
企 業 財 務 記 事 ウ ォ ッ チ ャ ー 2002年1月
法定準備金6300億円 UFJ銀取り崩し
三井住友銀 準備金取り崩し決定
約3年前に簿外債務を指摘 エンロン、独社と合併破談
ロイヤルの前期、連結最終赤字65億円に
英、企業監査法人に交代制 金融当局が検討
近鉄 今期連結見通し、赤字355億円
東武鉄道、最終赤字700億円に
企業会計審議会、企業の監査強化求める
国際ルールの衝撃 企業の裁量にくさび 合併会計の虚実(中)
森ビル、1800億円調達
ダイエー、再建へ新計画 主力行4200億円支援
協和エクシオ、社債100億円”期限前償還”
三陽商会前期連結、営業益66%増
ダイエー、特損1200億円
ダイエーに産業再生法 再建策、主力行と最終調整
ダイエー減資案浮上
日立 キャッシュフロー赤字回避 資産流動化で現金ねん出
AOL特損 最大600億ドル
2002年1月31日 日経夕刊 法定準備金6300億円 UFJ銀取り崩し
記事要旨:
UFJ銀行は31日の取締役会で、2002年3月期に法定準備金を6300億円弱取り崩し 、剰余金に振り替える方針を決めた。不良債権などの処理原資を確保するねらい。 合併で発生する帳簿上の利益(合併差益)を活用して保有有価証券の評価損も一括処理し、財務基盤の健全化を急ぐ。2002年1月30日 日経夕刊 三井住友銀 準備金取り崩し決定
記事要旨:
三井住友銀行は30日、臨時株主総会を開き、法定準備金を5990億円取り崩して、 株式評価損の処理などに充てることができる剰余金に振り替えることを正式に決めた。
法定準備金は自己資本の一部で、三井住友銀の準備金は現在1兆9250億円。昨年の商法改正で準備金のうち資本金を上回る「準備金超過額」を取り崩すことが可能になったのを受けて三井住友銀はこの規定を活用、超過額を全額剰余金に振り替える。
同行のN頭取は準備金の取り崩しについて「保有有価証券の価格変動リスクに備える ことなどが目的」と説明、株主の承認を得た。コメント:
この欄でも何度も書いていますが、法定準備金を取り崩しても、資本の部の中で準備金が減り、同額剰余金が増えるだけなので、 会社の純資産は全く変わりません。一方、時価評価している株式の時価が下がったり、不良債権に対する引当を増やせば、その分、純資産は減ってしまいます(税効果考慮後)。したがって、純資産への影響に着目すれば、法定準備金を取り崩しても、不良債権処理や有価証券評価損の穴埋めには全く役に立たないはずです。
むしろ、預金者などの債権者の立場からすると、資本の部の内訳が、法律上、社外流出させずに維持すべきとされている法定準備金から、 株主に分配可能な剰余金に変更されるわけですから、健全性がかえって低下したともいえます。
UFJ銀行の合併差益を使った有価証券の評価減は、三井住友銀行が合併の時にやった取引と同じだと思われます。対等合併であるとして 持分プーリング法を適用するのであれば、本来、合併に際し、資産・負債の評価は変えてはならない (その他有価証券の評価差額も引き継がなければならない)はずです。逆に、パーチェス法を適用するのであれば、原則として全ての資産・負債を時価評価しなければならず、つまみ食い的に一部の資産だけを時価評価することはできません。合併会計の不備を突いた理論的根拠に乏しい会計処理だと思います。
2002年1月25日 NIKKEI NET 約3年前に簿外債務を指摘 エンロン、独社と合併破談
記事要旨:
経営破たんした米エネルギー大手エンロンの巨額簿外債務の存在が、同社が破たんする 約3年前に、米監査法人・コンサルタント大手プライスウォーターハウス・クーパースに指摘されていたことが明らかになった。27日付の米紙ニューヨーク・タイムズが、関係者の話として報じた。
1999年に、水面下でエンロンと対等合併を協議していたドイツのエネルギー大手フェーバ(現在はエーオン)に対し、協議を仲介したプライスウォーターハウス・クーパースが、エンロンが巨額の債務を簿外に移し、貸借対照表を良好に見せかけていると警告。合併は破談になった。コメント:
もとになっている ニューヨーク・タイムズの記事 によると、フェーバ社がデューデリジェンス作業の一環として、プライスウォーターハウス・クーパースに、エンロンに関する公表された資料などを分析させた結果、簿外債務の実態がわかったということのようです。つまり、実地に監査せずに外部資料でもって、怪しいということに気づいたわけですから、おそらく、エンロンの監査人も簿外債務には気が付いていたのでしょう。
もちろん、簿外債務があっても、その時点の会計基準、開示のルールに従った結果、オンバランスしなくても良いと認められている(あるいはそう解釈できる)のであれば、監査上、適正に開示が行われていると判断してもよいと思います。わが国でも、連結原則で支配力基準が導入されるまでは、形式的に持分比率を下げるといった手段による連結はずしが横行していましたが、会計基準上、そのような処理も容認されていました(決してよいことではありませんが・・・)。
問題は、簿外債務が生じるようなあやしい取引について、監査人がどこまで徹底して調べていたのか、会計基準をぎりぎりでクリアしている(実際はクリアしていなかったわけですが)ということを、本当に確かめていたのかという点だと思います。
2002年1月26日 日経 ロイヤルの前期、連結最終赤字65億円に
記事要旨:
ロイヤルは25日、2001年12月期の連結最終損益が65億円の赤字(前の期は4億円の赤字)になったもようだと発表した。
特別損失の合計は約84億円。うち35億円は機内食子会社ののれん代償却分。2000年12月期から12年かけて処理する計画だったが、前倒しする。
2002年12月期に不採算店34店を閉鎖する計画。その際に発生するとみられる 損失15億円を引当金として前期に前倒しで特損計上する。
年金資産の運用利差損で生じた数理計算上の差異28億円も前期で一括処理する。数理計算上の差異は通常、従業員の平均残存年数をもとに十数年かけて処理するが、「財務体質の強化を優先」(副社長)して一括処理を決めた。
銀行株など持ち合い株の評価損6億円も計上する。コメント:
のれんの償却、リストラ費用の引当、数理計算上の差異の償却、有価証券の減損処理といった、企業の判断によって会計処理が大きくばらつく可能性がある項目がそろっています。記事の例では、いずれの項目も保守的な処理を選択し、含み損を実現させています。この期で将来の赤字要因をすべて片づけてしまおうという決算政策上の意図が伺えます。
監査をしている会計士にとっては、クライアントがこのような保守的な処理をしてくれるのはありがたいのですが、一歩間違えると利益操作になってしまいます。4つの項目の中でも、リストラ費用の引当や有価証券の減損処理は必ずやるべきだと思いますが、のれんの一括償却や数理計算上の差異の一括償却については、若干疑問が残ります。
2002年1月26日 日経 英、企業監査法人に交代制 金融当局が検討
記事要旨:
英国の資本市場を監督する金融サービス機構(FSA)は、企業の会計報告をチェックする監査法人を定期的に交代させる制度 を導入する方向で、検討に入った。ロンドン証券取引所の上場基準の一つに盛り込む。
FSAは「会計事務所と企業の関係が長くなると会計監査が甘くなる」と判断。会計監査の独立性 を独自に高めることでエンロン事件のような問題の発生を防ぎたい考えだ。具体的には、5年程度での監査法人の交代を企業に義務づける制度を盛り込むことを検討している。
FSAはこのほか、会計監査を複数の監査法人に担当させる二重チェック制も検討しているもよう。コメント:
たしかに監査人が交代制になれば、企業と監査人の癒着は減るでしょう。しかし、監査人の交代の都度、監査法人間で激しい契約獲得競争が行われ、監査人の企業に対する立場はかえって弱くなるかもしれません。そうなると、監査人の独立性は逆に損なわれてしまうおそれもあります。
また、新しいクライアントを監査する場合には、継続して監査をしている会社の場合より、監査時間は大幅に増えます。それを5年ごとに繰り返すのは、企業にとっても監査人にとっても大きな負担となります。
以上のように、監査人の交代制というのはあまりよい案とも思えないのですが、エンロン・ショックがかなり尾を引きそうな状況なので、すんなり通ってしまうのかもしれません。
日本の場合には、監査人の交代制以前に、関与社員の交代制(すでに会計士協会の自主ルールがあります)の徹底が必要でしょう。日本で、監査法人の交代制をやると、監査法人のパートナー(代表社員、社員)は毎日のように営業活動をやることになり、監査の方はますます手薄になりかねません。(もっとも、社員がいない方が効率的に監査ができるという意見もありそうですが・・・)。
2002年1月26日 日経 近鉄 今期連結見通し、赤字355億円
記事要旨:
近畿日本鉄道は25日、グループの不動産会社である近鉄不動産、近鉄ビルディング、京近土地の3社を4月1日付で吸収合併すると発表した。 持分法投資損失が300億円悪化するため、近鉄の2002年3月期の連結最終損益は355億円の赤字になる見通し。
土地の含み損処理では近鉄不動産が販売用土地の評価損を処理。 事業用土地についても土地再評価を実施し、吸収合併する3社の含み損を本体の含み益で相殺する。記事要旨:
東武鉄道は23日、鉄道本体の社員1250人を削減するなど、2006年3月期を目標に鉄道事業を柱に収益力強化を目指す中期経営計画を発表した。また、2002年3月期にグループの 土地含み損約3000億円を一掃するため、同期の連結最終損益見通しを3億円の黒字から700億円の赤字に下方修正した。
土地の含み損処理のうち事業用土地については3月末までの時限立法である土地再評価法 を利用。帳簿上で鉄道本体、百貨店などの含み損約1875億円を含み益で相殺する。販売用不動産 は物件全ての含み損合計360億円を評価損として特別損失に計上する。
東武百貨店池袋店、同船橋店の土地・建物と百貨店が保有する東京・渋谷の土地(簿価合計約1770億円)の 証券化などで841億円の資産売却損も処理する。コメント:
なぜだかわかりませんが、私鉄業界では土地の再評価で含み損を消すという処理が流行しているようです。
東武については、土地再評価に加え、不動産の証券化で含み損を売却損としてPL計上しているところが目新しい点です。証券化は益出しのために使うこともありますが、この場合は含み損を実現させる手段として使っているようです。やはり、この2002年3月期で事業用不動産の含み損を全て処理したという形にもっていきたいという意図の表れではないかと思われます。
販売用不動産については、すでに強制評価減によって著しく時価が下落している物件は評価減をしているはずですが、低価法的に、時価が簿価より下落した物件をすべて処理するということであれば、一歩踏み込んだ処理だと思います。
2002年1月25日 NIKKEI NET 企業会計審議会、企業の監査強化求める
記事要旨:
金融庁の企業会計審議会は25日午後、監査基準の改訂に関する意見書を取りまとめ、公表した。監査の中で不正を発見した場合の追加監査の実施と経営者への報告を義務づけたほか、 債務超過や債務不履行がある場合に、経営者が財務諸表で開示するようチェックすること、国際基準に合わせた監査報告書の充実など、これまでと比べて監査体制を強化することを求めている。2003年3月期の決算監査から実施する予定。
意見書の中では「リスク・アプローチ」の徹底による監査も求めている。コメント:
公開草案が出たときの記事では、企業の存続を会計士が保証するのがゴーイング・コンサーンに関する規定である、負け組企業を淘汰するための手段であるといったことが書かれていましたが、今回は「債務超過や債務不履行がある場合に、経営者が財務諸表で開示するようチェックすること」というふうに、 経営者による開示の側面を強調したおとなしい記事となっています。
前の記事(例えば、 破たん懸念 報告書に記載 監査基準改定案を発表 )と比べるとかなりまともな書き方ですが、「ゴーイング・コンサーン」という用語を全く使わないで記事にしているというのも、かえって不自然で、何か方針の変更があったのではないかと勘ぐりたくなります。
2002年1月23日 日経 国際ルールの衝撃 企業の裁量にくさび 合併会計の虚実(中)
記事要旨:
パーチェス法は消滅会社の資産・負債を時価評価 し、取得価額が時価純資産を上回る金額はのれん代として資産計上する。これに対し、持ち分プーリング法は消滅会社の資産・負債を簿価で承継し、のれん代は発生しない。
大きな問題は世界の潮流がパーチェス法の一元化に動いていることだ。米国は昨年、持ち分プーリング法を全面禁止した。国際会計基準も禁止に踏み切る公算が大きい。
経営者は持ち分プーリング法を好む傾向が強い。時価より低い簿価で引き継いだ資産を合併後に売れば売却益が発生するなど、合併後の業績を良く見せることができる。一方、パーチェス法は時価評価するから透明性が高いものの、時価をどう測定するのかに問題がある。コメント:
記事では、消滅会社の資産・負債を時価評価することがパーチェス法の特徴として上げられていますが、そのことに加え、 取得価額(買収の対価)自体が買収時の時価で決定されるという点も重要だと思います。つまり、合併のように自社の株式と引き替えに他の企業を統合する場合に、パーチェス法では、その 株式の時価が買収対価となります(等価交換を前提にすれば、新しく発行される自社の株式の時価総額=買収される会社の株価の時価総額、となる)。
このことにより、のれんの評価損で400−600億ドルを出すというAOLのように、株価が高いときに企業買収を行うと、それがそのまま取得価額に反映され、多額ののれんの計上につながり、その償却負担や評価損の負担が企業に重くのしかかります。引き継いだ個々の資産の売却益を計上できるかどうかということより、 のれんに関する負担が重いという点が、パーチェス法が嫌われる一つの理由だと思われます。
記事要旨:
森ビルは東京都内で進めている再開発事業の資金のうち1800億円を、同事業の収益だけを返済原資とする ノンリコースローン(非遡及型融資)で調達する。
融資の対象事業は、東京・港の六本木6丁目地区で開発を進めている「六本木ヒルズ」。全体の開発資金は2700億円に上る見込み。このうち、 900億円を森ビルが自己資金で賄い、残りの 1800億円を非遡及型融資で調達する。
森ビルは既に900億円を出資して 特定目的会社(SPC)を設立している。まず、金融機関は、早ければ今月から、森ビルの債務保証 を付けてSPCに1800億円の短期資金を融資する。
賃料収入など事業のキャッシュ・フローが、毎年の元利払い額の一定割合を超えるなどの条件を満たした段階で、この短期資金を長期の非遡及型融資に切り替える。コメント:
このスキームが当事者にとってどのようなメリットがあるのか考えてみます。
まず、森ビルにとっては、2700億円の総事業費のうち、3分の2に相当する1800億円をノンリコースローンで調達できるため、事業がうまくいかなくても1800億円については責任を負わなくてもよいというメリットがあります。しかし、森ビルは出資金を900億円出しており、事業がうまくいかなければ、まずこの出資金から目減りすることになります。また、工事が完成してキャッシュ・フローが生み出されるようになるまでの短期資金は森ビルが保証しているので、事業完成、入居者の募集などの最も重要なリスクは、全て森ビルが負うことになると思われます。
もうひとつのメリットは、一般的にはSPCを使うことにより、出資金の部分を除き、資産をオフ・バランス化できることです。「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」という意見書によれば、一定の条件を満たした特別目的会社は出資者の子会社に該当しない(したがって連結範囲に含まれない)とされています。記事の例で、オフ・バランスが認められるのかどうかは、はっきりしませんが、もし認められるとすると、森ビルの連結財務諸表をみても、この事業の実態はよくわからないということになります。米エンロンのようなことはないと思いますが、気にはなります。
金融機関(記事によると14行程度が参加する予定とのこと)にとっては、ノンリコースにすることで高い金利が稼げるということになります。そのかわり、いうまでもないことですが、融資する事業の収益性を見極めることが重要となります。
2002年1月20日 日経 ダイエー、再建へ新計画 主力行4200億円支援
記事要旨:
経営再建中のダイエーは18日、カード事業を除き1兆7500億円の連結有利子負債を2005年2月末までに1兆円未満に圧縮する新3ヶ年計画を発表した。
ダイエーはUFJ、三井住友、富士の主力3行に、1200億円の優先株の全額減資 のほか、合計3000億円の債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)と一部放棄を求める。銀行の債権放棄は1500億円規模になる可能性がある。
約7万人の一般株主も保有する普通株の50%減資を株主総会で提案する。約260億円の減資差益が生じる見込み。
減資のねらいは、期間利益で埋めきれない損失を処理することにある。8月中間期末でも1450億円の欠損を抱え、今後も固定不動産の減損処理によって損失が膨らむ可能性がある。減資によって資本金を取り崩すことで、優先株では1200億円、普通株では260億円程度の穴埋め原資を確保できる。コメント:
4200億円の支援額のうち、1200億円の優先株の減資については、ダイエーの資本の部の中で資本金や資本準備金が減って同額、剰余金が増える(企業会計基準委員会の新しい基準では「その他資本剰余金」が増える)だけなので、ダイエーにとって直接的な支援にはならないのではないかと思われます。昨年、優先株を引受けてダイエーの債務を減らしたときに支援としてカウントしていれば、今回再度カウントするとダブルカウントになってしまいます。
銀行にとっては、優先株の出資者としてのダイエーに対する持分を放棄し、そのかわり、普通株の株主の持分が増えるだけです。昨年の優先株の出資と今回の優先株全額減資を合わせて考えると、実質的に債権放棄したのと同じとみることもできます。ちなみに、債権放棄自体は金融機関が残りの債権の回収を確実にするためのひとつの手段であり、それに反対なわけではありません。ただ、道具立てが違っているからといって、全く別物だと考えることに違和感を感じるだけです。
前にも書きましたが、減資しても、そのことだけでは、株主の持分は減りません。今回の例のように、一部の株主だけ全額減資をして持分を放棄すれば、その株主の持分は減りますが、他の株主の持分は逆に増えてしまいます。株主責任を負ってもらうために減資をするというのも、象徴的な意味しかないように思われます。
2002年1月19日 日経 協和エクシオ、社債100億円”期限前償還”
記事要旨:
協和エクシオは社債の期限前償還を実施する。信託銀行に設定した専用口座に資金を一括で払い込み、社債の元利払いに充てる仕組みを採用。規模は元本ベースで100億円の計画。 表面利率が高い社債の実質償還で将来の利払い負担を減らす。
この仕組みは「実質的ディフューザンス」と呼ばれる。今回協和エクシオが償還するのは第1回債(表面利率2.25%)と第2回債(同2.1%)。
実質的ディフューザンスは2001年3月期以降、社債の発行残高が大きい電力会社を中心に企業の利用が活発になった。コメント:
社債の期限前償還を行えば、確かに将来の利払い負担を減らすことができます。しかし、クレジット・リスクを無視すれば、現在の市場金利より高い表面金利が付いている 社債の時価は額面以上のはずなので、償還すれば差損が生じると思われます。償還差損の有無・金額の方に全く触れていないというのも、記事として片手落ちです。
2002年1月17日 日経 三陽商会前期連結、営業益66%増
記事要旨:
三陽商会の2001年12月期の連結営業利益は前の期より約66%増え、90億円前後となった模様だ。ブランド品の販売が好調だったのに加え、在庫管理の強化や不採算子会社の整理を進めたことが利益を押し上げた。
百貨店との取引では、在庫を自社で管理し、実際に 店頭で販売した時点で売上高に計上する「消化取引」の割合を取引量の35%弱(前の期は23%)に高め、 返品リスクを減らした。コメント:
消化取引に変更することによって、返品リスクを減らしたと書かれていますが、現在の経済情勢では、それに加えて貸倒リスクを減らす効果も見込んでいるのではないかと思われます。つまり、法律上の細かい議論は別にすると、通常の取引では、得意先が商品を受け取ったときにその商品の所有権は得意先に移りますが、消化取引では、実際に消費者に販売するまでは、納入業者の所有物であり、その分、売上債権を縮小させることができます。
ただ、消化取引に変更する場合には、得意先が商品を受け取ってから、実際に消費者に販売するまでのタイミングのズレに相当する金額だけ、一時的に売上が減ることになります。記事の例のように、売上が好調なときでないと、なかなか変更できないのかもしれません。
2002年1月14日 Yomiuri On Line ダイエー、特損1200億円
記事要旨:
大手スーパー、ダイエーが検討中の経営再建策で、赤字店舗の閉鎖にともなう特別損失が1000億―1200億円規模に達することが13日明らかになった。50店舗超にのぼる閉鎖の大半を新再建計画の初年度にあたる 2003年2月期に実施する方針だ。
ダイエーは、策定中の「新再生3か年計画」を、1月中にも発表する。計画の柱となる赤字店舗の閉鎖については、ディスカウントストア形態の「ハイパーマート」(28店舗)と会員制スーパー「コウズ」(5店舗)の大半の店舗に加え、総合スーパーの赤字店舗もできる限り初年度に閉鎖する方針だ。
閉鎖にともない発生する賃貸物件の違約金や 店舗設備の撤去費用などの損失額は、合計で1000億―1200億円となる見通し。コメント:
会計士的な問題意識からすると、店舗閉鎖に伴う損失をどの年度で計上するのか、知りたいところです。
実際に店舗を閉鎖し、違約金や撤去費用の支払いが生じるのは2003年2月期となるようですが、記事によると、その計画は2002年2月期中に発表されるとのことです。その場合に、違約金や撤去費用を2002年2月期で引当計上する必要があるのか、あるいは、引き当てしてもよいが強制はされないのか、現行の会計基準では、引当金については非常に抽象的な規定しかないので、微妙なところだと思います。理屈からすると引当計上すべきなのですが、どうなるのでしょうか。
2002年1月13日 日経 ダイエーに産業再生法 再建策、主力行と最終調整
記事要旨:
ダイエーの経営再建を進めるため、同社と主力取引銀行が産業活力再生特別措置法(産業再生法)の活用を検討していることが12日明らかになった。ダイエーの適用申請が認められれば、再建策の柱となる銀行による4000億円規模の債権放棄や債務の株式化がしやすくなる。
ダイエーは2002年度以降、大型ディスカウント店25店前後を中心に50店超の不採算店を閉鎖、ホテルや外食など本業に関連の薄い事業を売却する方針。これに伴い多額の損失が生じるため、主力4行から4000億円程度の 債権放棄を受ける方向で調整している。金融支援策として債務を株式に転換するデット・エクイティ・スワップ (債務の株式化)の手法も組み合わせる案が有力だ。記事要旨:
ダイエーの経営再建問題で、株主に責任を問う減資案が浮上してきた。 減資は株主が払い込んだ資本を企業が損失穴埋めのために使う手続きで、穴埋め分だけ株主は損害を被る ことになる。コメント:
債権放棄は「借金棒引き」というような悪いイメージですが、債権放棄もデット・エクイティ・スワップも、支援を受ける方の会社にとっては同じような効果があると思われます。
債権放棄の方は、免除された債務の金額だけ(当然ですが)負債が減り、損益計算書に利益(債務免除益)が計上され、そのことによって、資本の部のマイナス要素である欠損金が減る(したがって、資本が増える)という取引です。一方、デット・エクイティ・スワップの方は、同様に負債が減り、損益計算書を通さないで、直接資本が増えるという取引であり、(税金を無視すれば)結果として同じになります。
また、記事では、減資により株主が損害を被ると書かれていますが、減資をしても、各株主の会社に対する持分自体は何ら変わりません。というのは、欠損の補填のために減資をすれば、たしかに資本金は減りますが、資本の部のマイナス項目である欠損金も同時に減るからです。株主責任ということばも内容があいまいですが、減資後、債権者などの第三者に有利な条件で株式を割り当てし、旧株主の持分を大幅に薄めれば、株主がある程度責任をかぶったといえるのかもしれません。
2002年1月11日 日経 日立 キャッシュフロー赤字回避 資産流動化で現金ねん出
記事要旨:
日立製作所の2002年3月期の連結フリーキャッシュフロー(純現金収支)はゼロになる見通しだ。最終損益は2300億円の赤字になる見込みだが、売上債権やリース資産など総額2000億円の資産を流動化して資金をねん出する。
日立の今期の連結最終損益は汎用メモリーなど半導体事業の不振に加え、人員削減などリストラ費用がかさむため、前期の1413億円の黒字から一転、大幅な赤字となる。資金繰りの悪化を避けるため、今期中に 売上債権と、日立キャピタルが保有するリース資産など計 2000億円の資産を流動化する計画だ。
日立は前期からキャッシュ・フローを重視した経営を進めており、売上債権の回収期間の短縮 や棚卸資産の圧縮などで資金効率を改善している。コメント:
損益計算書上の利益は会社の会計方針に左右されあてにならないが、キャッシュフローは事実そのものであるから、会社の業績はキャッシュ・フローでみるべきだということがよくいわれていますが、記事の例のように、キャッシュフローという事実も、資産流動化取引を使えば、会社の意図によって、ある程度動かすことが可能です。
流動化は資金調達の有力な手段のひとつであり、有利な条件が得られれば、どんどんやればよいと思いますが、キャッシュフロー計算書をみて分析する側としては、売上債権の回収期間の短縮や棚卸資産の圧縮などによりキャッシュフローが実質的に改善されたのか、単に流動化によって見かけ上改善されたのか、よく見極める必要があります。
記事要旨:
米メディア大手のAOLタイム・ワーナーは7日、2002年1−3月期に400億−600億ドル(5兆2000億−7兆8000億円)の特別損失 を計上する見通しになったと発表した。同社は昨年1月にアメリカ・オンライン(AOL)がタイム・ワーナーを実質買収して発足したが、業績や株価の低迷を受け買収額と純資産額の差額である 「のれん代」を一括償却する。
AOLは2000年1月、株式交換方式でタイム・ワーナーを買収すると発表。買収額は史上最高の1830億ドル。タイム・ワーナー部門の資産価値を洗い直した結果、買収合意時を大幅に下回ったと判断、巨額損失の計上を決めた。記事要旨:
この巨額損失については、2つの解釈があり得ると思います。
ひとつめは、1830億ドルという買収額が高すぎた、AOLは高い買い物をしてしまったという素直な解釈です。これも正しい解釈だと思います。
もう一つは、会計処理に注目した解釈です。つまり、このような巨額の損失が生じたのは、株式交換による買収を パーチェス法(買収時の時価で買収額を算定する方法)で処理し、莫大な金額の「のれん」を計上したからであって、 持分プーリング法(わが国の企業合併において多く用いられる方法)で処理していれば、そもそも「のれん」は計上されないのだから、損失が生じることもない、AOLのケースは、両建てで水膨れしていた「のれん」と「資本」が、一緒に縮んでしまっただけだという解釈です。
わが国でも、近い将来、本格的な企業結合会計の導入が予定されています。その際、プーリング法が廃止されるかどうかはわかりませんが、パーチェス法による会計処理の方が主流になることはほぼ確実です。そうなれば、わが国でもこれと似たような例が出てくるのかもしれません。