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企 業 財 務 記 事 ウ ォ ッ チ ャ ー 2003年5月


2003年5月31日 日経夕刊  車販売 リースで開拓 下取り価格高く

記事要旨:
 大手自動車販売会社が個人リース事業を強化している。
 独BMWの日本法人、ビー・エム・ダブリューは主力車種「3シリーズ」向けの新個人リースの取扱いを全国で始めた。これまで3年の 期間終了時の下取り価格を新車価格の40%に設定してきたが、新リースでは50%に引き上げた。
 東京日産自動車販売も下取り価格を高めに見積り、リース料金を自動車ローンに比べ支払総額で1割程度低くした。

コメント:
 リース期間終了時の下取り価格(残価)を高く見積もれば、それだけリース車の処分の際に損失が生じる ことになります。その損失は、リースの顧客が負うのでなければ、リース会社か販売会社が負うことになります。販売会社が負う場合には、理屈から言うと、リース車の処分損見込額を販売会社で引き当てしておく必要があります(そうしないと新車の販売利益とリース車の処分損が対応しなくなる)。記事の例ではどのような会計処理が行われているのでしょうか。

2003年5月30日 日経  三井鉱山、債務超過353億円 子会社資産見直し

記事要旨:
 三井鉱山は29日、2003年3月期連結決算が353億円の債務超過に陥ったと発表した。1997年3月の閉山まで福岡県の三池炭坑で採掘事業をしていた子会社の三井石炭鉱業が保有土地の評価見直しで債務超過となったのに伴い、同社向け 貸付金の貸倒引当や株式評価損で582億円の特別損失を計上した。
 三井石炭鉱業の財務内容を巡っては、昨年3月期末時点で帳簿上の1100億円の債務超過 に対し、 土地の含み益が1200億円あるとし、実質的には債務超過状態でないと主張していた。
 評価の見直しは複数の不動産鑑定士に依頼。多岐にわたる物件のすべてを最も低い評価額で洗い直した結果、含み益は従来見込んでいた額より500億円近く減った。
 三池炭坑の閉山後、休眠状態にある三井石炭鉱業の債務超過が明確になり、同社に無担保で貸し付けていた573億円の約9割と、出資額の全額25億円を損失処理する必要が生じた。

コメント:
 他の報道では今年の3月決算で監査法人が特に厳しい監査をやっているという例として取り上げられていましたが、約600億円もの投融資を行っている相手先が(少なくとも帳簿上)1100億円もの債務超過になっていれば、どんな監査人でもその投融資の回収可能性を十分に吟味する必要があります。記事によれば問題の子会社は1997年の閉山以降休眠状態にあるとのことであり、常識的に考えると、土地の含み益が本当に1200億円もあるのなら、さっさと資産を処分して会社を清算してしまえるはずなのに、そうなっていないのも不思議です。
 それより気になるのが、これほど多額の投融資を行っている相手先である子会社が連結範囲に入っていない ことです。休眠状態だからといって連結からはずすことはできないはずですが、何か特別な事情があるのかもしれません。

2003年5月30日 日経  減損の対象基準 「3期連続営業赤字」で合意

記事要旨:
 企業会計基準委員会は29日、減損会計専門委員会を開き、減損会計の兆候を判断する基準 は、 今期見通しを含めて3期連続の営業赤字とすることで合意した。3月に出した中間報告では、2期連続の赤字に今期見通しを含めるかどうかがあいまいだった。産業界からは最低でも3期連続にすべきだとの意見が出されていた。

2003年5月27日 日経夕刊 東急電鉄、減損会計前倒し 負の遺産一掃 特損1500億円

記事要旨:
 東京急行電鉄は2004年3月期に減損処理を中心に1500億円の特別損失を計上する見通しとなった。東急電鉄などグループ各社と本体で保有する土地・建物を中心に減損処理する。
 減損会計は2006年3月期から導入される予定。東急は 前倒しの実施で過去の負の遺産を一掃し、グループの本格的な再建につなげたい意向だ。

コメント:
 減損会計基準を読むと、減損の兆候の「連続赤字」はあくまでも例示の一つでしかありません。3年連続の赤字になるまで、何にもしなくてもよいということではなく、他に何らかの減損の兆候があれば、当然、キャッシュ・フローを見積る作業を行うことになります。
 また、記事では「営業赤字」と書かれていますが、減損会計基準では、「資産・・・が使用されている 営業活動から生ずる損益 」となっています。減損会計専門委員会でももめているようですが、「営業活動から生じる損益」といっている以上、単に営業損益の段階でプラスになっていればよいということではなく、営業外費用や特別損失に計上している棚卸資産評価損、固定資産の減価償却費や臨時償却などを含めたところで、損益を判断すべきだと思われます。
 記事によれば、東急電鉄は2004年3月期に減損会計を前倒しで適用するそうですが、2004年3月期といえば、 減損会計早期適用1年目です。前倒しで適用するという場合に、減損会計基準をきちんとしたかたちで早期適用するのか、それとも、従来基準の理屈を使って固定資産の簿価を下げるのか、どちらなのかもう少しはっきりさせてほしいものです。また、本当に前倒しをやるということであれば、 2003年3月期でなぜやらなかったのかということも疑問です。

2003年5月29日 日経  フジタ 債務超過 監査法人が厳格査定

記事要旨:
 フジタが28日発表した2003年3月期連結決算は、最終損益が152億円の赤字となり、 26億円の債務超過 に陥った。担当の東陽監査法人から税効果会計に伴う繰延税金資産の厳格査定 を求められ赤字額が膨らんだ。
 フジタは4月25日、割増退職金負担などで前期の最終損益が35億円の黒字見通しから65億円の赤字になったと業績予想を修正した。しかし、その後の監査法人とのやり取りで、繰り延べ税金資産の算出根拠となる将来収益を見直した。その結果、単独で115億円あった、同資産を80億円取り崩し、最終赤字額が増加した。

2003年5月27日 日経 熊谷組、不採算の不動産事業分離

記事要旨:
 熊谷組は26日、10月1日付で不採算の不動産事業を非上場の新設会社「ニューリアルプロパティ」として切り離すと発表した。9月8日時点の 熊谷組株主を対象に、同社の普通株2株に対し、新会社株1株を割り当てる

コメント:
 フジタの場合は、健全事業とされていた建設事業部門を分割したため、それなりの業績をあげるものだと思っていましたが、実際は 会社分割から半年しか経っていないのに債務超過になってしまいました。割増退職金の負担が生じることや繰り延べ税金資産を厳しく査定すべきことは、会社分割の時点でわかっていたはずです。会社分割を行う際には、新設される会社の純資産がプラスであることが商法上も要求されますが、フジタの場合、 時価ベースで見て本当に純資産がプラスだったのか、疑問とせざるをえません。
 熊谷組の場合は、フジタとは逆に不動産事業の方を分割するようです。このケースの新会社も本当に純資産がプラスの会社として設立されるのでしょうか。
 また、前にも書いたように、会社分割は、新会社の株式という資産で元々の会社(記事の例では熊谷組)の資本を払い戻す(あるいは配当を行う)取引です。仮に新設会社「ニューリアルプロパティ」がプラスの価値を持つ会社であるとすると、 債務免除を受けている会社の株主が、プラスの価値を持つ資産を受け取ることができるという不公正が生じます。
 いずれにしてもおかしなスキームです。

2003年5月24日 日経  伊藤忠テクノ、売上高を過大計上 未出荷取引が判明

記事要旨:
 伊藤忠テクノサイエンス(CTC)は23日、8日公表した2003年3月期連結決算で 売上高を25億円分過大計上 したと発表した。
 前期の純利益を従来発表に比べ10億円少ない77億円に訂正した。同社は伊藤忠商事の連結対象子会社になっており、伊藤忠も同日、前期の連結決算を訂正した。
 CTCは年間包括契約と呼ぶ一部のシステム関連ソフトや部品の取引で、決算期末時点で 顧客に納品していなくても3ヶ月以内に出荷する見込みがあれば一定の条件のもとで売り上げ計上 する会計処理をとった。決算発表の後、監査法人トーマツから問い合わせを受け精査したところ、3ヶ月以内に出荷できない取引のあることが判明、約2900億円とした従来発表の前期売上高から過大計上分を取り消した。

コメント:
  通常の商品・製品の売上は、「受注→出荷→引き渡し→検収→入金」といった流れになり、 売上は出荷の時点で計上するルールにしている会社が多いと思います。得意先の都合などにより、出荷しないで売上し、預かり在庫となる場合もあり得ますが、その場合には、出荷した在庫と同様に検収・入金すること等が条件となります。
 記事によると伊藤忠テクノでは、3ヶ月以内に出荷予定であれば売り上げ計上する会計処理をとっているそうですが、当然、3ヶ月先の出荷分まで前倒しで売上できるということではなくて(そんな会計処理が認められるはずもありません)、出荷した売上と同等とみなせるような「一定の条件」があるのでしょう。
 同社のホームページでは、この訂正について、「平成14 年度下期に、一部の形態の取引 の売上計上基準に関する新ルールを策定」したが、「監査法人からの質問に応じ・・・ 新ルールへの適合性 を再度精査した結果、新ルールの要件を満たしていないことが判明」したため、売上を取り消したと書かれています。しかし、どのような形態の売上なのか、新ルールとはどのようなものだったのかという、肝心な点については全くふれていません。また、決算短信を読んでも、 収益計上基準については、全くふれていません(平成14年度から新ルールにしたのなら、 会計方針の変更 になるのでは?)。非常に形式的で不十分な開示といわざるを得ません。
 といっても、監査結果に従って決算の修正に応じたこと自体は、当然とはいえ、評価すべきだと思います。 決算発表の早期化 で、このようなケースは増えてくるのかもしれません。

参考:伊藤忠テクノのサイトより

2003年5月23日 日経  りそな再生 財務の全容示す必要

記事要旨:
 将来返ってくる見込みの税金を自己資本に計上する「繰り延べ税金資産」の扱いを厳格にしたことが、りそなグループに引導を渡した。りそなは他の大手銀行同様、5年分の納税見込み額分について計上していた。
 ところが2003年3月期については、事態が急変した。「3年分までしか認めない」。監査を担当する新日本監査法人が大阪駐在の代表社員名で、こう通知したのだ。
 「繰り延べ税金資産を除くと、債務超過にある」。その場合は、「今後の業績が計画を下回る可能性がある。4−5年目の不確実性を考慮すると、 繰り延べ税金資産の計上はせいぜい3年分」と通告したのだ。
 りそなグループはあさひ銀行と大和銀行が統合して誕生した。旧あさひ銀を監査していた朝日監査法人は4月末、りそなの監査を降りた。「繰り延べ税金資産を算入しなければ 債務超過の場合は、そもそも繰り延べ税金資産の計上など認められない」との判断からだ。このことが旧大和銀担当の新日本を走らせた。

2003年5月23日 日経 政府、りそな向け 来月10日メド資金注入決定

記事要旨:
 りそなグループへの公的資金注入に関する政府のスケジュール案が22日、明らかになった。りそなグループは金融庁に対して、5月30日に注入を申請する。これを受けて政府は、6月10日をメドに資本注入を正式に決定する。
 りそなグループは30日の注入申請に合わせてリストラ策などを盛り込んだ経営健全化計画 を提出。

コメント:
 記事によれば、りそなの共同監査人であった朝日監査法人と新日本監査法人とで、繰延税金資産の評価について意見が食い違っていたようです。
 朝日の意見とされる「債務超過の場合は繰延税金資産の計上が認められない」というのは、会計士協会の「繰延税金資産の回収可能性に関する監査上の取扱い」の「 債務超過の状況にある会社で短期間に解消が見込まれない場合には、繰延税金資産の 回収可能性はない ものと判断する」という趣旨の規定のことをいっているのだと思います。りそなの場合は、繰延税金資産がなければ債務超過になっていたとのことなので、この規定をあてはめると、短期間に債務超過が解消すると見込めない限り、繰延税金資産はゼロ評価になってしまいます(それとも、繰延税金資産計上後で債務超過かどうかを判断するのでしょうか)。これも一つの割り切りだと思いますが、ほんのわずかな金額でも資産超過であれば、相当額の繰延税金資産の計上が認められ、債務超過になった途端に全く計上できないというのも、不自然です。
 新日本の方は3年間の収益計画による回収分まで計上するという意見です。3年間というのは、会計士協会の「監査上の取扱い」には出てきませんが、りそなの状況からすると、「おおむね5年」(特別の原因による繰越欠損金等の場合)では甘すぎると判断したのでしょう。5年とゼロを足して2で割ったような期間になっていますが、それがたまたま自己資本比率4%を切る水準になったわけです。
 りそなの2003年3月期決算では、結局こうして3年間の収益計画に基づく繰延税金資産を計上することになったようですが、記事によれば、資本注入に合わせて、これから、収益計画自体、従来と違うものを策定し、当局に提出するようです。賞与のカットなどにより従来の計画よりよくなる部分もあるかもしれませんが、優良顧客が離れていったり、不良債権のオフバランス化の加速によりスケジューリングが変わったりして、同じ3年間の収益計画でも、かなり中身が違ってくる可能性があります。
 もしそうだとしたら、修正後発事象として、2003年3月期決算の繰延税金資産も新計画に基づいて計上 すべきなのでしょうか。実務的には、3月末時点の計画によらざるをえないと思われますが、その場合には、新計画に基づく計上額とかなりの差が生じるおそれがあります。

参考: 東京新聞のサイトより

2003年5月22日 日経夕刊  ストックオプション費用計上案 インテル株主総会で否決

記事要旨:
 半導体大手インテルが21日株主総会を開き、株主の一部から出ていた従業員向けストックオプションの費用計上を求める決議案をきん差で否決した。
 株主総会を前に、同社経営陣が、各所で費用計上反対の論陣を張った。「ストックオプションの価値を正確に測る方法がない まま費用計上すればますます損益計算書がゆがむ」というのが理由だ。

コメント:
 インテルの株主総会では否決されました(ただし賛成票が47.55% もあった)が、米国の会計基準設定主体であるFASBでは、ストックオプションの時価による費用計上に向けて、本格的な審議が始まっています(現行基準でも本源的価値による費用計上は要求されている)。
 米国における反対論は、ストックオプションの時価による費用計上を理論的には正しいとしながら、時価の算定が正確にできないことを反対の根拠にしているようです。例えば、ブラック・ショールズモデルで算定してオプションの評価額が、本当に妥当な金額なのかは、専門家の間でも議論があります。
 一方、わが国では、そもそも、どのような評価額であってもストックオプションは費用計上すべきではないという説も有力です。この説によると、自己株式の時価が1000円、オプションの行使価格が1円といったケースでも費用計上する必要はないということになります(この場合、オプションの価値は少なくとも999円あることは確実です)。同じ反対論でも、基礎となる考え方が全く違うといえます。

参考: 中央青山監査法人のサイトより (FASBの動向)、 インテルのサイトより  

2003年5月21日 日経  大正薬、純利益5%減 新薬販売権の取得響く

記事要旨:
 大正製薬が20日発表した2003年3月期連結決算は、純利益が前の期比5%減の353億円だった。
 売上高は1%増の2740億円。経常利益は10%減の608億円だった。薬価引き下げの影響から原価率が上昇。販売促進費の増加に加え、富山化学の 新薬の販売権として70億円を費用計上したことも響いた。

コメント:
 70億円の中身をよく見てみないとはっきりしたことは言えませんが、普通に考えると、いったん70億円を 無形固定資産に計上 し、新薬の販売により利益を上げられる期間で、規則正しく償却 していくべきだと思われます。一時の費用とする、何か特別な根拠があるのでしょうか。

参考: 大正製薬のサイトより

2003年5月20日 日経  「税効果」脱却探る動き 監査法人に重圧  金融波乱 りそなの教訓 中

記事要旨:
 5月5日、新日本監査法人は会計士の監査内容をチェックする「審査会」を招集、りそなグループに会計上のみなし資本である「 税効果資本」の大幅な取り崩しを求める方針を決めた。
 りそなはぎりぎりまで抵抗したようだ。先週半ばになってもりそなの前3月期末の自己資本比率を巡って「(最低基準である)4%を保てたもよう」と楽観論が出る一方、「4%割れだ」と正反対の声が交錯。
 結局、新日本は審査会の判定を覆さず税効果資本の圧縮姿勢を貫き通した格好だが、決着までにりそなと政府・日銀は混乱に陥り、金融システムを不安定にしかねない綱渡りの状態だった。りそな危機のように 監査結果が銀行の生命線である自己資本比率を実質的に左右することに、公認会計士からは「我々民間には 荷が重すぎる」という本音が漏れてくる。

コメント:
 企業の存続は、少なくとも短期的には、資金繰りがつくかどうかで決まります。したがって、一般企業の場合、仮に会計監査における指摘の結果、債務超過になったとしても、債権者などによる何らかの支援があれば(例えば債務の弁済を猶予する等)、事業を継続していくことは可能であり、すぐに倒産に追い込まれるとは限りません。
 しかし、銀行の場合は、全く事情が違います。監査結果が、自己資本比率を経由して、銀行の存続に直接的に影響します(りそなの場合、正確には破綻したわけではありませんが・・・)。1民間法人である監査法人には、負荷が大きすぎるという感じはします。特に、今回は、繰延税金資産という、将来の収益計画によってどうにでもなる(といってはいいすぎですが)資産の評価で、大銀行の運命が決まってしまったわけです。
 資産の自己査定に基づく自己資本比率の算定と、その結果に基づく是正措置の発動という制度の枠組みは変えられないとすれば、せめて、繰延税金資産については、会計基準とは別に 自己資本比率規制上の制限を設けるなどして、会計上の評価が銀行の存続の可否に直結しないような仕組みにしてほしいものです。今回の件で繰延税金資産がいかにリスクのある資産であるかが、明白になった わけですから・・・。
 なお、「税効果資本」ということばはマスコミの造語ではないかと思われます。繰延税金資産のことを言っているのだと思いますが、「資産−負債」が資本ですから、資産である繰延税金資産の評価額が変われば資本の金額が動くのは当たり前であって、わざわざ「資本」という言葉をくっつける意味はありません。新聞記事とはいえ、正しい用語で書いてほしいものです。 

2003年5月17日 asahi.com  りそなHD、連結当期赤字は8380億円 社長が会見

記事要旨:
  公的資金の注入が決まったりそなホールディングス(HD)の勝田泰久社長は17日、東京都内で記者会見し、03年3月期決算の業績予想で、グループの中核であるりそな銀行の当期損益が黒字予想から1兆1540億円の赤字になる見通しを明らかにした。
 持ち株会社のりそなHDも当期赤字が予想の2900億円から8380億円に拡大した。
 勝田社長は、自己資本比率の悪化した原因について、不良債権処理費用の積み増しや保有株の損失処理に加え、自己資本の大半を占める 「繰り延べ税金資産」について「監査法人の指摘により、大幅に取り崩しを強いられた」と分析。監査法人に対しては「 長年の信頼関係に対する背信である」と不信感をあらわにした。

2003年5月17日  Yomiuri On Line  りそな国有化 金融『強硬路線』が招いた結末(5月18日付読売社説)

記事要旨:
 りそなの資本不足は、繰り延べ税金資産の扱いを巡って表面化した。
 不良債権を有税で処理した際に前払いした税金は将来、十分な収益を上げれば戻ってくる。りそなの監査法人は、収益計画が甘く資本算入額が実態以上に膨らんでいるとして、その減額を求めた。
 金融庁が、竹中氏のまとめた金融再生プランに従って、日本公認会計士協会に算定の前提になる収益計画を厳しく見直すよう求めた経緯もある。
 だが、繰り延べ税金資産の扱いは、同じ金融再生プランに基づいて、現在金融審議会(首相の諮問機関)で本格的な見直し論議 が進行中だ。
 その結論も出ないうちに、2003年3月期決算の実務処理に当たって、見切り発車的に厳格な適用 をしたことは、妥当な判断とは言えない。

コメント:
 記事によれば、りそなホールディングスの社長は、監査法人に裏切られたといっているようですが、監査法人に裏切られたというより、税効果会計という会計基準に裏切られたといった方がよいでしょう。
 税効果会計は2000年3月期からの強制適用でしたが、早期適用も認められ、金融機関はほとんど 1999年3月期 からの適用となっています。建前はともかく、税効果会計が急いで導入された背景には、 不良債権処理の影響を緩和 するという意図があったのは否めません。そのため、 繰延税金資産の回収可能性 の議論が十分行われないままに、実務が行われてしまったのではないでしょうか。
 会計士協会では、99年11月になってようやく回収可能性に関する詳しい取扱いを公表しましたが、一旦緩い基準で実務が動いてしまうと、それを是正するのはたいへんです。繰延税金資産は保守的にしか計上できないという認識が当初から共有されていれば、これほどもめることはなかったはずです。
 りそなの2002年9月中間期の決算を見ると、約1兆円の会計上の自己資本に対し、繰延税金資産が約8000億円も計上されています。どう考えても回収可能性を厳格にチェックせざるをえない状況です。収益計画を作文すれば、どうにでもなると考えていたのでしょうか。
 読売の社説では、りそなの繰延税金資産について見切り発車的に厳格適用をしたといっていますが、これは全く的はずれです。
 金融審議会で議論しているのは、自己資本規制上の繰延税金資産の扱いであり、企業会計上繰延税金資産をどれだけ計上できるかということとは、別の議論です。監査法人は、現行の会計基準に基づく処理を銀行に求めただけであり、監査人の役割を果たしたまでのことです。読売新聞は監査法人に粉飾決算を見逃せといっているのでしょうか。
参考: りそなHDのサイトより

2003年5月15日 日経  NTT社内VB 売上金4000万円を流用 元社長を逮捕   特別背任容疑

記事要旨:
 NTTの社内ベンチャー制度を利用して設立されたICカード製造販売会社の元社長が、同社の売買契約代金を流用したとして、警視庁捜査2課などは14日、「エクスウエイ」元社長、A容疑者(55)を商法の特別背任の疑いで逮捕した。
 調べによると、A容疑者は1998年9月、石川県の医療関係会社など2社との間でICカードなどの導入に関する契約を締結。その後約2ヶ月間で、エクスウエイ社に支払われた代金約1億2000万円のうち4000万円を、 自分が代表を務める実体のない会社名義の銀行口座に振り込み、エクスウエイ社に同額の損害を与えた疑い。
 01年2月のエクスウエイ社の社内監査で不正が発覚。同社は同年4月にA容疑者を解任し、昨年1月に同庁に告訴していた。
 調べに対し、A容疑者は「社長だから何をやってもいい」などと供述しているといい、優れたアイデアに 経営者としての倫理観が追いつかなかった実態が垣間見える。

コメント:
 記事によると会社設立は98年6月であり、そのわずか4〜5ヶ月後に不正をやっていたことになります。最初から私腹を肥やすことを目的としていたとしか考えられず、全く同情の余地がないひどい例です。記事を読む限り、不正の手口としては非常に単純なもののようですが、それでも、社内監査で発覚するまで1年半ほどは、隠すことができたわけです。経営者こそ内部統制の最大のポイントであるという例といえます。
 ところで、事件の規模の割りに記事の扱いが大きいのは、なぜでしょうか。もしかすると、これを書いた記者は、クビになった鶴田会長に「社長だからといって何をやってもよかったのか」といいたかったのかもしれません。

2003年5月15日 日経  三菱重工 前期30%増益

記事要旨:
 三菱重工業が14日発表した2003年3月期の連結決算は、純利益が前の期比30%増の343億円だった。防衛庁向け戦闘機の売上が伸びたほか、不採算案件が減った原動機部門が業績をけん引。客船火災による損失130億円などを吸収した。
 前の期に比べ円高が進んだ結果、為替差損が230億円発生。一方で会計処理変更により賞与の費用計上時期を先送り したことで265億円分のコストが減少した。

コメント:
 同社のホームページで決算短信を見てみると、「賞与についての支給対象期間に係る規定の改定 が行われたことにより、当連結会計年度末に未払い計上すべき費用はない 」と書かれています(したがって、形式上は会計処理ではなく、取引自体が変わったといえる)。
 ということは、従来なら夏の賞与で払っていた金額のうち、3月までの期間に対応するものを 3月までに支払ってしまった か、2003年3月期の中に、賞与支給対象期間の空白期間 があるということが考えられます。ただ、前者であれば、コストの減少要因にはならないので、後者なのかもしれませんが、そんなことがありうるのでしょうか。
 いずれにしても、税務上、賞与引当金の損金算入が認められなくなったことと関係がありそうです。節税効果がない引当金・未払費用は計上しても無駄だということなのでしょう。

参考:三菱重工業のサイトより

2003年5月14日 日経  日興グループ 役員の退職金 自社株で支給

記事要旨:
 日興コーディアルグループは取締役の退任慰労金制度を6月末で廃止し、代わりに 取締役に株式で報酬を支払う 制度を導入する。
 取締役報酬は月額報酬、退職金、賞与、ストックオプションの4種類から今後は月額報酬、賞与、新設の株式報酬型ストックオプションの3種類になる。同制度は 1円で自社株が買える権利。毎年7月に権利を付与するが、取締役は在任期間中は権利行使できない。

コメント:
 ストックオプションの会計処理の議論では、米国でも費用計上していないのだから、日本だけ費用計上するのはおかしいという意見がありますが、米国基準でも、付与時の自社株の時価と行使価格の差額( 本源的価値)は、費用計上するようです。日興コーディアルの場合は行使価格が1円なので、米国基準だと「付与時の時価−1円」が費用計上されることになります。
 日本の現行基準では、ストックオプションも株式の有利発行の契約に過ぎないのだから費用計上は不要だという考え方がとられており、極めて甘い基準となっています。

2003年5月13日 日経  減損会計の実務指針 対象資産区分けや基準で意見割れる

記事要旨:
 企業会計基準委員会は12日、減損会計専門委員会を開き、3月に公表した減損会計の実務指針の中間報告に寄せられた意見を報告した。
 減損の対象となる基準として、中間報告では「2期連続の営業赤字 」としているが、日本貿易会や日本鉄鋼連盟などから、画一的な形式基準ではないものにすべきだとの意見が出たほか、日本建設業団体連合会や一部の会計士からは「 最低でも3期連続とすべき」との意見があった。

コメント:
 日本貿易会などがいっているのは、減損の兆候のところです。減損会計基準では、減損の兆候があればキャッシュ・フローを調べて減損処理が必要かどうか判定しなさい、といっているだけで、連続赤字の場合に必ず減損損失が計上されるわけではありません。兆候のところを、あまり狭くとらえるのも、基準の趣旨に反すると思います。
 記事によれば「最低3年」という意見もあるそうですが、ある投資プロジェクトで赤字が出ているのに、3年間指をくわえてやり過ごすのものんびりしすぎです。一時的な赤字だという根拠があるのなら、キャッシュ・フローの見積りにそれを織り込めばよいのです。

2003年5月10日 日経  「時価会計、デフレを加速」 日商会頭、凍結に賛成

記事要旨:
 企業会計基準委員会は9日、持ち合い株式の時価会計凍結や固定資産の減損会計導入延期問題に関連し、3回目の参考人聴取を開いた。山口信夫日本商工会議所会頭は「(時価)会計がデフレを加速させている」と述べ、j時価会計の凍結に賛成した。
 山口日商会頭は「本来生きられる企業がバランスシートが汚れてつぶれる。(銀行の) 貸し渋り、貸しはがしにもつながる 」と主張。神奈川大学の田中弘教授は時価会計そのものに疑念を呈した。

2003年5月10日  Yomiuri On Line  独生保業界を株安が直撃、全体の含み損2兆円にも

記事要旨:
 ドイツの生命保険会社の経営環境が厳しさを増している。株価下落によって保有株式の含み損が大幅に拡大したためで、一部の生保では破たん危機も表面化した。ドイツ政府は評価損計上の先送りを容認するなど、株安が企業業績に与える影響を最小限にとどめようとしているが、株価がさらに下落すれば、中堅・中小生保の淘汰(とうた)につながる可能性も指摘されている。
 政府は生保各社に対し、保有する株式の価格下落が「一時的」と見なされる場合 に評価損計上の先送りを容認し、株価下落が直ちに業績悪化につながることがないように配慮している。株価の本格回復が見えない中で、この優遇措置の適用基準をさらに緩和することも検討している。

コメント:
 中小企業への貸し渋り、貸しはがしは深刻な問題だと思いますが、時価会計凍結・減損会計導入中止でよくなるとも思えません。
 まず、時価会計が現在適用され、減損会計が今後適用される対象会社は、事実上、 公開会社や商法上の大会社に限られています 。中小企業の決算は、税法ベースで作成されているものがほとんどであり、会計基準がかわったからといって何ら影響を受けないというのが現実でしょう(決してよいことではありませんが・・・)。減損会計以前に、減価償却費すらきちんと計上していない会社も多いのではないかと思います。
 金融機関の融資の査定も、当然、決算数値だけでなく、資産の帳簿価額とは関係のない資金繰り計画や、担保の時価評価によって行っているはずであり、決算上損失処理を遅らせたからといって、査定を甘くしてくれるわけではないでしょう。
 ドイツもひどい株安になっており、読売の記事によれば、生保については、時価の下落が一時的であれば評価減の先送りを容認しているとのことです。しかし、日本の現在の基準でも、 回復する見込みがあると認められる場合には、評価損を損益計算書上計上しなくてもよいので、ドイツの緩和された(?)基準でも、日本の現行基準と同じだといえます。あるいは、日本基準では時価が著しく下落していなければ(一時的でない下落であっても)評価減を計上しなくてもよいので、まだ甘いのかもしれません。このような緩やかな評価減すら凍結しようといっているのはおそらく日本だけです。

参考:企業会計基準委員会のサイトより( 第1回参考人聴取 第2回参考人聴取 第3回参考人聴取 (この回の7人の参考人のうち会計学者の意見が一番レベルが低いような気がします。))

2003年5月8日 朝日  求む、不正会計情報 民主が「告発ホットライン」

記事要旨:
 民主党は7日、企業の不正会計に関する情報をメールとファックスで受け付ける「 粉飾告発ホットライン 」を開設した。内部関係者の告発がなければわからない不正会計や粉飾決算の実態を、国会などの場で明るみに出す狙い。
 民主党は「経営の健全性が問題視されている銀行や生保に関する情報も寄せてほしい」としており、国会の場で竹中金融相に直接問いただす材料にしたい考えだ。

コメント:
 個別企業の粉飾の問題が国会質問の材料としてふさわしいかどうかは大いに疑問ですが、会計監査をやる立場としては、いつ内部告発があっても反論できるように、理屈のつかない会計処理は認めないという姿勢を貫くべきでしょう。

参考:民主党のサイトより

2003年5月8日 日経  資生堂、海外好調で最高益 2期連続赤字から「V字回復」

記事要旨:
 資生堂が7日発表した2003年3月期の連結決算は最終損益が245億円の黒字となり、前の期の228億円の赤字から一転して過去最高を更新した。
 資生堂は思い切った不良在庫処分で2001年3月期から2期連続で連結最終赤字となったが「(在庫削減で)過去のうみを出しきった」結果、前期は最高益へ急浮上。ただ高収益体質を揺るぎないものにするための課題はなお多い。
 最大の課題は化粧品売上高の5割強を占めながら地盤沈下の止まらない専門店のテコ入れだ。すでに各店舗に販売時点情報管理(POS)端末を導入。過剰発注を防ぐため、専門店に払う リベートも仕入額でなく販売額を基に算出する方式に変えた。

コメント:
 得意先に対するリベートが売上高(得意先から見ると仕入高)に基づいて計算され、支払われる場合には、会計上の売上値引きは(リベートの計算期間にもよりますが) 売上に対応する金額が計上されることになります。
 一方、リベートが得意先における販売額を基に算出される場合には、当期までの売上のうち、得意先で販売されていないもの(得意先在庫分)に対応する値引きの計上が翌期以降になり、 売上と売上値引きが期間的に対応しないことになります。
 厳密に対応させようとすると、得意先在庫の金額に予想されるリベートの率をかけたものを未払費用として計上することが必要となりますが、資生堂はどのような処理を行っているのでしょうか。

2003年5月7日 日経  KDDI特損800億円 不稼働の固定網設備処理

記事要旨:
 KDDIは2004年3月期の連結決算で、利益を生まない固定通信網設備の損失を処理し、除却損などで800億円弱のの特別損失を計上する方針だ。
 今期に損失処理するのは、マイクロ波を使った伝送路。旧DDIが発足時に長距離通信の基幹網として整備し、全国に約300カ所の中継局がある。現在はごく一部の地域で企業向け専用線サービスなどに使われているだけで、 事実上の不稼働資産となっている。
 今期の連結決算で、除却損や設備の撤去費用など約800億円 を特別損失として計上する見通し。
 携帯電話では2002年3月期に「PDC」方式の携帯電話設備の除却損などを処理し、総額2000億円の特別損失を計上した。

コメント:
 KDDIは、携帯電話の設備については、実際に稼働を停止するより前の期に設備の除却処理をしていましたが、固定通信網の不稼働資産については、除却を決めたにもかかわらず会計処理を行わないで、2004年3月期に先送りするようです。固定資産の除却に関する会計方針が一貫していないのではないでしょうか(仮に除却を決めたのが4月以降だとしても、決算作業中であれば「修正後発事象」として前の期の決算に織り込む必要があります)。

2003年5月7日 日経  銀行自己資本 かさ上げ厳しく監視

記事要旨:
 金融庁は大手銀行への検査で、自己資本比率の「かさ上げ」がないかどうかを厳格に査定する。
 大手銀行はリスク資産を圧縮する手段として企業向けの貸出債権を保険会社や地方銀行に売る動きを強めている。
 ただ借り手企業への配慮などから、貸出債権を売る際に将来の買い戻しを可能とする契約を結ぶことも多い。
 こうした慣行を隠れみのに、一定期間だけ債権を他者に譲渡する例が増えると、銀行経営の健全性がゆがむと金融庁は判断。決算期末をまたぐ 1年以内に買い戻しを約束する契約がある場合はリスク資産の切り離しとは見なさず、自己資本比率を計算する際の分母に加えるよう迫る。
 貸出債権の焦げ付きリスクを他の金融機関に保証してもらう「クレジットデリバティブ 」取引も厳しく検査する。この取引は銀行が貸出債権を抱えたままでも、他者の保証により実質的にリスクを軽減できる効果があり自己資本対策として活用する例が増えている。
 金融庁の基準は保証の残り期間が1年を切った債権については、焦げ付きリスクを他者に移したと認めないことを明記する。

コメント:
 債権の残存期間が3年なのに、譲渡した債権を1年後に買い戻したり、クレジットデリバティブの残存期間が1年しかなかったりすれば、貸倒リスクをヘッジできるのは1年だけであり、残りの2年間に発生する貸倒れは元の債権者の負担になります。理屈からいうと、譲渡した債権やクレジットデリバティブでカバーされている債権であっても、残り2年間に貸し倒れる確率を見積もって貸倒引当金を計上することが必要であると思います(クレジットデリバティブの場合は、デリバティブを時価評価して資産計上し、貸倒引当金は通常の債権と同様に引き当てるという方法が原則)。
 記事で取り上げているのは自己資本規制の話ですが、会計上も正しく処理されているのでしょうか。

2003年5月5日  asahi.com  道路公団、議事録書き換え 債務超過回避の思惑隠す?

記事要旨:
 日本道路公団(JH)が、企業会計原則に基づく財務諸表を作成するために設けた「財務諸表検討委員会」(委員長・加古宜士早大教授)の議事録を書き換えていたことが分かった。 道路建設中の支払金利などを資産(原価)に算入して「水増し」するJHの方針に対し、検討委で相次いだ否定的な意見が削除されたりしている。
 朝日新聞が入手した元々の議事録と比べると、変更された部分は、建設中の金利払いや補償費の資産算入をめぐる発言に多い。 民間企業は通常、借入金への金利払いは費用として処理。資産計上は異例で、委員から否定的見解が出ていた。JH内部からの問題点の指摘や、JH幹部が委員に働きかけたくだりなども削除されたりしている。
 検討委は最終的に金利や補償費を資産に含めることについて、「会計基準で禁止されてはいない 」(委員の一人)として了承した。それにもかかわらず議事録を修正したのは、金利などの資産算入が多くの反論なしに決まったことを示すためとみられる。
 JHが民営化推進委に提出した資料によると、補償費は1.7兆円、建設中の金利は4兆円 に上る。こうした費用を資産計上すると、債務超過の回避が可能になるとみられている。

コメント:
  支払利子を資産の原価に算入できるか(あるいは算入すべきか)どうかは、明確な理屈がなく、現行の基準ではどちらも認められています。また、米国基準では利子の原価算入が強制となっており、原価算入したからといって、水増しであるとは一概にはいえません。
 ただし、発生した利息がすべて原価算入されるわけではなく、資産の建設とひも付き関係になっている借入金の利子であること、 正常な開発期間の支払利子であることなどが条件となっています。したがって、計画がずさんで建設期間(あるいは土地を取得してから建設に取りかかるまでの期間)が異常に延びた場合などは、発生した利子のうち、正常な期間の分しか原価算入は認められません。
 道路公団では、建設中の利子は4兆円だそうですが、原価算入できるものばかりなのでしょうか。

2003年5月3日 日経金融  子会社株含み損 みずほ3兆8000億円処理

記事要旨:
 みずほフィナンシャルグループは、中間持ち株会社であるみずほホールディングスが保有しているみずほ銀行とみずほコーポレート銀行の株式を時価評価 し、2003年3月期決算で含み損を処理する。2行の処理額は総額で3兆8000億円となる。
 みずほ銀行は簿価の2兆400億円のうち1兆円弱を、みずほコーポ銀行は簿価の3兆9000億円のうち2兆8000億円を含み損として処理する。具体的には合計で 約3兆8000億円の投資引当金を中間持ち株会社のみずほホールディングスに計上。この結果、 みずほホールディングスの単体決算は3兆8000億円の最終赤字となる。
 一連の損失処理は中間持ち株会社で完結するため、みずほフィナンシャルグループの決算には影響が出ない

コメント:
 この記事は、中間持ち株会社のバランスシートに載っているみずほ銀行株式とみずほコーポレート銀行株式の評価減(引当金の計上)の話ですが、総括持ち株会社であるみずほフィナンシャルグループ(個別決算)のバランスシートに載っている中間持ち株会社の株式は評価減しなくてもよいのだろうか、という余計な心配をしたくなります。いずれにしても、 持ち株会社形態をとっている企業グループでは、個別財務諸表(記事の例ではみずほフィナンシャルグループの個別財務諸表)は、持分法でも適用しない限り(現行基準では適用できません)、グループの財政状態・経営成績を知るのには、ほとんど役に立たないということがいえると思います。

2003年5月3日 日経  長期の為替予約 会計処理を巡り混乱

記事要旨:
 企業が長期間の為替予約をした場合の会計処理を巡って混乱が生じている。
 為替予約は為替の変動リスクを回避する目的で多くの企業が利用している。一定の要件を満たせば損益に反映させない処理が認められている。
 ところが最近、国内外の金融機関が10年の長期にわたって1ドル=100円といった均一レートでドルを買える為替予約を販売し始めた。例えば、3年後の為替予約の実勢レートが1ドル=110円だったとしても100円で購入でき、逆に8年後の為替予約の実勢レートが1ドル=90円でも、100円での購入となる。
 これに対し、一部の会計士が予約期間の前半に利益を先取り していると見なせるとして、損益に反映すべきだと主張。会計士協も1年以上の為替予約は、原則として損益計上するよう2月半ばに会計士に要請した。
 牛肉を輸入している吉野家ディー・アンド・シーは仕入れコストを安定させるため長期の為替予約を望んでいる。だが、「損益に反映されれば為替の変動リスクの方が大きく、為替予約はできない」と、会計士に理解を求めている。

コメント:
 為替予約もデリバディブ取引の一種なので、 原則的には時価で評価 し、決済されるまでの期間、評価差額は損益に計上されます。しかし、外貨建の売上や仕入が予定されている場合に、それらとひも付きになっている予約については、売上・仕入に直接振り当てる(売上・仕入を予約レートで換算する)処理(したがって、その時点までは時価評価は行わない)も、一定の条件のもとで特例的に認められています。
 記事で取り上げられている長期の為替予約については、会計士協会の審理情報によると大きく分けて2つの問題点があるようです。
 まず、長期(例えば10年間)の包括的な予約であるため、その間の予約レートを操作できるという点があります。1年後の予約、2年後の予約、・・・10年後の予約というように、バラバラに予約を行った場合、金融機関側はそれぞれの予約について、適正な予約レートを設定する必要があります。現在、米ドルの金利の方が日本円の金利よりも高いので、1年後よりも2年後、2年後より10年後の方が、より円高の予約レートになるはずです。
 ところが、これらをまとめて、長期の予約とすれば、金融機関側では、予約全体で帳尻が合えばよいので、1年後も10年後も同じレートとすることが可能です。その場合、審理情報のいうように、契約期間の前半は、顧客にとって有利なレート(ドルを買う予約の場合)、後半は不利なレートとなります。
 2番目は、そもそも10年間といった長期の予約が、ヘッジといえるかどうかという問題があります。吉野家の例が出ていますが、仮に10年後に1億ドルを買う予約をしたとして、それに見合う(つまりヘッジの対象となる)牛肉の輸入仕入があるかどうかは、全くわかりません。仮に5000万ドル分しか輸入がなければ、残りの5000万ドル分の予約は余ってしまいます。また、100円で予約したのに、10年後に1ドル=70円になっていれば、円ベースで考えると、ライバル会社は7割の値段で牛肉を輸入できることになり、価格競争に負けてしまうおそれすらあります。
 長期の為替予約が、為替変動リスクをヘッジするものであれば、輸出企業も大いに活用しているはずですが、そういう話も聞きません。金融機関の方では、一般企業を相手に為替予約というデリバティブ取引(しかも、通常であれば期間が数ヶ月のものが、10年間という長期の契約になっている)を売りつければ、手数料が稼げるわけですが、企業の方では、本当にヘッジになっているのか、ヘッジのつもりが新たなリスクを負うことになっていないか、十分検討する必要がありそうです。

参考: 日本公認会計士協会のサイトより

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