あの人がいなくなってから、ずっと閉め切ったままの扉。窓の外は、いつまでも降り続く雨。「私」は、あの人がいたこの場所から立ち去ろうとはしない。閉め切ったまま、ずっとこの場所にいようと思う。だけど、そうしている間に確実に何かを失っていっているのだ。題名の通り、心という小さな部屋での話。
転機以降、軽くなって開けていく様は見事。それまでのウジウジした感じから開放されて、見えてくる景色も綺麗。言葉の響きもリズムも凄く良く感じて、明るさを取り戻した様子がありありと窺える。転機だって、所詮は小さなきっかけがあれば立ち直れるんだと言われればそうだろうし、雰囲気出てるからその気になっちゃう。
もちろん、後半を浮き立たせるためになんだろうけど、前半退屈。ウジウジした様子はともかく、トランプのカードに喩えるのは思いつきが過ぎるんじゃないかと。しかも最初にカードが登場したところでの喩えは、正直笑っちゃう様なもの。これは入り込めない。
それに、どうも思いついたのを全部入れてみた感じがして、飛び飛びで一貫性に欠ける気がする。後半は、まあ立ち直りだから当たり前かもしれないけど、次ぎに出てくる言葉が前からの続きで読みやすいのに。余りに悲劇のヒロインぶってるところがイヤだけど、逆に、自分がそう言う気持ちの時に読むといいのかな。
ジェイ・クロードは犯罪シンジケートの有望幹部。しかし、不始末をしでかしてしまい、逆に組織に追われることに。行く宛てもない彼が最後に目指したのは、少年の頃飛び出してきた故郷。故郷に着く前に険しい道で倒れてしまうが、その時、「お前の姿を貸して貰う」という声が響き、振り向くと自分がいた。SF。
やろうとしてることは結構格好良さそうだし、悲しい秘密を持つ男が自分を受け入れてくれる人と出会い、惹かれていくと言うのは面白い。まして、どちらの記憶からの感情か分からずと惑うなんて場面、そうは出来るもんじゃないと思うから、上手く書けばいいものになるとは思うんだけど。
ただ、台詞そのものや台詞回しがありきたりに感じて、それほど感情移入できない。彼を受け入れる彼女の台詞に一番それを感じるから、感動の場面なのに全然来ない。ラスト付近までSFっぽく運んでいるのに、最後になって「人知を越えた彼には」って、そりゃ無いんじゃないと思っちゃう。視点のブレもちょっと。
第一、彼はジェイに断る必要性があったんだろうか。もっと言えば、彼はジェイになる必要性があったんだろうか。その必要性は乏しいように思う。
参照
レビュー:POLESTAR・最近のレビュー・中編
他の作品:『鎮魂花』
宇宙に浮かぶ人間の城。端から端まで三日間でついてしまう空間。そんなフロンティアに暮らす人間たち。いつまでも地球の夢を語り続けるE症候群になったサラに、いつか「僕」は自分の気持ちを伝えるんだ。SF。恋愛。
どんな恋愛小説だってそうでしょうけど、ラストだけ取り出してみたらなんてことない、むしろなんて陳腐なんだと思われかねない内容だけど、見事に読ませられちゃった。特異なSF的世界と、それから精神病の彼女、E症候群。もちろん情景としても綺麗だろうけど、それらが全部ラストに収束されるんだって言うことからも感動がある。
ラストまでの道筋とかも自然で恣意を感じさせないし、妙に向こうに行っちゃってない軽い語り口と雰囲気が、気恥ずかしくならずに読ませるところなんだろうなぁ。彼女の病気が凄く効いてる。構えるときっと面白くない。構えず読んで、身を任せるが吉。
参照
おすすめ:『E症候群』
小さな田舎町で、分け隔てない愛情を注がれて育った双子の兄弟・セイジとシロウ。シロウは森で拾われた子で本当の兄弟ではないが、だからどうしたというのだ? 二人はいつも一緒に、遊び、はしゃぎ、駆け回っていたではないか。だが、シロウはある日突然、自分が人と違うことに気づき始める。SF。青春。
なんだろうなぁ、強烈な切なさでもないけれど、微妙に友情とか別れとか、そう言う青春要素とSF要素が入り交じった話かなぁ。でも強烈じゃないんだよなぁ。成長と言うと、どうしても旅立ちの方が印象強そうだけど、これは逆に帰還して来ちゃう。でも、その帰還はたまらない魅力。ほんの少ししか主張しない世界がいい。
ただ、どうも中間がスポッと抜けている気がする。帰還の前には、多分一週間は言いすぎでも、少しは楽しく過ごそうとしている期間があった方が良さそうなもの。おかげで、帰還部分のセイジの心境がどうも良く分からない。これがあったら、あの格好いい終盤への道のりに素直に入れただろうと思うと、凄く残念。
僕の思う、ジュブナイルSFってこんな。あ、とは言えハードなSFではないですから、そう言うの嫌いな人でも大丈夫。だと思う。
「俺」がおもむろに訪れた、寂れたバーで再会した大学時代の知人。彼に言われるままに彼の家へと行くと、暇つぶしにロシアンルーレットをやろうと言いだした。もちろん断る「俺」に、ならば弾丸の入っていない拳銃でならやるかと、彼は言った。
題名からして、コミカルなものを想像したけれど全然違う。むしろ、しっかりした心理劇みたいな、心の動きだけで楽しませてくれる。
序盤の、思わせぶりでしっかりした答えのない言葉遊びみたいのは、見るからに後付って感じの強引さで、綺麗ではない。だけど、正体不明・意味不明な言葉は妙に迫るものがあるし、それ以降の葛藤はスリルたっぷりで面白い。弾丸の入ってない拳銃でも、怖いは怖いよなぁ。
ただ、作りも面白いんだけど、この作りなら別の楽しみの要素を入れなくちゃ行けないと思うんだけど。選択の要素は別にして選択自体は単純なんで、そっちの面白味は少ないかな。
大端正治(だいばたしょうじ)は、意気揚々と街へ繰り出し、絶対の自信を持ってナンパした。失敗するわけがない。なんてったって、モテアイテムのコートがあるのだから。だが、大端の自信とは裏腹に、声をかけた女の子にはあっさりとふられるのだった。なぜ? ショートショート。
面白いのは、常道を行く作りとオチじゃない。そっちに関しては、しっかり作ってるなぁと言う好感は持つけれど、残念ながら真っ当な作りすぎて先が予測できちゃうし、面白味が余り感じられなかった。まとまっちゃってて、綻びが無さ過ぎてつまらない。
ただ、最後まで読んでもう一度読むと、または最後から振り返ってみると、新しい発見とまでは言わないけど、違う視点で見ると面白さが浮き上がってくる感じ。短いんだし、読んだらもう一度返ってみてもいいかもしれない。
最初からそう言う面白さにしても良かったと思う。
参照
他の作品:『闇夜の熱闘』
出版社ビルで警備員のアルバイトをしている「僕」。今日も今日とて深夜警備をしていると、正体不明の二人組が現れた。彼女らは文化遺産回収委員で、将来災害で紛失されてしまう、大変価値のある原稿を回収しに、未来からやって来たという。ショートショート。
オチは面白くないんじゃないかなぁ。少なくとも、最後読んでニヤリとかはしなそう。それよりも回収委員の人のキャラが割と弱腰なことが面白いんで、オチとかじゃなくてそっちで引っ張れば良かったかも。そうすればショートショートの面白さじゃなくて、違う方向で発展できたのかもしれない。
中ノ瀬小学校。人里離れた山奥、全校生徒三十四人の小さな学校に、非常勤講師として赴任することになった荻窪圭一。そのことを聞いた恋人・美由樹は、地図で中ノ瀬小学校を探すが、どこにも見当たらない。遂に見つけたその場所は、二十年前の地図の中だった。現代ファンタジー。
一番の疑問点は、どうして中ノ瀬小学校から非常勤講師の以来があったか。でしょう。ファンタジーだからいいんですけど、何かしらの理由、圭一はそこで見つけなければならないものがあったとか、そう言うのがあってくれるとありがたいけど、残念ながらないまま。たまたま中ノ瀬小学校に縁のある人に届いたってだけなの? それだと弱いよなぁ。
前半はいいのだけど、後半のしかも終盤、展開がゴロゴロ動く頃になると、どうも心情が掴めないことが多い。主人公が掴んだ謎の答えも、一人で納得してる感じ。まあだいたいは読者もわかるようになっているけど、完全ではないし、そのまま取ると謎の男の子の動きに無理がありそうなんで、ちゃんと教えて欲しかった。
おかげで盛り上がり的にはそんなんでもなく、むしろ前半の同僚教師とのほのぼのブリが一番面白いかな。謎のスリルとかドキドキ感とかよりも。
北極で見つかった古代の遺跡を調査するために、日本の臨時遺跡調査団「アリス」が北極へ派遣された。彼らが北極で見たものは、氷の中で眠る人間。しかもその氷は、氷と言うよりも固体化した「水」。さらに、息を吹き返したその人は、何故かアリスの面々を知っているのだった。
題名面白そう、あらすじもこう書くと面白そう。でも、実際はそんなことないです。おふざけです。知ってたら読まないくらいのおふざけです。おふざけものとして読んでも、説得力というか、そういうのを吹き飛ばすと言うか、関係なく飲み込ませる力を持っているものでもないです。
無理なキャラの美化は話を陳腐にさせるだけだし、中途半端にハードそうな設定(氷じゃなくて、固体化した水とか)は妙に期待しちゃうと思うので、止めた方が良さそう。中途半端に二次創作入ってるのもどうかと思う。
まあ、そんなことよりなによりも、もうちょっと読者に誠実であって欲しい。と言うのが一番でしょうか。
ナツキは、遠距離恋愛をしていたタケシとの関係が終わりに近づいていることを悟るが、まだ諦めきれずにいた。「忙しいから」と二人で会う時間が次第に減っていき、それでも素直になれないナツキ。そんなある日、久しぶりに実家に帰ってきた姉。子供が出来たが、姉の夫・伊藤が産むことに反対だという。恋愛小説。
文章のリズムがいいなぁ。とにかく読みやすいし、気がついたら引き込まれている。そして何より、悪意というか、無意識の悪意が非常に研ぎ澄まされた格好で存在出来てる気がする。回想、回想と続く作りで、現在進行の盛り上がりには欠けるかもしれないけど、それでも読ませるのはこれが大きいと思う。
さわやかな恋愛もの、ではなくて、読後感もとてもじゃないけど良くはない。だけど、悪意や嘘やコンプレックスが介在する人間関係はとても真実味があるし、誠実さもある。ナツキの心情がずっと追われていて、それに説得力があるから、最後の論理が多少弱く思えたって、それがナツキの今の心情が見せたものだとわかるから、むしろ気持ちいい。
ただ、最後の一差しのために、ブロックを積み上げてきた過程が筒抜けになっちゃうのが、ちょっと味気ないような気もする。
夕子とミロは、火星の畦道を歩いていました。夕子は、ミロから貰ったライラックの花束の香りを嗅ごうと鼻を近づけました。すると、花から出てきた毒虫が彼女を刺しました。徐々に膨れ上がる夕子のおでこを無視して、ミロはミロなりの話をするのでした。
これはもう、この文章を好きか嫌いかだろうなぁ。僕は残念ながら駄目で、もう彼女を無視して冷静に何事もなく進んでいく文章にイライラして来ちゃう。ましてや会話文は、中学生の英語の教科書みたいな文章なんで、もっとすらすらと話を運べと、こっちからもイライラが募る。
内容的にも、彼女を無視してミロが自分の意見を語るだけで、大した面白味もない。無視して面白く広がるならいいんだけど、そうでもない。無視すること自体が面白がれる人じゃなきゃ駄目でしょう。シュールと言えばシュールなんでしょうけど、それを言い訳に胡座かいてちゃいけないと思う。まあ、好き嫌いなんでしょうけど。
老年を迎えた貴之は、若い女性から取材を受けた。ヒーロー物の『ミラクルマン』の脚本家として貴之の、ヒーロー物を書きだした経緯についての取材だ。貴之の脳裏に、六十年ほど前のあの頃が甦る。現代物。
かなり味気ない感じなのは、文章のせいかなぁ。最初の場面で貴之が自分の口から言うまで全く老いた印象は受けなかったし、ただ老いているのを分からせるために言わせただけみたい。「忘れかけていた昔を思い出せた」とある割に、想い出話も地続きな印象を受け、忘れかけていた感じじゃない。語るようにしても良かったのでは?
子供の嘘は可愛らしいし、その嘘自体も引かれるのだけれど、雰囲気が雑で文章をボンと置いていってるだけなのが。例えば、子供時代の主人公を「やんちゃ坊主だ」もいいんだけど、そのあとにエピソードでもつければそれだけで違いそうだけど。最後も、逆に変に関係を作らないほうが感動的じゃないかなぁ。
北海道の学生時代、新聞の世論調査の仕事をしていた「僕」。その日も、早朝のうちに家を出、遠くの担当になった地域へと車を走らせる。一番最初に調査しようと車を止めた漆原さん宅。だが、ドアを叩いて声をかけてみると、中からくぐもったうめき声が聞こえてきた。現代物。
意味づけが唐突でしょ。実生活に置いて、それまで想像もできないことが起こることはもちろんあって、外の現象を自らが置かれている状況に照らし合わせて、何か特別な意味を持たせることもあるのだけれど。
この主人公は、それまで見ず知らずの人を行きがかり上病院へ運ぶはめになっただけで、その上人となりの詳しい話も聞いていない。しかも、それまでの話で特に鳥について話があったわけでもない。この状況で鳥と一緒に走ったことで意味づけされても、それに感動しろと言うのが無理でしょう。
景色としては綺麗だし、主人公の想像も素敵だとは思う。だからといって突然持ってこられただけでは、綺麗だし素敵なだけに、ちょっとそれはないんじゃないかと引いてしまう。なんか、無理矢理綺麗な話にしただけに感じる。
その夜、大林真由美を訪ねた深町信一は、口論の末に花瓶で真由美の後頭部を殴ってしまう。動転した深町に追い打ちをかける、一階ロビーに真由美への訪問者が来たことを知らせるチャイムが鳴り響く。深町は何とか逃げるが、次の訪問者・杉崎陽子が真由美の家へ上がり込むと、そこには……。ミステリ。かな。
ああー、上手い上手い。ミステリの肝腎な部分に関することだから詳しくは書けないけど、中盤から感じる違和感・不満感の原因を見事に最後まで一貫させて、その元があるからこその面白さを出している。ほんと、そこは上手いと思う。
ただ、プラスマイナスで言うとどっちが勝ってるんだろうか。終盤までの不満がいくらか解消される形ではあるものの、「そういうことならこれでも仕方ないのかな」と思うくらいの消極的な面白いという評価で、不満を吹き飛ばすほどのものじゃないと思う。これなら素直なサスペンスの方が良さそう。
出だしで、どれだけ面白いものになるのかと期待しただけに、不満・不満・最後にちょっと面白い。だと、やっぱり不満感が残る。
参照
他の作品:『誘拐ネットワーク』
人間が空を飛ぶことを禁じられた時代。宗教家は言う。神が人間に翼を与えなかったのは、人が空を飛ぶことを許さなかったからだと。だが、そんな時代でも、空を眺めるのが好きな、遙か遠くを見てみたいという希望を持つ少年がいた。彼はある日、納屋の中に飛行機があることを見つける。
後世の人が「こういう人がいたんだよ」とでも語り聞かせている神話みたいなものかなぁ。ただ、既に先の決まっている淡々とした進みに興味は煽られないし、結果、感傷的な説教は鼻につくだけで、感動も覚えなければ「やるぞ」と思うものでもない。
ただ、話の筋自体は波瀾万丈にしようと思えば出来そうなもので、少年の普段の生活から少年の異端ぶり、疎まれぶりを示して、それで彼が目指したものが大空。だとすると、彼が大空に寄せる期待とかも違うし、羽ばたいたときの感動も違うと思う。
同じように、少女の心情を追ってったりとかすれば凄く格好いいものになると思うのだけど。登場人物に感情がないから、少女の葛藤するべきシーンでも、全然葛藤がない。それじゃあ面白くないよ。世界観からして格好良くなりそうなのに、勿体ない。
天笠天文台に小学生が見学に来た。朝からトンカンうるさく看板を作るほど、所長・園生は大張り切り。ところが、小学生を引率していた新山先生を紹介されると、お互いに慌てふためくのだった。現代物。
「慌てふためくのだった」って書いたけど、それほどストーリー色の強いものじゃない。一応、その話が極めて小さい芯になって、周りを天笠天文台の一日が覆っている感じ。ぼんやりとしているけど、そのぼんやり感と、小学生をあしらう園生を楽しむものかもしれない。
ただ、漠然としていて今一面白味がないことも確か。『過去が訪れる日』なのだから、訪れた結果園生に葛藤が産まれたりとか、ちょっと過去を振り返って、過去にあった些細なすれ違いの原因が分かったりだとか、そう言う何かが起こって欲しい。そうすれば、超新星の箇所は、二つを絡めていって感動的なものになったと思うけど。
あと、どうでもいいですけど、百億光年離れたら超新星とは言え肉眼では確認出来ないと思うんですけど。天文台を舞台にしてるのになぁ、と、ちょっと白けてしまう。
昔から体が弱くて、外で走り回るよりも家で人形などで遊ぶことの多かった「私」。その「私」が一番気に入っていたのがまこちゃんだ。「私」は両親に、まこちゃんを「私」と同列に扱わせた。ホラー。
人形ってだけでも怖いけど、これは人形の怖さと言うよりも、人形を媒介にしてるから怖いんだぞ、と言う気分で恐がらせてくれる感じ。だから、後半よりも前半部の、何が起こるかわからない、これから何が起こるんだろうかと予測しているときのほうが遙かに怖い。
これが後半部になると、もちろんねじくれた部分に怖さはあるんだけど、むしろ「ああ、そう来たんだ」っていう、ホラー話としてしっかり成り立ったんだと言う安心感のほうが強いかもしれない。それがちょっと残念。もっと、そんなありきたりの怖さじゃなくて、わけのわからない怖さがあって欲しかったなぁ。特に、最後のは余計だと思う。
参照
おすすめ:『真奈美ちゃんの手』
本屋で働く木下杏子は、森口美奈子に注文された本のことで、森口家に電話をかけた。だが、電話に出た美奈子の母親は、娘は二ヶ月前に他界していると言う。美奈子が本を注文したのが一ヶ月ほど前。二ヶ月前に死んだ人間が、どうやって一ヶ月前に本の注文をしたのだろう。ミステリ。
不完全燃焼。最初の提示自体は印象的で、どんなに盛り上がるかと思ったけど、なんかあっさり通り過ぎちゃった感じ。どうしてだろうかと考えたけど、主人公がどちらかというと蚊帳の外なのが行けないんじゃないかなぁ。
動機については犯人からの告白でいいのだろうけど、推理自体も他人任せで、探偵が一人で結論を出しちゃう。まんま誘導されていて、主人公の右往左往がない。これが不満。主人公をもっと動かして、例えば犯人の裏付けを探偵だけが握っている情報からじゃなくて、あの場で浮き出させるとかしても良かったのでは?
それでも、母親の狂気は恐かったし、終盤急に感傷的になる関係と文章は心地よかったのだけど、突然すぎると思う。犯人の人間関係がはっきりしてれば、そこら辺の感傷的になる関係も来ると思うのだけど。あと、結局のところもっとシンプルな犯行で良かった気がする。
参照
レビュー:オンライン小説への道・レビュー
趣味で小説を書き、自分のホームページに掲載していた「私」。ところが、DASから届いた酷評メールをきっかけに、一切小説を書けなくなってしまう。そんなある日、大学から帰ってきた「私」の部屋に、パソコンの前に座るもう一人の「私」がいた。ホラー。かな。
もう一人の自分に会う。これだけ読むと突飛かもしれないけど、読んだ感じとしてはむしろ逆で、よく言われるネット人格と現実の人格との違いをそのまま書いたって感じで、普通すぎる感じすらする。
もちろんそれだけでなくて、二人を分けたことによって、最初からいる「私」の把握できてないところが出てくるわけで、それが興味を誘う(あと、もちろん悩みも)作りなんだと思う。けど、正直なところ余り引きつけられなかった。
それは多分、「私」とDASとの交流がわからないから。「私」が書けなくなったきっかけというメールの文章もわからずじまいだし、もう一通のメールの文章もわからない。ここで、断面を見せたほうが興味を煽ることが出来ると思うんですけど、どうでしょうか。そうじゃなくても、メールの文章わからないのはストレスだったし。
もう一人「私」の切なさはいいなぁ。
日曜日。昼近くまで寝ていた「俺」を起こしたのは、何故か「俺」の部屋に入り込んでいた、バーコード頭の疲れたおっさん。しかもそいつは、悪魔だという。さっさと部屋を出て行けと迫る「俺」に、おっさんは話を聞いてくれと困った顔で言うのだった。ショートショート。
うーん。普通の悪魔、いい悪魔、悪い天使、天国は怖いとこ、地獄はいいところ。こういうものは多分どっかで聞き尽くしている話なんだと思うなぁ。だから、それだけじゃ全然新鮮味ないし、面白味もない。それを出して、どう作るかだと思うんだけど。
残念ながらこの話は、出した段階で終わっちゃってる。出して、その設定・固定観念とのギャップで笑わせるものだから、よく見る話ってだけ。悪魔・天使・天国・地獄の固定観念なんてもう破られ過ぎてるんで、余程のものじゃないと、それだけで勝負って言うのは辛いと思う。