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企 業 財 務 記 事 ウ ォ ッ チ ャ ー 2002年6月


2002年6月30日 日経  松下の退職年金減額騒ぎ 身内意識の甘え引きずる

記事要旨:
 松下電器産業が退職年金の給付引き下げを対象者に求めたところ、一部から反発を招き部分的に引き下げを凍結する騒ぎに発展した。
 問題の年金は「福祉年金」と呼び、創業者の松下幸之助氏が創設した。1800万円を上限に 退職金の半額を会社が預かり、 固定金利年7.5%で運用して年金を給付 する。1998年に改定するまでに退職した人の給付利率は10%である。しかも終身年金だ。
 会社の負担額は年間約130億円に上る。今回の減額措置で減るのは20億円程度である。

コメント:
 記事では、松下の経営体質を問題にしていますが、ここでは、この「福祉年金」の会計処理について考えてみます。
 まず、この「福祉年金」を、退職者を対象にした一種の従業員預金であると考えると、負債勘定には、金銭債務として退職者から預かった金額を計上するということになります。ただし、7.5%という現在の市場金利を遙かに超えた利息を支払いつづけなければならないので、 負債の時価が貸借対照表計上額を大きく上回る含み損の状態となっています。
 これが、現役の従業員を対象にした従業員預金であれば、7.5%と市場金利の差額(利子差額)は、従業員が将来提供する労働に対する追加的な手当であると考えて、期間の経過に対応して費用処理していけばよい(何もしなければそういう処理になる)と思いますが、「福祉年金」の場合は、退職者が対象なので、労働の提供は完了しており、この理屈は成り立ちません。
 そうすると、退職者から退職金の一部を預かった時点で、(1)将来発生する利子差額を引き当て計上する、または、(2)債務を時価評価し、預かった金額との差額を退職金に類するものとして費用計上する、という処理が少なくとも理屈上考えられます。
 このほか、退職給付会計の対象に含めて処理することも考えられますが、難しい面もありそうです。
 松下では、どのような会計処理をしているのでしょうか。

2002年6月29日 日経  ゼロックス 5年間で売上高64億ドル水増し

記事要旨:
 米事務機器のゼロックスは28日、1997−2001年の5年間に収入の前倒し計上などで、総額64億ドル(約7600億円)の売上高を水増ししていたと発表した。同日中にも米証券取引委員会(SEC)に修正申告する。
 ゼロックスによると、前倒し計上を修正した結果、97−99年は売上高と税引き前利益が減少、2000−2001年は増加する。差し引きすると、5年間の合計売上高は 19億ドルの下方修正となる。
 SECは4月、97−200年の4年間にゼロックスが水増しした売上高は総額30億ドルに達すると推計し、1000万ドルの民事制裁金を科した。これを受けて同社は2001年分も含め会計監査をやり直した。

コメント:
 ゼロックスの粉飾は、リースの売上高のうち、リース期間にわたって収益計上される利息やサービス売上を、販売時に全額収益計上する製品売り上げにしていたというものです(2002年4月12日「米SEC ゼロックスに制裁金 利益水増しで1000万ドル」参照 )。4月にこの問題が公表されたときには、利益水増し額は15億ドルとされていましたが、最初の推計がずさんだったのか、最終的に19億ドルになってしまったようです。
 ゼロックス自体は、これが粉飾ではないにしても、不適切な会計処理であることを認めているようですが、前の監査人であるKPMGは、米マスコミによると「会計処理が間違っているとSECが考えていたのなら、KPMGが監査報告書を出す前に、問題提起すべきであった」「決算の修正は、当期の売り上げや利益をよく見せる結果となる。ゼロックスのご都合主義である」といった強気の発言をしているようです(訴訟を意識してそういっているだけなのかもしれませんが)。
 なお、記事で修正申告といっているのは「restatement」のことのようです。restatementというのは、過年度の決算書を修正することであり、この場合は、修正された決算書をSECに提出するということです。

参考: NY Timesのサイトより

2002年6月28日 朝日  住専破綻訴訟、監査法人も和解金   元役員らと2000万円

記事要旨:
 経営破綻した住宅金融専門会社(住専)「日本住宅金融」をめぐり、粉飾決算を見逃したなどとして、元株主が会計監査を担当した監査法人や住専元役員らの責任を追及していた訴訟は、被告側が総額2000万円を支払うことで和解が成立した。 監査法人が金銭負担に応じるのは初めてで、事実上責任を認める形となった。
 原告は大阪の市民団体「株主オンブズマン」の公募に応じた日住金の元株主29人。日住金の元役員7人と同社の決算を監査していた朝日、三興の2監査法人を相手取り、96年に大阪地裁に提訴した。
 今月12日に合意した和解条項には「被告らにおいて、法的責任を認めるものではない 」との一文が盛り込まれているが、原告側代理人は「 実質的に認めたものと理解している 」と話している。
 今回支払われる和解金は請求額の22%にあたり、監査法人と元役員とで分担して支払うという。

コメント:
 和解金自体は、金額的には2000万円(しかも元役員と分担するため監査法人負担はその一部分)程度であり、大監査法人にとってはそれほど負担となる金額ではないと思われますが、監査を巡る民事訴訟で監査法人が金銭を支払うという事実は、大きな意味があるのかもしれません。わが国では、業務停止などの行政処分を会計士が受けることは、従来からありましたが、民事訴訟で金銭を支払ったという話はあまり聞きません(記事に書かれているように。本当に今まで全くなかったのかは、よくわかりませんが)。日本も訴訟リスクを実際に経験したという意味で、米国に近づきつつあるといえます。 

参考: 朝日監査法人のサイトより

2002年6月27日 日経  38億ドル粉飾決算  瀬戸際の米ワールドコム 

記事要旨:
 米2位の長距離通信会社ワールドコムで5・四半期にわたり総額38億ドル (約4560億円)強もの利益をかさ上げしていた粉飾決算が発覚した。同社の株価は1ドルを大きく割り込み、破綻回避へ銀行団とのぎりぎりの交渉が続いている。
 ワールドコムでは費用として計上すべき電話回線のコストを費用とせず、設備投資として処理 して利益を水増しした。

コメント:
 たしかに、修繕費などの経費と資本的支出の区分というのは、会計監査でも税務調査でも、しばしば問題となる点です。しかし、ワールドコムの場合は、米マスコミによると、目標利益を達成するのに必要な金額だけ経費から資産に振り替えていること、このような経費の振り替えについて、監査している会計士に相談がなかったこと、資産に計上する際の根拠資料が全くないこと、などから、会計基準の解釈の問題以前の完全な粉飾決算である疑いが強まっているようです。粉飾の手口としては、非常に単純であり、金額も巨額です。会計監査でなぜ発見できなかったのか、疑問に感じます。
 また、いくつかの報道でもふれられていましたが、この事件は、利益数値よりも、客観的で操作しにくいとされるキャッシュ・フローの数値もあてにならないという例でもあります。キャッシュ・フローは減価償却、資産の評価減、引当金などによっては、影響を受けませんが、経費の支出にするか、設備投資の支出にするかという判断には左右されます。ワールドコムは、営業キャッシュ・フローのマイナス要素となるべき支出を、投資キャッシュ・フローに区分することにより、営業キャッシュ・フローを使って、設備投資を積極的に行っている企業であるというイメージを与えることができたのかもしれません。
 
参考: ワールドコムのサイトより 、NY Timesのサイトより         

2002年6月22日 NIKKEI NET  大昭和運輸が自己破産、負債総額は約360億円

記事要旨:
 静岡県富士市の物流会社、大昭和運輸が6月20日、静岡地裁に 自己破産を申請 し、21日に破産宣告を受けた。大昭和製紙の菊池恒雄専務が22日、富士市内で記者会見し明らかにした。負債総額は約360億円。大昭和運輸は大昭和製紙が 25%を出資する関連会社で、紙製品や資材の運送を担当してきた。大昭和運輸内部で今月に入って 不正経理が発覚し、資金繰りに行き詰まった。大昭和製紙のグループ再編で製紙関連の物流は今月初めに 既に別会社に移管されている。

コメント:
 記事の例で気になるのは、不正経理のため行き詰まったといいながら、その 不正の内容が全く明らかになっていない ことです。大昭和運輸は大昭和製紙の関連会社(同社ホームページによれば持分法適用会社)であり、もし、不正経理が前期決算以前から続いていたとすると、大昭和製紙自体の決算(特に大昭和運輸の決算数値を取り込んでいる連結決算)が正しかったのかどうかということも考えざるを得ません。
 マスコミは、エンロン事件など海外の不正経理については、最近熱心に伝えていますが、国内の不正経理については追求しようという姿勢が欠けているようです。

2002年6月20日 日経  ストックオプション浸透 上場企業の3割983社が導入

記事要旨:
 米コンサルティング会社タワーズペリン東京支店と日興コーディアル証券は19日、ストックオプション(自社株購入権)の導入状況をまとめた。1997年の解禁以降、導入企業は新興企業向け市場も含めた全上場企業の3割にあたる983社に上り、業績連動型の報酬として制度が浸透してきたことを示す結果となった。

2002年6月18日 日経夕刊 国際会計 ストックオプション 人件費計上義務付け 利益底上げ防ぐ

記事要旨:
 国際会計基準理事会(IASB)は、ストックオプション(自社株購入権) を人件費と見なして 費用計上する新会計制度を2005年から導入する方針を固めた。
 IASBは17日、ベルリンで理事会を開き、ストックオプション会計を協議した。同日中に昨年来の議論をほぼすべて終え、新制度の導入で合意した。早ければ10月中にも具体案を公表する。
 企業は役員や従業員にストックオプションを付与した時点で、保有者が将来得られるもうけとみなされる金額を人件費として一括計上する。保有者が一定期間に権利行使して現物の株式を購入、即座に売却して現金に換えると仮定し、権利行使による購入費用と売却によって得る収入の差額をオプション価値・将来得られるもうけと見なす。
 最近のストックオプションは権利行使価格を低く設定するなどして、企業側が役員や従業員にほぼ確実にもうけをもたらすよう設計するものが増えている。
 現在ストック・オプションは損益計算書に反映されない ため、利益を多く見せたい企業が現金による報酬や給与の代替として乱用するなど隠れ人件費の性格が強い。
 IASBがストックオプションの人件費計上を義務付けることで、米国の出方が焦点になる。 米産業界は新基準導入に反発 しているが、投資家などは採用を強く促す姿勢だ。
 米財務会計基準審議会(FASB)は1990年代半ばに今回のIASBと同様の会計基準を作ろうとしたが、挫折した経緯がある。

コメント:
 記事を読むと、ストック・オプションを人件費と見なす考え方が、米国基準でも採用していない国際会計基準独自の全く新しい考え方であるかのような印象を受けます。しかし、米国基準の解説などを読んだところによると、ストックオプションを与えた時点ですでに株価がオプションの行使価格を上回っているような場合には、現行の米国基準でも 株価と行使価格の差額(本源的価値)部分を、費用計上するようです。したがって、ストック・オプションが企業にとって費用であるという考え方自体は、以前からある考え方のようです。
 IASBで導入しようとしているのは、ストック・オプションを 時価 で評価し、その金額を費用計上する方法です。時価であれば、付与した時点では株価が行使価格を下回っていても、行使期間中に上回る可能性があれば、何らかの価値があるということになります(具体的には、金融工学で出てくるようなオプション価格算定のモデルを使います)。したがって、それだけ費用計上される額が大きくなり、また、時価算定も難しいため、海外でも強い反対があるようです。
 わが国では、商法改正によりストック・オプションに関する制限が緩和され、さらに、ストック・オプションと関係の深い自己株式の会計処理が資本取引説で基準化されました。このような背景から、わが国でも、ストックオプションを含む自社株を使った支払形態の利用が、ますます増えると思いますが、会計基準が追いついておらず、野放し状態となる危険があります。いきなり、IASBの新基準に追いつくのは難しいとしても、現行米国基準並の網をかぶせる必要はあると思われます。

参考: IASBのサイトより

2002年6月19日 日経  監査強化へ会計士増員 金融庁、抜本見直しで信頼回復

記事要旨:
 金融庁が公認会計士制度の見直しに乗り出す。相次ぐ企業破たんで会計監査の信頼性が揺らいでいるためで、人口対比で米国の十分の一に過ぎない 公認会計士の数(現在1万4000人)を増やすのが柱。
 金融庁は、会計監査の根本である公認会計士制度そのものを見直す方針だ。すでに金融審議会の公認会計士制度部会に作業チームを設けて、検討に入っている。自民党の企業会計小委員会も独自に制度改革の検討を開始。2年後をめどに 公認会計法などの関連法制を整えるよう金融庁への働きかけを強める意向だ。
 見直しの柱は公認会計士人口の大幅増。従来の会計監査を強化するだけで、人員増が必要となる。加えて企業統治の観点から内部監査を導入する企業も増えており、企業や行政の組織内で働く会計専門家の需要が増えてくるのは確実とみられる。
 米国の約33万4000人 会計事務所で働く会計士数は13万2000人 )に比べて(日本の公認会計士の数は)極めて少なく、需要の増大が見込まれるなか、経済界には「現在の4倍」を目標にすべきだとの意見もある。
 大手監査法人は、限られた人数の会計士試験合格者の獲得にしのぎを削っている。会計士の人数拡大は急務といえる。

コメント:
 この記事は、米国の会計士制度をモデルにして、日本の会計士の数を増やすべきだといっているようですが、会計事務所で経験を積んだ後、一般企業に転職する会計士が多い米国と、監査法人をやめると、独立して税理業務などをやる会計士が多い日本とはかなり事情が異なります。日本でも、徐々に一般企業への転職は増えていると思いますが、雇用の流動性が低い日本の状況で、会計士への一般企業の求人が飛躍的に伸びることがあるのでしょうか。
 それでは、監査業務でどれだけの増員が必要かとなると、たしかに理屈のうえでは、監査基準が強化されたり、四半期決算が導入されれば、それに見合うだけの人員を投入しなければならないはずですが、その費用をまかなうのは、最終的にはクライアントからの報酬です。この不況下で、直接的なメリットがない会計監査のために、大幅に報酬を増やしてくれるような理解のある会社は少数派でしょう。大手監査法人は現在人手不足気味のようですが、これは監査業務の拡大によるものというよりは、退職者の補充のためという側面もあります。また、バブル崩壊後、監査法人が急に求人を絞って、多数の士補浪人を出したのも、つい最近の話です。
 会計士を大幅増員し、監査を強化するとともに、経済界全体に会計専門家を供給するという米国をモデルにした制度の理念はわかりますが、これまでの経験からすると、当事者としては、懐疑的にならざるを得ません。
 なお、記事によれば、会計士制度見直しの一環として、資格登録制度、監査法人の有限責任制導入、広告規制の緩和なども取り上げられているとのことですが、これらは、すでに大蔵省時代に公表された報告書で議論されている項目であり、特に目新しいものではないようです。

参考:
「監査制度を巡る問題点と改革の方向〜公認会計士監査の信頼の向上に向けて〜 」(2000年6月)(この報告書を簡単にまとめ 監査制度小委員会報告書の要点 」もご覧下さい。)
公認会計士試験制度のあり方に関する論点整理 」(2000年6月) 

2002年6月14日 日経  生保協会 契約時価会計 米独と反論書

記事要旨:
 生命保険協会は13日、国際会計基準審議会(IASB)が検討している 保険契約 の時価会計に反対する意見書を、米・独の保険協会と共同でIASBに提出したと発表した。保険契約の時価を適正に算出するのが難しく、団体保険に加入する企業などへの影響も大きいと指摘している。
 保険契約の時価会計について、IASBは保険契約が将来もたらす損益を現在価値に割り戻し 、貸借対照表と損益計算書に反映させることを検討している。生命保険協会は、将来の利益を現在価値に戻す際の計算が保険会社の都合の良いように加工される可能性があると強調している。

コメント:
 金融商品会計の実務指針によると、保険契約とは、「保険者が特定の事故の発生によって生ずる損害額等を通常保険金支払の形で填補することを約する一方、保険契約者が保険料の支払義務を負う」契約であるとしています。 金融商品には該当しないとしていますが、わざわざ実務指針で検討しているということは、保険契約が、時価評価される金融商品(デリバティブ)と非常に似ていることの表れではないかと思われます。
 つまり、非常におおざっぱにまとめると、保険会社は、契約者に対し、何らかの事象が生じた場合に保険金を受け取ることができるというオプションを売り、その代金(オプション料)を一括払い又は分割払いで受け取るという契約が保険だということになります。売却したオプションの価値は、これも非常に雑な説明ですが、将来保険金として支払う金額(確定金額ではないため確率計算を行う)の割引現在価値となります。他方、保険料収入の価値は、将来受け取る保険料の割引現在価値となります。IASBの提案は、このような、保険金支払義務の時価と保険料収入債権の時価を貸借対照表に計上させようという提案のようです。
 デリバティブの時価評価を経験した今となっては、このような提案も荒唐無稽なものとは思えません。むしろ、逆ざやの契約を抱えて苦しんでいる日本の保険会社の実態を表すために必要な会計処理方法のようにも思われます。

参考: IASBのサイト  生命保険協会のサイト

2002年6月11日 日経夕刊  伊藤園、役員の賞与退職金全廃 自社株購入権を付与

記事要旨:
 伊藤園は11日、取締役の賞与と退職金制度を廃止 することを決めた。代わりに本体と子会社の取締役に ストックオプション(自社株購入権) を付与する。これに伴い初の自社株買いを実施し、発行済み株式の1%強にあたる60万株、25億円を上限に買い入れる。
 取締役の賞与と退職金制度は2003年4月期に撤廃する。前期決算に基づいて利益処分で支給する今年8月の役員賞与については、従来通り支給するが、来期からはゼロとする。
 伊藤園は業績連動型の報酬制度の導入で、取締役の志気を高め、収益力向上につなげる。退職金関係の費用を抑え、業績の変動リスクを抑える狙いもある。現在、 年間2億円弱を計上している役員退職慰労金の積み立ては、来期からゼロとなる。

コメント:
 ストック・オプションなど自社株を使った報酬の支払いについて、現行の賞与や退職慰労金とは別枠で制度を設ける場合には、それほど目立ちませんが、記事の例のように、現行の賞与や退職金に取って代わる場合には、問題点がはっきりします。
 まず、自社株を使うことによって、税効果が失われることがあげられます。1億円の役員退職金を支払うのに、現金を使う場合、(税務上損金として認められる枠内であれば)税率を40%とすると、株主の実質的負担は6000万円(=1億円×(1−0.4))で済みます。しかし、時価1億円の自社株を使った場合には、損金として認められないので、役員に渡した1億円分だけ、まるまる株主の負担になります。つまり、株主にとっては、自社株方式への変更により、実質的に負担増になる可能性があります。(ただし、役員賞与については、もともと損金にはなっていないので、税効果の影響はありません)。
 2番目の問題点は、会計処理です。記事の例では、役員賞与については、従来から利益処分だったので損益には影響していなかったわけですが、役員退職金については、毎年約2億円弱を(おそらく引当金繰入額として)費用計上していたのが、ゼロになり、かなり大きな費用減となります。しかし、例えば、時価1億円の自社株をタダで退職役員に譲渡すれば、その分だけ、既存株主の実質的持分は減少することになります(株式の時価総額は変わらないはずなので)。会計上費用に計上されているかどうかにかかわらず、株主はそれだけの負担を負っているのです。
 このような株主の負担を会計上費用計上すべきかどうかについては、議論があります。一種の株式有利発行にすぎない、既存株主から役員への株式価値の移転であり、企業にとっての費用ではないと考えれば、譲渡価格ゼロ円で自己株式を譲渡したという会計処理を行えばよいということになります(伝えられるところによると、新会計基準設定主体である企業会計基準委員会は、このような見解をとっているようです)。
 一方、企業が役員から提供されたサービスの対価として、自社株(又はストックオプション)を譲渡したと考えれば、企業は、受け取ったサービスに見合った費用計上を行うべきということになります。
 常識的には、後者の方が正しいと思うのですが・・・。 

参考: Lotus21より

2002年6月7日 日経  企業会計基準委 債務の株式化 会計基準作成へ

記事要旨:
 国内の会計基準を決める民間団体の企業会計基準委員会(ASBJ)は、企業支援策として広がっている 債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ) の会計処理基準作成に乗り出した。来年春までに基準を決め、 2003年3月期から適用する方針。
 債務の株式化は、銀行が保有する再建企業向けの債権(企業にとっては債務)を、その企業の株式(ほとんどが優先株)に振り替えて受け取る手法。
 基準作成では優先株をどのように時価評価するか が最大の焦点。銀行は現在、貸出債権を同額の優先株に転換すると、損失リスクを抱えていてもその額面のまま貸借対照表に載せることが可能。時価評価を原則とした金融商品会計に矛盾するとの指摘が多い。

コメント:
 債務の株式化について、ASBJが基準設定作業に入るというのはよいことだと思いますが、優先株の時価評価のやり方が焦点になっているという点が気になります。
 最近1、2年の間に、債権の株式化は、1社当たり数百億円から数千億円の規模で既に行われています。銀行からすると、銀行の大切な財産である貸出債権と引き替えに、不振企業の優先株や普通株を受け取っているわけですが、受け取った株式の評価の方法がわからないということが、あり得るのでしょうか。もし、わからないのだとすると、 銀行の大切な財産と交換に、いくらの価値があるのかわからないような資産を受け取るという取引を行った ことになり、一種の背任行為になってしまいます。
 たしかに優先株の評価に難しい面があることは想像できますが、大手銀行は、いずれも、企業評価・株式評価のプロである投資銀行部門や証券会社部門を傘下に抱えているのですから、そういったところを使って、合理的な見積もりを行うことは可能なはずであり、実際そうやっているはずです。
 ASBJも、優先株の評価方法といった各論に時間をとるのではなく、債権者がデット・エクイティ・スワップで受け取る株式は、 交換時の時価を取得原価とするという原則を直ちに明らかにしてほしいものです。
 債務の株式化については、以上のような債権者側の会計処理の問題と、債務者側の会計処理の問題があります。債務者側の処理については、商法との関係もあり、時間がかかるのかもしれません。もしそうであれば、債権者側の処理を先行して検討・公表して、2002年9月中間期の銀行決算が適正に行われるようにすることが必要ではないでしょうか。

2002年6月6日 日経  東証・金融庁 上場企業 四半期決算義務づけ

記事要旨:
 東京証券取引所と金融庁は東証1、2部に株式を上場している企業に 四半期業績の情報開示 を義務付ける方針を決めた。上場企業は早ければ 2004年4−6月期 から四半期決算を公表する。
 上場企業の四半期決算の開示は、東証の規則改正 で義務付ける。具体的な内容は 中間連結財務諸表の作成基準 などを参考に検討。国内の会計基準を整備する財団法人・財務会計基準機構に、四半期決算をまとめる際の指針作成を要請する方針だ。日本公認会計士協会とは 四半期決算の会計監査の在り方を協議する。
 東証は四半期決算の開示に先だって、2003年4−6月期から上場企業に四半期の業績概況の公表を義務付け、環境整備を進める。損益計算書や貸借対照表の開示は強制しないが、文章による業績の説明や、公表した業績見通しの修正などを求める。

コメント:
 記事によると、マザ−ズの四半期開示と同じように、東証独自の開示ルールの中で四半期開示を決めるようですが、東証上場会社すべてが対象となるのであれば、影響が全く違ってきます。
 四半期開示の具体的内容については、「中間連結財務諸表作成基準」を参考にするようですが、基準で定められているいわゆる実績主義の考え方を、四半期決算で厳密に適用できるかどうかも若干疑問です。というのは、半期決算については、半年決算だった時代の名残もあってか、実績主義になる前から、(販管費の調整など中間特有の処理を除いて)ほとんど年度決算と同じ決算を行ってきた会社が多いと思いますが、四半期決算ではそうはいきません。子会社も含めて十分な事前準備が必要となりそうです。特に、建設業などはたいへんそうです(何らかの猶予措置があるのでしょうか?)。
 また、金融商品会計基準導入時に、中間決算で行った有価証券の減損処理を本決算で戻し入れるべきかどうかが問題となったように、四半期も含めた中間期の決算と年度の決算の関係(中間期をあくまで仮決算と考えるのか、あるいは、中間期を積み重ねたものが年度決算であると考えるのか)についても、四半期決算を本格的に導入するのであれば、もう少し整理が必要だと思われます。
 会計士としては、会計監査についても気になります。海外では、年度決算は正式の監査、四半期はレビューという2種類しかないようですが、わが国では、監査、中間監査(半期決算)、レビュー(半期以外の四半期決算)という3つの監査を使い分けることになるのでしょうか。
  
参考:「 四半期財務情報の開示に関するアンケート調査結果 」(2001年12月公表)(東証のサイトより) 

2002年6月4日 日経金融  資本準備金での配当断念 大手銀検討 会計原則抵触のおそれ

記事要旨:
 大手銀行は、株主資本の一部である資本準備金を使った配当は断念 する方向で検討に入った。会計の基本原則に抵触する恐れがあるため。
 政府は昨年の商法改正で、資本準備金を含む法定準備金を取り崩し配当原資(剰余金)に回せるようにした。これを受け、三井住友銀行、UFJ銀行などは相次ぎ法定準備金を取り崩した。
 だが、会計の基本ルールである企業会計原則は、株主への配当は蓄積した利益で実施するよう求めている 。もともと資本準備金を配当にあてる行為は出資した資金の返還と見るべきで、 配当はできない との見方がでていた。この問題を検討してきた企業会計基準委員会がこのほど「取り崩した資本準備金による配当は、投資額の払い戻し」と見なし、大手銀は配当に資本準備金を使わない方針を固めつつある。
 大手銀は株価が現状を維持した場合は、利益準備金か今期の利益で公的資金への配当を維持できる見通し。

コメント:
 企業会計原則にしても、企業会計基準委員会(ASBJ)から出された新基準にしても、資本準備金を取り崩した金額を配当してはならないなどということは、一言もいっていません、
 企業会計原則には、「資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない 」と書かれていますが、資本剰余金を株主に払い戻してはいけないとはいっていません。また、ASBJの公表した新基準も、資本準備金を取り崩した金額は利益剰余金と区別すること、また、配当した場合には、 利益剰余金からの配当と区別して開示 することを求めていますが、資本準備金取り崩し益の配当自体は禁じていません。
 ようするに、会計基準は、企業の行った取引を正しく開示するためのルールを決めているだけであって、企業の行う取引自体を規制はしていないということです(これは商法などの法律の役目です)。
 銀行は、資本準備金の取り崩し益を配当することが、株主の利益にかなうと考えるのであれば、堂々と配当すればよいのです。会計基準に遠慮する必要は全くありません。

2002年6月2日 日経  米マイクロソフト 会計処理問題SECと和解

記事要旨:
 米証券取引委員会(SEC)がマイクロソフトの会計処理を調査していた問題で両者が和解したことが明らかとなった。
 複数の米メディアの31日の報道によると、SECは30日、マイクロソフトが1995年から98年にかけ不正な会計処理をしたと認定。ただ、投資家には実質的な損害を与えなかったと判断し、民事制裁金などは科さない。
 マイクロソフトの会計処理で問題視されたのは、好業績の時に 引当金などを必要以上に計上 して利益を少なめにし、業績が伸び悩んだ時に、 引当金を取り崩して利益を増やす 手法。

コメント:
 この記事のように、利益をできるだけ平準化 したいというのは、どこの国の経営者も考えることのようです。
 問題となっている利益操作のための引当金は、米国で「cookie-jar reserves 」といわれており、SECはかねてから問題視しているようです。一種の逆粉飾ですが、引当金を取り崩した年度は、取り崩し額だけ、実際より、水増しされた利益が表示されることになり、立派な粉飾決算です。米国系の会社と関わった私のごく限られた経験では、向こうの会社は、日常業務のレベルでかなり気軽に引当金を使っているようです(その会社だけなのかもしれないので、一般化するつもりはありませんが・・・)。例えば、月次決算で予算よりもよい数字が出ると、引当金勘定を使って超過分をためておいたりします。もちろん、正式の決算ではこのようないい加減な引当金は精算して、きれいにするわけですが、監査の対象とならない四半期決算などでは、このような類の引当金を残したまま公表するということが、会社によってはあるのかもしれません。
 日本の場合は、逆に、引当金は最初から悪者扱いされており、開示面では、どんなにつまらない引当金でも、会計方針で詳しく計上基準を書かされたり、明細表で増減の明細を記載したりします。目的外の取り崩しがあったりすると、特別利益に区分しなければならないなど、かなり厳しく監視されているといえます。
 記事の例のように、引当金を使って利益操作をするというのは問題ですが、日本のように、引当金だけ、やたらと厳しい開示を求めるというのもバランスを失している感じがします。
 
参考: ワシントン・ポストのサイト

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