
企 業 財 務 記 事
ウ ォ ッ チ ャ ー 2002年11月
2002年11月30日 日経 金融再生シナリオ始動 作業工程表を発表
記事要旨:
竹中平蔵経済財政・金融担当相は29日、金融再生に向けて政策の手順を示した「作業工程表」を発表した。
工程表は2003年3月期決算にも照準を定めている。企業の将来性に着目した ディスカウント・キャッシュ・フロー(割引現在価値)と呼ばれる新しい債権評価 を導入。
複数の銀行で見方が別れていた不良債権に対する判断も適正な評価へ統一 するよう来年1月からの検査で求める。
新しい公的資金制度の創設と、将来の税還付を見込んで自己資本を積み増す 繰り延べ税金資産(税効果会計) の算入方法の見直しは、金融審議会の検討 に委ねられる。
公的資金の新制度は年内に検討に着手、来年6月ごろまでに結論を出す。繰り延べ税金資産は年内に検討を始めるが、期限を設けていない。見直し時期は来年度以降になるとみられる。
コメント:
工程表の中から会計に関係のある項目を選んでみました。
まず、DCF法による債権評価ですが、金融商品会計基準では、キャッシュ・フローを合理的に見積ることのできる債権 は、そのキャッシュ・フロー(元本と利息)を当初の約定利子率で割り引いた金額 で評価することができるとされています。従来は、合理的に見積もることができないというような理由で、DCF法を使わなかったようですが、突き詰めて考えてみれば、将来いくらキャッシュが回収できるかがわからなければ、貸倒見積高を出せるはずもないので、DCF法を強制するというのもわからないでもありません。具体的には、プロジェクト・ファイナンス的なものであれば、そのプロジェクトから見込まれるキャッシュ・フローを見積り、そうでなければ、債務者である会社の事業全体で生み出すキャッシュ・フローを見積って、次に、そのうちの自行の元本と金利の返済にあてることができる金額を見積るということになるのでしょう。そのときにバラ色の再建計画に基づいてキャッシュ・フローを見積もれば、評価額はいくらでも大きくなります。DCF法の具体的な方法は会計士協会で今後まとめるのでしょうが、どの程度厳しく枠をはめるのかによってだいぶ変わってくるような気もします。
割引率は、現在の金利水準と債務者の信用リスクを反映した利率や、現在の実際の貸出金利ではなく、当初の約定利子率を使うことになっています。つまり、当初予定していた利回りが稼げるのなら債権の価値は落ちていない(逆に契約変更して金利減免したような場合は、変更後の約定どおり回収できたとしても債権の価値は低下している)という考え方だと思います。
債権の評価(債務者分類や引当率の決定)は各企業がその責任で行うべきであって、無理に統一化するのもおかしな話ですが、つい最近まで、税務の画一的な引当率でやっていたわけですから、強く反対することもできません。産業再生機構に実質簿価で債権を売却するという話になれば、画一的な引当率でなければうまく機能しないでしょう。
税効果会計の見直しについては、金融審議会(会計基準は担当しない)に回されるということなので、会計基準(または実務指針など)自体を変えるということではなく、銀行の自己資本規制の観点からの見直しなのでしょう。一般企業への直接的な影響はなさそうですが、繰り延べ税金資産に厳しい目が注がれるという状況に変わりはありません。
2002年11月30日 日経 ACリアル 最終黒字2億6400万円 9月中間
記事要旨:
10月1日にフジタから社名変更したACリアルエステートが29日発表した2002年9月中間連結決算は、最終損益が2億6400万円の黒字(前年同期は56億4000万円の赤字)となった。
売上高は2006億円と前年同期比21%増えた。工事進行基準の適用範囲を広げたことで売上高が577億円、総利益が38億円膨らんだ 。複数の銀行から債務を低価格で買い戻し、特別利益に債務買い戻し益41億円 を計上した。
コメント:
工事進行基準の適用範囲を広げただけで、売上高が3割以上増えるというのは理解しにくいところです。適用範囲を広げる場合、通常は、 変更した年度の新規受注分から新しい基準で会計処理するので、極端な変動はないはずです。
債務買い戻し益については、ACリアルエステートに対する債権の評価がそれだけ低かったということを意味するので、まっとうな利益とはいえません。一種の債務免除益と考えることもできます。それにしても、買い戻しのための資金はどこが融資したのでしょうか。
2002年11月29日 日経 税収至上主義からの離脱 大磯小磯
記事要旨:
市場の不信を一掃する政策の決定打を打ち出せない根本は旧大蔵省以来の財務・国税当局の税収至上主義にあり、そこからの離脱が不可欠だ。
第一は、税効果会計見直し問題の迷走。
米国では、銀行が自己裁量において回収不能と査定する不良債権は無税償却が認められる 。さらに1987年から93年に至る金融危機局面では、資産規模5億ドル以上の銀行に対して不良資産処理損失の繰越控除5年、繰り戻し税金還付10年が実施された。
米国並みに銀行の自己裁量による無税償却と過去の有税償却のキャッシュバックを認めれば、公的資金を投入せずに不良債権処理と自己資本比率の維持が可能となるのではないか。
コメント:
いくら米国の税制が企業寄りだとしても、貸倒損失や貸倒引当金の繰入について、企業の自己裁量で計上したものをすべて認めてはいないはずです。結論はともかく、議論が少し雑すぎると思います。
2002年11月28日 日経 ストックオプション費用計上 英、全企業に義務 2004年から
記事要旨:
英国の会計基準審議会(ASB)はストックオプション(株式購入権)を費用計上 する会計処理を、2004年1月から未上場を含むすべての国内企業に義務づける方針を固めた。
ASBは国際会計基準理事会(IASB)が今月初旬に公表したストックオプション費用化の会計基準案を国内基準に当てはめる。英国を含む欧州連合(EU)加盟国の上場企業は2005年から国際会計基準を採用しなければならない。英国はストックオプションに関する国際基準をEU全体より1年早く導入し、 対象を未上場企業にも広げることで自国の会計への信頼性を高めることにした。
コメント:
ストックオプションを付与時に時価で評価 して費用化するという流れは、国際的にはほぼ固まったようです。
ただし、気になるのが、未上場企業も対象とするという点です。未上場企業の場合、ストックオプションの時価を算定するために必要な株価やボラティリティに関する情報は入手困難と思われます。この点をどのように解決するのでしょうか。
参考: ASBのサイトより 、FASBのサイトより
2002年11月28日 日経 劣化する自己資本 含み損の処理、道半ば 薄氷の金融機関決算 上
記事要旨:
三菱東京フィナンシャル・グループを除く、大手銀行が黒字、不良債権残高も減少−−大手銀行7グループの2002年9月中間期決算では銀行経営は表面上、安定軌道に向かい始めたかに見える。だが、水面下では、自己資本が目減りし、銀行財務への懸念が増している。
財務力が最も強いとみられる三菱東京フィナンシャル・グループだけが赤字 という奇異な印象を与えた中間決算だが、含み損への対応をみると実情が浮かび上がる。
三菱東京が1880億円の赤字決算になったのは、保有株式の処分損 が膨らんだからだ。損失覚悟で持ち合い株式を売り切ったほか、株価が大幅に下落した銘柄の簿価を切り下げる 減損処理で、2000億円を超える損失を計上した。
その結果、同グループの株式含み損は2200億円程度となった(有価証券全体の含み損は170億円強)。
これに対し、他の大手行は三井住友銀行の約8300億円を筆頭に、多額の含み損を抱えたまま。
コメント:
どの銀行グループも同じように株価下落の影響を受けているはずなのに、全く異なる損益が計上されているようです。記事によればその原因は、処分損と減損処理ということですが、処分損はともかく、減損処理で大きな差が出ているのは問題です。持ち合い株の減損処理に恣意性が強く働いていることを示していると思います。
IASBの業績報告のプロジェクトのように、当期利益の概念を廃止して包括利益一本にしようという議論には賛成できませんが、このような事例をみると、企業が恣意的に操作できる当期利益にも大きな欠陥があるといえます。
注:三菱東京は米国基準を採用しているため、減損処理のルールが違うのかもしれませんが、極端な差はないはずです。
2002年11月26日 asahi.com MTCI会長を逮捕、公募増資の届出書にウソ書いた疑い
記事要旨:
インターネット接続会社「エムティシーアイ」(MTCI、本社・東京)が、99年に額面の50倍を超える高値で未公開株を公募して24億円を調達したものの、翌年、事業が中止された疑惑で、東京地検特捜部は26日、証券取引法違反(虚偽有価証券届出書の提出)の疑いで同社会長の早川優容疑者(52)を逮捕した。
同社は96年6月に早川会長が設立した。IT(情報技術)ブームに乗ってインターネットの接続仲介を中心に事業を展開。99年10月、市場や証券会社を通さずに、 日本経済新聞の全面広告などで不特定多数の投資家から出資を募った。額面5万円の未公開株を1株256万円で4000株(約100億円)を公募し、937株を売って約24億円を集めた。
調べによると、早川会長は99年10月の公募を成功させるため、内容虚偽の財務諸表を含む有価証券届出書を提出することを計画。同年9月29日、東京千代田区の大蔵省関東財務局で、株式取得資金として約5億5000万円を関連会社に預託した事実もないのに、同額の 投資未決算勘定を計上するなどした貸借対照表などを載せた有価証券届出書を提出した疑い。
同社では00年8月にあった株主総会の直前、 監査法人が、不明朗な金の流れがあり、監査ができないと指摘して会計監査人を辞任。決算議案を上程できなかった。
コメント:
記事によれば架空の投資勘定を計上していたという粉飾としては単純な手口であり、監査法人も粉飾決算を見逃したということではなさそうです。といっても、こうした詐欺師まがいの経営者がいる会社をクライアントにしてしまったということは、結果論ですが、監査契約段階でのリスク管理が甘かったといわざるを得ません。
2002年11月23日 日経 全日空、最終赤字81億円 9月中間
記事要旨:
全日本空輸が22日発表した2002年9月中間連結決算は、最終損益が81億円の赤字だった。
機材購入に伴うメーカーからの報奨金60億円 を営業外利益に計上したが、航空機売却損76億円、退職給付債務の積み立て不足償却額など営業外損失もかさんだ。海外2ホテルの売却損やゴルフ場事業の整理損などで290億円の特別損失も発生した。
コメント:
「機材購入に伴うメーカーからの報奨金」の内容は記事だけではよくわかりませんが、仮に、取得した固定資産とひも付きのものであれば、 資産の取得価額から控除すべきものと考えられます。そうではなくて、当期の経費となる機材の購入に関連するリベートであれば、営業外収益ではなく、売上原価や販管費から控除するのが合理的だと思います。
参考: 全日本空輸のサイトより
2002年11月22日 日経 前田建2円減配 不採算工事損失が拡大
記事要旨:
前田建設工業は21日、2003年3月期の連結最終損益が8億円の赤字になる見通しだと発表した。業績悪化を受け、年間配当を9円から7円に減配する。
北九州市と横浜市で戦略的に受注した不採算案件の赤字幅 が当初の計80億円から計 88億円に拡大 。通期の連結営業利益は2億円と、前期の約50分の1の水準に落ち込む。
コメント:
赤字で受注すること自体は、経営上の判断による場合もあり、一概に批判すべきことではありませんが、その損失をいつの時点で計上するのかは、大きな問題です。赤字だとわかっている工事の損失を、完成時まで繰り越すことはやはり不健全な会計処理といわざるをえません。
記事の例をみると、88億円の赤字というのは、この会社の利益水準(2002年9月中間期の税引き前損失が22億円、前期の税引き前利益が26億円)からいっても、かなり大きな金額です。本来は、 工事損失引当金を計上しておくべきであったと思われます。(もっとも、現行会計基準はそこまでは要求していませんが)。
参考: 前田建設工業のサイトより
2002年11月21日 日経 再生機構、実質簿価で債権買い取り 政府原案
記事要旨:
再生可能な企業の受け皿として官民出資で来春にも創設する産業再生機構の政府原案が20日、明らかになった。
金融機関が抱える不良債権のうち、経営の立て直しが見込める企業向けの債権 だけを非主力銀行から購入。機構は主力銀行と共同で対象企業の再建を進める。
産業再生機構は厳格な引き当てを条件に、 時価よりも高い「実質簿価」で購入 する。
コメント:
ここ1年ほど実質簿価買い取り案が浮かんだり消えたりしていましたが、記事によると、とうとう採用されることになったようです。
前にも書きましたが、実質簿価で買い取りということになれば、金融機関には、理屈を付けて、なるべく引き当てを減らそうとするインセンティブが生じます。
例えば、仮に債権額の50%が適正な実質簿価だとして、とりあえず引き当ては30%だけしておく(見かけ上の実質簿価は70%)と、それが検査で通ってしまえば、20%分だけ高い金額で債権を売却することができます。検査で通らなくても、50%に値段を下げればよいだけなので、実損はありません。
ところが、保守的に引き当てを行って、債権額の70%まで引き当てしたとすると、見かけ上の実質簿価は30%となり、その金額で売却されると、20%分も損が生じることになってしまいます。
要するに、再生機構に売却するかもしれない債権はなるべく引き当てしない方が、銀行にとって得であるということになってしまいます。
こうなると、監査人に対するプレッシャーも大きくなると予想されます。監査人は、引き当てを増やすよう指導するのに対して、金融機関側は、引き当てが増えると、決算数値が悪くなるだけでなく、債権の売却に際して不利になるので、今まで以上に抵抗するようになるでしょう。
引当金というのは、将来に関する予測を反映したものに過ぎません。予測と異なる現実が生じれば、予測である引当金の方を修正していきます。ところが、債権の売却価格という現実の方が予測に合わせることになると、予測自体がおかしくなってしまうのではないでしょうか。
2002年11月20日 日経夕刊 米監査法人 監査以外の収益開示 SECが規則案
記事要旨:
米証券取引委員会(SEC)は19日、監査法人の業務を厳しく制限することなどを盛り込んだ規則案を決定した。不正会計の頻発を受けて制定された企業改革法(サーベンス・オクスレー法)に基づく「監査法人の独立性強化」の具体策となる。
規則案によると、監査法人が会計監査をする顧客との間で、経営コンサルタントや法律顧問、情報システムサービスなど監査とは無関係の収益性の高い業務の契約を結ぶことを禁じる。
会計監査業務の収入と非監査業務の収入の内訳を公表することも義務付ける。監査法人の「パートナー」と呼ばれる幹部は、これまで非監査業務の契約獲得に伴って支給されてきた報酬を受け取ることも禁じられる。
コメント:
SECのプレスリリースによると、この規則案では、
ということになっています。
- 独立性を損なう 非監査業務に関する 規制をサーベンス・オクスレー法にもとづいて改定(記事では、情報システムサービスまで禁止業務になっていますが、同法では、会計に関するシステムのコンサルティングなどは禁止まではされていないはずです。どうなのでしょうか)。
- 監査委員会が、すべての監査業務と非監査業務を事前承認する。
- パートナーが 5年を超えて同じクライアントに続けて関与することを禁止 。また、その後5年間は戻ることができない。
- 監査の開始前1年以内に担当監査チームのメンバーだった人物が経営陣に加わっているクライアントの監査は禁止。
- 監査人は、重要な会計方針を含むいくつかの事項について、監査委員会の報告しなければならない。
- 監査業務と非監査業務に関連する情報の開示。開示は、アニュアルレポート上で行われ、報酬に関する情報も開示される。
- 監査チームのメンバーであるパートナーなどが、そのクライアントに対する監査以外の業務に基づく給与を受け取ることを禁止。
こうした独立性に関する規則のほか、監査調書などの監査に関連する文書の保存についても規則が定められています。
このように米国では、監査人の独立性に関してかなり厳しいルールが決まりつつありますが、日本の公認会計士制度改正の議論もその影響を受けて、規制強化の方向に向かう可能性があります。最近公開された公認会計士制度部会の議事録を読むと、かなり激しい意見もあるようです。
参考: SECのサイトより 、 金融審議会・公認会計士制度部会議事録
2002年11月18日 日経夕刊 住友不、土地など2年で含み損1000億円処理
記事要旨:
住友不動産は18日、2003年3月期からの2年間 で土地など 固定資産の含み損1000億円 を処理することを決めた。 今期と来期で500億円ずつ 特別損失を計上する。
今回の処理は2006年3月期の減損会計導入をにらんだもの。好調な本業の期間利益を原資として2年間で損失を処理し、財務内容の不透明さを払しょくする。
対象となるのは、約1兆2000億円の固定資産のうち、 売れ残った賃貸マンションやバブル期に取得した地上げ用の土地 など簿価で約1400億円分。いずれも低採算性の物件で、減損会計が導入されれば損失処理の対象となる公算が大きい。
コメント:
含み損のある固定資産を売却することを決定した場合の会計処理のやり方として、最近では、 売却を決めた時点で損失を計上 する方法と、実際に売却するまで損失を繰り延べる方法の両方が認めれれているようです。住友不動産の場合も、より健全な前者の方法をとっていれば、今期1000億円の損失が生じていたことになります。
ただ、よく考えてみると、不動産会社で後者の方法が認められるのかは大いに疑問です。一般の会社であれば、固定資産は使用されている限り売却されるまで固定資産ですが、不動産会社の場合は、不動産販売事業もやっているので、保有目的が長期保有から売却目的に変わったのであれば、その変わった時点で、棚卸資産である 販売用不動産に振り替えるべきであると考えられます。販売用不動産に振り替えられると、現行基準でも強制評価減が適用され、時価が大幅に下落していれば、 当然当期に評価減をしなければなりません。記事の例でも、販売用不動産への振り替えと、それに伴う評価減の計上を、当期に行うべきであると考えられ、損失の来期への繰り越しは認められないということになります。
いずれにしても、不動産会社の場合、棚卸資産と固定資産の間の振替の考え方があいまいで、決算操作に使われているという印象は拭えません(利益の出るものだけ販売用不動産に振り替えて営業利益にすることも可能)。記事に書かれている「売れ残った賃貸マンションやバブル期に取得した地上げ用の土地」というのも、そもそも販売用不動産に分類すべきであった(売ろうとしていたのなら仮に売れ残ったとしても棚卸資産にはちがいないはず)ともいえます。
参考: 住友不動産のサイトより
2002年11月15日 日経 カネボウ純利益92%減 9月中間
記事要旨:
カネボウが14日発表した2002年9月中間連結決算は、純利益が前年同期比92%減の1億円だった。棚卸し資産評価損などで41億円の特別損失を計上したことが響いた。
インドネシアの連結子会社が 固定資産の再評価 を実施して 49億円の再評価準備金 を計上。連結株主資本は前期末の9億円から19億円に増えた。
コメント:
わが国の連結基準では、明らかに合理的でない場合以外、 在外子会社 については所在地国(記事の例では、インドネシア)の会計基準を適用してもよいことになっています。
米国の会社であれば、在外子会社でも自国基準である米国基準に準拠した決算書を作成させ、監査人は、米国基準に準拠しているかどうかだけをチェックすればよいのですが、日本の会計士は、現地基準が不合理でないということにまで責任を負っていることになります。
それにしても、日本基準で作成された親会社と国内子会社の決算書、米国基準で作成された米国子会社の決算書、インドネシア基準で作成されたインドネシア子会社の決算書を合算して、意味のある決算数値が出てくるのかなという感じはします(実務的にはやむを得ないということはわかりますが)。
参考: カネボウのサイトより
2002年11月14日 日経 日本無 9月中間 最終赤字120億円 繰延税金資産償却
記事要旨:
日本無線が13日発表した2002年9月中間連結決算は、最終損益が120億円の赤字(前年同期は75億円の赤字)だった。税効果会計を厳格に適用、 繰延税金資産74億円を一括償却したことが痛手になった。
2002年11月13日 日経 セイコー黒字71億円 9月中間最終損益
記事要旨:
セイコーが12日発表した2002年9月中間決算は、最終損益が71億円の黒字(前年同期は21億円の赤字)となった。
営業利益は61億円と前年同期の2.7倍になった。さらに 米子会社の収益回復 などに伴って 会計上の税金の戻りが43億円 あった。
コメント:
繰延税金資産は、将来の法人税等を減らすことによって回収できると見込まれる金額しか計上できません。これは、毎決算期末時点における回収可能性の見積に基づいて、計上されるわけですが、その後の年度で見積りが修正されれば、過年度に計上した繰延税金資産を(実現していないのに)とりくずしたり、逆に、資産計上しなかった過年度分の税効果を当期に資産として計上したりします。
過年度に計上した繰延税金資産をとりくずすのは、業績が予想よりもよくない場合が多いと思われます。このような場合には、税効果会計によって、業績悪化が増幅されることになります。逆に過年度に資産計上していなかった税効果を当期見込むのは、業績が回復基調にある場合が多いでしょう。このような場合は、業績の回復が、税効果によって、より大きく見えることになります。
参考: 日本無線のサイトより 、 セイコーのサイトより
2002年11月14日 日経 旭化成、最終赤字403億円 9月中間
記事要旨:
旭化成が13日発表した2002年9月中間連結決算は、最終損益が403億円の赤字(前年同期は31億円の黒字)となった。
運用環境悪化で過年度分の退職給付債務に積み立て不足が生じており、従来は10年かけて均等償却する方針だった。しかし来年10月に全事業を分社化し持株会社形式に移行するのに備え、 2002年3月期分までを単年度で一括償却したため特損が膨らんだ。
一連の対応で過去分の積み立て不足対応は終えたが、今期は株価が一段と下落するなど運用環境が悪化。9月中間期末の株価水準が今期末まで続けば 新規に積み立て不足が180億円ほど生じそう。単年度の処理方式では 来期に今期分の損失を処理 することになる。
コメント:
年金資産運用の予想との差異などの数理計算上の差異は、 発生年度の翌期から償却 することが認められており、ほとんどの会社が翌期からの償却だと思われます。 旭化成は、わざわざ、数理計算上の差異の償却期間を1年に変更し、過年度分を翌期である今期に処理したわけですが、記事によると、今期も新たに数理計算上の差異が生じる見込みであり、来年度にその分を一括して処理しなければならないようです。
数理計算上の差異の償却期間については、旭化成のように短くする方が、健全な処理であるかのようにいわれることがありますが、それは、損失側の差異が生じるケースにしかあてはまりません。例えば、年金資産に含まれている株式の株価が急速に回復して、プラスの数理計算上の差異が生じる場合には、償却期間が1年だと、単年度で全額利益に取り込むことになり、けっして健全な処理とはいえません。
退職給付会計では遅延認識の考え方が取り入れられ、年金資産の運用状況がストレートに企業の損益に影響しない仕組みにしています。単年度償却にすることによって、そのメリットが失われることになります。
参考: 旭化成のサイトより
2002年11月14日 日経 三菱重9月中間、最終黒字6億円 客船火災の影響 下期に
記事要旨:
三菱重工業が13日発表した2002年9月中間連結決算は、最終損益が6億円の黒字(前年同期は83億円の赤字)となった。
2003年3月期通期の連結業績見通しは、営業利益が前期比31%増の1030億円と、従来の予想を110億円上回る。純利益は70%増の450億円と従来の予想を変更しなかった。数十億円程度と見込まれる 客船火災の損失については「今期中に特別損失として処理 する方針」(常務)といい、これを勘案すると下振れが確実だ。
2002年11月12日 日経 三菱重9月中間 営業益250億円前後
記事要旨:
三菱重工業の2002年9月中間期の連結営業利益は前年同期比23%増の250億円前後になったようだ。
10月に発生した大型客船の火災に伴う 損失が80億円前後 見込まれている。船体の引き渡しは2004年5月に決まったが、船主への遅延金が避けられそうにない。中間期に特別損失として計上するか、通期で処理するかは早急に詰める。
コメント:
火災が発生したのが10月であり、中間決算日より後なので、 後発事象 となりますが、これがいわゆる「第1の事象」(決算の修正を要する事象)なのか、「第2の事象」(注記で開示する事項)なのかは、微妙なところがあります。
火災は10月なので、遅延金などの損失は、決算日以後に発生した事象に起因する損失であると考えると、引当金の要件にも当てはまらず、下期処理でよいということになります。
ただし、三菱重工は、工事損失引当金を計上する会計方針を採っています。工事損失引当金は、会社が請け負った工事で発生する損失を見積もって、引き当て計上するものですが、遅延金なども工事に関連する損失であり、決算作業中にそのことがわかれば、引当金の見積りに織り込むべきであるとも考えられます。
現在、会計士協会では、後発事象の取扱いの見直し作業をやっているようですが、このあたりもはっきりさせてほしいものです。
参考: 三菱重工のサイトより
2002年11月3日 日経 銀行優遇に慎重論 金融庁要望 満額は期待薄 (どうなる金融・証券税制 上)
記事要旨:
金融庁は、繰り延べ税金資産に関係する3つの改正要望を財務省に提出した。一つは、繰り延べ税金資産の発生そのものを減らすため、 貸倒引当金の全額損金算入を認めるよう求めたことだ。
残る二つの要望は、繰り延べ税金資産の迅速な回収を狙った改正だ。まず、 「繰り戻し還付」の凍結を解除 し、繰り戻し期間も現行の1年から 15年に大幅延長する。 欠損金(赤字)を翌期以降に繰り越して控除する繰越期間は、現行の5年から10年に 延ばす。
しかし、金融機関だけを優遇して9兆5000億円の大減税を求める内容だけに、財務省は慎重。
12日の衆院財務金融委員会では(竹中経済財政・金融相は)「 税や企業会計、監督基準の問題が複雑に絡みあっている 。一つ一つ議論していくことが問題解決へのストレートな方策だ」と訴えた。
コメント:
3つの要望について考えてみると、まず、貸倒引当金の全額損金算入については、正常な状態の時期であれば効果があると思いますが、銀行が赤字を継続しているという状況では、税務上の欠損金を増やすだけになりかねません。一時差異の税効果の代わりに、繰り越し欠損金の税効果を議論することになるだけでしょう。
欠損金の繰越期間を5年から10年に延長することも、プラスの効果はあまりないと思われます。繰越期間が伸びたとしても、繰り延べ税金資産の回収可能性の基準をゆるめることはできず(6年から10年先の課税所得が確実にわかるはずもないため)、かりにできたとしたら、繰り延べ税金資産を減らすどころか、増やす方向に働きます。
唯一、期待できるのが、繰り戻し還付の復活ですが、それも、1年や2年では、あまり効果はありません。金融庁の要望どおり15年前までさかのぼれば、かなりプラスになりますが、金融機関だけそんなに甘やかすことができるのでしょうか。
竹中大臣がいうように、税、企業会計、監督基準の問題が複雑に絡み合っていますが、企業会計としては、繰り延べ税金資産は回収可能な金額で適正に計上するという原則を守る以外にとるべき道はありません。
2002年11月12日 日経 ユニオン、監査法人追加
記事要旨:
ユニオン光学は11日開いた臨時株主総会で、会計監査人に新宿監査法人を選任したと発表した。現在、中央青山監査法人と契約しており「当面、2法人の監査にする予定」(管理部)としている。
コメント:
会社の合併に伴って監査法人を増やしたり、個人会計士や中小監査法人がやっていた会社で、会社の規模が大きくなって、大手監査法人が監査人に加わったりすることは、珍しくありませんが、大手監査法人のクライアントで、中小監査法人をあらたに監査人に加える事例(しかも臨時総会まで開いて)は、あまりないと思われます。何か特別な事情があるのでしょうか。
2002年11月8日 日経夕刊 IASB案 株式購入権 費用計上で基準
記事要旨:
国際会計基準理事会(IASB)は7日、企業の 隠れ債務 とされる ストックオプション (株式購入権)を費用として計上する会計基準案を発表した。
公表された基準案はストックオプションを役員や従業員に交付した時点の 時価 を計算し、損益計算書に費用として計上することを義務づけた。同オプションの時価は権利行使日までの株価の値上がり予想や金利などを元に計算。
米会計基準はストックオプションの費用計上を義務づけていない ため、企業業績が 日本や欧州に比べ水増しされている との批判が強かった。
コメント:
IASBの草案も含め、海外基準では、ストックオプションを費用認識した場合の反対勘定は、債務(負債)ではなく、株主持分です。したがって、費用計上しない場合、ストック・オプションは「 隠れ費用」かもしれませんが、「隠れ債務」ではありません。
「米会計基準は費用計上を義務づけていないため、日本より費用が水増しされている」というところも、違和感があるところです。確かに米企業の方がストックオプションを大々的に使っているので、あまり使っていない日本企業と比べると費用が少なく表示されていると思いますが、会計基準自体は、日本基準の方がはるかに甘くなっています。米国の現行基準では、少なくともオプションの本源的価値で費用計上することが強制されているのに対し、日本の現行基準では、ストックオプションどころか、 自己株式自体を役員や従業員に交付した場合であっても、費用を認識する必要がありません 。
IASBと米国FASBが、ストックオプションの会計処理を 時価で費用処理 する方法に統一するとなると、日本は、2周遅れになってしまうでしょう。
参考: IASBのサイトより
2002年11月7日 日経夕刊 藤和不 再建計画正式発表
記事要旨:
マンション分譲大手の藤和不動産は7日、UFJ銀行など主要取引行による2300億円の金融支援を柱とする再建計画を正式発表した。
UFJ銀行などの金融支援の内訳は債務免除が2000億円、債務の株式化が300億円。
新再建計画にあわせ、2003年3月期の単体決算では 保有不動産の評価損などによる2630億円の特別損失 を計上。2000億円の債務免除益の計上などで最終損益は412億円の赤字となる。
コメント:
藤和不動産のホームページで、特別損失の中身をみてみると、いくつか、会計上つじつまが合わない点があります。
まず、特別損失には、販売用不動産評価損742億円 (中間期計上分)が含まれていますが、これについては、2002年3月期には処理する必要がなかったのでしょうか。地価の下落はまだ続いているとはいえ、半年分の下落に対応する金額としては大きすぎます。2002年3月期決算における販売用不動産の評価減は適正に行われたのでしょうか。非常に疑問です。
特別損失には、固定資産評価損・処分損1080億円 も含まれています。これについては、会社のプレスリリースによると、中間期では処理せず、 下期で計上するようです。固定資産の減損会計導入前なので、固定資産を処分したときに損失を計上することも認められるのかもしれませんが、評価損について、 処分予定のものについて評価損を計上するという方針に変えたのなら(プレスリリースでは「減損会計に前倒し対応するため資産の再評価を実施」といっているのでおそらくそうなのでしょう)、中間期でも、同じ考え方で、固定資産評価損を計上すべきです。つまり、 処分予定の固定資産(下期に処分する予定のものを含む)の評価損を中間期でも計上すべき ではないかということです(そうでないと、 中間期と本決算で会計方針が首尾一貫しない )。
さらに、「関係会社向け損失処理等 」という項目で740億円損失計上する予定となっていますが、これも、中間期では処理しないようです。関係会社向け損失として、一般的に考えられるのは、関係会社株式の評価減、関係会社向債権に対する貸し倒れ損失(又は貸倒引当金繰入)、関係会社に対する保証債務(保証予約や念書を含む)から生じる損失(又は債務保証損失引当金繰り入れ)などですが、新再建計画により、このような損失が発生することが現時点ではっきりしたのなら、下期まで損失を先送りすることはできないはずです。
一番問題なのは、債務免除益などの原資がない限り損失は計上しないという思考法が未だに残っていることです。会社のプレスリリースによると「主要取引銀行の 債務免除2 ,000 億円、及びグループ期間損益等を原資として、不動産の損失処理、関係会社向け損失処理等を実行」とありますが、これを裏読みすると、「原資ができたから損失処理したのであって、原資がなければいつまでも損失を隠し続けるつもりだった。また、今回の損失処理も原資の範囲内でしかやらなかった(したがって、損失はまだまだ隠れているかもしれない)」ということになります。
追記:
コメントは、再建計画の決定が、後発事象のうちの「第1の事象」であると考えて書きました。債権の評価や債務保証に関する損失については、再建計画決定は、「第1の事象」(決算上の見積り修正が必要)と考えざるを得ませんが、固定資産の処分の決定については、「第2の事象」(決算に影響せず、注記で開示)と考えられなくもありません。ただ、「第2の事象」と考えると、固定資産関連の損失が下期計上である説明はつきますが、逆に、販売用不動産関連の損失が下期でほとんど計上されないことの説明がつかなくなります。
参考: 藤和不動産のサイトより
2002年11月7日 日経夕刊 「前経営陣の不正黙認」と提訴
記事要旨:
6月に経営破たんした米ケーブルテレビ大手のアデルフィア・コミュニケーションズは6日、 会計監査を担当していた大手会計事務所デロイトトウシュ を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした。同社は訴状の中で、 前経営陣による経営私物化をデロイトが見逃した ために多大な損害を被ったと主張している。
コメント:
経営者一族が支配している会社の借金に、アデルフィアが10億ドル以上の保証をつけていたという事件で、監査人が経営者の不正を知っていたのに開示しなかったか、正当な注意を払わなかったために見逃したとして、会社が訴えているものです(訴えでは「professional negligence, breach of conduct, fraud and other wrongful conduct」があったといっています)。
これに対しては、会社側は監査委員会も含め、問題の取引を知っており、監査人を訴えたのは責任逃れのためだという見方もあるようです。
いずれにしても、経営者の資質や、コーポレート・ガバナンスに問題がある会社は、監査人にとって非常にリスクが高いという一例だと思われます。
参考: NY Timesより ワシントンポストより
2002年11月7日 日経 JT9月中間、営業益30%増
記事要旨:
日本たばこ産業(JT)が6日発表した2002年9月中間期連結決算は、営業利益が前年同期比30%増の1144億円だった。
のれん代償却方法を変更し、連結調整勘定償却費が50億円軽減 した。自動販売機の 償却後の利用期間を長期化 したことで減価償却費が40億円減少したようだ。
コメント:
連結調整勘定償却費の軽減というのは、米国会計基準が、のれんの償却を行わない基準に変更されたため、 米国子会社で発生した連結調整勘定(のれん)の償却を停止 したことを指しているようです(従来は償却期間40年で償却していたようです)。決算短信では「海外子会社で発生した連結調整勘定は、償却を行わず年一回及び公正価値が帳簿価額を下回る恐れを示す事象が発生した都度、 減損の有無を判定しております。」と書いています。
JTは米国基準採用会社ではないため、本来は、米国子会社も日本基準で会計処理をしたものを連結すべきですが、会計士協会の監査委員会報告で、 在外子会社については所在地国(この場合、米国)の会計基準を適用してもよいことになっています。ただし、在外子会社が 採用している会計処理が明らかに合理的でない場合には、日本基準に修正しなければなりません。
JTは修正せずに連結に合算しているわけですから、 のれんを償却しないことにも合理性がある と、会社は(おそらく監査人も)考えているのでしょう。
自動販売機の減価償却費については、減価償却計算上の耐用年数が、実際の使用年数と比べて、短くなっているということなので、理屈をいうと、耐用年数が実際の年数と乖離しているということになり、あまりほめられたことでもありません(健全な処理ではありますが)。あるいは、新しい販売機の投入がなされず、古い機械ばかりになっていると解釈することもできます。
参考: JTのサイトより
2002年11月2日 日経夕刊 米会計大手E&Yを提訴
記事要旨:
米連邦預金公社(FDIC)は1日、2001年7月に破たんした 貯蓄金融機関「スペリア・バンク」の財務内容に虚偽 があったとして、会計監査を担当した米大手会計事務所、アーンスト・ヤング(E&Y)をイリノイ州北部地区地裁に提訴した。 5億4800万ドルの損害賠償を求めている。
FDICなどによると、E&Yは経営難に陥っていたスペリアが資産総額を4億2000万ドル過大に表示するのを容認。これが判明すればE&Yが持つ他の企業との業務契約に悪影響が出る恐れがあると判断して「意図的に情報開示を遅らせた」とFDICは指摘している。
コメント:
記事では要求されている損害賠償が5億4800万ドルと書かれていますが、米マスコミ報道によると、懲罰的賠償金を含めると 20億ドル以上になるようです。これでEYが破たんすることはないにせよ、もし賠償が認められればかなりのダメージにはなるでしょう(保険でどのくらいカバーされるのかは知りませんが)。
本当にE&Yに賠償責任があるのかどうかは全くわかりませんが、米マスコミ報道によると、銀行の経営者(ハイアット・ホテルで儲けた大金持ちだそうです)はすでに、責任を免れるために4億6000万ドルを払っており、E&Yも、資産の過大評価があったことは認めているようで、E&Yにとって形勢はあまりよくなさそうです。
また、この件もコンサルティング業務が絡んでいるようです。ちょうど、E&Yがコンサルティング部門をフランスのCap Gemini社に売却(最終的には110億ドルで売却している)しようとしていた時期で、その交渉を有利に進めるために、銀行の会計に問題があったことを当局に知らせるのを遅らせたとFDICはいっているようです。
いずれにしても、金融機関の監査をやることのリスクの高さを象徴するようなニュースです。米国の話ではありますが、日本の場合も、銀行が破たんし、公的資金が投入された場合に、監査人の責任が問われる可能性がある点では同じです。日本の銀行の監査人も、資産査定や繰延税金資産の評価などできちんとしておかないと、大変なことになります。
参考: ワシントンポストより NY Timesより
2002年11月2日 日経 税効果見直し 金融行政の問題 会計士協会長に聞 く
記事要旨:
金融庁の「金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム」のメンバーを務める日本公認会計士協会の奥山章雄会長は1日、日本経済新聞のインタビューに答えた。
−−税効果会計は自己資本を過大に見せているとの指摘がある。
「税効果会計は税務と企業会計との差を修正するために導入した。銀行の繰延税金資産が膨らんだのは不良債権を積極的に有税償却した結果であり、会計基準がおかしいわけではない」
「今回の議論は、銀行の自己資本比率規制における税効果の取扱いであり、金融行政の話 だ。自己資本比率規制の見直しについては会計士協は関与しない」
−−繰り延べ税金資産を過大計上すれば違法配当を可能にさせるおそれもある。
「繰り延べ税金資産の評価計上については、監査上かなり厳密な実務指針がある。いい加減な監査をすれば会計士も訴訟対象となる時代だ。会計士は適正に判断していると思うし、 今後もきちんとやるよう指導する」
コメント:
銀行の繰延税金資産をめぐる議論でまぎらわしいのが、税効果会計の厳格化の意味が、企業会計のルールを厳しくすることなのか、銀行の自己資本比率規制上だけの厳格化なのかはっきりしないことです。さらに、話が税制の方にまで拡散してしまって、ますます混乱しています。
いわゆる竹中チームの元々の案では、会計ルールはいじらずに、自己資本比率規制における税効果の取扱いだけ米国並に厳しくするということでした。しかし、最終的な「金融再生プログラム」では、「繰り延べ税金資産に関する 算入の適正化−−会計指針の趣旨にのっとってその資産性を厳正に評価、 算入上限も速やかに検討 」(10月31日の日経新聞より)となっています。銀行側は、自己資本比率規制を会計基準から切り離すこと自体に反対している(その方が一般企業並の甘い規制で済むと考えているのでしょう)ので、場合によっては、会計基準・実務指針などの見直しにつながる可能性もあります。
これまで何回か書いてきましたが、企業会計と銀行の自己資本比率規制は目的が一致していない(前者はディスクロージャー、後者は預金者保護などの金融行政の一環)のですから、全く別に議論した方がよい と思います。そうでないと、どちらも中途半端になってしまいます。
ただし、金融再生プログラムでは「繰り述べ税金資産の 合理性の確認 −−主要行の繰り延べ税金資産が厳正に計上されているかを 厳しく検査 」という項目もあります。これは、繰延税金資産の回収可能性に関する現行会計ルールを前提に、それを厳密に適用するという意味だと思います。銀行の監査人は今まで以上に神経を使うことになりそうです。
参考: 米国The Office of the Comptroller of the Currencyのサイトより (米国の自己資本比率規制のルールはたぶんこれだと思います)