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企 業 財 務 記 事 ウ ォ ッ チ ャ ー 2003年9月


2003年9月30日 日経 2期連続赤字の事業部門 上場企業28%が抱える 減損会計にらみ改革必至

記事要旨:
 上場企業の28%が2期連続して赤字となった事業部門を抱えていることが、日本経済新聞社の集計で分かった。2006年3月期からの会計制度変更で、 3期連続して赤字となる事業部門の固定資産は損失を計上しなければならない可能性があり、約3割の企業がその”候補”を抱えていることになる。

コメント:
 減損会計基準や減損適用指針案では「営業活動から生ずる損益が継続してマイナス」の場合に減損の兆候があるとしていますが、そのれは、例えば、店舗や工場ごとに資産をグルーピングした場合には、その 店舗や工場ごとの「営業活動から生ずる損益が継続してマイナス」であるという意味なので、事業部門全体では営業赤字・経常損失になっていなくても、店舗や工場ごとにみてマイナスが生じていれば、それらの店舗や工場については減損の兆候があると考える必要があります。また、損益が連続して赤字というのは兆候の例示の一つにすぎないので、それ以外の兆候があれば、減損処理を検討する必要が生じることになります。
 要するに、記事でいっている28%の上場企業だけが減損会計に引っかかるわけではないということです。

2003年9月30日 日経 日産ディーゼル 仏ルノー、減資に応じる

記事要旨:
 日産ディーゼルの再建では主導する銀行団が900億円、日産が160億円の債権の株式化をそれぞれ決め、大株主だが債権を持たないルノーの対応が残る焦点になっていた。
 銀行団はルノーの持つ日産ディ株22.5%(簿価で約30億円)の全額消却という案を提示。財務への影響を懸念したルノーは反発していたが、一部減資で決着した。減資の規模は持ち分の半分に相当する15億円を軸に検討しており、10月後半のルノーの取締役会で決定する。この結果、日産が日産ディの単独筆頭株主となる。

コメント:
 これまでも何度も書いていますが、減資をしたからといって、持ち分は全く変わらず、また、株式の価値が減るわけではありません。銀行案のように全部消却するのであれば、持ち分を完全に失ってしまうので、大株主としての一種の責任を果たしたことになりますが、減資しただけでは、ルノーは痛くもかゆくもありません。なぜ、そんなことが大きな記事になるのか、 全く不思議です。

2003年9月27日 北国新聞(ホームページ)  9億円の土地、辰口町に寄付 日本板硝子 進出断念、用地維持もできず
 
記事要旨:
 (石川県)辰口町岩内への工場進出計画を凍結していた大手ガラスメーカー、日本板硝子(本社・大阪)は26日、工場建設を正式に断念する意向を明らかにし、保有する 工場用地約8万5千平方メートルを同町に寄付した。町によると、同用地の評価額は約9億円。
 用地はゴルフ場に近い丘陵地で、県を通して同社を誘致した辰口町が地元地権者から買い上げ、1991(平成三)年に同社に売却した。
 工場はパソコン画面などに使用するファインガラスの生産拠点とし、94年度中の操業開始を目指したが、経済環境の変化などを理由に建設計画は凍結となった。
 同社は数年前、町に土地の買い戻しを打診、その後も新たな買い手を探してきたが見つからず、 維持費もかかる ため寄付を決めた。

コメント:
 固定資産の減損会計について書いたものを読むと、減損会計対策として遊休不動産のいわゆる「有効活用」を勧めているものが目につきます。8月に公表された減損適用指針の公開草案でも「例えば、ある土地を 平面駐車場から最有効利用と考えられる賃貸ビルへ転用した場合のように、従来より 明らかに回収可能価額を増加させる 事象などは、必ずしも減損の兆候には該当しない」と、不動産会社の宣伝のようなことが規定されています(第78項)。
 企業がその資産をできるだけ有効に利用しようとするのは当然ですが、そのために追加的な投資を行うことが本当に有利なのかはきちんと見極める必要があります。記事の例のように無理に有効活用しないという選択が合理的な場合も多いと思います。そのようにすれば少なくとも税金分だけは確実に回収できます(十分な課税所得がある会社の場合ですが)。

参考:日本板硝子のサイトより

2003年9月26日 日経 協発酵、赤字45億円 退職給付信託で解約損

記事要旨:
 協和発酵は25日、2003年9月中間期の連結最終損益が45億円の赤字になる見通しと発表した。退職給付信託の解約などに伴う210億円の特別損失を計上するのが響く。
 9月中間期の特損は退職給付信託の解約損失が160億円、メキシコ子会社の清算に伴う損失が30億円。このほか欧州での飼料用アミノ酸の販売カルテル問題に絡んだ19億円の特損も計上する。

コメント:
 退職給付会計では退職給付信託も年金資産の範囲に含まれます。したがって、退職給付信託を解約することによる損失も、年金の運用損と同じように、 数理計算上の差異として遅延認識するのが正しい処理だと思いますが、一時に損失を認識する何か理屈があるのでしょうか。

2003年9月24日 日経 りそな最終赤字1兆円超 9月中間

記事要旨:
 実質国有化されているりそなグループの2003年9月中間期の最終赤字が連結ベースで1兆円を超す見通しとなった。りそな銀行、近畿大阪銀行など傘下銀行の 不良債権処理を加速し1兆円規模の処理損失を計上するほか、関係会社の整理や保有株式の売却なども進める。
 りそな銀と近畿大阪銀の不良債権処理損失が拡大するのは、資産の再査定で正常債権から不良債権へ分類が劣化 する例が相次ぎ貸倒引当金の積み増しが必要になったことに加え、正常に近い債権の引当金水準も引き上げるため。経営内容の悪化した「緊密取引先」の不動産会社や関係会社の整理損、年金の積み立て不足の処理損失も見込む。
 赤字額については流動的な面も残るが、最大で1兆2000億円程度を計上する方向。

コメント:
 貸倒引当金の性質上、その計上額にある程度ぶれが生じるのはやむを得ません。また、不況が続く中、前期以降貸出先の状況が悪化すれば、それに対応した引当の積み増しが必要なのもわかります。しかし、3月末からの6ヶ月間で1兆円もの不良債権処理損失が計上されることを、そういった要因だけで説明できるのかどうか、繰延税金資産以前の重要な問題だと思います。

2003年9月20日 日経  日産ディーゼル 日産が250億円支援 産業再生法申請へ

記事要旨:
 トラック専業大手の日産ディーゼル工業の経営再建策の全容が19日明らかになった。日産自動車が金融支援を含め250億円強の支援に乗り出す。銀行団と日産自動車による金融支援の総額は1060億円となる。
 日産ディは子会社で販売金融事業を手がけるエース総合リースを通じ中小トラック業者を中心にローン販売している。同リースとともに950億円に上る ローン債権の相当部分を売却する。
 日産ディは一連の資産売却に伴う損失発生に備え、200億円の貸倒引当金 を今期に計上する見込み。さらに 年金債務や保有土地の含み損も一括処理 、過剰債務とともに経営のマイナス要因を一掃し短期間で再建を軌道に乗せる。

コメント:
 支援を受けるのと同じタイミングでさまざまな含み損をまとめて処理しV字型回復をねらうというのは、最近よくあるパターンですが、会計の理屈から言うと難しい面もあります。
 記事の例では、200億円の貸倒引当金を計上するようですが、貸倒引当金は今までも回収不能見込額に対して積み立ててあるはずなので、前3月期以降、半年間で回収不能見込額が急激に増える理由を説明する必要があるでしょう。年金債務の含み損(未認識の退職給付債務)についても、今まで分割処理していたのを一括償却するのであれば、それなりに理屈が必要です(会計士協会でもみだりに処理方法を変えるなと指導しています)。保有土地の含み損処理も、減損会計導入前なので、評価減を行うための理論づけを現行基準ベースで考えておく必要があるでしょう。

2003年9月20日 日経  古河機電の今期 290億円の最終赤字

記事要旨:
 古河機械金属は19日、2004年3月期の連結最終損益が290億円の赤字になる見通しだと発表した。業績不振が続いていたオーストラリアの銅精錬子会社の操業を8月末で休止、固定資産の減損処理などで処理損失393億円を計上するため、特別損失がかさむ。
 8月に子会社の古河不動産を合併したことで連結株主資本は93億円上乗せ されたが、9月末時点で180億円にとどまる見通し。

コメント:
 8月に公表された企業結合会計の公開草案では、親会社と子会社の合併などの 共同支配下の取引 は、連結財務諸表上、内部取引として消去 することになっています。この公開草案に従えば、子会社と合併しただけで株主資本を上乗せするという会計処理は認められなくなります。

2003年9月18日 日経金融  ストックオプションの費用計上 コスト負担は会社か株主か

記事要旨:
 米会計基準審議会(FASB)が従業員向け株式購入権(ストックオプション)について損益計算書での費用計上を義務づける方針を決め、具体的な計算方法を検討している。国際会計基準でも同様の作業が進み、「費用計上不可避」の流れが固まってきた。だがストックオプションの「本場」を自認するシリコンバレーの経営者や投資家の反論にも一理ある。
 シスコシステムズのデニス・パウエル最高財務責任者(CFO)は、「百人以上の投資運用責任者にストックオプションのコストが会社のコストか株主のコストかと尋ねたところ、全員が株主のコストだと答えた」と言う。その上で「 ストックオプションの発行は会社の持ち分の割り振り行為で、営業上の費用とするのは本質的に誤り」と主張する。

コメント:
 ストックオプションの会計処理については、(1)ストック・オプションは費用認識すべきか、(2)費用認識するとすればその金額はどのように決めるか(時価(公正価値)か本源的価値か)、(3)時価(公正価値)で費用計上するとすればその時価をどのように見積るか(ブラック・ショールズ・モデルによる見積りでよいのか)、といった論点があります。
 FASBや国際会計基準理事会では、(1)と(2)はすでに解決済みという立場で、現在(3)を議論しているようですが、(1)もなかなか難しい問題です。費用計上するという考え方は、ストックオプションは従業員や役員が企業に提供した 役務の対価であるという側面に着目しています。これに対して、シスコシステムズのCFOは、ストックオプションは会社にとっての費用ではなく、株主が従業員や役員に持ち分の一部を割り振っただけといっています。しかし、持分の割り振りは費用でないとすると、現金で支払う人件費も企業が生み出した付加価値を従業員に割り振ったものなので費用ではないという理屈にはならないのでしょうか。
 わが国でもストックオプションの会計処理が企業会計基準委員会で議論されています。こちらはシスコシステムズのCFOのような考え方も有力で(1)の問題も解決していない段階です。基準になるまでにはまだ相当かかりそうです。

2003年9月18日 Yomiuri On Line  基準地価 いまだに底なしの土地デフレ (9月19日付 読売社説)

記事要旨:
 国土交通省が発表した今年7月1日時点の都道府県地価(基準地価)は、商業地、住宅地とも12年連続で下落した。
 しかも下落率は年々拡大している。土地デフレは落ち着くどころか、なお深刻化しつつあることが鮮明になった。
 この土地デフレのさなか、土地の保有に一層の負担を強いる動きがある。2005年度からの導入が予定される「 減損会計」だ。固定資産の市場価格が簿価より5割程度下落した場合、企業はその下落分を、損失として計上しなければならない仕組みだ。
 企業は、地価下落による損失拡大を恐れ、土地の処分を急ぐことになる。これでは、下落に拍車がかかるばかりだ。土地デフレを加速させる「減損会計」の導入は、再検討しなければならない。

コメント:
 読売新聞は、有価証券の時価会計停止を主張したり、りそな銀行の繰延税金資産を監査法人が厳しく監査したことを批判したりと、とんでもない社説を連発しています。これも同じ類です。減損会計で損失が出るのはデフレ経済の結果であって原因ではありません。企業の実態が明らかにならなければ、かえって疑心暗鬼を招き、資本市場に資金が回らなくなり、デフレを一層深刻にするだけです。エンロン、ワールドコム事件をディスクロージャーを強化することで乗り切りつつあるアメリカを少しは見習うべきでしょう。
 減損会計の導入で土地の保有に負担を強いると書かれていますが、そもそも減損損失が計上されても企業にとって(資金の流出という意味での)実質的な損失は一円もありません(税務上の損金にならないのでプラスにもなりませんが)。
 減損会計導入で企業が土地の処分を急ぐというのも、全く根拠がありません。合理的な企業経営者なら、売却から得られる収入と、保有し続けることによって得られる収入(の現在価値)を冷静に比較して、前者の方が大きければ売却し、そうでなければ保有し続けるという意思決定を行うはずです。減損会計で損失が生じるかどうかということは、そのような意思決定には影響しないはずです。
 もちろん企業経営者がこのような教科書通りの行動をとるかどうかはわかりませんが、減損会計導入で地価が下がるといった根拠のない憶測を垂れ流すことの方がよほど地価には悪影響を与えるのではないかと思います。

(注)企業の土地保有に影響を与えているのは、税制だと思います。含み損のある土地を売却すれば、売却損に対応する税金が戻ってくるのに対し、土地を保有し続ける限りは 含み損がいくら大きくても税務上のメリットはありません。売却すれば戻ってくる税金の金額だけ、土地を保有し続ける企業には機会費用が生じていることになります。

2003年9月18日 読売  千葉県住宅公社 911億円債務返済不能 不透明会計が招いた債務超過

記事要旨:
 全国の住宅供給公社が経営危機に苦しむ中、千葉県住宅供給公社が実質的な債務超過に陥り、約911億円の債務が返済不能担っていることが分かった。破たんの主因は、用地買収後に凍結された大規模団地開発で、千葉県の堂本暁子知事は、きょう18日、地方自治法199条の基づく監査請求を行う。
 同公社の危機は、千葉県が大手監査法人「トーマツ」に外郭団体の経営調査を依頼したことで浮上した。昨年10月末にまとめられたトーマツの報告書で、千葉県住宅供給公社は「貸借対照表上の純資産は26億3000万円だが、 販売用不動産に343億900万円の含み損があり、引当金を取り崩しても、108億2700万円の実質債務超過となる」と指摘されていた。
 分譲、賃貸住宅を建設してきた住宅供給公社は、全国に57ある。大半が売れない土地や長期保有土地を抱え、金利が膨らむ一方なのに、その危機的な経営状態はあまり表面化していなかった。
 これは、経営実態を隠す地方住宅供給公社会計基準を採用してきたためだ。各公社の決算書では、公共性を建前に当期損益がゼロ、利益も損失もなかった形をとってきた。2003年3月期からは一部の含み損を計上する新会計基準が適用され、時価会計に近づいたものの、 保有土地の簿価と時価の差が50%未満であれば簿価で計上でき、不透明さは依然、残っている。
 ところが、千葉県の場合(実質債務超過が明らかになったのは)民間企業並みの時価会計 を採用した結果とみられる。

コメント:
 記事では、千葉県の住宅公社の場合、民間並みの会計基準を採用して監査したから実態がわかったとされていますが、よく知られているように、販売用不動産は 時価が著しく下落したとき(50%以上下落が目安)でないと評価減が強制されないという点では、企業会計の基準も住宅公社の基準も全く同じです。
 つまり、民間の不動産会社でも、千葉県住宅公社並みの悲惨な状況にありながら、その実態が決算に表れていないケースがいくらでもあるということになるのかもしれません。

2003年9月17日 日経金融  三菱信託 企業保有地、安価で土壌浄化コスト概算

記事要旨:
 三菱信託銀行は三菱マテリアル資源開発と提携し、化学物質などで汚染された土地の価格を概算 するサービスを始めた。汚染の程度を予測して浄化に必要なコストを算出し、土地の評価額を割り出す。
 2005年4月から保有不動産に減損会計が導入される予定。企業が汚染された土地を持っていると 収益に悪影響が及ぶようになる。このため、企業は汚染の有無や浄化コストの把握を急いでいる。

コメント:
 汚染された土地の浄化費用と減損会計の関係を考えてみると、記事に書かれているような、汚染された土地を持っているからすぐに減損会計にひっかかって損失を計上するということにはならないと思います。
 減損会計基準では、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで下げることになっており、 回収可能価額 は固定資産を売却して得られる金額である正味売却価額と、固定資産を使用して得られるキャッシュ・フローの現在価値である使用価値のいずれか大きい方の金額とされています。土地に汚染物質があり浄化に多額の費用がかかるという場合、直接的に影響するのは、 正味売却価額の方です(浄化しないと売れないわけだから、売却収入から浄化費用を差し引いた金額が企業の手取金額となる)。 使用価値の方も、最終的な資産の処分から得られるキャッシュ・フローの現在価値を最後に足して(いいかえると浄化費用の現在価値を引いて)計算するので、浄化費用の影響を受けないわけではありませんが、工場などを操業することから十分なキャッシュ・フローが得られるのであれば、それほど影響はないでしょう。

2003年9月10日 日経  丸井 今期特損269億円 割増退職金や土地評価損

記事要旨:
 丸井は9日、2003年9月期の連結純利益が60億円になる見通しと発表した。
 決算期を1月期から3月期に変更することで、今期は8ヶ月間の変則決算となる。
 9月末に希望退職に応募した40歳以上の750人が退職し、割増退職金129億円を特別損失として計上する。さらに、 本社ビルを9月末に子会社のエイムクリエイツに売却。簿価と売却価格の差額である 140億円を 固定資産評価損として特損に計上する。特損は総額269億円と、3月の厚生年金基金解散に伴う特別利益約260億円にほぼ見合う額となる。

コメント:
 連結財務諸表においては、連結会社間の取引で生じた未実現損益は消去するのが原則ですが、連結財務諸表原則によれば、 未実現損失については、売り手側の帳簿価額のうちの回収不能部分は消去しない ことになっています。
 固定資産の売買のケースを考えてみると、減損会計基準設定前であれば、連結会社間の取引を使って回収可能額まで帳簿価額を下げるのも便法としてあり得たと思いますが、基準ができた以上、未実現損失を消去したうえで、減損会計を適用するのが本来の方法です。そのようにしないと、例えば、減損会計を適用して評価損(減損損失)を計上した場合には詳細な注記が必要となるのに、連結会社間の取引を使えば、実質的に評価減であるのに、注記不要というちぐはぐなことになってしまいます。また、資産グループの中の一部の資産だけ連結会社間取引で評価を下げて、資産グループ全体では、減損損失の計上を免れるということも考えられないではありません。
 もちろん、重要性がない取引であれば、わざわざ未実現損失を消す必要はないと思いますが、そのことはすでに連結原則に書かれています(「未実現損益に重要性が乏しい場合には、これを消去しないことができる」)。
 減損会計の導入に関連して見直しが必要な一つの点かもしれません。

2003年9月9日 日経  ミレアの米国基準決算 最終黒字 日本基準の6.7倍

記事要旨:
 東京海上火災保険と日動火災海上保険の持ち株会社であるミレアホールディングスが8日発表した米国会計基準の2003年3月期決算は、最終黒字が3780億円と日本基準の6.7倍の高水準となった。
 米国基準の利益幅が大きく膨らんだのは、持ち株会社設立時に生じた会計上の収益約2400億円を1年間で一括計上 したためだ。日本基準では毎年84億円を20年間にわたり計上する方法をとったため、収益の総額も含めて大きな格差が生じたという。

コメント:
 記事でいっている持ち株会社設立時に生じた会計上の収益というのは、いわゆる負ののれん のことです。ミレアホールディングスのホームページ(米国会計基準による決算短信)をみると、「負の営業権については 長期性の非金融資産等と相殺のうえ、その残額である248,323 百万円を異常利益として 当期の損益 に含めております」と書かれています。つまり、負ののれんは、時価評価があいまいな固定資産(金融資産以外)の金額から差し引いたうえで、残りを一時に利益に計上しています。
 一方、先月公表されたわが国の企業結合会計公開草案では、負ののれんについて、従来の連結原則を踏襲して、「承継した資産の取得原価総額を調整する要素とみて、正の値であるのれんと対称的に、 規則的な償却を行う」とされています。
 わが国では日経平均はかなり持ち直したとはいえ、株価が一株当たり純資産を下回っている会社もかなりあるようです。下回っているからといって、その会社を買収したときに必ず負ののれんが発生するわけではありませんが、負ののれんの生じるケースはかなりありそうです。
 企業会計審議会で最終的のどのような結論になるのか気になります。

参考:ミレアホールディングスのサイトより 企業会計審議会のサイトより

2003年9月6日 日経  会計士協 不祥事に関する処分内容を公表

記事要旨:
 日本公認会計士協会は5日、不祥事にかかわった会計士の処分内容3件を公表した。
 最も重かった処分は6ヶ月の会員権停止。2001年に民事再生手続きを申請した日本ビューホテルの会計士とみられる。 貸付金の回収が不可能と認識しながらも、監査で適法との意見を表明した。

コメント:
 監査をやっていると、会計処理に間違いがあったり、引当金などの見積りがおかしかったりしても、来期に修正するからということですませてしまうことが、よくあります。もちろん、監査の最後の段階では、そういった会計処理ミスや見積が怪しい金額を合計して、本当に修正しなくても、財務諸表の読者に誤解を与えないか確認したうえで、監査意見を決めるわけですが、一度修正しなくてもよいとクライアントにOKを出した件について、やっぱり直してほしいというのは抵抗があります。しかし、そこで筋を通しておかないと、会計処理の誤りや引当金の不足を認識しながら見逃して無限定適正意見を出したと判断されかねず、監査人が無能で問題事項を発見できなかった場合よりも責任が重くなってしまいます。
 会計士に対する監視が厳しくなる状況では、よほど少額なものを除いて、おかしな処理はすべて修正させるというスタンスで監査に臨むべきなのでしょう。

参考: 日本公認会計士協会のサイトより

2003年9月6日 日経夕刊  大手監査法人 狭き門

記事要旨:
 大手監査法人への就職が「狭き門」になっている。中央青山など大手4法人は、公認会計士2次試験の合格者を対象とする2003年秋の 採用人数を790人程度と、前年より22%減らす方針だ。
 合格者は約1200人と5%増える見込みだが、取得した資格を生かす場が狭まっており、 会計インフラの整備が遅れる 恐れもある。

2003年9月2日 日経 改正会計士法 監査業務との同時提供規制 帳簿作成など禁止

記事要旨:
 2004年4月施行の改正公認会計士法によって、監査法人が監査業務と同時に提供することが禁止される非監査業務 の細目が明らかになった。会計帳簿の作成など企業の経営判断にかかわる可能性のある業務は一切できなくなる。
 主な内容はエンロン事件をきっかけに2002年7月に成立した米企業改革法(サーベインズ・オックスレー法)とほぼ同じ。帳簿作成や投資のアドバイスなど経営判断にかかわる業務や、会計情報システムの設計など会計士自らが監査対象とする業務が対象となる。年内にも内閣府令で正式に決まる見通し。

コメント:
 会計士法の改正により会計士の試験制度も大きく変わり、数年後からは合格者も大幅に増加する予定です。しかし、監査を中心とする限り、監査報酬が少しぐらい上がったからといって、増加する合格者のうち監査法人で吸収できるのは、一部分にすぎないと思います。
 そこで、監査法人の立場からすると期待されるのが、監査以外の業務を拡充することですが、それも2日の記事によると難しくなりそうです。もちろん、監査業務と同時提供する非監査業務が制限されるだけなので、監査と関係のないクライアントを見つけてくればよいわけですが、監査法人の優位性は監査業務とのシナジー効果にあるといってよいので、急速な伸びはなかなか期待できません。
 いずれにしても、合格者倍増になったときの合格者受け入れ先を今から考えておかないと大変なことになりそうです。あるいは、新入職員の給与水準を現状の3分の2に下げて、大量採用・大量退職のアメリカ型会計事務所を目指すのでしょうか。

2003年9月5日 日経  「旅の窓口」 楽天が買収  320億円

記事要旨:
 インターネットの仮想商店街運営最大手の楽天は、日立造船の全額出資子会社で、国内最大の宿泊施設予約サイト「旅の窓口」を買収すると発表した。 買収金額は323億円
 「旅の窓口」を運営するのはマイトリップネット。楽天は日立造船が保有するマイトリップの全6万株を17日に譲り受ける。
 楽天は買収資金を現金と100億円超の銀行借り入れで賄う。2003年12月期に のれん代の一括償却費として310億円 を特別損失に計上する。
 株式上場の準備を進めていたマイトリップを1ヶ月の交渉で楽天の傘下に入れるために、「 上場時の時価総額は200億円台 」(市場関係者)といわれていたマイトリップに破格の値段をつけた可能性もある。
 三木谷浩史社長は「宿泊予約サイトの成長性などを考慮すると、安くはないが合理的な金額」と主張する。

コメント:
 先月公表された企業結合会計の公開草案で、のれんの償却について、どのように書いてあるかをみてみると、現行の連結会計原則や資本連結実務指針とほとんど同じで、「20 年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により 規則的に償却する」とありました。「のれんの金額に重要性が乏しい場合」には、一時償却できますが、記事の例のような310億円もののれんは該当しそうにありません。
 もちろん、310億円ののれんの効果が一瞬にしてなくなってしまったのなら、即時に償却する必要がありますが、楽天の社長は、買収金額は合理的な金額だといっているので、そうでもないようです。
 また、個別決算における会計処理との関係も気になります。個別決算では、買収金額の320億円で子会社株式が計上されますが、連結上、そのうち310億円は一括償却してしまった(つまりその金額は価値がないと判断した)のですから、個別決算上の子会社株式も310億円評価減を計上しなければ、整合しません。(注)
 のれんの買収時一時償却は保守的で健全な会計処理であるという見方もできますが、理屈をつけるのはなかなか難しいと思います。

(注)資本連結実務指針では、個別決算で子会社株式の評価減を行った場合には連結調整勘定に相当の減額を行わなければなりませんが、その逆は規定していないので、 形式的には認められるのかもしれません。

参考:楽天のサイトより 企業会計審議会のサイトより

2003年9月5日 日経  中央地の6月中間 最終赤字248億円 不動産で評価減 債務超過

記事要旨:
 不動産販売の日本中央地所は4日、2003年6月中間期の連結最終損益が248億7000万円の赤字になったと発表した。稼働率低下で不動産賃貸事業を縮小、地価下落による 保有不動産の評価減など引当金239億6000万円を特別損失に計上した。中間期末で155億円程度の債務超過となった。
 同時に2004年12月期から2006年12月期までの再建計画を発表した。
 自力再建は困難として主力のみずほ銀行など取引金融機関10行に120億円程度の債務免除を要請するほか、減資による債務超過解消を検討する。

コメント:
 この例のように、債務免除を受けるという段になるまで、資産(特に賃貸不動産のような固定資産)の含み損を隠し通せるのが、現行の会計基準です。 減損会計の導入で少しはまともになるのでしょうか。
 記事では、不動産(日本中央地所のホームページで調べてみると、主に賃貸不動産)の評価減を行ったから債務超過になって、再建計画が必要になったという流れで書かれていますが、現行会計基準の建前からすると、再建計画を策定するなかで賃貸不動産を売却して有利子負債を減らすということになり、その結果、賃貸不動産に関する損失発生の可能性が高くなり、かつ、損失金額が合理的に見積ることができるようになったため、 引当金を計上した(企業会計原則注解18)と解釈せざるを得ません(そうでないと、前期まで放置しておいて、今期、引当金をたてる理屈がなくなる)。
 なお、記事では、減資による債務超過解消を検討していると書かれていますが、減資をしても資本の部の中で資本と欠損金が相殺されるだけであり、債務超過が減ることはないので、明らかな間違いです。

参考:日本中央地所のサイトより

2003年9月3日 日経  道路公団総裁の「信頼性確保」発言 会計士協会が不快感

記事要旨:
 日本公認会計士協会は2日、監査法人による日本道路公団の財務諸表の検証結果について、「(監査と同じように)信頼できるかのような誤解を招く(道路公団の)説明がある」と批判する奥山章雄会長の声明を発表した。
 会計士協は8月29日に公表された検証結果が金額の正確性などを単純に検算したものにすぎないことを指摘。 財務諸表が適正かどうかを結論づける「監査」ではなく、会計基準に沿って債務超過でないと判断したものでもないとくぎを刺している。

コメント:
 言葉の一般的な意味では、何らかの情報を第三者がチェックするのが監査であるといってもよいと思います。会計士や税理士が顧問先を毎月巡回して経理指導を行うのも、今回の道路公団の民間並み財務諸表の検証も、広い意味では監査であるといえなくもありません。
 しかし、会計士や監査法人が行う監査(特に財務諸表監査)ということになると、監査基準に基づいて、高いレベルの保証を与えるために行われる業務に限定されます。高いレベルの保証を与える業務と、低いレベルの保証しか与えられない業務が、同じ「監査」という言葉でくくられては、「悪貨は良貨を駆逐する」ではありませんが、厳密な意味の「監査」に対する信用もなくなってしまいます。会計士協会が道路公団の説明を批判するのも当然だと思います(もっとも、日本の「監査」は国際的には「レビュー」のレベルだという人もいるようですが・・・)。
 
参考: 日本道路公団のサイトより

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