2001年12月30日更新 ホームページへ戻る
最も短い金融商品会計
非常に幅広い内容をカバーしている金融商品会計について、最低限理解しておくべき事項をごく簡単にまとめました。
正確かつ詳細な内容については「金融商品に係る会計基準」(企業会計審議会)や会計士協会の実務指針などを参考にして下さい。
目次
1.金融商品の範囲・時価
- 金融資産
現金預金、金銭債権(受取手形、売掛金及び貸付金等)、有価証券(株式その他の出資証券及び公社債等)、デリバティブ取引により生じる正味の債権等が金融資産となります。
- 金融負債
金銭債務(支払手形、買掛金、借入金及び社債等)、デリバティブ取引により生じる正味の債務等が金融負債となります。
- デリバティブ取引
先物取引、先渡取引、オプション取引、スワップ取引、これらに類似する取引がデリバティブ取引です。デリバティブ取引の価値は、その契約を構成する権利と義務の価値の純額であり、正味の債権が生じれば金融資産となり、正味の債務が生じれば金融負債となります。
- 金融商品の時価
時価(公正な評価額)とは、市場価格に基づく価額ですが、市場価格がない場合には合理的に算定された価額が時価となります。市場価格とは、市場において形成されている取引価格、気配又は指標その他の相場であり、市場には、公設の取引所及びこれに類する市場のほか、随時、売買・換金等を行うことのできる取引システム等も含まれます。
2.金融商品の発生と消滅
金融資産・負債の発生の認識
金融資産・負債は契約を締結したときに発生を認識(記帳)します。有価証券は従来、受渡ベースで認識してきましたが、新基準では約定ベースが原則です。ただし、商品等の売買や役務の提供の対価に係る金銭債権債務(例:売掛金や買掛金)については、約定ベースではなく、物品売買や役務提供に関する認識基準(商品の受渡しや役務提供の完了)によって認識します。
- 金融資産の消滅の認識
金融資産の消滅の認識とは、どのようなときに金融資産がなくなったと認識するか(いつオフバランスにするか)ということです。
金融資産の消滅は、契約上の権利を行使したとき(例:債権者が債権を回収したとき)、権利を喪失したとき(例:オプションを行使しないまま行使期限が到来したとき)、または、権利に対する支配が他に移転したとき(例:有価証券を譲渡したとき)に認識されます。また支配の移転については要件が定められています(譲渡人が特別目的会社の場合の取扱いにも注意)。
なお、ローン・パーティシペーションについては経過措置があります。
- 金融負債の消滅の認識
金融負債の契約上の義務を履行したとき、義務が消滅したとき、または、一次債務者の地位から免責されたときに金融負債の消滅の認識を行います。なお、デット・アサンプションについては経過措置があります。
3.有価証券の評価
- 有価証券の分類
有価証券は保有目的によって分類され、分類によって原価評価か時価評価か、時価評価の場合に時価の変動(評価差額)をどのように会計処理するかが異なります。
- 売買目的有価証券
時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券(「売買目的有価証券」)は時価で評価され、評価差額は損益計算書上の損益となります。
- 満期保有目的の債券
満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(「満期保有目的の債券」)は、償却原価法で算定された価額で評価されます。償却原価法というのは、債券金額(額面)より低い価額または高い価額で債券を取得した場合に、取得価額と債券金額の差額を満期まで毎期一定の方法で貸借対照表価額に加減する方法です。毎期加減される金額は受取利息に含めて処理します。取得価額と債券金額が一致している場合は、取得原価で評価されることになります。
- 子会社株式及び関連会社株式
これらは取得原価をもって貸借対照表価額とします。連結財務諸表では、子会社株式は子会社の資本と相殺消去され、関連会社株式は持分法によって評価されます。
- その他有価証券
売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券以外の有価証券(「その他有価証券」)は、時価評価となります。評価差額は(1)資本の部に計上する、または、(2)時価が取得原価を上回る銘柄の評価差額は資本の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄の評価差額は当期の損失とする、方法のいずれかによって処理します。また、評価差額の処理は洗い替え方式によって行います。同じ時価評価でも、売買目的有価証券とは評価差額の処理が異なります。
- 市場価格のない有価証券
市場価格のない有価証券(債券以外のもの)は取得原価で評価されます。社債その他の債券については債権の評価に準じて評価します。
4.有価証券の減損処理
- 市場価格のある有価証券の減損処理
市場価格のある有価証券(売買目的の有価証券を除く)について時価が著しく下落したときは、回復の見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって評価し、評価差額は当期の損失として処理しなければなりません。この場合評価減した時価が翌期首の取得原価となります(切り離し法)。
- 時価の著しい下落の判定
時価の下落が著しいものかどうかの判定は下落率に応じ以下のように区分して行います(実務指針による)。
(1)個々の銘柄の時価が50%程度以上下落した場合は著しい下落に該当し、合理的な反証がない限り回復する見込みがないものとする。
(2)これ以外の場合には、個々の企業が「著しく下落した」と判断するための合理的な基準を設ける。下落率30%未満の場合、一般的には著しい下落には該当しない。
- 市場価格のない株式の減損処理
発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額を行わなければなりません。差額は当期の損失となります。実務指針によれば、実質価額が取得原価と比べて50%以上低下した場合に、著しい下落とされます。
5.運用を目的とする金銭の信託・デリバティブ取引
- 運用を目的とする金銭の信託
運用を目的とする金銭の信託(合同運用を除く。)は、信託財産を構成する金融資産・金融負債に付されるべき評価額を合計した額で評価され、評価差額は当期の損益となります。特定金銭信託または指定金外信託等については運用目的以外の目的が明確でない限り、運用目的と推定されます。
- デリバティブ取引
デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務は、時価をもって評価し、評価差額は原則として当期の損益として処理します。個々のデリバティブ取引に市場価格がない場合でも、デリバティブ取引の対象としている何らかの金融商品の市場価格に基づき合理的に価額が算定できるときは、それが時価となります。非上場のデリバティブであっても原則として時価を見積もる必要があるということになります。
6.債権
- 債権の評価
受取手形、売掛金、貸付金その他の債権は、取得価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額で評価されます。ただし、債権金額(額面)より低い価額または高い価額で取得した場合で、その差額が金利の調整と認められる場合は、償却原価法に基づいて算定された価額から貸倒引当金を控除した金額となります。
- 債権の区分
貸倒見積高は、債権を区分してその区分に応じて見積もられます。
- 一般債権
経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権(「一般債権」)については、債権全体または同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等の合理的な基準により貸倒見積高を算定します。
- 貸倒懸念債権
経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているかまたは生じる可能性の高い債務者に対する債権(「貸倒懸念債権」)については、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定します。あるいは、債権元本と利息のキャッシュ・フローを当初の約定利率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とすることも認められます。ただし、後者の方法はキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権に限られます。
- 破産更生債権等
経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権(「破産更生債権等」)については、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とします。つまり、貸倒懸念債権と異なり、担保等を差し引いた後の額に対し100%引き当てることになります。
- 未収利息の計上基準
契約上の利払日を相当期間経過しても利息の支払がない場合や、破産更生債権等の場合には、計上済の未収利息を取り消して損失計上するとともに、それ以後、利息を計上することはできません。
7.金銭債務
- 金銭債務の評価
支払手形、買掛金、借入金その他の債務は、債務額が貸借対照表価額となります。
社債は社債金額(つまり額面)が貸借対照表価額になります。社債発行差金(社債を社債金額よりも低い金額又は高い金額で発行した場合の差額)については、資産又は負債として計上し、償還期まで毎期一定の方法で償却します。商法の規定から、社債金額と差金を相殺することはできないとされています。
8.ヘッジ会計
- ヘッジ取引とヘッジ会計
ヘッジ取引とは、ヘッジ対象である資産又は負債の相場変動等による損失の可能性を減殺することを目的とする取引であり、デリバティブ取引がその手段として用いられます。ヘッジ会計とは、ヘッジ対象とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を財務諸表に反映させるための会計処理です。ヘッジ対象には、一定の予定取引により発生が見込まれる資産又は負債も含まれます。
- ヘッジ会計の要件
ヘッジ会計が適用されるためには、(1)ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、客観的に認められること(ヘッジ取引開始時の要件)と、(2)ヘッジ取引時以降においてヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること(ヘッジ取引以降の要件)が充たされなければなりません。
- ヘッジ会計の方法
時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで資産又は負債として繰り延べる方法が原則です(繰延ヘッジ)。
ただし、ヘッジ対象に係る相場変動等を損益に反映させることにより、ヘッジ手段に係る損益と同一の会計期間に認識することもできます(時価ヘッジ)。
- ヘッジ会計の終了
ヘッジ会計は、ヘッジ対象が消滅したときに終了し、繰延ヘッジ損益を当期の損益として処理します。ヘッジ対象である予定取引が実行されないことが明らかになったときも同様です。
9.複合金融商品
- 複合金融商品
複合金融商品とは、複数の金融資産又は金融負債が組み合わされたものです。新株引受権付社債や転換社債といった、払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品と、その他の複合金融商品があります。
- 新株引受権付社債の会計処理(発行者側)
新株引受権付社債の発行価額は、社債の対価部分と新株引受権の対価部分に区分して会計処理します。社債の対価部分は普通社債の発行に準じて処理します。一方、新株引受権の対価部分は負債の部に計上し、権利が行使されたときは資本準備金に振り替え、権利が行使されずに権利行使期間が到来したときは利益として処理します。
- 転換社債の会計処理(発行者側)
転換社債については、その発行価額を社債の対価部分と株式転換権の対価部分とに区分しないで処理する方法(一体処理)と、新株引受権付社債に準じた処理(区分処理)が並列的に認められています。
- その他の複合金融商品
契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品は、原則として、個々の金融資産又は金融負債とに区分せず一体として処理します。ただし、現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合で、複合金融商品の評価差額が損益に反映しないときには、区分処理が求められます(例:通貨オプション付円建て借入金)。