
2000年7月1日更新 | 論点整理原文(金融庁ホームページ) | ホームページへ戻る
固定資産会計論点整理クイック解説
2000年6月23日に企業会計審議会から「固定資産の会計処理に関する論点の整理」(以下「論点整理」)が公表されました。減損会計と投資不動産が主な論点として取り上げられていますが、どちらの項目についても、今後どのような基準になるかまだ方向性が出ていないようです。
ここでは、論点整理の中から、減損や投資不動産の基準に関し、議論になりそうなところをピックアップして、米国基準や国際会計基準の説明もなるべく加え、その内容を紹介したいと思います。なお、全体の構成は説明の都合で少し変えています。少し長いので、保存してから読まれることをおすすめします。
お断り
このページは雑誌論文の原稿に手を加えて作成しています。
目次
現行の企業会計においては、事業用の固定資産は、公正価値(時価)で評価される一部の金融資産と異なり、取得原価基準が採用され、取得原価から減価償却等の価値減耗を引いた額で評価されます。しかし、事業用資産についても、収益性が当初の予想よりも低下して投資額の回収が見込めなくなった場合には、価値の下落を帳簿価額に反映させる必要が生じます。これは、棚卸資産の評価減や固定資産の臨時償却など伝統的な会計処理に共通する考え方であり、帳簿価額を下方にだけ修正する点で時価評価とは異なります。
論点整理は、不動産を始め事業用資産の価格や収益性が著しく低下している昨今の状況では、それらの帳簿価額が価値を過大に表示したまま、将来に損失を繰り延べているおそれが少なくなく、固定資産の評価は避けて通れない問題であるとしています。
また国際的にも、減損会計や投資不動産に関する基準が、近年、整備されてきているというような状況に鑑み、論点整理は、固定資産の減損会計の整備が最優先の課題であると位置付けるとともに、国際会計基準が投資不動産に関する基準を公表したことを受けて、投資不動産に関する評価や開示についても検討するとしています。
1.減損会計と時価評価
論点整理は、固定資産の減損会計を、「収益性の低下により投資額を回収する見込みが立たなくなった帳簿価額を、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように減額する会計処理である」としています。あくまで、将来に損失を繰り越さないための帳簿価額の臨時的な減額であり、価値の変動によって利益を測ったり、決算日における価値を貸借対照表に表示することを目的とする時価評価とは、異なった考え方に基づいていることを強調しています。
減損会計を扱う海外の代表的な基準には、米国の「長期性資産の減損及び処分予定の長期性資産の会計処理」(SFAS第121号)(以下「米国基準」)と国際会計基準委員会が定めた「資産の減損」(IAS第36号)(以下「国際会計基準」)があります。論点整理は、減損会計の基準を決める際には、我が国の関連諸会計基準との関係も整理しながら、基本的にはこれら二つの基準と整合性を持った基準とすることが必要であるとしています。
米国基準では、資産の帳簿価額が将来キャッシュ・フロー(割引前の総額)を超えるときに減損を認識します。そして、減損を認識したときは、帳簿価額を公正価値(時価)まで切り下げます。これは、減損した資産について、それまでの投資を清算し、その時点の時価で再び同じ資産を買い戻して新しい投資を始めたという考え方に基づいています。
米国基準は、このように、減損の認識の基準値(割引前のキャッシュ・フロー)と減損損失測定の基礎となる金額(公正価値)が異なっている点に特徴があります。これは、帳簿価額を回収することができなくなった可能性が高くなった時点ではじめて減損を認識する「確率基準」を採っているからであるとされています。
また、測定の基礎となる金額として公正価値(時価)を用いている理由としては、それが少なくとも理念的には客観的な数値である点、いいかえると、企業にとっての主観的な投資の価値に含まれる「自己創設のれん」が除かれた金額である点が挙げられます。
国際会計基準では、資産の帳簿価額が回収可能価額を超えるときに、その額まで帳簿価額を切り下げます。ここで回収可能価額とは、正味売却価格と将来キャッシュ・フローの割引現在価値(「使用価値」)のいずれか高いほうの金額です。つまり、企業は、資産の売却と使用(使用後の処分を含む)のいずれかの手段によって、投下された資金を回収することができるので、売却によって回収される金額(正味売却価格)と使用によって回収される金額のいずれか高い方の金額が回収可能価額となります。使用によって回収する場合には、長期にわたる回収となるため、将来キャッシュ・フローを割り引いた金額である使用価値が用いられます。
国際会計基準は、このように、減損会計を「資産に回収可能価額を超える帳簿価額を付さないことを保証する」手続と考えています。この目的のためには、回収可能性に関して、資産を保有する企業による合理的な見積りと市場における評価(公正価値)のいずれかをもう一方に優先させてはならないとしています。
3.減損の認識と測定(表1)
海外の基準においても、減損の認識や減損損失の測定では、大きな差異が見られます。論点整理は、減損の認識と測定に関し、どのような基準を採るべきかという明確な方向性は打ち出していませんが、なるべく論点整理に沿うようにして、問題となりそうな点を説明します。
論点整理は、減損の認識基準について、「減損の存在がある程度確実な場合に限って減損を認識」する考え方(いわゆる「確率基準」)と「定められた減損損失の測定基準に基づいた最善の見積りであれば、その結果は常に財務諸表に反映」させる考え方(いわゆる「経済基準」)を対置させています。
前者の基準を採った場合、減損処理を行う頻度が低くなるため、実務上の負担が小さくなり、また、見積りの誤りにより、減損が生じていないにもかかわらず減損処理してしまう可能性も減らすことができます。さらに、認識の基準値として算定が比較的容易なもの(米国基準では割引前の将来キャッシュ・フロー)を採れば、減損を認識すべきかどうか調査する実務的負担も小さくなります。一方、資産の回収可能性が低下したことを適時に財務諸表に反映できないおそれが生じます。
また、確率基準の考え方を採るにしても、具体的にどのような基準値を採るのかという問題があります。割引前の将来キャッシュ・フローを認識基準として用いる米国基準の方法は、一種の便法でありそれを採用する理論的な根拠に乏しく、また、土地などの永久にキャッシュ・フローを生み出す資産について対応できないという批判もあります。
一方、帳簿価額が一定の測定基準に基づいた金額(例えば回収可能価額)をわずかでも上回れば減損を認識する方法(「経済基準」)は、資産の回収可能性を適時に財務諸表に反映させることができるという利点があります。しかし、減損の測定には見積りの要素が大きく、見積りの誤差により、減損が生じていないのに減損処理を行ってしまう可能性がかなりあります。また、減損処理を頻繁に行うようになることが予想され、実務面で過大な負担が生じることが懸念されます。
論点整理は、減損が生じ価値が下落した資産の評価額の類型として、以下のものを掲げ、それらの財務諸表における目的適合性や見積可能性等について検討する必要があるとしています。
- 公正価値(時価)
- 企業に固有の見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値
- 見積将来キャッシュ・フローの総額
- その他(例えば、イ、ロ、ハの条件付適用、混合適用)
測定基準として、米国基準は公正価値(時価)を採っています。米国基準における資産の公正価値とは、自発的な当事者間の取引によって売買できる金額です。活発な市場における公表市場価格に基づく価額が入手可能な場合には、それを使用しなければなりませんが、入手可能でない場合には入手できる最善の情報に基づいて公正価値を見積ります。見積りに当たっては、類似資産の価格及び評価技法の結果を考慮します。
事業用の固定資産については、金融資産と異なり、活発な市場はほとんど存在しないため、何らかの方法で企業が公正価値を見積る必要があります。その代表的な方法が見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値ですが、これは、あくまで市場価格に代替するものという位置付けです(詳しくは後述)。
国際会計基準は、企業に固有の見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値(使用価値)と、正味売却価格のいずれか高いほうの金額を採っています。正味売却価格は、拘束力のある売買契約があれば、それに基づく金額から処分費用を控除した額となるが、そうでない場合には、公正価値から処分費用を控除した額となります。
減損損失の測定については、公正価値(時価)のような客観性を重視した基準とするか、企業による合理的な見積りを尊重した(あるいは市場における見積りと企業による見積りのどちらかを優先しない)基準とするかが、ひとつの論点となると思われます。
論点整理は、現行の会計基準で採用されている損失の計上方法と減損会計の関係を検討するとして、減損以外のさまざまな損失の例を挙げています。しかし、具体的にどのような観点から検討するかについてはふれられていないので、少し考えてみました。
まず、棚卸資産の損傷・品質低下による評価減や、有形固定資産の廃棄、災害・事故による滅失による損失と、減損損失の関係です。これについては、前者は資産の物理的実体が滅失したことによる損失であり、資産の回収可能性が損なわれたことを原因とする減損損失とは別の会計処理です。
次に、減価償却、特に臨時償却との関係です。減価償却は取得原価の規則的な配分手続です。臨時償却は、耐用年数や残存価額の見積り修正に伴う減価償却の過年度に遡った修正であり、減価償却の中に入ります。いずれも帳簿価額の回収可能性とは無関係に費用配分の考え方に基づいて行われる手続である点で、減損の処理とは異なります。
棚卸資産の低価法評価損や強制評価減との関係については、我が国では低価法が強制ではなく、時価の著しい下落の場合のみ評価減が強制されていることと、固定資産の減損の認識基準との関係が問題となると思います。当然、棚卸資産の評価基準自体が従来どおりでよいかどうかという議論もあるでしょう。
偶発損失の引当処理との関係については、企業会計原則注解において、発生の可能性が高く、かつ、その金額が合理的に見積ることができる場合にのみ、損失の引当が求められている点と、減損の認識基準との関係が問題となると思います。
論点整理は、固定資産を減損会計の対象資産とし、そのうち、他の会計基準に定めがある金融商品、繰延税金資産、前払年金費用については、対象資産から除くことが適当であるとしています。
ファイナンス・リース取引を売買処理している場合、借手側ではリースによって使用している資産はオン・バランスとなり、減損会計の対象となります。しかし、我が国では、所有権移転外ファイナンス・リース取引の会計処理として賃貸借処理(オフ・バランス処理)が認められているため、賃貸借処理すると減損会計の対象から外れてしまいます。
このため、論点整理は、賃貸借処理されているリース資産についても、減損会計と同様の効果をもつ会計処理が借手側で可能かどうか検討するとしています。
米国基準や国際会計基準では、減損会計の対象資産全てについて、減損の有無を調査するのではなく、実務上の負担を考慮して、減損の兆候がある資産に限り正式に調査するとしています。論点整理では、我が国でも、減損の兆候が存在する資産に限り減損の有無を調査することが妥当かどうかを検討するとしています。
また、どのような兆候があるときに減損の有無を調査しなければならないとするのか検討する必要があります。ただし、減損の兆候を網羅して列挙することは困難であり、減損の兆候をいくつかを例示することになると思われます。
国際会計基準における、減損の兆候の例を表2に掲げました。
前に述べたように米国基準では、減損損失の測定に公正価値(時価)を用いますが、資産に活発な市場がないような場合には、将来キャッシュ・フローの現在価値などの評価技法の結果を使います。国際会計基準では、減損の認識と測定において回収可能価額を用います。この回収可能価額は、正味売却価格と見積将来キャッシュ・フローの現在価値(使用価値)のいずれか高い方の金額です。
このような現在価値の計算は、将来の不確実な見積りに基づくものであり、信頼性に欠けるという見方もあるが,今日では固定資産の価値を把握するための重要な計算手法となっています。
現在価値の算定には、@将来キャッシュ・フローの見積りとA割引率が必要です。
論点整理では、現在価値の計算目的と、キャッシュ・フロー見積り及び割引率との関係が述べられています。現在価値の計算の目的が、公正価値(時価)の把握にある場合には、キャッシュ・フローの見積りは市場参加者の一般的な見積りにより行い、割引率は当該資産に固有のリスクに見合った市場の収益率を用います。一方、企業の固有の価値の把握を目的とする場合、キャッシュ・フローの見積りは企業固有の見積りにより行い、割引率は当該企業の資本コスト(平均的な収益率)などを用います。割引率については、これらの収益率が容易に入手できない場合や、特定の借入資金によって当該資産を調達している場合など、当該企業の追加利子率が合理的と考えられる場合もありえるとしています。
資産に固有なリスクを現在価値にどのように反映させるかについては、割引率に反映させる方法と、将来キャッシュ・フローの見積りに反映させる方法が考えられます。将来キャッシュ・フローの見積額にリスクを反映させる場合には、割引率は無リスク利子率となります。
また、現在価値計算において法人税等をどのように扱うかについて、論点整理は、税引前の将来キャッシュ・フローを税引前の割引率で割り引いて現在価値を計算すべきであるとしています。
なお、米国基準と国際会計基準における、将来キャッシュ・フローの見積りと割引率に関する規定は、概ね、表3のとおりです。いずれの基準も、抽象的な規定ですが、国際会計基準の方が、経営者によって承認された直近の財務予算・予測に基づいて将来キャッシュ・フローを見積るとしているなど、若干具体的に定めているようです。割引率についても論点整理に例示されたものとは少し異なっています。
事業用の固定資産の場合、複数の資産が一体となって独立したキャッシュ・フローを生み出すことが一般的であるため、減損の認識及び減損損失の測定に際しては、合理的な範囲で資産のグルーピングを認める必要があります。しかし、必要以上にグルーピングの範囲を広げた場合、減損が生じている資産グループとそうでない資産グループが合算され、それぞれのキャッシュ・フローが相殺されるため、減損が認識できなくなるおそれが生じます。海外の基準では、「他の資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したものとして識別可能なキャッシュ・フローをもたらす最小単位」(米国基準)にグループ化するなどの規定を設け、可能な限り小さな資産グループで減損を認識・測定しようとしています。我が国においても、このような観点から資産のグルーピングのルールを定める必要があるでしょう。
また、資産グループに生じた減損損失を、そのグループを構成する各資産にどのように配分するかについても検討する必要があります。
複数の資産グループのキャッシュ・フロー獲得に貢献する共用資産、本社建物などの全社資産について、どのようにグルーピングを行い、減損を認識・測定するかという問題があります。
論点整理は、このような資産のグルーピングについて、以下のような方法を示しています。
資産のグルーピングを拡大して、(共用資産や全社資産を含むような)より大きなグルーピングの単位を認める方法 共用資産又は全社資産の帳簿価額を各資産グループに合理的に配分する方法 これら2つの方法を組み合わせる方法 最後の方法は、国際会計基準に定められている方法であり、@全社資産の帳簿価額を合理的かつ首尾一貫した基礎で資産グループに配分できる場合は配分して減損を認識・測定(「ボトム・アップ・テスト」)し、A配分できなかった全社資産の帳簿価額については、より大きな資産グループに含めて、減損を認識・測定(「トップ・ダウン・テスト」)します。
我が国では、本社、支店などの土地建物に多額の投資を行い、その後、それらの時価が大幅に下落している例が多く見うけられます。このような土地建物については、他の資産のキャッシュ・フロー獲得に間接的に貢献する共用資産又は全社資産と考えるのか、あるいは、独立したキャッシュ・フローを生み出しうる資産をたまたま本社などの用途に当てていると考えるのかによって、減損の認識・測定における結果が大きく異なります。論点整理ではこのようなケースについて特にふれていませんが、全社資産の扱いを決める際には検討が必要ではないでしょうか。
論点整理は、減損会計の対象資産として無形固定資産も含まれるとしており、のれん(連結調整勘定)も減損会計の対象となります。のれん(連結調整勘定)は独立したキャッシュ・フローを生み出さないため、関連する他の資産又は資産グループと合算して減損の認識・測定を行わなければならず、全社資産と同様にグルーピングの問題を検討する必要があります。
米国基準は、回収可能性の調査対象となった資産グループに関連するのれんを、その資産グループに含めて、回収可能性を決定するとしています。
国際会計基準でも、資産グループの減損テストを実施する場合、@関連するのれんを、合理的かつ首尾一貫した基礎で資産グループに配分できる場合は配分して減損を認識・測定(「ボトム・アップ・テスト」)し、A配分できなかったのれんについては、より大きな資産グループに含めて、減損を認識・測定(「トップ・ダウン・テスト」)することを定めています。
また、のれん配分後の資産グループに減損損失が生じた場合、当該減損損失をどのようにグループの構成資産とのれんとに配分するかについても検討が必要です。米国基準や国際会計基準では、他の資産を減額するより前にのれんを減額することを定めています。
なお、米国基準においては、減損した資産に関連しないのれんは無形資産の基準に基づき評価され、必要な場合大幅な減額が行われます。また、我が国でも、日本公認会計士協会の資本連結に関する実務指針において、連結調整勘定に対し相当の減額を行う場合が定められています。
減損損失の計上後、固定資産の収益性が回復した場合、過年度に計上した減損損失の戻し入れを行うかどうかも意見が分かれるところでしょう。論点整理は、減損損失の戻し入れを行うかどうか、及び、戻し入れを行うとした場合の帳簿価額の上限について検討するとしています。
米国基準では、減損処理後の帳簿価額を新しい取得原価とする考え方を採っているので、継続使用する資産について減損損失の戻入は行いません。処分予定の資産については、公正価値(売却費用控除後)の見積りが修正された場合は、戻し入れを行うことがあります。
国際会計基準は、減損は見積りに基づいて認識・測定される会計処理であり、減損処理を行った際の見積りに変更があったときは、減損損失の戻し入れを行うとしています。戻し入れにより増加する帳簿価額については、過年度において認識された減損損失がなかったとした場合の減価償却控除後の帳簿価額を超えないという制限を設けており、このことによって、取得原価会計と整合した会計処理になっているとしています。
戻し入れの要否については、理論面での検討のほか、実務面も考慮すべきだと思います。例えば,国際会計基準のように減損処理を行わなかったとしたときの帳簿価額を戻し入れの上限とする場合、減損処理を行った企業は、減損処理前の帳簿価額についても減価償却計算を続けなければなりません。また、減損処理は見積りの要素が大きいことから、戻し入れを認めることによって、減損処理が利益操作の手段に使われる可能性も高まります。
論点整理は、減損損失について、損益計算書において費用として計上し、翌期以降の減価償却は、減損損失計上後の帳簿価額に基づいて行うものと考えられるとしています。
また、減損を認識した資産の貸借対照表における表示方法、減損損失やその戻し入れの損益計算書上の表示区分について検討するとしています。
また、減損処理(戻し入れを含む)を行った場合に、どのような注記が必要かについても検討するとしています。
国際会計基準委員会が、昨年「投資不動産」に関する会計基準の公開草案を公表し、本年5月にIAS第40号「投資不動産」(以下「国際会計基準」)として正式に基準化したことを受けて、論点整理では、投資不動産をひとつの重要な論点として取り上げています。
国際会計基準は、企業が自ら使用するもの及び棚卸資産を除いた、賃貸収益又は資本増価(キャピタル・ゲイン)を目的として保有する不動産を投資不動産とし、そのような不動産については、公正価値(時価)による評価(公正価値モデル)と取得原価基準による評価(原価モデル)のいずれかを会計方針として選択することとしています。
公正価値モデルを選択した場合、公正価値の変動はその変動した期の損益とされます。また、減価償却や減損処理は行われません。
原価モデルを選択した場合には、企業が自ら使用する固定資産と同様な会計処理となり、減価償却や減損処理が行われます。そのうえで公正価値を注記することも求められます。
国際会計基準が選択肢として公正価値評価を認めているのは、投資不動産が賃貸収益又は資本増価(キャピタル・ゲイン)という形で他の資産から概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す点で、金融資産と同様の性格をもつと考えているからだと思います。一方、我が国では投資不動産も、賃貸サービス等を提供するために使用する事業用資産と位置付けられ、他の固定資産と同様の会計処理が行われています。また、不動産市場そのものが、公正価値評価が意味をもつほど成熟していないという見方もあります。
論点整理は、投資不動産の資産としての性格を明かにしたうえで、企業が自ら使用する固定資産と異なった評価基準である公正価値(時価)による評価を、投資不動産に適用すべきかどうか、あるいは、そのような選択肢を企業に認めるかどうかについて検討するとしています。
投資不動産について従来どおり取得原価基準による会計処理を行う場合、国際会計基準が求めているような公正価値(時価)情報の開示の必要性が問題となります。
論点整理は,投資不動産のこのような公正価値(時価)情報の開示が必要かどうか、また、開示するとした場合、開示対象、開示内容、公正価値(時価)の算定方法などについて検討するとしています。
この際、開示情報としての有用性、公正価値(時価)を算定する実務上の負担についても考慮するとしています。
論点整理では、固定資産会計の審議の過程で問題提起された事項のうち、減損会計と投資不動産以外のものの取扱いについては、別途検討することとし、内容を示すにとどめています。この中には、リース取引のオフ・バランス処理の見直しなどかなり重要な指摘事項も含まれており、今後の動向が注目されます。どのような項目がその他の指摘事項になっているかについては、論点整理をご覧下さい。
米国基準
国際会計基準
減損認識の基準値 割引前見積将来キャッシュ・フロー 回収可能価額(正味売却価格と使用価値のいずれか高い方の金額) 減損損失の測定 公正価値(時価)
外部の情報源
- 当期中に、時間の経過又は正常な使用によって予想される以上に、資産の市場価値が異常に低下した。
- 企業が営業している技術的環境、市場環境、経済的環境、もしくは法的環境において、又は資産が利用されている市場において、当期中に企業にとって悪影響のある著しい変化が発生したか、又は、近い将来発生すると予想される。
- 市場利率又は投資についてのその他の市場収益率が当期中に上昇し、かつ、これらの上昇が資産の使用価値の計算に用いられる割引率に影響して資産の回収可能価額を著しく減少させそうである。
- 報告企業の純資産の帳簿価額が、企業の株式の市場価値を超過している。
内部の情報源
- 資産の陳腐化又は物的損害の証拠が入手できる。
- 資産が利用される又は利用されるであろう程度又は方法に関して、企業に悪影響のある変化が当期中に発生したか、又は、近い将来発生すると予測される。これらの変化には、資産の属する事業の廃止又はリストラクチュアリングもしくは予定されていた期日以前に資産を処分する計画を含む。
- 資産の経済的成果が予測していたより悪化していること又は悪化するであろうということを示す証拠が内部報告から入手できる。
上記 g の証拠には下記の事項の存在を含む。
- 資産を取得するための資金、又はその後の資産の操業もしくは維持に必要な資金が、当初予算よりも著しく高額になっていること。
- 資産から発生する正味キャッシュ・フロー又は営業損益の実際数値が、予算より著しく悪化していること。
- 資産から発生する正味キャッシュ・フロー又は営業損益の予算数値が、著しく悪化していること。
- 当期の数値を将来の予算数値と合計すると、当該資産に営業損失又は正味キャッシュ・アウトフローが生じていること。
米国基準
国際会計基準
将来キャッシュフローの見積り 合理的で立証可能な仮定及び予測に基づく最善の見積りでなければならない。 当該資産の残存耐用年数にわたり存在するであろう一連の経済的状況に関する経営者の最善の見積りを反映する合理的かつ立証可能な前提に基づかなければならない。 経営者によって承認された直近の財務予算・予測(原則として最長5年間)に基づかなければならない。
その後の期間については、予算・予測に基づく見積りを、一定の又は逓減する成長率を用いて、外挿する。
資産の現在の状態において見積らなければならない。
財務活動からのキャッシュ・フロー及び法人所得税の支払い(又は還付)を含まない。
割引率 包含する危険性に相応する割引率 貨幣の時間価値と当該資産に固有なリスクについての現在の市場評価を反映した税引前の利率