
企 業 財 務 記 事 ウ ォ ッ チ ャ ー 2002年3月
2002年3月29日 asahi.com UFJ、連結最終赤字1兆2000億円に 会計処理の変更で
記事要旨:
UFJホールディングスは29日、2002年3月期の連結最終赤字が従来予想の6000億円から 1兆2000億円に拡大する業績予想修正を発表した。従来予想では、1月15日に合併した旧東海銀行の損益を連結損益に反映しない方法 を取っていたが、より実態に近づけるため反映させて表示する方法に変更したため、会計上の損失がふくらんだ。
従来予想と同じ基準で算出した場合、連結の最終損益は5000億円の赤字と上方修正となる。コメント:
記事によると、会計処理の変更で、7000億円(1兆2000億円と5000億円の差額)も赤字が増えたとのことですが、本当に会計処理方針の変更といえるようなものなのでしょうか。
UFJ銀行(旧・三和)と旧・東海銀行は、昨年4月1日の時点で、既に、持ち株会社であるUFJホールディングスの傘下に入り、連結子会社となっています。その後、それぞれ今年1月まで、別会社として営業を続け、1月15日に合併して1つの法人となったわけです。
ところが、合併会社であるUFJ銀行(旧・三和)の損益計算書には、消滅会社である旧・東海銀行の損益(昨年4月1日から合併日まで)は含まれません。そのため、 決算期末時点の連結子会社の損益を単純に合算した場合、旧・東海銀行の損益(UFJのホームページによると、 7129億円の赤字)は、連結グループに入った時点以降の損益であるにもかかわらず、連結決算からは、もれてしまうことになります(もれた金額は、おそらく剰余金計算書上の調整項目になると思われます)。
記事にいう「旧東海銀行の損益を連結損益に反映しない方法」は、このように期末時点の子会社の損益計算書を単純合算する方法であると推測されますが、もしそうだとすると、連結決算の考え方からすれば、そもそも間違っていたのではないでしょうか。(注)UFJのホームページで、記事で取り上げられている合併時の処理について、少し説明がなされています。
2002年3月29日 日経 伊藤忠、純利益57%減 株式評価損500億円に
記事要旨:
伊藤忠商事は28日、2002年3月期の連結純利益(米国会計基準)が前期比57%減の300億円になる見通しだと発表した。
今期計上予定の株式評価損は約500億円。うち約350億円が銀行株によるもの。機械事業などで約150億円の事業関連損失を出す。
発行済み株式数の約31%を保有するファミリーマート株は28日終値が2150円と、取得価格の4710円を 54%下回っている。含み損は約766億円に達するが、評価損は計上しない。「将来の収益力を考慮した投資価値は目減りしておらず、 米国会計基準では評価損を計上する必要はない」(副社長)という。コメント:
記事では、ファミリーマート株の時価が取得価額を54%も下回っているのに、強制評価減しないのは、おかしいといった書きぶりですが、そもそも、31%保有しているのであれば、 持分法が適用され、伊藤忠のバランスシートでは、「ファミリーマートの純資産の31%相当額」プラス「投資差額(のれん)の未償却残高」で、ファミリーマート株は計上されているはずです。
「純資産の31%相当額」の部分は、ファミリーマートの決算数値から導き出されるため、評価減する、しないの問題はありません。評価減を検討しなければならないのは、投資差額の部分ですが、会社説明のように、「将来の収益力を考慮した投資価値」が目減りしておらず、投資差額の部分も将来の収益で回収できるのであれば、評価減は必要ありません(この点は、米国基準も日本基準も変わらないはずです)。ただし、時価がこれだけ下がっているということは、市場は、違う見方をしていることになります。評価減しないとしても、ファミリーマート株が、伊藤忠にとって、市場における評価以上の価値があるという根拠が必要でしょう。(注)単純化のため、取得時点におけるファミリーマート資産・負債の時価評価の影響は考えていません。
2002年3月28日 日経 ドコモ、今期連結特損1兆円 (解説)
記事要旨:
NTTドコモが2002年3月期連結決算で米AT&Tワイヤレスなど海外出資先4社の株式評価損を計上、 1兆円前後の特別損失を出す見通しとなった。
今回ドコモが巨額の特損計上に踏み切る背景には、米エンロン事件を機に、欧米の有力企業が会計基準を厳格に適用しはじめたことがある。ドイツテレコムやフランステレコムは買収企業や出資先の企業価値を見直し、1兆円以上の特損を計上している。
ドコモも3月1日にニューヨークとロンドンの両証券取引所に同時上場。欧米通信大手に習い、厳格な会計基準 に従って多額の損失処理に動く必要性が出てきた。2002年3月22日 日経 欧州企業 損失計上を前倒し 会計基準厳しく適用
記事要旨:
欧州の有力企業が会計基準を厳格に適用し始めた。 米エンロン事件で財務への不信感が高まったことが背景にあり、通信・メディア大手が2001年決算で合併・買収(M&A)などに関連した損失を相次いで 前倒しで計上している。
会計基準の米欧統合を進める国際会計基準理事会はエンロンに似た事件の再発を防ぐため、既存の基準のうち不正な簿外取引や含み損隠しに利用されかねない項目の洗い出しを始めた。
基準理は本部を置く英国をはじめ、特に欧州で強い影響力を持つ。英独仏は会計処理の厳格化を先取りし、「米基準も参考にしながら損失を前倒しで開示するよう経営者に促している」(仏会計士)。
典型例が仏メディア大手ビベンディ・ユニバーサル。2001年12月通期決算で、M&Aに伴う「のれん代」(買収価格と純資産額の差)の評価損として152億ユーロ(約1兆8000億円)を計上し、136億ユーロの純損失となった。2002年1−3月期に全面適用する予定だった米会計基準のうち、 のれん代に関する処理だけを前期に採用し、損失を前倒しで計上した。コメント:
いずれの記事も、「エンロン事件を受けて、欧米では会計基準厳格化の動きがある。それにひきかえ、わが国では・・・」というストーリーが、行間に読みとれますが、なにもかも、エンロン事件に結びつけて説明するのは、少し無理があります。
まず、ドコモにしても、記事で取り上げられている欧州企業にしても、問題となっているのは、バランスシートにきちんと計上されていた、のれんや株式です。SPCを使って、取引自体を全く簿外にしていたエンロンのケースとは全く違います。
のれんの巨額償却についても、エンロン事件の影響で、会計基準を厳しく適用したというより、IT・通信バブルの崩壊によって、損失が表面化したということだと思われます。会計基準を従来どおり適用していたとしても、同様の評価減が計上されたはずです。
時期的にも、JDSユニフェーズの例(2001年7月27日の記事 北米企業、高額買収のツケ 巨額評価損計上相次ぐ )にみられるように、エンロン事件発覚以前から、バブルのときに膨らんでしまったのれんを評価減する動きが、欧米ではありました。
国際会計基準理事会で行われている既存の基準の見直しも、理事会が昨年新しい組織になってから、企業結合などのプロジェクトと平行して行われており、エンロン事件が起きてから、はじまった作業ではないようです。
そもそも、会計基準で定められているより、前倒しして損失計上したり、一部の会計基準を会社が恣意的に前倒しで適用したりすることが、会計基準を厳格に適用することだという感覚が、理解できません。
2002年3月28日 日経 減損会計ショック 含み損処理 先送り限界 (地価下落 縮む経済)
記事要旨:
止まらない地価下落と、2004年3月期にも導入される「 減損会計」が、企業に資産売却を迫っている。
減損会計とは、工場など固定資産の含み損処理を義務づける会計処理。「導入されれば含み損を抱える企業は株主資本が減る。 資本の一段の目減りを食い止めるため、あらかじめ資産を売却する動きが一段と加速 する」とUBSウオーバーグ証券のアナリストは予測する。コメント:
減損会計導入によって、資産売却の動きが加速するというアナリストのコメントですが、企業が含み損のある 資産を売却すれば、その時点で損失が実現し、資本が目減りしてしまいます。減損会計導入まで資産を保有していると、資本が目減りし、売却すると、資本の目減りが食い止められるのなら、どの企業も資産を売却しようとするでしょうが、どちらの場合も目減りが起きるのなら、無理に売却する意味はないともいえます。
企業は、固定資産を保有し続けることが、売却するより有利であると判断すれば、保有し続け、売却する方が有利であると判断すれば、売却するはずです。不動産についていえば、減損会計が導入されなくても、企業が、今後もデフレ傾向が続き、地価が下落し続けると判断すれば、売却が増えるでしょうし、その逆の判断であれば、不動産への需要が増えることになります。企業がそれぞれの判断に基づき、合理的な行動をとる限り、減損会計の導入自体は、企業行動に大きな影響を与えることはないのではないでしょうか。
要するに、企業の行動を決めるのは、経済実態に関する企業の見通しであって、減損会計の導入時期がいつになろうと、ほとんど関係ないのではないかということです。
なお、記事では減損会計の導入時期が2004年3月期とされていますが、昨年公表された減損会計に関する「経過報告」には、導入時期は明示されておらず、その後も、正式には導入時期は決まっていないようです。
2002年3月27日 日経夕刊 米会計基準をFRB議長が批判
記事要旨:
グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長は26日、ニューヨーク大学で講演し、従業員らへの ストックオプション(自社株購入権)付与が費用として計上されない現行の会計基準を「公表された利益の有効性をそいでいる」と批判した。
ストックオプションはハイテク企業などが多く採用しているが、給与などと違い費用として計上されないため「利益が実態よりかさ上げされている」と批判されている。コメント:
3月10日の日経記事によると、欧米企業の多くが、ストックオプションの会計基準強化に反対しているとのことですが、IASBに寄せられたコメントレターのまとめなどを見ると、欧米でも、投資家代表などからは、ストックオプションの費用化に賛成する意見が多いようです。
理屈からいっても、役員や従業員から、会社が何らかの役務を受けているからこそ、その見返りにストックオプションを与えているのであって、役務を受けているというその事実が全く決算数値に表れないというのもおかしな話です。
2002年3月23日 日経 企業合併に時価評価 国際会計基準、一本化固まる
記事要旨:
世界の企業を同じ基準で比較できる会計作りを進めている国際会計基準理事会(IASB)東京会議が、4日間の討議を終え22日閉幕した。昨年から最優先課題として取り組んできたのが 企業が合併する際の会計処理。相手先の資産・負債を時価評価する方式で一本化することが固まった。 合併後の財務諸表の透明性が一段と高まるため、含み益を残した日本流のあいまいな対等合併は困難になる。
合併会計には、それぞれの資産・負債を帳簿価格のまま結合させる方法(持分プーリング法)と、一方の企業が他方を買収したとみなして買収先を時価評価する方法(パーチェス法)の2種類がある。
日本は含み益を温存できる簿価方式存続を主張してきた。だが、IASBは同方式が 合併時に投資家にわからない形で資産の含み損益を相殺する余地があると判断し、時価方式への一本化を前提に議論を進めてきた。今回大筋合意したことで、公開草案に簿価方式廃止が盛り込まれる。
時価方式の一本化で企業は合併時に発生した「のれん代」(取得価額から純資産を引いたもの)を毎年償却する必要がなくなる 代わりに、のれん代の価値が大幅に下落した場合は評価損をその期に計上する必要がある。コメント:
おかしな点、説明不足の点がいくつかあるようなので、箇条書きで解説を試みます。
- 「企業が合併する際の会計処理」をIASBが討議した、といっていますが、正確には、「 企業結合会計」です。合併だけでなく、買収先を子会社にする場合の会計処理も含まれます。したがって、 連結会計も視野の中に入っているはずです。
わが国の連結原則は、パーチェス法の考え方が取り入れられているといわれますが、例えば、株式交換で子会社化したような場合については、正式の会計基準がありません。企業結合会計がわが国でも整備されれば、このような場合の扱いも決まるはずです。- 相手側の資産・負債を時価評価するのが、パーチェス法であるといっていますが、買収先の株主に対して、 買収の対価として発行する株式が、時価で記帳される点も重要ではないかと思われます。つまり、買収の対価が自社の株式である場合には、その株式の発行によって増加する資本の額も時価ベースで決まるということです。(その金額と、 買収先の資産・負債の時価との差額がのれんになります)。
- 合併後の財務諸表の透明性が一段と高まる、というのも理解しがたい点です。パーチェス法は、買収先を事業ごと、まとめ買いしたとみなす処理ですが、 買収後の会計処理は、資産をバラバラで買った場合と、全く同じです。例えば、買収先の資産に土地が含まれていた場合、買収時点では、その土地は時価で記帳されますが、その後は、その記帳された金額が取得原価となって、減損処理しない限り、ずっと引き継がれることになります。
また、買収時点で時価評価されるのは、買収される側だけで、買収する側は、含み損益を温存したまま です。- 含み益を温存できる簿価方式、とありますが、含み損を温存 する場合も当然あります。
- 簿価方式では、投資家にわからない形で資産の含み損益を相殺する余地がある、とIASBが判断していると書いていますが、プーリング法(簿価方式)では、 個々の資産・負債につけられている帳簿価額を、合併後も、そのまま引き継ぐ(したがって、個々の資産・負債の含み損益も引き継ぐ)ので、含み損益が相殺されてしまうことはありません。わが国の商法で認められている(?)、合併のどさくさにまぎれて、資産の帳簿価額を付け替えてしまう方法は、プーリング法とはいいません。
- パーチェス法(時価方式)に一本化することと、のれんを毎年償却しない方法とを結びつけて書いていますが、この2つは、ひも付き関係にはありません。米国の旧基準や現行の国際会計基準でパーチェス法が適用される場合には、 のれんは、毎期規則正しく償却するルールになっていました。
- のれんを毎年償却するかわりに、評価損を計上(減損処理)する必要がある、と書いていますが、償却と減損は二者択一の関係ではありません。米国の旧基準や現行の国際会計基準は、 毎期償却するとともに、必要なときには減損処理もやるという基準です。わが国の連結原則・実務指針でも、連結調整勘定について、同じような扱いになっています。
2002年3月23日 日経 中山鋼、今期連結最終赤字212億円 高炉閉鎖で特損
記事要旨:
中山製鋼所は22日、2002年3月期の連結最終損益が212億円の赤字となる見通しを発表した。主力の鉄鋼事業の赤字幅が拡大するほか、 高炉閉鎖に伴う費用など特別損失が膨らむ。土地再評価の実施や法定準備金の取り崩し(資本準備金・利益準備金で計142億円)で毀損する資本勘定を埋める。
特損は計286億円。設備や棚卸し資産の除却損に加え、380人分の特別退職金や退職給付債務の積み立て不足の一括償却など高炉閉鎖に伴う損失が225億円になる。高炉 特別修繕引当金取り崩しなど計137億円の特別利益では埋められない。コメント:
修繕引当金というのは、将来行う修繕の費用を見越し計上する負債性引当金であるといわれているようです。しかし、個人的に以前から疑問に思っていたのですが、将来行う修繕は、どう考えても、修繕を行う時点以降の収益獲得に役立つのであって、過去の収益と対応させるために、引き当てるというのは理屈に合いません。むしろ、将来修繕が必要になるというのは、それだけ固定資産の価値が下がっているということであり、そのことに対応する評価性の項目が修繕引当金だと考えた方が、わかりやすいような気もします。
記事の例では、将来の高炉閉鎖による評価損を計上するのと合わせて、特別修繕引当金の取り崩しも行っています。将来閉鎖する固定資産なので、予定していた修繕も行わなくなり、引当金も不要になったという理屈で、特別利益に計上するのだと思いますが、評価性の引当金と考えれば、その取り崩し額は、設備の評価損の金額と相殺してもよいのではないかと思われます(一般的な考え方ではないので、実務上は無理でしょうが・・・)。
なお、記事では、法定準備金の取り崩しで資本勘定を埋めると書かれていますが、準備金取り崩しで埋められるのは、欠損金です。赤字で生じた純資産の減少を埋めることはできません。(注)記事の例の特別修繕引当金の取り崩しは、閉鎖予定の資産に対応するものであると考えて、以上のように書きましたが、中山製鋼所のホームページを見ると、中間期末の特別修繕引当金を全額取り崩すようです。会計方針の変更なのかもしれません。
2002年3月21日 日経 会計士協 資金調達の特別目的会社 規制・監査を強化
記事要旨:
米エンロン事件を契機に日米の会計関連団体が、企業の資金調達などに使うペーパーカンパニーに対する 規制・監査を強化する。日本公認会計士協会は月内にも不正発見を徹底する目的で公認会計士の指導強化に乗り出す。ペーパーカンパニーを連結対象から外す際の基準厳格化も検討しており、日本企業の 資金調達戦略に影響が及びそうだ。
会計士協が月内にまとめるエンロン問題調査報告書で、特別目的会社(SPC)の監査について「設立後どのように使われているか実態を調査する必要がある」として、目的外利用の監査について会計士に注意喚起する。今後、米基準強化の動きをにらみながら、日本も会計基準の見直しを検討していく。不正利用の手口や兆候を例示した監査実務指針の改正案もまとめる。
現在、資金調達目的で設立しているSPCは、連結対象外の場合が多い。日本の会計基準では、仮に損失が発生したときに、出資比率などを基にした設立主体の損失負担が全体の 約5%以下ならSPCを帳簿から外せることになっている。コメント:
エンロン事件を受けて、日本でも、SPC絡みの様々な問題を見直すことになったようですが、このような動きが、規制強化ととられているのが気になります。
企業は、法律が許す範囲で自由に経済活動を行うことができるのであって、そのことはSPCを使った取引についても当てはまります。会計士協会などが、強化しようとしているのは、取引自体の規制ではなく(そんな権限はありません)、SPC関連の取引に関わるディスクロージャー(会計処理を含む)の方だと思います。企業にとって利益をもたらす合理的な取引であれば、その会計処理方法がどのようなものであっても(例えば、オフバランス処理が認められなくても)、影響を受けることはないはずです。影響を受けるとすれば、益出しや債務隠しなど、もっぱら経営者の不純な動機による取引であって、ディスクロージャー強化によって、そのような取引が減ったとしても、企業にとって不利益にはなりません。
なお、損失負担が約5%以下であれば、帳簿から外せるというのは、不動産の流動化の実務指針の規定です。正確には、SPCを帳簿から外すかどうかではなく、保有している不動産をオフバランス化できるかどうかを問題にしています。SPCが連結から除外されるということ自体は、議論の前提条件となっています。
金融商品に関しては、金融商品会計基準の注解4と、関連する実務指針に抽象的な規定があるだけです。数値基準はないはずです。
2002年3月21日 日経 学研 今期連結、最終赤字130億円 貸倒引当金など響く
記事要旨:
学習研究社は20日、2002年3月期の連結最終損益が130億円の赤字(前期は75億4200万円の赤字)になると発表した。
連結ベースの特別損失は約132億円に上る見込み。株式評価損が約44億円を占める。
次いで、97年に旧山一証券に対し提訴した損害賠償請求訴訟の長期化を受け、34億7800万円の貸倒引当金を計上する。学研は山一に、資金運用の裁量を任せる一任勘定取引で生じた損失として、 86億9000万円の支払いを請求した。同額の未収金に計上し、6割に当たる約52億円のみ引き当て済みだったが、残る4割の追加引き当てを決めた。2002年3月21日 日経 アルゼ 今期連結、経常益66%減
記事要旨:
パチスロ機大手のアルゼは20日、2002年3月期の連結経常利益が前期比66%減の245億円になりそうだと発表した。
同業2社に対して特許侵害があったとして賠償を求めていた訴訟で、19日に東京地裁が2社に対して総額約84億円の賠償を命じたが、 確定ではないため業績見通しには影響しない。コメント:
学研の方は、(おそらく)オンバランスされていた資金運用に関する損害賠償請求、アルゼの方は、会計上、利益として認識されていない、特許権使用料に関する損害賠償請求というちがいは、ありますが、訴訟案件に関して対照的な会計処理となっています。
学研の方は、記事によれば、訴訟の行方がはっきりしない段階で、支払い請求した金額を未収金として資産計上しています。一方、アルゼの方は、一審で勝訴しているにもかかわらず、確定していないという理由で、未収計上は行わないようです。
どちらが一般的な処理かといえば、後者の方になります。
2002年3月19日 日経 アサヒ 中間配見送り 期末に一本化 改正商法の条文に不備
記事要旨:
アサヒビールは18日、2002年6月中間期に6.5円を予定していた配当を見送り、期末配当のみにすると発表した。年間配当は13円で変わらない。直接には 4月施行予定の改正商法の条文の”不備”のためとはいえ、はからずも内部留保の薄さを露呈した格好だ。
中間期の配当可能利益は、前期末の純資産から資本金、法定準備金(資本準備金と利益準備金の合計)、配当額を引いた額 になる。改正商法では法定準備金を財源とする自社株取得が可能となったが、その場合は自社株取得に充てる分をさらに引く必要がある。このため、 自社株取得に充てる分が二重に引かれる形になってしまう。
アサヒの中間配に必要な原資は33億円。ただ、今月28日に開く株主総会で、法定準備金取り崩しによる上限600億円の自社株取得を決議する方針。その場合、配当可能利益は同決議前の36億円ではなく、マイナス564億円になる計算だ。
期末配当の場合は、その期の数値を使うため、自社株取得に振り替えることによる法定準備金の減額が反映され、問題は生じない。アサヒは自社株取得を優先し、中間配を見送ることにした。コメント:
記事では、改正商法の条文に不備があるとして、批判していますが、少し誤解があるのではないかと思われます(そもそも、 施行日から間違っています。改正商法による自己株式の取得や法定準備金の取り崩しは、昨年10月から可能になっています)。
まず、昨年6月の商法改正(金庫株の解禁ほか)の会計に関する大きな項目は、自己株式の取得を配当可能利益の範囲内 で認めることと、資本金の4分の1を超える法定準備金の取り崩しが、できるようになったことの2つです。記事では、法定準備金を財源にする自社株取得が可能になったと書かれていますが、正確には、 法定準備金を取り崩すことによって、配当可能利益が増加し、その増加後の配当可能利益の範囲内で、自己株式の取得ができるということです。
配当可能利益は、決算日現在(アサヒの例だと2001年12月末)の純資産から、資本金と法定準備金を引いた額(*)になりますが、自己株取得については、この金額から、定時総会(2002年3月)における配当金など利益処分の額を控除し、 定時総会で取り崩すことを決めた法定準備金の額を加算した金額が限度額となります(商法210条)。アサヒの場合は、定時総会で法定準備金の取り崩し(記事によれば、おそらく600億円)を決議し、自己株取得の限度額を増加させておくのでしょう。実際に法定準備金の取り崩しが行われるのは、定時総会終了時ではなく、債権者保護手続きなどが完了した後になるようです。
一方、中間配当の限度額の方は、従来から、前期決算の配当可能利益(前期の利益処分を引いた金額)がベース になっています。これは、商法上、中間決算という概念がないため、会計監査人や監査役の監査を受け、正式に株主の承認を受けた前期の年度決算を配当の基準にせざるをえないということだと思います。改正商法では、さらに、定時総会で決議された自己株式の取得額(アサヒの例では600億円)を配当可能利益から差し引くことになっています(商法293条の5)。記事は、このことを条文の不備だといっているのだと思いますが、ここで自己株式を引いておかないと、自己株の取得と、中間配当とで、配当可能利益を二重に使ってしまうことになります。問題は、立法論として、このとき、 定時総会で取り崩すことを決めた法定準備金の額を配当可能利益に加算するかどうか、ですが、法定準備金の取り崩しが実際に行われるのは、当期になってからなので(したがって、まだ監査が完了していない)、前期末決算をベースに中間配当の限度額を決めるという従来からの考え方に立てば、加算しないというのも理解できます。条文の不備と決めつけるのは、一面的な批判ではないでしょうか。(*)有価証券評価差額、土地再評価差額金などは、説明の便宜上無視しています。
2002年3月15日 日経 米ウォルマート、西友買収へ 2/3 出資権を取得
記事要旨:
世界最大の小売業、米ウォルマート・ストアーズと国内スーパー第4位の西友は14日、資本・業務両面で包括提携すると発表した。ウォルマートはまず西友が実施する第三者割当増資で出資比率6.1%の株主になるが、将来出資比率を66.7%まで高める権利も取得。西友を買収する形で日本に進出する。
ウォルマートが西友の株主総会の決議を経て得る新株予約権は4月の商法改正で導入される権利で、2007年末を期限に出資比率を66.7%まで引き上げられる内容。権利行使すればウォルマートは株主総会で経営の重要な事項を単独で決議できるようになる。その時点までの総投資額は20億ドル(約2580億円)と見込んでいる。コメント:
記事を読むと、ウォルマートに対する第三者割当増資の条件については、ふれています(1株259円だそうです)が、新株予約権の内容(行使価格など)は全く書かれていません。新株予約権は潜在株式であり、その内容次第で、現在の株主の権利は大きく変わる可能性があります。全く、ふれていないというのは、片手落ちのような気もします。
2002年3月15日 日経 アトラスに創業者が保有株15億円を贈与
記事要旨:
アトラスは14日、原野直也会長が個人で保有する同社株約15億円の贈与を受けると発表した。不採算の新規事業の縮小・撤退に伴う特別損失15億円前後を穴埋めする。コメント:
自己株式の贈与を受けるという珍しい取引です。その会計処理を考えてみると、自己株式の時価相当額で、自己株式を取得した(同時に 受贈益も計上)という処理と、取得原価ゼロで自己株式を取得したという処理が考えられます。
前者のやり方では、(税金を無視すれば)受贈益計上された時価相当額だけ利益剰余金が増えますが、 自己株式の取得は資本の払い戻しであり、資本の部から控除されるため、利益剰余金の増加と自己株式が相殺されて自己資本は増えません。
後者のやり方では、受贈益は計上されないため利益剰余金は増えませんが、資本の部から控除される自己株式の金額もゼロであるため、同じく、自己資本の金額には影響を与えません。
株主から現金の贈与を受け、その現金で自己株式を取得したのと同じと考えれば、前者の方法になりますが、そうではなく、贈与した株主に対して100%の減資をしたのだと考えれば、利益計上はおかしいということになります。どちらが正しいのでしょうか。
2002年3月13日 日経 税効果会計議論噴出 銀行の自己資本水膨れ?
記事要旨:
2001年9月末の邦銀大手14行の中核的な自己資本(Tier1)は19兆4000億円。税効果に基づく自己資本は7兆4000億円で全体の38%。過去2回の公的資金注入で補強された資本が6兆円にとどまっているのを考えると税効果会計の影響は大きい。
米国にも同様の制度があるが、自己資本として認められるのは、中核的な自己資本の10%か課税所得の1年分という上限ルール がある。米国基準に引き直せば、邦銀は7兆4000億円のうち5兆5000億円分の自己資本が失われる計算だ。
背景には、日本特有の不良債権処理や税法の問題もつきまとっている。
日本では企業が倒産して引当金が「損失」になり、払いすぎた税金の還付が見込めるまで時間がかかる。不良債権の売買市場が発達している米国では、銀行が損失を速やかに確定することが可能。
税法にも課題がある。銀行や企業が赤字決算になった場合に、損失を翌期以降の黒字から差し引ける欠損金の繰越控除制度。日本の繰越期間は5年だが、欧米では10−20年の国が多い。繰越控除期間が長いほど税効果会計で税負担を軽減できる可能性が高まる。コメント:
記事の前段は、会計ルールとしての税効果会計と、銀行監督上の自己資本規制を、混同しているような気がします。
会計上、繰延税金資産としては、将来の支払税金を減額させる効果がある部分だけを計上することになっていますが、将来の課税所得などの見積もりに大きく左右されるものであり、同じ資産でも、現預金などと比べると、リスクが高い資産といえます。銀行監督における自己資本を算定する際に、そのようなリスクの高い資産について、会計上計上される金額とは別に、上限を設けるというのは、ひとつの合理的なやり方だと思われます。米国の事情はよくわかりませんが、会計上の繰延税金資産の金額を制度的に規制するのではなく、銀行監督上使われる自己資本の数値を算定する際に、上限を設けているということであれば、理解できます。
記事の後段では、日本特有の事情として、不良債権処理において、米国よりも、損金算入できるまでに時間がかかることと、欠損金の繰越ができる期間が短いことを挙げています。たしかに、損金算入できるまでの期間が長ければ、同じルールに従っていても、多くの繰延税金資産が計上されることになります。他方、欠損金の繰越期間が短ければ、それだけ、繰延税金資産の回収可能性を厳しく見なければならないはずであり、繰延税金資産が多い理由にはならないと思われます。
2002年3月13日 日経 KDD今期連結 特損2000億円 不採算設備を処理
記事要旨:
KDDIは2002年3月期の連結決算で、利益を生まない不稼働資産の損失を一括処理し、2000億円の特別損失を計上する。
KDDIは合併を繰り返した経緯から、本体の携帯電話事業では音質に優れた米国方式の「cdmaOne」と日本独自の「PDC」方式の両サービスを提供している。既に 新規加入の打ち切り方針を明らかにしているPDC設備の残存簿価約1400億円のうち1000億円前後を今期に損失処理する。
約250万台に膨らんだ端末在庫の価値を見直し、数百億円の在庫評価損を計上するもよう。固定電話網設備などの損失処理を加えると今期の特損は約2000億円に達する。コメント:
「PDC」方式の携帯電話の設備の損失処理については、会計処理として、臨時償却 と減損処理(評価減)が考えられます。耐用年数の残存期間が予定より短くなったということであれば、臨時償却で過年度の減価償却を一時に修正するということになります。しかし、新規加入は打ち切るが、現存する契約分のために、設備は使い続けるという場合には、将来の回収可能額に基づいて、減損処理(評価減)をするほかありません。いったい、どちらの考え方で損失処理するのか、知りたいところです。
いずれにしても、「減損会計の前倒し適用」といった見出しが付いてもおかしくない会計処理だと思いますが、マスコミは、減損会計は不動産にしか適用されないと思いこんでいるのか、記事には、「減損会計」という言葉は、見当たりません。
2002年3月11日 日経 放送権取引 円滑に テレ東など、新方式活用
記事要旨:
テレビ東京、松竹、日本興業銀行、みずほ証券の4社は、映画などコンテンツ(情報の内容)の地上波テレビ放映権を流動化 する新しい仕組みを開発した。この仕組みに従って特定目的会社(SPC)を設立し、放送権を松竹から一括して買い取る。その上でSPCがテレビ東京に放送権を付与する。
流動化の対象は「男はつらいよ」シリーズ全48作品のうち未放映34本の地上波テレビ放映権。松竹は流動化で分割払いだった代金を一括で早期回収できる。テレビ東京は新たな資金を負担せずに優良コンテンツを調達できる利点がある。SPCから同映画全シリーズの放映終了までの 地上波テレビ放映権を独占して受ける。
興銀はSPCに対し買い取り代金などのノンリコースローン(非遡及型融資)を実行する。
知的財産権の流動化は英国の歌手などが著作権使用料を証券化した事例がある。日本でも資産圧縮で財務体質を強化できる SPCを活用した流動化に注目が集まりそうだ。コメント:
記事によると、SPCが興銀から借入をして、その資金で松竹から放映権を取得し、その放映権に基づき、テレビ東京に放映を許諾する(テレビ東京からの 放送権料は分割払い)という仕組みのようです。松竹の方は、放映権をSPCに与えた時点で、収益計上するのだと思いますが、テレビ東京の方は、どのような会計処理になるのでしょうか。
記事は「資産圧縮で財務体質を強化できる」と書いているので、放送権料の支払いベースでしか会計処理せず、放送権も、債務(放送権の代金)も計上しないのかもしれません。そうだとすると、テレビ東京は、放送権取得のリスクを実質的に負っているのに、資産にも計上せず、その代金の債務も計上しない( 簿外債務)ということになります。
そのような処理も現行基準で認められているのかもしれませんが、バランスシートを見ても何もわからないという意味で、非常に不透明な会計処理になってしまいます。
2002年3月10日 日経 ストックオプション会計基準強化 米欧企業、76%が反対
記事要旨:
国際会計基準理事会が昨年半ばに打ち出したストックオプション(自社株購入権)の会計基準 強化案に、米欧企業が難色を示している。企業や投資家が基準理に寄せた意見を日本経済新聞が集計・分析したところ、強化への反対が76%を占めた。
ストックオプションは企業が役員や従業員に成功報酬として供与する。現在は人件費に入っていないが、基準理は株価などを基準に時価を計算したうえで、人件費として損益計算書に計上する案を打ち出した。コメント:
ストックオプションの会計については、財務会計基準機構 のテーマ協議会でも、今後、基準化すべき優先順位の高いもの(レベル1)とされています。記事によると、欧米企業は利益水準が下がるといって、反対のようですが、わが国では、ストックオプションは、まだ、一般的ではなく、新しい会計基準が導入されてもあまり影響はないと思われます。したがって、この問題ぐらいは、客観的な立場から、日本が推進役に回ってもよいのではないでしょうか。
記事によると、76%の反対という数字は、国際会計基準理事会(IASB)に寄せられた281件の意見を分析した結果とのことですが、IASBのホームページによると、組織的な反対運動でもあるのか、281件のうち 全く同一文面のもの(反対意見)が100通以上あったようです。したがって、反対意見の単純な割合を出してみても、統計的には、ほとんど意味がないのではないかと思われます。
IASBのホームページ では、IASBの立場からの 分析結果 が掲載されており、参考になります。
2002年3月10日 Yomiuri on Line マイカル・証券化で売却の店舗家賃、支払い停止検討
記事要旨:
会社更生法下で経営再建中の大手スーパーのマイカルが、破たん前に証券化の手法を使って売却した店舗 の家賃について、今月25日の支払い分から停止を検討していることを、機関投資家に伝えたことが9日、明らかになった。
マイカルと機関投資家は、証券化された店舗の更生法上の取り扱いを巡って意見が対立している。マイカルは 特定目的会社(SPC)を作って、20の黒字店舗の所有権を移し、これを担保に社債を発行した。都銀や地銀などの機関投資家が社債を購入し、 総額1385億円を調達してリストラ資金に充てた。
関係者によると、マイカル側は、SPCに支払っている年間90億円の家賃が、更生法の手続きに沿って債権カット(弁済免除)の割合などが決められる更生担保権に当たると主張しているという。通常、更生法を申請した企業向けの債権は、債権回収や担保不動産の処分が禁止される。このため、今回のマイカルの証券化のケースが更生担保権に認定されると、 SPCは店舗の処分ができなくなり、債権の一部がカットされて、社債の価値が低下する可能性が高まる。コメント:
記事だけでは詳細はわかりませんが、少なくともマイカル側の主張によると、名目上、特別目的会社に店舗の所有権が移ってはいるが、実態は マイカルの債務の担保に供しているだけであるということになります。このような解釈が正しいとすると、そもそも、店舗の保有から生じるリスクとリターンがマイカルから移っていなかったということになり、証券化の会計処理として、オフバランス処理を認めてよかったのか、ということが疑問に思われます。(記事には法律学者のコメントもありましたが、それによると、更生担保権として認めるのは無理があるようです。)
2002年3月9日 日経 日立、厚生年金運用代行 4600億円を返上
記事要旨:
日本最大の企業年金を持つ日立製作所は、国に代わって厚生年金を運用・給付している代行部分を返上 する方針を固めた。4月にも厚生労働省に申請する。代行部分は日立の厚生年金基金資産約1兆円のうち4600億円(昨年3月末)に上る。
日立が代行部分を返上するのは収益への負担を減らすためだ。株価下落などで運用利回りが代行部分に義務付けられている 年5.5%を下回れば、逆ざや分を穴埋めしなければならない。
みずほ信託銀行の昨秋の調査では、全体の7%の基金が解散や代行返上を検討中という。コメント:
代行返上の取引自体を、企業の会計処理の面から、ごく大ざっぱにみてみると、代行部分の退職給付債務をチャラにしてもらう代わりに、国に対して、それに見合う年金資産を差し出す(返還する)、という取引であると考えられます。
会計上の退職給付債務の金額と、国に返還する年金資産の金額が全く同じであれば、(遅延認識や変更時差異の部分を除いて)損益は発生しないということになりますが、国に返還すべき金額が、5.5%の運用利回りを前提に計算されるのだとすると、会計上の退職給付債務とは、かなり大きな差異が生じます(利回りだけでなく、債務の計算の仕方もちがっているはずです)。この差異をどうするか、また、遅延認識や変更時差異による、オンバランスされていない退職給付債務をどうするか、ということが、会計処理では問題になりますが、昨年12月に会計士協会から公表された、実務指針の改正によると、いずれも、代行部分返還の日に損益計上することとなっています。
日立のほかにも、多くの企業が代行部分を返上するようですが、返上時点で大きな損益が生じることもあり得るので、返上するということだけでなく、返上時の損益への影響についても、早めに開示すべきであると考えられます。
2002年3月8日 日経夕刊 将来のリスク情報も開示 日米の財務諸表比較(下)
記事要旨:
米国基準では財務諸表に盛り込まれるリスク情報も充実しています。一例がNTTの米国基準による決算書です。同社が昨年末にSECに提出した2001年9月中間決算の開示書類は、 注釈で海外出資先企業の状況を詳細に説明し、注目されました。コメント:
NTTにとって、海外出資先企業の状況に関する情報が重要であるとしたら、SEC提出書類だけでなく、国内向けの開示書類にも、積極的に記載することが必要ではないでしょうか。そうでないと、国内の投資家が、米国の投資家よりも、情報の面で不利な条件におかれるというおかしなことになってしまいます。
2002年3月8日 日経 ファーストクレジット 東京地裁が更正決定 不動産時価評価で「債務超過」
記事要旨:
不動産担保融資最大手のファーストクレジットは7日、主取引銀行である新生銀行が申し立てていた会社更生手続きで、東京地方裁判所から開始の決定を受けたと発表した。
ファーストの更生手続を巡っては、「実質債務超過」として抜本再建策を求める新生銀と「債務超過ではなく銀行団との話し合いで再建できる」とするファーストが対立していた。(管財人に選出された)池田氏は「ファーストは適正な会計基準にのっとっており 粉飾決算ではない」としつつ、「昨年12月末時点で保有不動産を時価評価すると127億円の債務超過 だった」と述べた。
これまで多くの金融機関は大口の融資先企業について「債務超過ではなく存続可能」として処理を先延ばししてきたが、今後は会計上は債務超過でなくても企業が破たんする可能性が出てきた。コメント:
新しい監査基準では、ゴーイング・コンサーン規定が導入され、監査人は、「継続企業の前提 に重要な疑義を抱かせる事象又は状況の有無を確かめなければならない」とされています。会社が債務超過であれば、当然、継続企業の前提に疑義を抱かせる事象又は状況に該当すると思いますが、東京地裁の決定によれば、そのような形式的な判定では不十分であり、監査人は、場合によっては、原価評価されている資産の時価を、きちんと調べておかなければならないということになります。
2002年3月6日 日経 菱地所、最終赤字725億円 土地・建物含み損4339億円処理
記事要旨:
三菱地所は5日、2002年3月期に土地・建物の価値を洗い直すことで計1624億円の特別損失を計上すると正式発表した。今期の連結最終損益は725億円の赤字となる。
含み損処理額は事業用土地で2715億円、建物と販売用土地で1624億円の総額4339億円。事業用土地は簿価を固定資産税評価額に評価替えし、損益計算書を通さずに含み損2715億円を、含み益9624億円で埋める。
賃貸ビルは、土地再評価後の土地・建物価格(簿価)と、将来の収益見通しを基礎に算出した評価額(収益還元価格)とを比較。 簿価と比べ評価額が30%以上下落した物件は建物評価損として計上する。
販売用土地も時価が30%以上下回った物件の評価損を計上する。コメント:
固定資産の評価減については、現行の会計基準では明確なルールは定められていません。そうした中で、三菱地所が採用した「30%以上下落」という基準は、明文化された根拠は何もないわけですが、損失を先送りさせないという意味で、やむを得ないのかもしれません。
2002年3月5日 日経夕刊 「阪急電鉄で不適切会計」 株主 賠償提訴を要求
記事要旨:
阪急電鉄宝塚線の高架工事で同社が大阪府や豊中市から受け取った約400億円の「工事負担金」の会計処理 について、同社の株主2人が4日、「赤字決算を回避する不適切な手法で処理し、会社に損害を与えた」として、取締役6人に対し計8億円の損害賠償請求をするよう求める通知書を同社監査役あてに送付した。コメント:
企業会計原則の注解24は、「国庫補助金、工事負担金等で取得した資産については、国庫補助金等に相当する金額をその 取得原価から控除することができる」として、取得原価から控除する方法(圧縮記帳)と、しない方法の両方を認める書き方になっています。
提訴を求めている株主が、阪急の工事負担金の会計処理のどういう点を問題にしているのかは、記事だけでは全くわかりません。いずれにしても、補助金や工事負担金を圧縮記帳するかどうかという、古くからの問題の決着がついていないということは事実です。
2002年3月2日 日経 三菱地所 含み損一掃 建物含め4300億円
記事要旨:
不動産大手の三菱地所と三井不動産は、2002年3月期に土地再評価法を使って保有する土地や賃貸ビルなどの含み損を一括処理する。三菱地所の処理額は約4300億円、三井不は土地だけで約3550億円。
三菱地所の土地の損失額が大きい物件は東京三菱銀行本館(99年に東京三菱銀行が三菱地所に売却)で、 簿価805億円の土地を約400億円減額する。
三菱地所はビジネスの中心地、東京・丸の内地区に約16ヘクタールの土地を保有している。明治時代に国から払い下げられた土地で簿価はかなり低い。土地については、これをすべて 固定資産税を算出するのに使う価格に置き換えて、そのときに生じる含み益(約9800億円)と含み損(約2800億円)を相殺 する。
建物では約1500億円の評価損を計上。今期の連結最終損益は従来見通しの205億円の黒字から700億円の赤字になる見込み。コメント:
理屈のうえでは、不動産などの時価というのは、互いに独立した、売り急いでいない売り手と、買い急いでいない買い手の間で成立するような値段という抽象的な概念ですが、不動産の実際の時価としては、不動産鑑定評価額、公示価格(から算出される額)、相続税評価額(路線価等)など、様々な評価額が使われています。鑑定評価だけをとっても、使われる鑑定手法や、前提条件によって、時価として算出される金額にはかなり幅があります。
このような評価額の中でも、固定資産税評価額は、一般に、 もっとも低い評価になるといわれています。記事によると、三菱地所は、土地再評価を適用する際の時価として、固定資産税評価額を使っているようです。たぶん、土地再評価法上も、固定資産税評価額が認められているのだと思いますが、それにしても、99年に購入したばかりの簿価805億円の土地を、約400億円も評価減するというのは、評価額が低すぎるためではないかという気もします。(それとも、それだけ割高な値段で買ってしまったということなのでしょうか。)
土地再評価では、純資産を水増しするために使う場合と、(推測ですが)三菱地所のように、なるべく含み益を顕在化させずに、含み損処理に必要な金額だけ、評価を上げればよいという場合では、採用される評価の方法が違うのかもしれません。
2002年3月2日 日経 NTT 資産効率の改善先送り 活用されぬ巨額の含み (会社研究)
記事要旨:
NTTは今年5月にかけ、国内企業が一度に集める額としては過去最大規模とみられる資金調達を実施する。社員約10万人を対象にした退職・出向を柱とする人員合理化に伴い、総額1兆2000億円の退職金や一時金を準備しなければならないからだ。
実際の調達額は社債や借入金の借り換えもあり、2兆円超とみられるが、NTTはこの資金をほぼ全額、社債や長短期の銀行借り入れといった「デットファイナンス」で賄う方針。保有資産を売却したり、証券化したりする 「アセットファイナンス(資産を活用した資金調達)」はいまのところ実施しない見込みだ。
というのも、現時点でNTTドコモとともに「Aa1」(ムーディーズ・インベスターズ・サービス)と、世界通信会社の中で最も高格付けを持つNTTにとって、 社債や銀行借り入れが最もコストが低い調達方法になるためだ。
しかし、NTTの2001年9月中間期末の1株純資産(連結ベース)は40万5269円。株価がこの水準を下回り、2月7日に37万5000円の上場来安値を付けたのは、 NTTが保有する巨額の含みが今後活用される見込みがないと投資家が判断している表れといえる。
巨額の含みを実現して成長分野に再投資する一方、資産規模を極力スリム化する――。NTTは資産効率の改善を本気で考える時期にきている。コメント:
記事では、資産を売却したり、証券化でオフバランス化しないことが悪いことのように書いていますが、社債や銀行借り入れのコストが低いために、わざわざ複雑でコスト高な証券化をやる必要がない、というのは、理屈にあった判断だと思われます。特に、含み益があるような資産であれば、売却した途端に、実現した含み益部分に課税され、手取り金額は減ってしまうので、キャッシュ・フローからいっても不利になります。
また、NTTの株価が一株当たりの純資産簿価を下回っているのは、含み益を活用しないからというふうに書かれているのも、腑に落ちません。企業評価に関するテキストなどを読むと、事業から得られるキャッシュ・フローから計算される金額に、投資用の不動産や有価証券など、本業と関係が薄く、いつでも売れるような資産の時価を加えた金額が、企業の評価額になるとされています。アナリストでもないので、詳細な分析をやる能力もありませんが、常識的に考えて、NTTの株価が低迷しているのは、含み資産を実現させないからというより、本業から得られるキャッシュ・フローの先行きが不透明であり、また、海外投資の失敗にみられるように、新しい事業への投資もうまくいっていないと市場が評価しているからではないでしょうか。
2002年3月1日 日経 ミサワ、UFJに700億円支援要請
記事要旨:
ミサワホームが主力取引金融機関であるUFJ銀行に対し、700億円の金融支援を要請したことが28日明らかになった。
UFJ銀行はミサワ向け債権700億円を他社に売却し、 350億円前後の損失を負担する見込み。ミサワはその転売された債権(ミサワにとっては債務)を買い取るために、350億円分の優先株を発行する方向で検討している。
2002年3月期に350億円前後の債務買い取り差益を特別利益に計上するが、土地評価損などの特別損失を穴埋めしきれず、連結最終損益は大幅赤字になる見込み。コメント:
一連の取引を分解すると、(1)銀行による債権の(おそらく時価による)売却(売却損350億円の計上)、(2)増資(優先株の発行)による資金調達、(3)調達された資金による債務の償還(債務償還益350億円の計上)、となります。
債務免除とデット・エクイティ・スワップを使って、同じような結果を出そうとすると、(1)債務免除(銀行が債権放棄損350億円計上、ミサワは債務免除益350億円計上)、(2)350億円のデット・エクイティ・スワップ、となりますが、債権放棄ではなく債権売却という形式を採ったのは、何か理由があるのでしょう。
2002年3月1日 日経 米インテル 業績開示を一本化 「実質ベース」発表とりやめ
記事要旨:
半導体最大手の米インテルは27日、来年1−3月期の決算から企業買収や資産売却に伴う一時的な費用や利益を独自判断で除いた「実質ベース」での業績開示 をやめ、企業会計基準に基づく業績に一本化する方針を明らかにした。
実績ベースの業績開示にはルールがなく、各企業がどの損益要因を除くかを決めている。このため、実際は 赤字でも「実質黒字」を強調する決算発表も多い。企業側の操作の余地が大きいとして昨春から批判が高まり、エネルギー大手エンロンの経営破たんを機に噴き出した企業会計不信の伏線となっていた。
米証券取引委員会(SEC)は昨年12月4日、「投資家に誤解を与えかねない」として、米上場企業に対し決算発表の際に実質利益を安易に使わないよう警告。1月16日には有力ホテルチェーンのトランプ・ホテルズ・アンド・カジノ・リゾーツに対し、決算発表で実質利益を使い投資家に誤解を与えたとして是正命令を出している。コメント:
米国では、「実質ベース」の数値を、正式の決算とは別に、企業が勝手に公表することが問題になっているわけですが、わが国でも、臨時的な損失であると会社が判断した損失を、なるべく特別損失に持っていって、経常損益を良く見せようとする傾向があります。わが国の場合は、米国の「実質ベース」利益とは異なり、企業会計原則などに、 経常損益か特別損益かを区分するルールがあり、それにしたがって、処理されることになっていますが、会社の判断に委ねられている部分もかなりあります。
最近(といっても2年ほど前ですが)では、 退職給付会計導入時の変更時差異の償却を、営業損益と特別損益のどちらに区分するかということで、議論になったという記憶があります。