいた「ぼく」は、近くの文房具屋へ行くが、そこで、友達の健君が万引きするのを目にしてしまう。現代物。童話。

 この「ぼく」の特徴は凄くいいなぁ。よく忘れ物をするけど、反対になぜか他の人の忘れ物を見つける。これだけで凄くストーリーが広がりそう。で、その紹介文を読んでこの話を読んだだけに、もの凄い壮大な話を期待したんだけど、この話はひどくこじんまり、と書くと失礼だろうけど、良くも悪くも真っ当な話。

「ぼく」は他人の忘れ物を見つけると必ずお巡りさんとかに届けるし、そのお巡りさんもいい人でしっかり褒めてくれるし、「いいことをしたんだから、(ぼくの)忘れ物もきっと出てくるよ」と言う。周りの人も主人公もいい人で、いい話をしようとしてて物足りない。交番での話はさすがにやりすぎでしょう。底が浅く感じてしまう。

 全編、特に序盤は忙しなくて、次から次ぎに話が飛んでってしまう。もう少し主人公を丁寧に書き込めば違うのかも。童話だって、なにもいい話いい話させなくてもいいでしょ。


『最後のヒト』ぽっぽいぬ 33.4KB
http://village.infoweb.ne.jp/~fwiv8530/ NOVELS・ぽっぽいぬ 

 シャワーを浴びていると、ふと空想することがある。バスルームの外は無限に広がる荒野。たくさんの死体に降り注ぐ雨、雨、雨。その雨を感じることが出来るのは、「私」一人。「私」が、人類最後の一人なのだと。ホラー。

 ありがちな、誰でも子供の頃考える妄想。だけではない。その要素は確かに存在するけど、ほんの少し。むしろそれを逆手に取った展開は虚をついていて引き込まれるし、恐怖の煽り方は追いつめられていく感じがあっていい。

 最初感じる違和感や疑問点はしっかり作られた物だし、最後になって出てくるより大きな疑問点は、わけのわからない恐怖と余韻を感じさせてくれる。おかげで、読後感も悪くない。


『SUMMER IN CHILDREN』LAZY-CAT 76.8KB
http://www.linkclub.or.jp/~lazy-cat/ Story・オリジナル小説 

 夏休みも後一週間。馨がふと口にした「何か面白いことないかな」と言う言葉から、僕と馨と千羽夜の三人で家出をする計画が持ち上がった。出発は午前四時半。始発電車は、見知らぬ街へと三人を運ぶ。近未来。青春。

 いいなぁ。来年は受験、三人でこうやって遊んでいられる夏休みは最後かもしれない。三人でいることがパーフェクトならパーフェクトなほど、その終わりの予感は切なさを伴う。最初っから最後までその切なさが溢れていて、近未来の、強烈にアピールしないささやかな世界設定も、しっかり後押ししてる。

 文章が上手い、と言うよりは切り口が上手いんだと思う。小さなことにこだわっていたり、些細なことで後悔をしたり、そのときどきで自分の劣等感を思い起こしたり。子供の頃の『あの感覚』が凄く刺激されて、そっからのノスタルジーもかなりある。広がる風景も綺麗。

 旅を通して、また、旅を終わった後、少し大人に近づく少年少女。王道だけど、やっぱりいい。

参照
 おすすめ:『SUMMRE IN CHILDREN』
 レビュー:POLESTAR・最近のレビュー・中編


『夕焼けの赫』さと 58.8KB
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/6967/ MOZO 

「僕」が一人屋上にいると、同じクラスの高倉美郷がやって来た。高倉は、仲の良かった「僕」の妹・朋子が自殺した理由を知らないかと「僕」に問うが、「僕」の答えは子の一ヶ月間何度も答えたように「知らない」。だが高倉は、その後も度々屋上へ来て、「僕」の話を聞こうとするのだった。サスペンス。

 あー、ようやく分かった気がする。なぁんだ、ちゃんと意味のある場面構成だったんだ。ただ、ごめんなさい。そのかっちりとはまったことについての感動とスッキリ感はあるし、格好いいとも思ったけど、最初想像したほうの衝撃が大きくて、これ自体の余韻というのがそれほど感じられなかった。

 とは言え、そのかっちりとした場面構成で受ける煽りで、かなり引き込まれる。ネタ的には嫌いでも、構成のうまさと高倉の台詞にはガツンと来るはず。文章も簡単で読みやすい。最後の場面思わせぶりにし過ぎないでくれるとわかりやすい。

 ただ、高倉の話はちょっと安っぽく感じる。わざわざそうする必要性あるのかなぁ。

 もう一つ個人的に残念だったのは、『青い金魚』で似た感覚を味わってたこと。ネタも違うし使い方も違うんだけど、初めてだったらもっと大きさと衝撃度アップだったかも。それと、あんなに感動したのに結構使われてるんだぁ。って言うのが残念。

参照
 他の作品:『殺人鬼の憂鬱』


『幻想 ─とおる─』和泉轢 17.8KB
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Dice/4602/ オリジナル小説 

「僕」が幼かった頃、林を抜けたところは「遠いところ」だった。ある日、飼っていた猫・観月の姿が見当たらずに探していると、周囲の大人は「観月は遠いところへ行った」と教えてくれた。遠いところ。「僕」は、観月を探して「遠いところ」に向かった。幻想。童話。

 死を理解できないって言うのは、感動話の一つのパターンですよね。昔ではハチ公しかり、最近でも絵本でそう言うのがあって、若い女性を中心に大ブレイクとかってやってたはず。だけど、この話ではそこのところが上手くない。理解できないのはまだいいとして、何故周囲の大人はそこまで頑なに「遠いところ」へ行ったと言い張るか。

 主人公の論理はともかく、論理の説明がしっくりこないし、重複してるのが気にかかる。ただ重複してるだけなら鬱陶しいだけだけど、さっきBまで進んだ理解をまたAに戻していたりと、直前の説明は嘘だったのかと要領を得ない。大人の感覚が重要なところで顔を出すのもどうかと。

 それでも刺激された感覚は、不思議空間だった場所が突然、名前を持った瞬間に何の不思議もなくなってしまう。という感覚。これは共感するし、上手くやれば感動もするでしょ。観月から「遠いところ」へ持って来ないで、普通に不思議空間に名前を与えてやるだけの話のほうが良さそうだなぁ。


『宇宙からの使者』琴乃つむぎ 21.6KB
http://www.infoaomori.ne.jp/~sayu/ トップページ 

 部活の帰り、疲れ切った工藤明人は突然二メートルほどもある大男に手錠をかけられた。聞けば、彼は星域捜査官で、明人は立入禁止星域侵入の罪を犯していて、禁固百年の刑だという。もちろん、明人には何のことだかサッパリわからないのだが。コメディ。

 恐くしようという気がないからだろうけど、最初の明人が恐がるところは白ける。恐いんだったら恐くていいし、過剰に笑い方面に持ってかなくても。っていう気がして来ちゃう。恐い人前にして「ひええぇぇーっ! お願いだから殺さないでぇーっ!」どんな人だ、それは。

 そこで入れなかったからか、あとの事件も漫画のコマのように独立してて決めポーズつきって感じで、しかもずっこけてる人まで見えてくるような気がして、どうも入り込めなかった。ストーリー的にも、中途半端な不完全燃焼。視点のブレも、数は少ないけど気になる。

 叫んだり過剰だったりが大丈夫な人なら楽しめるのかも。どうぞ。


『悪魔が来たりて笛を吹く』芳右島 19.3KB
http://www.ainet.or.jp/~kemuri/index.html CLASSIC・日本語・興味本位で小説を読む・オリジナル 

 お人好しならぬお悪魔良しの悪魔・グレドゥグリジアムの召還主は、入院している十二・三歳の女の子。特に願いを言うでもなく他愛のない話を続ける女の子は、友達もなく、両親も忙しく、いつも一人でいる子だった。そんな子に、悪魔は同情してきて……。ファンタジー。

 こんな話なかったかなぁ。お人好しの悪魔で、しかも病床の女の子が召還主と来れば。もうだいたい想像ついちゃうし、その想像の通り話が進んでいくんで、それほど感動は出来ないなぁ。

 それ以上に、悪魔の最初の説明では、月日の感覚が「たかだか百年」なのに、そのたかだか百年と永遠に続いていく輪廻とを天秤に掛けるって思考が違う気がする。あまりに人間側の思考でしょ、それは。女の子を語り手にして、そこら辺を諭されるみたいにしていけば良さそうだけど。

 それでも、女の子の願いは悲しいし、お気楽な悪魔との落差で来させてる。直球の感動物語を読みたいときなら、損はしないかも。

参照
 紹介:もう本は要らない・僕の本棚


『ワタリビト #397』日向水希 26.5KB
http://www2.neweb.ne.jp/wd/hyuga/ 短編小説 

 風の季節がはじまる直前と、終わった直後にテレセ・ロッホ帝国からの宇宙船。興味を示すリフレに父はいい顔をしないが、今年はその宇宙船に乗ってやって来たと思われる男が、父にある仕事を頼んだ。この星では何でもない薬草を探すだけで、高額の謝礼をくれる彼。一体何者なのだろう。SF。

 こう言うのはつくづく難しいんだろうなぁ。主人公・リフレは「不思議な少女」なのだ。「柔らかい力で人の心に入り込」んで来る、「人を虜にする能力」があるそうなんだけど。

 残念ながら、読んで伝わってくるリフレは、少々がめつくて自分勝手な女で、特別には映らない。だから、男がポンポン勝手に話してるだけって印象。男のほうからリフレを描けば、男が感じる不思議な感じを出せるから、簡単なんでしょうけど。すぐに信じ過ぎるリフレもどうかと。

 寂れているのに科学力凄いっていうアンバランスな世界と、最初の風景などからの広がりがある世界はいい。だけに、二人の会話で全部済ませるって言う楽をしないで、なにかしら事件を起こした上で秘密が明かされていったりするほうが格好いいし、喋る男の心情も頷けると思う。


『暗号解読のためのHTML講座』風夜 38.1KB
http://www.annie.ne.jp/~kaikaku/index.html Novel 

「僕」に突然やってくる宿命、桂木瑞恵からの無理難題がやってきた。桂木が送ってきた、『緊急事態です。謎の暗号が送られてきました。至急来られたし』と言うメール。どうせ大したことではないとわかっていても、向かわざる終えないのが宿命だ。ミステリ。

 以前書いた『身代金は千二百円』のシリーズ物の第二作。二作目にしてようやくわかったけど、これはラブコメだったんだ。いやぁ、そう言えば前回のもそんな感じはしてたけど、過程のための目的だと思ったんでそんな気にならなかったもんで。

 今回は、HTML講座と言うくらいだから説明する箇所があって、二人の会話が長いからか、まさにラブコメって感じのやりとりについては多少食傷ギミ。暗号についても、それで引っ張るかと言うくらい、気づいてしまえばどうってことないもの。前回の、やり取りと状況の面白さと比べると一段落ちる。

 とは言え、その暗号については初心者が頑張って作った可愛らしさがあるから許せちゃうし、何だかんだ言っても、このシリーズのなんてことない話の楽しげな雰囲気。って言うのは好き。それを楽しむ物で、プラスアルファにミステリ要素があるんでしょう。

参照
 他の作品:『身代金は千二百円』


『青い金魚』桜川夏 82.4KB
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/5199/ 空寓創作 

 直希が秋祭りで暴力教師・八神に頼まれた金魚すくいをし終えた後、ふと出会った女子高生。向こうは知ってる風だが、直希は思い出せない。彼女が「望」によろしくと言った直後、直希は望のことを思い出す。直希は病院へ行って望に会うが、ふとめまいを感じて目覚めるとそこは飛行機のなかだった。

 うーん、これはあらすじでどこまで書いていいものやら。読中、もの凄い大きな器に入ってるような幸福感があって、これからどこに連れてってくれるんだろうかとワクワクする。多分真新しくはないのだろうけど、こういう風な表現をされると、もの凄い大きく感じるわ。それだけに書きにくいし、書きすぎちゃうとその幸福感を奪っちゃうし。

 不満点はそりゃぁあって、どうも直希が八神先生を恐がってるくせにタメ口ってのはどうなの、とか、ちょっと序盤把握しづらいんじゃないの、とか。後者は後々大きさに繋がって来るんで満足だけど、直希と八神先生の会話文が多いだけに、この二人の会話文や関係には疑問符がついちゃう。二人のキャラ、もっとまともがいい。

 ○○が○○って言うのも不満(ごめんなさい、でもネタバレしちゃったら面白くないし)だけど、中盤のわけわからないまま揺り動かされてる感じは、楽しめることウケアイ。わけわからないままでいいや、もう。

参照
 おすすめ:『青い金魚』
 他の作品:『烏』


『Better Half』石井鶫子 6.33KB
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/5974/index.html 短編小説 

「私」の夫は周囲と少し変わっている。越前ガニなのだ。越前ガニなこと以外は普通のサラリーマン。ところがある日、夫の足を一本食べてしまい、その味の虜になってしまう「私」。食べたい、でも夫は好きだ。カニも好きだ。悩まされる「私」。ナンセンス。

 序盤大好き。カニの夫だけど特に他に変わったこともなく、過剰にしないから静かに日常に溶け込んでいて、面白い。文章も軽くて読みやすく、カニの夫も自分がカニであることに引け目も感じず、普通なところが可愛らしい。

「私」の、食べたいけど食べちゃいけないっていう葛藤も面白いんだけど、最後に来て開き直っちゃうところが不満。序盤の、カニだけど夫、夫だけどカニと言うだけのバランス感覚が、開き直ったことによって偏っちゃう。最後まで馬鹿な愛があって欲しかったなぁ。

 カニはシリーズ物で何作かあるので、そっちも楽しみ。

参照
 レビュー:POLESTAR・最近のレビュー・短編


『数字の旗』山口芳宏 79.7KB
http://www.puzzle-j.com/welcom2.htm トップページ 

 見城と京太郎は、お互い負けず嫌いで変なことばかり競っている。ある日、釣りから帰った見城が、面白い物を見つけたという。見城について駅前まで行き、見上げたビルの上には「4」と描かれた旗があり、その数字は毎日違うという。この旗の意味はなんなのか、見城と京太郎の勝負がはじまった。ミステリ。

 うーん、序盤面白かったんだけどなぁ。どうも中盤、これでもかと必要なエピソードを詰め込まれた感じで、興味を旗に絞れなくて間延びしたというか。中盤の、旗に戻ってきての推理にそれほど絶対的な力がなくて、そんなあやふやでいいの? って気がしてくる。おかげで、最後も「そんなもんか」って感じちゃう。

 最初にバンッと出された謎がそのまま最後まで一直線に飛んでて、周りに全く左右されてない。周りと無関係に存在している感じ。エピソード自体は馬鹿なのもあり、面白いけど。それだけじゃなくて、エピソードを重ねて謎自体が深まっていってくれると、最後までずっと興味を持って見てられるんだけど。

参照
 レビュー:POLESTAR・最近のレビュー・中編
 レビュー:オンライン小説への道・レビュー


『優しい人』一色秋人 38.4KB
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/5271/dark/ トップページ 

 秋庭克義が伊東雅から相談を受ける場に呼び出された「僕」。結局、秋庭はその場に現れずに、僕が相談を受けるハメに。その相談とは、結局の所単なる愚痴で、雅の友人・嵯峨明日美がふられたという内容。ただ妙なことに、ふった相手・武上克人は、ふった理由は「ない」と主張しているという。ミステリ風。

 面白そう。所々躓きながらも面白そうまでは連れてってくれるんだけど、その上はどうも。多分順序としてはミステリ風の作りありきで、そのあと恋愛相談を持ってきたんだろうけど、どちらも中途半端。

 ミステリとしては謎に魅力がなく、ふった理由が「ない」なんて特に謎でも何でもないだろうし、恋愛物としてはヒーローが一人で解決するので、本人の痛さとかがまるでない。ヒーロー・秋庭克義の活躍を読む物なんでしょ。読みやすいし、力技で謎に仕立てていくので、ヒーローっぷりに嫌悪感がなければ楽しめるんでしょう。

 それにしても京極堂。

参照
 他の作品:『The Third Persona──第三の人格──』


『彼女』神田多々華 6.48KB
http://hccweb1.bai.ne.jp/~hcj16301/conausa/index.html 文章・小説 

 男にふられ、汚いアパートで一人過ごす「わたし」。汚い上に幽霊が出ると言う噂のあるアパートだから、家賃が安い。それだけで選んだアパート。幽霊でも何でも出てこい。そう思ったらホントに出てきた。現代物。軽め。

「わたし」がずっと語ってる文章だけど、不思議に面白い。ノリというか、自然な感じがいいんだろうなぁ。特に難しい言葉も使わず、言い回しも使ってない。何があっても変わらない一貫した語り口。

 それが逆に、全編を覆うほのかな悲しさになって、語ってる内容の楽しさと上手く混ざり合って魅力になってるんだと思う。幽霊の彼女との交流も、特別感動的というわけじゃないけど、その自然な感じがいいんでしょう。普通の言葉なのに、不意に光るのも魅力。

参照
 おすすめ:『彼女』


『白昼夢』風太郎 44.6KB
http://homepage1.nifty.com/whotarou/ 駄作小説 

 ある日、橋本がいつものように都会の公園で弁当を食べていると、突然突風が吹いた。突風が止んで目を開けると、そこは山奥。そして、時代がかった町娘・はつみが現れ、「橋本さま」と呼ぶのだった。現代物。幻想。

 素敵な恋愛小説なの? 割とのほほんとした印象がある文章からか、どうして急に調べる気になったのかわからない。本人それほど気にしてる感じは受けなかったけど。肝腎のはつみって女性の因縁にしたって、ふーんって思うだけで普通。特別なことをするくらいなんだから、特別な話があってくれなくちゃ。

 それと、近くなったり遠くなったりする文章はストレス。さっきまで橋本の感じる恐怖を普通に地の文で書いてたくせに、「これからこの男を橋本と呼ぼう」もないと思うんだけど。盛り上がってる場所なのに冷めません?


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