企 業 財 務 記 事 ウ ォ ッ チ ャ ー 2002年2月
2002年2月28日 日経 ダイエー 損失を今期一括計上 金融支援5200億円
記事要旨:
経営再建中のダイエーは27日、カード事業を除き1兆6600億円の連結有利子負債を2005年2月期に9000億円まで削減する新再建計画を発表した。
事業売却時に生じる損失と投資有価証券や不動産の含み損処理を含め2003年2月期までに計上する損失は単体で4650億円に上る。 2002年2月期に一気に4370億円の損失を計上するため、最終損益は連結で3300億円の赤字となる見込み。連結ベースで2900億円の債務超過に陥る。
2003年2月期に資本金を99%取り崩し、主取引銀行3行から総額5200億円の金融支援を受ける。コメント:
従来のパターンでは、債務免除などの金融支援のタイミングと合わせて、損失を計上するということが多かったと思いますが、ダイエーの場合、来期以降の店舗閉鎖に伴う損失など、現行の会計基準では、必ずしも計上が強制されていない損失まで、債務超過を覚悟して、一括処理しているというのは、評価できる点です。ただし、このような リストラ損失の処理が実務上も一般化するかどうかはわかりません。やはり、将来的には、会計基準として検討が必要な事項だと思われます。
金融支援5200億円の内訳をみると、債務免除1700億円、債務の株式化2300億円、金融機関が引き受けた優先株の減資など1200億円、となっています。このうち、減資の1200億円は、純資産には、全く影響を与えません。したがって、 債務免除と、債務の株式化の合計4000億円が、ダイエーの純資産にプラスに働くという意味での、正味の支援額であると考えられます。
2002年2月25日 日経 FRB、保有ローンの証券化取引 銀行の監視強化
記事要旨:
米連邦準備理事会(FRB)など米金融当局は銀行が保有するローンなどをバランス・シートから外す証券化取引の監視強化に動き始めた。
証券化取引の発達した米国では、銀行は保有する消費者向けローンや住宅ローンを特別目的会社を通じて証券化し、転売している。米銀は不良債権の処理でも証券化の手法を使って、市場に売却する例が多い。
ところが、FRBと米証券取引委員会(SEC)がエンロン破たん後に進めた監査では、米地銀大手PNCフィナンシャルの不良債権処理のための特別目的会社3社の情報開示が不適切との結果が出た。PNCは 特別目的会社3社を連結対象に含め業績を修正し、同行の昨年10−12月期の純利益は1億5500万ドルに縮小した。
FRBは証券化自体は金融の効率化につながると判断しているが、バランスシートに反映されない証券化取引が損失隠しの温床になることを警戒している。特に不良債権の特別目的会社への売却で、 銀行本体から完全に将来の損失リスクが消えているかどうかを注目している。コメント:
特別目的会社をめぐる会計処理や開示については、どのような特別目的会社を連結からはずすことができるのか、あるいは、特別目的会社への資産の売却が会計上も認められる条件は何か、といった点が問題になると思います。このような点について、会計基準や実務が、日米でどのように異なっているのかは、詳しい人に聞かないとよくわかりませんが、少なくともいえることは、わが国でも特別目的会社は連結範囲から除外されているため、単純に、わが国では支配力基準を採っているから大丈夫であるとは、言い切れないのではないかということです。
2002年2月24日 日経 ミサワ 今期含み損1200億円処理
記事要旨:
ミサワホームは2002年3月期にグループが抱える土地や不動産担保融資、株式などに発生した含み損約1200億円を処理 する方針を固めた。
処理で特別損失が膨らみ、今期の連結最終赤字は従来見通しの35億円から約200億円に拡大する。
固定資産の時価が簿価を大幅に上回った場合に損失処理を義務づける減損会計が近く導入されると、含み損が一気に表面化する。ミサワは3月末までの時限立法である 土地再評価法を活用し、土地の含み損益を相殺し、残った損失の約6割を株主資本から差し引く。
このほか、固定資産ではない分譲用土地の含み損や 不動産担保融資の貸倒引当金、株式評価損などを合わせた特別損失は500億円前後となる見込みだ。
ゴルフ場の評価損が約500億円残る見通しのため、優先株350億円を発行して今回と将来の損失処理に備える。
ミサワは1980年代から企業買収による多角化やゴルフ場開発を積極的に進めたことが裏目に出たうえ不動産担保融資も焦げ付き、含み損が膨らんでいた。コメント:
現行の会計基準で評価減の詳しい規定がない固定資産はともかく、分譲用土地(棚卸資産に該当)の評価減や、不動産担保融資(金銭債権であり金融商品会計基準の対象)の貸倒引当金の処理を先送りしていたというのは理解できません。中間期末以降、急速に不動産の時価が下がったり、貸付先の財政状態が悪化したというのであれば、今3月期でまとめて処理するのもやむを得ませんが、そうでなければ、 中間期以前(あるいは前期以前)に処理すべきだったといわれてもしょうがないと思われます。
固定資産の含み損の処理については、土地再評価を使うようです。固定資産の再評価自体は、国際会計基準や英国の会計基準でも認められていますが、わが国の土地再評価はいくつかの点でこれら海外の基準とは異なっています。そのひとつは、再評価で取得原価より評価を下げる場合の処理で、海外の基準では損益計算書を通すのに対し、わが国の土地再評価では、評価を上げる場合と同様に、資本直入の処理になります。いいかえると、再評価を使って、損益計算書で損失を計上することなく(こっそりと)含み損を処理するのは、わが国独特のやり方であるということです。
2002年2月23日 日経夕刊 グローバル・クロッシング 会社策定の再建策 株主、異議申し入れ
記事要旨:
1月末に米連邦破産法11条(会社更生法に相当)の適用を申請した通信会社グローバル・クロッシング(GC)の株主グループは22日、GCが策定した再建策に対する異議を破産裁判所に申し入れた。再建策は香港とシンガポールの通信会社に経営権を譲渡する内容だが、株主グループは55億ドル分の新株を発行して債務を軽減することを求めている。
株主グループの提案は、一定期間後にGCの株式に転換できる新株引受権の発行を求める 内容。新株引受権を購入することで、既存の株主は今後も発行済み株式の37.7%を保有する。コメント:
商法改正により、わが国でも新株引受権(商法では新株予約権)を単独で発行することができる ようになり、法律上は、記事の株主グループの提案のようなことができるようになっています。ただし、新株引受権を有償で発行した場合の会計処理が米国と異なっています。
米国では、新株引受権の発行は資本取引とされ、発行額は資本の部に計上されますが、わが国では、 負債として計上され、権利が行使された時点で資本に振り替えられます。企業会計基準委員会が1月に公表した公開草案「新株予約権及び新株予約権付社債に関する会計処理(案)」でも、従来のワラント債の処理を引き継いで負債処理を定めています。
したがって、米国基準では、新株引受権を有償発行した時点で純資産が充実するのに対し、日本基準では、借入金などと同じ負債に計上され、引受権が行使されるか、行使されないまま期限が到来する(この場合は利益が計上される)までは純資産が増えないことになります。
2002年2月23日 日経 大京に3000億円超支援 債権放棄など軸に
記事要旨:
UFJ銀行、第一勧業銀行、あさひ銀行の3行がマンション最大手の大京に3000億−4000億円の金融支援を実施する方向で調整に入る。
UFJ銀はすでに金融庁に対し第一勧銀、あさひ銀と共同で大京に金融支援を実施する方針を報告した。
金融支援は債権放棄と債務(銀行にとっては債権)の株式化の組み合わせになる可能性が大きい。2002年2月21日 日経 長谷工 債務1500億円株式化要請
記事要旨:
マンション建設最大手の長谷工コーポレーションは主要取引行の大和銀行、中央三井信託銀行、日本興業銀行に、総額1500億円の 債務の株式化を要請する。
長谷工は新再建計画を21日に発表する。債務の株式化は、金融機関からの借入金など債務の一部を株式に切り替え、企業の債務を圧縮する経営再建手法。3行は要請を受け、2002年3月期にも実施するもようだ。コメント:
債権放棄と異なり、債務の株式化の場合は、銀行など債権者には損失が生じないと書かれているのをみることがありますが、本当にそうなのでしょうか。金融商品会計の実務指針を読むと、「金融資産・・・の 当初認識は、当該金融資産・・・の時価により測定する」(29項)とあります。これを素直にあてはめると、債務の株式化によって取得する株式は、そのときの時価が取得原価になります。したがって、取得する株式のその時点の時価が債権額(または債権額から引当金を控除した額)を下回れば、債務の株式化によって損失が生じることもあり得ると思われます。(もっとも、何を時価とするかでどうにでもなるという面もありますが)
また、その後、取得した株式の時価が著しく下落した場合も、減損処理が行われ損失が発生します(債権のときは、回収不能額を見積もって毎期処理していたのに、株式に変わった途端、著しい下落の場合にしか処理しなくてもよいというのは、何かおかしい感じもします)。
2002年2月23日 日経 ダイエー金融支援4600億円 普通株99%減資
記事要旨:
ダイエーと主取引銀行3行(UFJ、三井住友、富士)が策定した再建計画の最終案が22日明らかになった。主力3行の金融支援額を400億円上積みし4600億円とする。当初 50%の予定だった普通株の減資幅を99%に拡大、リストラ原資をねん出する。
金融支援では主力3行が今年8月までに1700億円の債権を放棄する。同時に1700億円の債権(ダイエーにとっては債務)の株式化により、1兆7500億円のダイエーの連結有利子負債(カード事業を除く)の圧縮を加速する。債務の株式化は1600億円を優先株で、100億円を普通株で実施する方向で検討する。
一般株主が保有する普通株の減資幅については1月に固めた50%を大幅に拡大。520億円の資本金のうち515億円(99%)を減資する。コメント:
日経の別の記事にも書かれていましたが、100%減資で株主としての権利がなくなってしまわない限り、個々の株主の持ち分(株主の権利)は変わりません。欠損補填のための減資は、資本金と欠損金(いずれも資本の部の項目です)を相殺するだけの処理であり、その金額が99%減資で515億円に増えたからといって、株式の価値は同じです。
逆に、減資を行っても会社の純資産は変わらないので、リストラ損失発生による純資産の減少を穴埋めする効果もなく、この意味で、リストラ原資にはならないといえます。要するに、将来できるだけ早く配当できるように、資本の部の 欠損金を消してきれいにしておくという効果しかありません。
2002年2月22日 日経 松下 今期赤字4380億円に 「日産型」改革で来期浮上狙う
記事要旨:
松下電器産業は21日、2002年3月期の連結最終損益が4380億円の赤字になると発表した。
松下の連結最終赤字幅はこれまでの見通し(2650億円)を上回り、日産自動車が2000年3月期に計上した6840億円に次ぐ水準となる。
赤字が膨らむのは、「事業構造改革を今期で終了、来期にV字型の収益回復を達成する」目的で、 リストラ費用を3500億円上積みするためだ。約1万3000人の早期退職に伴う特別退職金 1660億円、拠点統廃合など事業再編コスト840億円、 保有株式評価減1000億円を計上する。コメント:
リストラ費用には、特に定義があるわけではありませんが、言葉の意味(リストラクチャリング=事業の再構築)からすると、記事の中で単なる株式の評価損まで含めているのは、若干違和感があります。積極的に事業を再構築するために生じた損失というよりは、株式市場の低迷によってやむなく処理したものという感じがします。
V字型の回復を達成(演出?)するためには、来期以降の損失をなるべく当期に計上 しておくことが有効です。松下の連結の場合は、米国会計基準を採用しているため、当期計上すべき損失と、来期以降に計上すべき損失は、米国基準に従い、厳密に区別されていると思いますが、わが国の基準では、リストラ関連の損失をいつの時点で引き当てるかについては、企業会計原則の引当金に関する抽象的な規定しかないため、会社によってかなりのバラツキがあるのではないかと思われます。
2002年2月22日 ダイエー支援 400億円上積み検討 福岡ドームなど連結対象分離も
記事要旨:
経営再建中のダイエーとUFJ銀行など主力取引銀行が債務(銀行のダイエー向け債権)の株式化と一部債権放棄による支援を1月に固めた3000億円から400億円上積みする方向で調整していることが、21日、明らかとなった。また、福岡市のドーム球場とホテルは証券化による売却方針を見直し、所有・運営する子会社の連結対象からの分離を検討する。
ダイエーの高木邦夫社長は同日、福岡銀行など福岡市の取引3行を訪れ、ドーム球場とホテルに関し「証券化にはこだわらない」と表明。代替策として、所有・運営する 子会社2社への出資比率を50%未満に引き下げ、連結対象から外すことで連結有利子負債を圧縮する考えを伝えた。コメント:
連結に含めるべき子会社の範囲については、形式的な持株比率ではなく、支配力基準 (意思決定機関を支配しているかどうか)により判定されます。したがって、単純に出資比率を50%以下に下げても、連結から外すことができない場合があります。
また、仮に連結の範囲から外すことができたとしても、外した会社に対する貸付金や債務保証(保証予約を含む)がある場合には、連結範囲を縮小することに伴い、それらが復活してしまいます(連結していれば連結グループ内の取引残高なので、消去される)。ドーム球場やホテルの会社の財政状態が健全であれば問題はありませんが、そうでなければ、引当金の計上が必要となることも考えられます。
要するに、形式的に子会社でなくなれば解決するのではなく、ダイエー・グループから実質的にも分離させなければ、グループの重荷であり続けるし、そのことは、決算数値に何らかの形で反映されざるを得ないということです。
2002年2月16日 日経 フジタ、三井・住友統合に合流 再生へなおハードル
記事要旨:
会社分割したうえで、三井・住友建に加わるフジタの試みは建設や不動産、流通など過剰債務企業の再建のモデルケースになるのか。
ダイエーの再建に携わった銀行関係者は「不採算部門だけを切り離して処理するとしたら、フジタの株主はどうなるのか。法律上できないはずだ」と首をかしげる。 フジタの株主は分割して生まれる2社にどうかかわるか決まっていないからだ。
フジタは54あるグループ会社のうち、最大で約120億円のフジタ開発など少なくとも8社が債務超過となっている。これらを集約して新会社を設立する場合、配当ができる見込みのない 債務超過会社となり、分割自体が認められなくなる法的制約もある。
そこで健全部門を切り離して設立する会社にも不採算部門をある程度混ぜ合わせる必要が出てくる。2002年2月15日 日経夕刊 フジタ 三井・住友と建設合流発表
記事要旨:
経営再建中の準大手ゼネコン、フジタは15日午前、2003年4月にも経営統合する三井建設・住友建設へ合流すると正式発表した。フジタは都市再開発など 得意分野である建設事業と、有利子負債の多い不動産事業の2つに会社を分割したうえで、建設事業だけを2社に合流させる。
建設会社が上場継続会社となる予定で、新会社はフジタ単体の8割を占める約3000人を引き継ぐ。
フジタと三井建・住友建の合流の仕方については今後3社間で協議する。フジタの健全部門を三井建・住友建が設立する共同持ち株会社の傘下に組み込む方法や、フジタが三井建・住友建からの出資を仰いで両社の子会社として参加する方法などが考えられる。コメント:
商法上、株式会社を新たに設立する場合には、設立時の資本金と資本準備金に見合うだけの純資産(時価で評価された金額)が、会社に対し実際に拠出される必要があります。会社分割で新会社を作る場合も同じで、債務超過の部門をそのまま分割して新会社とすることはできないのではないかと思われます。
したがって、フジタの場合も、記事に書かれているように、不採算の不動産事業を分割する場合には、何らかの方法(例えば、債権放棄してもらう、債務の一部を分割する範囲に含めないなど)で、 時価ベースの純資産をプラスにしたうえで分割する必要があります。含み損のある資産が多いなどの理由で、これができないのであれば、逆に健全部門の方を分割するしかありません。
株主との関係については、分社型の会社分割(分割された部門が元の会社の子会社になる形態)か、分割型の会社分割(株主が、分割された部門の株式と、元の会社の株式の両方を直接保有する形態)かによって変わってきます。
分社型の場合は、分割前とあまり変わらないといえますが、分割型であると、株主は健全部門の株式と不採算部門の株式の両方を保有することになります。不採算部門の株式は、紙屑になってしまう可能性がかなりありますが、健全部門の株式の方はまともな会社の株式であり、それなりの価値があります。破たんが懸念されるといわれている会社の株式をもつよりは、よほど有利です。
その場合、誰が損をするかというと、不採算部門の債権者です。分割前は健全部門が稼ぐキャッシュをあてにできたのに、別会社になってしまえば、不採算部門の収益しか返済原資がありません。そのようなスキームが商法上認められるのかということも、疑問です。(分社型の場合も厳密には同じことがいえます)。
会社分割といっても、どのようなスキームでやるのかによって、株主や債権者に与える影響は大きく異なります。フジタは、上場会社である以上、会社分割案の詳しい中身を早急に開示する義務があると思います。
2002年2月14日 日経夕刊 米SEC 決算報告書の期限短縮
記事要旨:
米証券取引委員会(SEC)は13日、米エネルギー大手エンロンの破たんで米市場の透明性への信頼が低下していることに対応して、情報開示規制を大幅に強化する方針を表明した。
提案は情報開示の迅速化と開示内容の充実の二本柱。迅速化については、1934年証券取引法に基づく 年次報告書(日本の有価証券報告書に相当)の提出期限を、現行の「期末後90日以内」から「60日以内」に繰り上げる。四半期報告書の期限は45日以内から30日以内に早める。コメント:
90日以内の年次報告書提出という米国の現行のルールは、日本の有価証券報告書の提出期限とほぼ同じです。日本の場合は、 株主総会における利益処分の結果を、有価証券報告書に含まれる財務諸表に、「利益処分計算書」として含めることになっているため、3か月間必要なわけですが、「単独決算も連結と同様、利益処分の結果は、翌年度の剰余金計算書に織り込めばよい」「その年度の利益処分は、取締役会で決定したことを後発事象として注記しておけばよい」というふうに制度が変われば、短縮することは可能だと思われます。
ただし、米国の60日以内という新しいルールを、そのまま適用すると、会社によっては、有報作成作業や、会計監査のスケジュールがかなり厳しくなってしまいます。3か月という期限はそのままにして、早期に提出できる会社は、株主総会終了を待たずに提出できるように制度を変えるのがよいと思います。
2002年2月13日 日経夕刊 会計士協会 デリバティブ含み損先送り 銀行特例1年延長
記事要旨:
日本公認会計士協会は13日、銀行が金利スワップなどのデリバティブ(金融派生商品)取引の含み損を先送りできる 時価会計の特例措置の期限を当初予定の2002年3月期から1年延長し、2003年3月期までとすることを決めた。
来期からは原則として繰り延べの要件を厳格にする。貸出資産などのヘッジ対象群とスワップ取引群の時価変動の連動性が高い場合のみ、 含み損益の繰り延べ処理を認める。
大手銀行は前期から含み損益を先送りできる特例措置を活用、国債など債券投資の代替手段として金利スワップ取引を活発化してきた。コメント:
金融商品会計基準では、デリバティブは時価評価が原則ですが、ヘッジ会計が適用される場合、ヘッジ手段となるデリバティブの損益 は、ヘッジ対象に関する損益が認識されるまで繰り延べられます。記事は、会計士協会が銀行業のマクロヘッジ会計の廃止を1年延ばすことを取り上げ、これを含み損の先送りと決めつけていますが、ヘッジ会計は、含み損だけを先送りする処理ではありません。ヘッジ対象に含み損があるような場合には、ヘッジ手段であるデリバティブの方は含み益となっているはずで、その含み益は繰り延べることになります。(同じ記事でも後の方では「含み損益」と書かれており、矛盾しています)。
マクロヘッジの特例が廃止となる詳しいいきさつは知りませんが、含み損の先送りがまずいというようなことではなく、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が相殺される状態にあるかどうかなどの、ヘッジ会計適用の要件を確かめられないといった問題があるようです。国際的には日本以外では使っている国もなく、日本の銀行はリスクの大きな、あやしい取引・会計処理をやっているという風説(?)の原因にもなっているようです。
記事要旨:
経団連の今井敬会長が「金融機関に限って時価会計を一時凍結してもいい」と発言したことが波紋を広げている。
今井会長の凍結発言は4日の定例記者会見で出た。最近の株価低迷について「原因は不良債権処理の速度が遅いこと」と分析。「金融機関が処理を加速するのに体力を温存する必要があるなら時価会計を凍結してもいい」と語った。時価会計の導入では 保有する株式が簿価と比べ一定以上下落した場合に評価損を損益計算書に計上しなければならない。持ち合い株式は 2002年3月期からの導入が決まっている。
経済界では日経連の奥田碩会長が6日の記者会見で「(時価会計導入は)国際公約であり、凍結しない方がよい」と指摘。日本商工会議所の山口信夫会頭も7日「時価会計を前提に株価は形成されており、凍結は無理」と述べた。コメント:
時価会計という言葉に明確な定義があるわけではありませんが、有価証券に関しては、時価評価したうえで、取得原価と時価の差額を損益計算書を通さずに貸借対照表の資本の部に反映させる処理(注1)のことをいうのが普通です。「保有する株式が簿価と比べ一定以上下落した場合に評価損を損益計算書に計上」する 強制評価減(減損処理)は、企業会計原則や商法にも規定されていた(言い替えると取得原価基準の下でもやらなければならなかった)会計処理であり、少なくとも2002年3月期から導入される時価会計ではありません。
そうすると凍結論が出ている時価会計というのは、前者の時価会計ということになりますが、これは評価損益について資本を直接増減させる処理です。凍結しても貸借対照表上の純資産には影響しますが、損益計算書には関係ありません。自己資本比率を良く見せる効果があるだけです(含み損となっている会社の場合)(銀行にとってはこれが重要なわけですが・・・)。(注2)
また、仮に凍結したとしても、有価証券の時価情報は注記により開示され、投資家やアナリストは、凍結による自己資本水増し分を容易に計算することができます。
強制評価減まで凍結するということであれば、大げさにいうと、会計基準の歴史を半世紀逆行することになります。(注1)なお、評価損だけ損益計算書を通す方法もあります。
(注2)逆に有価証券の含み損益がネットで益になっている会社は、時価会計を凍結すると導入した場合と比べ純資産は減ってしまいます。
2002年2月7日 日経 2001年9月中間期の監査報告書 特記事項100社に増加
記事要旨:
東京証券取引所上場の3月決算企業のうち約100社に2001年9月中間期の監査報告書で特記事項 が付いたことがわかった。特記事項は業績に大きな影響を与える事項について注意喚起するもので、前年同期(62社)を大幅に上回った。
企業の継続性(ゴーイング・コンサーン)については今回、福島銀行とエコナック(旧日本レース)に対して言及があった。
企業会計審議会が先月発表した新監査基準では、2003年3月期に監査法人などに企業の破たん懸念の指摘を義務付けるゴーイング・コンサーン規定を導入し、 特記事項を廃止する。ゴーイング・コンサーン規定が導入されるまでは、特記事項を使って投資家に注意喚起する流れが続くとみられる。コメント:
はっきりゴーイング・コンサーンについてふれているのは2社だけなのかもしれませんが、記事に添えられている特記事項が付されていた主な企業の例をみると、連結ベースで債務超過になっていることとその対応策を書いている例、銀行の金融支援が必要であるという例、借入金の支払期限が経過している例など、ゴーイング・コンサーン規定に引っかかりそうなものもかなり含まれています。
具体的にどの範囲までゴーイング・コンサーン規定で扱うのかといったことについては、会計士協会でさらに細かい指針が作られると思いますが、実務的にはその指針によって、左右される部分が大きいのではないかと思われます。
なお、特記事項については、記事に書かれているとおり廃止されますが、新監査基準を読むと、監査意見と明確に区別したうえで、重要な偶発事象や後発事象については「 追記情報」として記載することになっています。
2002年2月6日 日経夕刊 エンロン 負債7億ドル隠ぺい 会計制度の不備つく
記事要旨:
経営破たんした米エネルギー大手エンロンの、不透明な簿外取引を使った会計操作の実態が明らかになってきた。米会計制度の不備をついた形で負債を約7億ドル(約930億円)事実上隠ぺいする一方、利益を10億ドル水増しした。
同社社内調査を担当したパワーズ特別調査委員長が、5日の米下院エネルギー商業委員会の公聴会での証言などで明らかになった。
会計操作の軸となったのは、昨年10月に存在が発覚した3つの特別目的会社。米国の会計基準では、エンロンと利害関係のない投資家が特別目的会社の調達した投資資金の3%以上を出資していれば、特別目的会社をエンロンと関係ない会社として 連結決算からはずすことができた。
ただ実際には、エンロンは外部の投資家の資金調達を支援していたため、特別目的会社はエンロンと関係のない会社とは会計上認められない。
エンロンは1999年末で負債の額を実際より約7億ドル少なく見せかけた。本来なら連結決算の対象として計上すべきだった特別目的会社の債務を計上しなかったことなどが要因。
また2000年後半から2001年にかけた15か月で、特別目的会社への資産売却 収入の計上などによって、利益を10億ドル水増しした。コメント:
エンロン問題は、コーポレート・ガバナンスや会計監査などにも波及していますが、会計処理に関しては、特別目的会社をめぐる問題に焦点が集まっているようです。
記事を参考にしてまとめてみると、第一に、特別目的会社を連結範囲に含めるかどうかという問題があります。わが国でも、特別目的会社は、一定の条件(米国の3%基準のようなものはありません)を充たせば子会社に該当しない(したがって連結の範囲外になる)ものと推定するとされており(「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」)、似たような問題があるといえるかもしれません。
2番目は、特別目的会社への資産の譲渡をどのように扱うかということです。「金融商品に係る会計基準」によれば、特別目的会社が金融資産の譲受人になる場合、特別目的会社が発行した証券の保有者が、譲渡された金融資産の契約上の権利を通常の方法で享受できるようになってはじめて、譲渡を認識することになっています。
また、これは金融資産に限りませんが、オフ・バランスしたとしても、特別目的会社に譲渡した資産の価値が低下したときに損失の負担を譲渡人が行うこととなる場合は、負担を見積もって必要額を費用計上することになっています(上記「具体的な取扱い」)。
このほか、特別目的会社を使った不動産の流動化について、オフ・バランスできる条件などを定めた実務指針が会計士協会から出ています。
このように、現在でも、特別目的会社への譲渡だから何でも認められるというわけではありませんが、特別目的会社を使ったスキームにはいろいろと複雑なものもあり、判断に迷うケースもあるようです。
いずれにしても、エンロン問題がきっかけとなって、米国でもわが国でも、特別目的会社に関連する会計処理の再点検がなされることはほぼ間違いないと思われます。
2002年2月2日 NIKKEI NET エンロンが内部調査、「10億ドルの利益水増し」
記事要旨:
破産申請した米エネルギー大手エンロンが、1年間に10億ドル(約1330億円)に上る利益の水増しをしていたとする内部調査の報告書をまとめたことが2日、明らかになった。CNNテレビなど米メディアが一斉に報じた。
報告書によると、エンロンは、破たんの原因となった簿外債務の受け皿となる複数の投資組合を設立。それらを通じた複雑な取引によって利益水増しが行われた。
投資組合の設立を主導した元副社長ら経営幹部6人が私的に巨額の利益を受けていたことも判明。コメント:
米マスコミのホームページなどをみると、この内部報告書(200ページ以上あるそうです)のことは、かなり大きく扱われています。会計・開示面については、やはり、投資組合(パートナーシップ)をめぐる取引が、「報告利益を操作する以外のいかなる経済的目的も持たない取引」であったとして強く批判されているようです。注: この記事 を参考にしました(注意! 宣伝用の音楽が流れます)。簡単に読める分量ではないのでしょうが、内部報告書の原文も掲載されているようです。
2002年2月2日 NIKKEI NET ニチメン手形詐欺事件、3億円詐取で元社長再逮捕
記事要旨:
大手総合商社ニチメンの巨額手形詐欺事件で、大阪府警捜査二課は2日、詐欺容疑などで、倒産した東京都内の土木工事会社元社長、A容疑者(66)=詐欺罪などで起訴=を再逮捕した。A容疑者は「ニチメンの担当者も知っていた。だまし取ったのではない」と容疑を否認しているという。
調べでは、A容疑者は、1996年10月と97年9月、都内の大手機械メーカーから 工事を下請けしたように装い、注文書などを偽造してニチメンに提出。後日、同メーカーが手数料を上乗せして代金を支払う条件で、 工事代金の立て替え払いを依頼し、手形九通を振り出させるなどして計3億3000万円をだまし取った疑い。A容疑者は、97年6月に約2億8000万円の手形をだまし取ったとして1日、起訴された。捜査二課は、同様の手口で京都市の大手制御機器メーカーなど3社との取引を偽装して96年から97年までに約20億円をだまし取ったとみて追及する。コメント:
推測でしかありませんが、被害にあった商社からすると、この取引は、形式上、A容疑者の会社に対して原価(下請け工事代金)を計上し、大手機械メーカーに売上を計上するという取引だったものと思われます。教科書的に考えると、「機械メーカーからの受注→A容疑者の会社との契約→工事の出来高の確認→A容疑者の会社への支払い及び機械メーカーへの代金の請求」という流れになっているはずで、注文書が偽造されていたにせよ、売上げ先である機械メーカーとの間で何らかの形で接触があれば、偽装取引であるということはわかったはずです。
商社取引でよくあるのが、仕入先と売上先が通じていて、架空の取引をでっち上げて、仕入代金をだまし取るという手口です(実在の取引と混在しているとなかなかわからない場合もある)。記事の例のように仕入先の会社だけで偽装できたとすると、内部管理体制に特に重大な弱点があったとみざるを得ません。
2002年2月2日 日経 投資家保護 乏しい意識 「公正な市場」へ(下)
記事要旨:
新しい監査基準の目玉は「ゴーイング・コンサーン」規定の導入。監査先企業に破たん懸念がある場合、財務諸表で情報を開示して投資家の注意を喚起する仕組みだ。
だが、新基準では債務超過など破たんリスクがかなり高い場合に限って開示を義務づけており、マイカルのケースは破たん懸念に該当しない。
米国では証券取引委員会(SEC)が経営者に将来のリスク情報と対策を 財務諸表に掲載するよう義務付けている。
これに対し日本では、会計士が財務諸表の信頼性を保証できないとして切り札である意見差し控えや不適正意見を表明した例はほとんどない 。会計士が経営者を説得し、投資家に役立つ情報をどこまで提供させられるか不透明だ。
さらに新監査基準は、財務諸表を作成・公表する責任は基本的に経営者にあると明記。また「違法行為自体を発見することは監査人の責任ではない」と言及した。投資家の期待とは逆に不正発見に対して 逃げ腰の姿勢が目立つ。コメント:
ゴーイング・コンサーンの前提に関する開示も、広い意味のリスク情報の開示に当てはまるのかもしれません。しかし、改訂監査基準の前文にも書いてあるように、「継続企業の前提に影響を与える可能性がある事象や状況を余り広範に捉えると、・・・却って投資判断に関する有用性を損なう」おそれがあります。どんな企業でも、事業活動を行っている以上、予測できない原因で売上が急減したり、自然災害のため営業できなくなったりというリスクはあるわけですが、それらが現実化する以前に全て開示していたら、投資家にとって本当に必要な情報がわからなくなってしまいます。破たんリスクが高い場合に限って特別に開示し、監査人がその開示をチェックするというのは当然の話です。
一般的なリスク情報については、確かに、米国の方が詳しく開示されているようです(ただし、監査対象である財務諸表の外で開示されているものも多い)。基準前文でも、「企業活動の継続が損なわれるような重要な事象や状況は突然生起することはまれであり、・・・・上記のような事象や状況につながる虞のある重要な事項については、・・・適切に開示されることが求められる」として、開示の充実を促しています。
また、財務諸表を作成する責任は経営者にあるという「二重責任の原則」について、否定的なのも気になります。会計士が作成者になってしまっては、自分が作った財務諸表を自分でチェックするということになり、独立した立場で批判的に財務諸表の適正性を検討するということができなくなってしまいます。監査に関する期待ギャップを埋めるためにも、監査基準で二重責任の原則を明確にし、監査報告書にもその旨を記載するということは、意味があると思います。
2002年2月2日 日経 ハドソン前期連結 最終赤字36億円
記事要旨:
ハドソンが1日発表した2001年11月期決算(決算期変更で9か月決算)は連結最終損益が36億3000万円の赤字だった。家庭用ゲームソフト販売が不振だったうえ、有価証券売却損など特別損失が膨らんだ。
2002年3月期の連結売上高は49億6000万円、連結最終損益は11億円の黒字を見込む。前期末の 資本準備金取り崩しで累損を一掃し、30円の配当を予想している。コメント:
資本準備金の取り崩しによる配当するというのは、銀行だけかと思っていましたが、一般事業会社でも、さっそくやるところが出てきました。法律で認められている以上、それは認めざるを得ないわけですが、同じ配当でも、留保利益からの配当ではないということを開示する必要はあります。
企業会計基準委員会が昨年12月に公表した「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準(案)」 では、資本準備金を取り崩した金額は、利益剰余金と区別して、その他資本剰余金に計上することになっています。また、利益処分の際にも、利益剰余金の処分と資本剰余金の処分を分けて表示するようです。
資本準備金を取り崩して行った配当を受け取った側も、出資の払い戻しであるということから、収益計上ではなく株式の取得原価からのマイナス処理になります。
ハドソンのホームページから決算短信をみてみると、昨年コナミが増資を引き受けたため、資本金・資本準備金が大幅に増えています。増資後利益が出ていないので、今度の配当も増資に応じたコナミにとっては実質的に出資の払い戻しです。したがって、基準案に従えば、配当の額はハドソン株の取得原価のマイナスとして処理する必要があります(連結決算では関係会社となるので関係なし)。
ただし、公開草案によると、基準の適用は4月1日からとなっており、ハドソンの行う配当は対象とならないのかもしれません。