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企 業 財 務 記 事 ウ ォ ッ チ ャ ー 2005年9月
2005年9月29日 Yomiuri On Line 「トト」154億債務隠し?検査院が訂正要求
記事要旨:
売り上げ低迷に悩むスポーツ振興くじ(サッカーくじ、toto)を運営する 独立行政法人 「日本スポーツ振興センター」が、くじの販売業務を委託しているりそな銀行への債務計154億円について、財務諸表の中の「注記事項」では説明しているものの、貸借対照表に明示せず、会計検査院から「財務状況を適正に表していない」と、訂正を求められたことが、29日わかった。
totoは2001年3月から売り出しが始まり、くじの販売や払い戻し業務については、当初から5年契約で、りそな銀行(当時は大和銀行)に委託された。その際、同行はコンピューターシステムの整備など 初期投資として350億円を負担した。
センターはこれを、委託期間中の5年間で年70億円ずつ返済 することにしたほか、同行への委託料が年約110億円かかるため、両方を加えると、毎年同行に約180億円ずつ支払うことになっていた。
しかし、同センターがtoto販売で利益を得たのは初年度だけで、その後、売り上げは減少を続けた。このため、03年度以降、 りそな銀行への支払いは多くを翌年度以降に先送りしており、未払い金は04年度末で154億円に上った。
それにもかかわらず、同センターは、財務諸表内の 貸借対照表にこの未払い金を盛り込まず 、借金の実情が見えにくい状態にしていたため、検査院が問題視し、改善を要求。これを受け、同センターは、これから公表する04年度の貸借対照表には、りそな銀行への未払い金約150億円を表示することになった。
コメント:
企業会計的に考えれば、りそな銀行に対する350億円のシステム整備費は、長期未払金として負債に計上するとともに、一種の権利金と考え、長期前払費用(税務上の繰延資産)として資産計上し、使用見込期間で規則的に償却すべきでしょう。「未払い額=経費過少額」ではないにしても、この法人がやったような、 支払った分しか経費にしないという処理は、おかしな処理です。独立行政法人の会計基準をよく知らないので、会計基準違反とまで言い切る自信はありませんが、常識的に考えれば、こういう処理が認められるはずがありません。
この独立行政法人のプレスリリースによると「スポーツ振興くじ事業の 運営費は、法令によりその上限が定められている 」ので、それを上回っても負債には計上せず、「後年度に負担することとなる当該 上限を超える額については、債務負担行為額として注記 していた」のだそうです。要するに、注記さえしてあれば、法律で決められた上限よりも多くの運営費が実際に発生したとしても、その上限までの金額を負債に計上していればよいということです。
独立行政法人は、設立の目的が営利企業とは異なるので、会計基準を一般企業と全く同じにする必要はないと思います。しかし、会計基準違反かどうかは別として、この法人のやり方は、官庁会計の現金主義的なところを恣意的に取り入れて、実態を隠していたといわざるを得ません。
ところで、この法人のホームページで「財務」のページをみると、 監査法人の監査報告書 が丸ごと公開されています。それ自体は、いいのですが、監査報告書の対象となっている決算書類が完全な形ではホームページには載っていません。例えば、貸借対照表が監査報告の対象となっているのに、ホームページにはまったく掲載されていません。
本来、監査報告書は、監査対象となっている決算書とセットになって、初めて意味を持つものです。監査報告書を独立した形で公開し、そのお墨付きだけ利用させるというのは、非常にまずいやりかたです。監査法人は、監査対象である正式の決算書と一緒に掲載することを求めるべきです。それが認められないのなら、監査報告書の掲載許可を取り消すべきです。
参考:日本スポーツ振興センターのサイトより 1 、 2
2005年9月29日 日経金融 見え始めた監査報酬 開示範囲統一に課題 (会計最前線)
記事要旨:
企業が公認会計士や監査法人に支払う監査報酬の金額を有価証券報告書で開示することが内閣府令で定められ、2005年3月期からは連結ベースで監査報酬を開示する企業も増えた。
監査報酬の開示はコーポレート・ガバナンス(企業統治)の情報開示を強化する一環。企業は監査報酬の金額を監査証明など通常の報酬とそれ以外の報酬に分けて記載している。
しかし企業によって開示の基準が違うため、実際には比較が難しい。連結ベースか単独のみか、主要な一法人が対象か複数の監査法人が対象か、などで差がでてくる。日本の監査法人への報酬だけを記載している企業もあれば、海外の監査法人に対する報酬を含めているケースもある。
コメント:
監査報酬や監査人に払った監査以外の報酬(経理指導、コンサル業務など)の開示については、急に決まったルールであるため、会社によって開示が異なるだけでなく、証取法における開示と、商法の営業報告書における開示とで、ルールが微妙に違っているなど、混乱がみられます。
まず、誰が払った分を記載するのかという論点があります。最も狭く解釈すれば、親会社が支払う分だけ記載することになります。広く解釈すると、海外も含め、子会社が支払った報酬も記載が必要だということになります。親会社だけとしても、持ち株会社の場合には、重要な子会社も含めるべきだという説もあるでしょう(開示書類ではありませんが、監査概要書はこの説です)。
また、誰が受け取る分を記載するのかという論点もあります(第一の論点とも重なりますが)。親会社の監査人だけとする、親会社の監査人の提携事務所まで含める、提携事務所だけでなく、全監査人を含める、といったやり方が考えられます。
さらに、開示に含める報酬の範囲、監査報酬とその他の報酬の区分の方法(基本的には、公認会計士法のいわゆる1項業務と2項業務に分けるが、その区分もあいまいなところがある)、支払ベースか発生ベースかといった、さまざまな細かい論点があります。
そのうち、少し整理が必要となるでしょう。
監査人への報酬が注目されるようになったのは、欧米の制度で、監査委員会が、非監査業務の承認も含め、監査人の報酬をコントロールする(経営者任せにすると独立性の問題が生じる)というところからでしょう。我が国でも、新しい会社法で、監査役や監査委員会が、監査人の報酬の決定に関与することになっているので、さらに関心が高まると思われます。
2005年9月25日 日経 会計基準共通化の検討テーマ 新株発行費も対象 国際組織と日本側合意
記事要旨:
企業会計基準委員会は23日、国際会計基準理事会(IASB)と基準の共通化を目指す2回目の会議をロンドンで開いた。検討テーマとして「海外子会社の会計基準」など5項目に加え、 新株発行費の取扱いを加えることで合意した。
日本側は、連結決算を作成する際に海外子会社の会計基準を親会社と実質的に統一 するほか、 棚卸資産の評価基準を低価法に一本化 する方向で見直す意向を伝えた。新株発行費は日本では 新株発行時に 費用計上されているが、IASは資本の部から控除 している。
コメント:
企業が新株を発行するのは、資金調達のためですから、新株発行のための費用を控除したネットの収入額で資本の部を増やす処理をするのは、理解できます。また、日本の基準が新株発行費の費用計上を定めているといっても、 行使価格が時価より低い転換社債型新株予約権付社債を証券会社に対して発行し、証券会社が株式に転換し時価で売却することによって、ほぼ確実に利益をえられるような形の実質的増資スキーム(そのかわり 新株発行費は計上されない)も横行しているわけですから、日本独自の基準を主張する意味はあまりないといっていいでしょう。
しかし、資本から直接控除するようになれば、新株発行費に対する歯止めが弱くなるおそれがあります。また、税務上も資本控除ということになれば、企業の負担は実質的に増えることになってしまいます。前者は、会計処理の問題というより、企業のガバナンスの問題ですが、後者については、どこかできちんと考えるべきでしょう。資本控除でも新株発行費を税務上損金にできるのであれば、資本から控除される新株発行費は税効果後の金額になります。
なお、細かい話ですが、日本基準では新株発行費を繰延資産に計上することもできるので、必ずしも新株発行時に費用計上する必要はありません。
記事によると、子会社との会計基準の統一や、棚卸資産の低価法の強制なども、IASBに対して約束したようです。これらの影響も相当大きいでしょう。
2005年9月23日 NIKKEI NET 金融庁、繰り延べ税金資産の自己資本算入を規制
記事要旨:
金融庁は22日、大手銀行とその持ち株会社を対象に、将来還付される税金を帳簿に計上する「 繰り延べ税金資産 」の資本金など 中核的自己資本への算入を制限 する規制を発表した。2006年3月期から段階的に導入し、08年3月期には算入できる割合を20%以内にとどめる。
コメント:
新たな規制は、あくまで、自己資本比率規制における繰延税金資産の算入の適正化の話です。税効果会計における繰延税金資産の回収可能性の議論とは、直接は結びつかないはずですが、規制が導入されれば、規制の上限値を超えて税金資産を計上しても、銀行にとっては意味がなくなるので、残高を減らそうとする動きは強まるでしょう。
また、規制の中身をみると、繰延税金資産と繰延税金負債をネットした金額を対象にして上限を決めているようです。本来は、ネットする前の繰延税金資産の金額で規制をかけるべきでしょう。
参考: 金融庁のサイトより
2005年9月22日 日経金融 どちらが主役、会計士と監査役 内部統制監査巡り綱引き (会計最前線)
記事要旨:
公認会計士が財務報告にかかわる上場 企業の統治 状況に踏み込んで監査する「 内部統制監査制度 」。金融庁が最短で2007年度にも導入を目指して動いている新制度案に、企業内部のお目付役である「監査役」が異議を唱えている。
「監査人(会計士)が『全社的な内部統制 』の妥当性を判断する立場にあるか疑問」。先月31日、日本監査役協会が金融庁の企業会計審議会に対し、意見書を提出した。同協会は「会計士が社内の情報を網羅するのには限界がある」と主張の理由を説明する。
監査論の専門家は「監査役と会計士は上下関係 にある。今回の新制度案はその 関係を対等にする 。監査役には革命が起きる感覚に近いのでは」と解説する。
コメント:
金融庁の企業会計審議会から公表された基準案の正式名称は、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」であり、あくまで、 財務報告に限定した内部統制の評価や監査を行うための基準です。以前に書きましたが、企業統治がうまくいっているかどうかを監査するわけではありません。正しい財務諸表を作成し、公表するというのは、経営者の重要な職務のひとつです。会計監査のみであっても、この重要な職務を外部の監査人がチェックしているわけですから、財務諸表の作成過程にまでチェック対象が広がるからといって、監査役が大騒ぎする必要はないでしょう。
もちろん、財務報告にかかわる内部統制には、適正な財務報告を行うことを会社としてどのくらい重視しているのか、粉飾を容認するような企業風土がないかどうか、トップが暴走して粉飾決算をやろうとしたときにそれを止めることのできるようなガバナンスの仕組みがあるかどうか、といったいわゆる「 統制環境」も含まれます。カネボウの例のように、社長や銀行から派遣された役員が、自ら粉飾を主導するようでは、財務報告にかかわる内部統制に、非常に問題があるという評価にならざるを得ません(カネボウの監査役はいったい何をやっていたのでしょうか)。
そうした意味では、監査役協会のいっている「全社的な内部統制」も、監査人は評価せざるを得ません。しかし、それは、現在行われている会計監査でも必要な手続です。監査役協会のいうように、監査人は、そうした「全社的な内部統制」を評価する立場にないということになると、内部統制監査以前に、リスク・アプローチに基づく会計監査そのものが成り立たなくなってしまいます。
ところで、記事の中で監査論の専門家の発言として「監査役と会計士は上下関係にある」とありますが、これは非常におかしな発言です。会計士による監査は、会社から独立した立場、対等の関係で行うから意味があるのであって、企業の内部者である監査役と上下関係にある者は、外部監査人として監査をやってはいけないのです。
参考: 関連記事 (記事の中で取り上げられていた経産省の報告書についてふれています。)、 企業会計審議会内部統制部会の公開草案の公表について (金融庁のサイトより)、 公開草案への日本監査役協会のコメント (PDFファイル)
2005年9月22日 日経 優良物件、都心は過熱感 (広がる地価反転 上)
記事要旨:
「3%ショック」と不動産関係者がうわさする物件が、東京・九段下にある。旧日本債券信用銀行の本店跡地の再開発ビル。激しい争奪戦の末に 投資利回りは3%台まで下がり、不動産業界に衝撃が走った。
半年ほど前の利回りは5−6%が普通だった。8月末に競り落としたのは三菱地所系の不動産投資信託(REIT)、ジャパンリアルエステート投資法人。取得額は800億円強まで上がった。
ファンドなどによる優良物件の取得競争は過熱気味だ。
ある大手不動産会社の担当者は「年金や生損保の資金も流入。 ファンドバブル の様相を呈している」と危惧する。
「SPCを活用した土地の証券化 に制約が加わるかも」――不動産会社の財務担当の間で密かに危ぶまれている動きがある。米国のエンロン事件をきっかけに会計士業界を中心に資金調達目的の SPCを決算の連結対象とする検討が進んでいる。大手不動産会社の新規投資はSPC方式がほとんど。負債残高が膨れ上がる情報開示が必要なら、新規投資は慎重になる。一部でバブルともいわれる地価が下がるきっかけになりかねないとの指摘がでている。
2005年9月21日 日経 住軽金 証券化不動産を買い戻し 業績回復で余裕
記事要旨:
住友軽金属工業は20日、1999年に証券化で売却 した千葉県柏市の 製造工場の信託受益権を 126億円で買い戻 すと発表した。
同社はITバブル崩壊で、リストラ損が膨らみ、99年10月に 損失を穴埋めするため 同工場を売却した。
同工場は土地と建物を信託した住友信託銀行から賃貸し、稼働してきたが、設備増強のたび契約書を見直す必要があった。買い戻すことでこうした煩雑な手続を省き、需要に応じた機動的な設備投資が可能になる。
コメント:
2000年に公表された会計士協会の実務指針によれば、 譲渡人の用途等に合わせて特別な仕様により建設された建物 を、 セール・アンド・リースバックで継続的に使用しているような場合には、 売却処理(オフバランス処理)ができないことになっていますが、住軽金の場合は、99年に証券化したようですから、実務指針も適用されず、売却処理自体には問題はなかったのでしょう。しかし、売却から買い戻しまでの一連の流れをみれば、結局、工場の評価益を計上したのと同じことです。しかも、タックス・プランニングにもよりますが、売却益に対する税金を負担してまで、評価益をたてたことになります。儲かったのは、住友信託銀行だけでしょう。
「SPCを決算の連結対象とする検討」が、どこまで具体的に進んでいるのかは、情報がないためよくわかりませんが、連結範囲の問題は、国際会計基準と相違している項目でもあり、また、カネボウ粉飾事件でも大々的に取り上げられています。現行の基準では、会計士協会の実務指針があるものの、会計基準のレベルでは、SPCの事業が目的に従って適切に遂行されていれば、子会社にしなくてもよいといった甘い基準しかないので、見直しは必要でしょう。また、これだけ、不動産の証券化が盛んになっていながら、協会の実務指針が5年間全く見直されていないというのも不自然です。
従来は、比較的優良な物件が証券化の中心であったために、大きな会計上のトラブルは起きていない(民都やマイカルを除く)ようですが、ファンドバブルで、リスクの高い物件や、高値での証券化が増えてくると、失敗案件もでてくるでしょう。そういうケースでは、証券化の時点までさかのぼって、会計処理の妥当性が議論されることになるかもしれません。
いずれ基準を見直さなければならないのなら、ファンドバブルが崩壊しないうちに見直した方がよさそうです。
2005年9月22日 日経 ノース決算修正 台湾向け売上高取り消し 04年3月期
記事要旨:
半導体実装技術開発のノースは22日、2004年3月中間期 に計上した台湾企業向けの 売上高3億1000万円などを発生時にさかのぼり取り消す と発表した。2004年3月に台湾企業との間で結んだ技術移転のライセンス契約の合意を今年8月に解除したため。
売上の取り消しに伴い、2004年3月中間期の単独売上高は3億1000万円減の9400万円。最終赤字は3億500万円増加し、7億2300万円になる。
コメント:
会社のプレスリリースによると、2004年3月中間期に、 技術移転ライセンス契約の締結をもって、売上計上 していたようです。しかし、常識的に考えれば、契約締結と、実際に何らかのサービス(技術移転?)が提供される時点は、異なるはずです。そもそも、契約時点で売り上げ計上してよかったのかという疑問があります(だからこそ、取り消したわけですが)。
さらに、契約の条件として、会社から相手先に対して、 1億円の貸付 を行うことになっていた(実行はされていない)という事実もあります。売上先に資金援助した(あるいは資金援助する約束をした)からといって、直ちに、おかしな売上ということにはなりませんが、異常な取引ではあります。
また、記事ではふれていませんが、プレスリリースによれば、2004年9月本決算では、 2億5000万円の引当金 をこの相手先に対して積んでおり、取引で得た利益のほとんどが消去されています。つまり、2004年9月期の決算時点で、取引の異常性については、会社は認識していた可能性があります。
ライセンス契約の解除が、今年の8月になって行われたから、今期、売上を取り消すという説明を会社は行っていますが、もともと売上実現の要件を満たしていなければ、(そのことが判明したと考えられる)2004年9月期で取り消すべきだったのかもしれません。逆に売上実現の要件を満たしていたが、当期に発生した予測できない事情で、取り消すのなら、わざわざ遡及して取り消す必要はなく、当期の売上のマイナスとするか、特別損失とするのが一般的な処理でしょう(ただし、遡及修正の考え方や方法が、まだ固まっていない面があるので、この会社のやり方が間違いとまではいえませんが)。
以上のように、会社の説明には、納得できない点がいくつもあります。有報の訂正報告書などを提出するようですから、今後、事情が明らかになることが期待されます。
参考: ノースのプレスリリース (PDFファイル)、 同左
2005年9月21日 日経 ”身内”の協会検査に限界 会計制度見直しへ波及 (監査不信 カネボウ粉飾の衝撃 下)
記事要旨:
日本では2004年4月の改正公認会計士法施行で、 会計士や監査法人へのチェック体制 が充実された。それまでは日本公認会計士協会に検査を委ねていたが、新法では協会による検査結果を金融庁傘下の「公認会計士・監査審査会」がさらに精査するという「二段構え」に変更した。問題があれば審査会が金融庁に処分を勧告する。
ところがカネボウの事件で、チェック機能の不備が浮かび上がった。協会単独の検査は1999年に始まっていたが、長年にわたる カネボウの粉飾を全く見抜けなかったからだ。
コメント:
カネボウ粉飾事件で会計士が逮捕されたことにより、この記事のような「 粉飾決算=監査の不備 」という間違った見方がますます広まってきました。それだけならよいのですが、間違った見方にしたがって、ピントのぼけた規制強化策が採られるようになると、マイナスの影響が出てくる恐れがあります。
まず、会計士協会や審査会がやっている検査の意味を考えてみると、監査に不備がある例を指摘して、監査のやり方の改善を促すことを通じて、監査のレベルを上げ、最終的には、粉飾決算を監査が抑止する確率を高めるということが目的でしょう。そのこと自体は、非常に大切なことです。しかし、監査に不備があったとしても、それは、監査のやり方や監査調書の作り方に不備があるだけで、会社の決算自体には大きな問題はないというケースがほとんどでしょう。また、監査人からヒアリングをしたり、監査調書をみたりしただけで、粉飾決算であることがわかるような場合は、そもそも監査人は適正意見を出していないでしょうし、逆に、監査人が故意に粉飾を見逃していたとしたら、その証拠を監査調書に残しておくはずもありません。
要するに、協会や審査会によるチェックは、監査のレベルアップには役立つけれども、粉飾決算の摘発のためには、間接的な効果しかなく、非常にまわりくどい方法であるということです。そうしたチェックが必要以上に厳しくなると、監査の中身を向上させるよりも、協会や審査会のレビューへの対策が優先され、形式さえ整っていればいいという方向に流れるおそれすらあります。
それでは、粉飾決算を摘発するには、どうしたらよいかということになりますが、監査をチェック対象とするのではなく、 会社の決算自体を金融庁が厳しくチェックすればよいのです。財務諸表の分析や、マスコミ情報、内部告発による情報などを使えば、粉飾をやっている可能性のある会社や、意図的な粉飾決算ではないけれども会計基準を誤って解釈しているような会社を、絞り込むことは可能でしょう。絞り込んだ会社を対象に深く調査すれば、粉飾決算を発見することも可能でしょうし、粉飾決算とまではいえないが不適切な会計処理をやっている場合には、それを是正させる効果も期待できます。いままでのように、会社が破綻してから、調査し始めるようでは、スケープゴートを探すだけの意味しかなく、投資家保護には役立ちません。
また、その調査の過程で、会計監査がきちんと行われているかについても同時にみていけば、非常に効率的です(あぶない会社は、監査もうまくいっていない可能性が高いため)。そして、監査基準にも書いてあることですが、監査には限界があり、仮に監査をきちんとやったとしてもすべての粉飾決算を発見できるわけではありません。粉飾の摘発を厳しくやったうえで、次の段階として、監査人の責任を問うというのが正しい道筋です。
ひとことでいえば、監視機関が行う粉飾決算の摘発にも、リスクが高い領域を重視する「リスク・アプローチ」が必要だということになります。
2005年9月20日 毎日夕刊 カネボウ粉飾決算:不良在庫を「新品」評価 会計士、旧経営陣と協議−−02年
記事要旨:
カネボウの粉飾決算事件で、証券取引法違反容疑で逮捕された公認会計士、A容疑者(63)が02年、子会社「カネボウフーズ」が抱えていた不良在庫の取り扱い方法について、元社長の帆足隆被告(69)ら旧経営陣と協議していたことが分かった。カネボウは、 賞味期限切れ寸前の在庫を、新品同様の価値 を持つよう資産を過大計上するなどして決算を粉飾しており、A容疑者が、不良在庫を巡る経理操作を詳細に認識していた疑いが強まった。
関係者によると、A容疑者は02年4月、旧経営陣と会い、賞味期限が迫り二束三文でしか売れなくなった商品や、廃棄するしかない賞味期限切れの在庫を大量に抱えたカネボウフーズの決算について話し合った。
その結果、旧経営陣は不良在庫について、新品同様の価値を持つように資産評価したり、フーズ傘下の販売会社7社との間で、実際には商品を売買していないのに売買したように装い、見かけ上の売上高を膨らませる粉飾決算を行った。
カネボウ幹部は「賞味期限切れ直前の食品は、安売り店にしか卸せず、 販売価格は通常の20%前後 。それを100%の価値で評価して決算に計上していたことは、会計士も承知していたはずだ」と証言している。
コメント:
記事のようなケースでは、当然、監査人は、評価減するよう指導すべきであり、そうしなかったのは監査人の責任ではありますが、それと同時に、 棚卸資産に原価法を原則としている日本の会計基準について見直すきっかけとすべきです。
記事のケースで考えてみると、賞味期限が切れてしまえば、どんな基準であっても、評価減せざるをえませんが、期限切れが近いというだけだと、販売は可能なわけですから、原価法を採用している場合には、原価でよいという考え方もあるでしょう(クライアントの担当者に評価減してほしいといったら、こういう反論が返ってくるかもしれません)。また、このケースでは、賞味期限という誰も否定できない販売可能期限があるわけですが、例えば、シーズンを過ぎてしまった売れ残りの婦人服のような在庫の場合には、明確な販売期限はありません。原価法を採用している場合には、こうした在庫をいつ評価減すればよいのでしょうか。
不良在庫は、カネボウに限らず、どこの会社でも発生しうるものですが、そこそこ儲かっている会社であれば、大問題になる以前に、節税のため見切り処分や廃棄処分してしまうことが、多いと思います。会計士も、評価減を云々するよりは、早めに処分して下さいという程度の指導しかしない場合が多いかもしれません。そのため、多くの会社や会計士には、切迫感がないのでしょう。
しかし、カネボウの例をみると、きちんとした棚卸資産の会計基準が必要だということがよくわかります。特に、 低価法の強制は、必須です。企業会計基準委員会でも、現在、棚卸資産会計の見直し中で、そのこと自体は結構なことですが、最近の「経営財務」の記事を読むと、当期中に販売実績がない在庫は、時価がないものとして低価法の適用から除外しようといったとんちんかんな議論をやっているようです。本当に役に立つ基準ができるのか、心配になります。
参考: 関連記事
2005年9月17日 asahi.com 会計士宅に「粉飾資料」、念書など押収 カネボウ事件
記事要旨:
カネボウの粉飾決算事件で、東京地検特捜部が、中央青山監査法人の代表社員で公認会計士A容疑者(63)=証券取引法違反容疑で逮捕=の自宅や関係先から、赤字隠しに絡んで 子会社株の買い戻しを約束した際の念書のコピーなど粉飾を裏付ける資料を押収したことが分かった。特捜部は関係書類を持ち出して隠していたのではないかとみている。
関係者によると、粉飾の主な手口の一つは、グループ会社を一企業とみて決算をする連結決算の際に、赤字子会社を不正に外して見かけの決算をよくする「 連結外し」だった。子会社株をどれだけ持つかが連結しなければならないかどうかの基準の一つになるため、取引先に融資して子会社株を購入してもらい、カネボウ本体との資本関係を薄めたという。
押収された資料は、取引先に子会社株の買い戻しを約束した念書のコピーやカネボウの監査調書の一部などとされる。
2005年9月15日 日経 カネボウ粉飾 逮捕の会計士 債務超過 99年には認識
記事要旨:
カネボウの粉飾決算事件で、証券取引法違反容疑で逮捕された中央青山監査法人の公認会計士、A容疑者(63)らが、遅くとも1999年5月時点で同社が債務超過状態だと明確に認識していたことが14日、関係者の話で分かった。
関係者の話によると、会計ルールの変更を翌年に控えた99年5月、カネボウは同社の財政状態を実際よりよく見せる目的で、赤字子会社を連結対象から除外。この際、A容疑者ら担当会計士は、連結外しに了承を与えていたうえ、一部の子会社については「これでは連結対象から外れていない。この会社の持ち株比率を20%未満にする必要がある」などと専門的な助言をしていたことがこれまでに判明している。
連結外しは、主にカネボウが保有する子会社株の代金を受け皿会社に融資して買い取らせる 方法で行われた。カネボウは受け皿会社との間で 子会社株を買い戻すという裏契約 を交わしたが、複数のカネボウ関係者は「A容疑者らは、この契約の存在も把握していた」などと供述しているという。
コメント:
会計監査人が刑事責任を負うのは、粉飾決算があり、かつ、粉飾であることを知っていながら適正意見を出した場合です。
カネボウの場合、会社内部の調査に基づき、過年度の決算を大きく修正しているので、おそらく粉飾があったことは事実なのでしょうが、刑事責任を問う以上、会計基準のどの条項に違反したのかまで、きちんと確認しておく必要があります。また、そうしないと、他社の会計・監査実務の参考になりません。
2つの記事で主に問題にしているのは、子会社株式の売却を仮装した連結外しです。現行の連結原則では、(a)他の会社の 議決権の過半数を実質的に所有しているか、(b)高い比率の議決権を所有し、かつ、 意思決定機関を支配している一定の事実 が認められる場合、連結子会社にすべきとされています。そして、会社が 自己の計算で所有 している場合には、実質的所有にあたるといっています(注解4)。
自己の計算による議決権の所有については、会計士協会の監査委員会報告(60号)で、 株式所有のための資金 関係、 配当その他の損益の帰属 関係を検討して、監査上判断することになっています。
カネボウの場合は、記事によれば、受け皿会社に株式買い取り資金を融資し、しかも、買い戻しの裏契約まで、あったわけですから、常識的に考えれば、問題の子会社株式は、売却後もカネボウが自己の計算で所有し続けていた(したがって、当然連結範囲に含めるべき)と判断されます。
しかし、委員会報告では、買い取り資金の融資や、買い戻しの特約があれば、直ちに、自己の計算による所有だとまでは言っていません。そういった事項を検討したうえで、判断しなさいと言っているだけです。グループ再編のどさくさに紛れて、有形固定資産の評価益を計上するような実務がまかりとおっているように、ダメだと書いてなければ、やっていいというのが、日本の会計慣行です。逮捕された会計士も、念書のコピーを監査調書から外して、自宅に隠したりせずに、堂々と調書の中で、自己の計算による所有でないことについて理論武装しておけば、単なる基準の解釈の問題として、(仮に解釈が間違っていたとしても)刑事責任を問われるところまではいかなかったかもしれません。
以前取り上げたヤオコーの監査人解任問題でも、解任理由のひとつが、ある会社を連結範囲に含めるかどうかという点についての意見の相違でした。連結の範囲の問題は、念書の有無だけで、簡単に白黒つくような問題ではないと思います。基準や委員会報告に不明確な点があれば、改善することが必要でしょう。
もちろん、刑事責任の有無と、監査人としての役割を十分果たしたかどうかというのは、別の問題であり、後者の点について、逮捕された会計士を弁護するつもりはありません。いざというときには会社といっしょにあぶない橋を渡ることができるのが、度胸のある優秀な会計士であるという間違った考え方が残っているとしたら、問題です。会社の方も、本当にあぶないときには、あぶないといってくれる監査人を求めているはずです。
2005年9月17日 日経 日信販、最終赤字115億円 貸倒引当金積み増し
記事要旨:
日本信販は16日、2005年9月中間期の連結最終損益が115億円の赤字(前年同期は60億円の黒字)に陥る見通しと発表した。従来予想は65億円の黒字だった。10月の三菱フィナンシャル・グループ入りを控え、 引き当て水準の見直しが必要と判断、270億円の貸倒引当金を積み増し、 特別損失 に計上するため。
従来は延滞期間に沿って引当率を決めていたが、「銀行の子会社として、金融庁の検査マニュアルに準拠して厳格に引当金を見積もった」(松本剛志取締役)という。270億円のうち230億円は 過去の貸し倒れ実績に基づく正常債権に対する引き当て。
コメント:
貸倒引当金の見積もり方法を変えるということはあり得る話ですが、なぜそれが、特別損失なのでしょうか。金融商品会計基準が導入され、貸倒引当金の基準が変更されたときですら、旧基準との差額を、特別損失にするという例はなかったはずです。単に親会社の引き当て基準に合わせるという理由で、特別損失処理を行うというのは、まったく理屈がたちません。下期以降の経常損益をよく見せるための、不正な経理操作といわざるを得ません。
親会社(米国基準採用)に合わせるというのなら、特別損益区分はほとんど使わないという、米国基準の考え方をマスターすべきです。
参考: 日本信販のサイトより (PDFファイル)
2005年9月14日 日経 カネボウ粉飾 逮捕の会計士 引当金不足を容認
記事要旨:
カネボウの粉飾決算事件で、同社の会計監査を担当していた中央青山監査法人の公認会計士、A容疑者(63)=証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕=らが、2002年3月期の決算監査で、子会社の毛布メーカー、興洋染織に対する 貸倒引当金の過少計上を容認していたことが14日、関係者の話で分かった。
関係者によると、カネボウの元経理担当常務(59)=証取法違反容疑で逮捕、処分保留で釈放=は02年春ごろ、同年3月期決算の会計処理などについてA容疑者らに相談した。
この際、同容疑者らはカネボウが当時、再建を支援していた興洋染織の経営が悪化していたことから「貸倒引当金の計上額が足りない」と指摘し、決算の修正を促したという。
しかし、指摘どおりに引当金を積み増せば債務超過へ転落することから、カネボウ側は元社長、帆足隆(69)、元副社長、宮原卓(63)の両被告=同法違反罪で起訴=らの指示で、資産超過と装うことができる程度の引当金を積み増しただけの決算書類を作成。A容疑者らは最終的に帆足被告らの方針に沿う形で、「適正意見」を付けたとされる。
コメント:
貸倒引当金といえば、金融機関では、金融庁の検査で何千億円もの引き当て不足が指摘された例があるのに、それらは、なぜ、粉飾決算として追及されず、カネボウのケースは、監査人が逮捕されるところまで責任追及がなされるのでしょうか。
もちろん、会社の規模に対する粉飾額の相対的な大きさや、連結外しや押し込み販売など、他の粉飾手法も使っていることなどから、特に悪質だと判断されたのかもしれません。しかし、金融機関の方も、広く一般大衆から預金を集めているという社会的な影響の大きさからいえば、引当金過少計上の責任は、カネボウの場合よりもはるかに大きいはずです。
また、マスコミ報道によれば、緊密先に不良債権や担保資産を飛ばして、不良債権を隠していたような例もあったようですから、悪質性という点でも、違いはありません。
今後裁判などで、カネボウと、検査で引き当て不足が指摘された金融機関の差がどこにあったのか、明らかになることを期待します。
2005年9月13日 日経夕刊 子会社社長の立場、制約に 西武鉄道社長 後藤高志さん(ニュースの主役)
記事要旨:
グループ改革が難航している原因の一つに、後藤氏が中核会社コクドではなくその子会社である西武鉄道の社長にとどまっていることがある。
そもそもグループの経営危機は西武鉄道株の上場廃止でコクドの財務基盤が揺らいだことが引き金。仮に後藤氏がコクドの社長であれば、 自社の再建のために優良資産を持つ西武鉄道との合併を断行しても親会社として当然の行動 であり、株主代表訴訟の脅威にさらされることもないはず。
コメント:
記事では、コクドが自社の再建のために西武鉄道と合併しても、当然の行動だといっていますが、 少数株主の権利 は、いったいどうなるのでしょうか。(ちなみに、後藤社長がこういっているのではなく、安西功という編集委員が書いた部分です。)
もちろん、イトーヨーカ堂グループの再編のように、子会社の株主が、親会社の都合で、持ち株会社の株主にさせられるという例はありますが、イトーヨーカ堂の場合、親会社は曲がりなりにも上場会社であり、本業は不振だとはいえ、コクドのような実態のよくわからない過剰債務会社ではありません。また、コクド・グループのように、再編後、多額の第三者割当増資を行って、持分が希薄化するおそれもありません。
商法上、議決権の過半数を握り、取締役会を支配していれば、ほとんどのことはできますが、だからといって、親会社自身の再建のために、少数株主を犠牲にしていいはずがありません。特に、西武鉄道の場合、昨年までコクドの子会社として、認知すらされていなかったわけですから、今になって、親会社の権利を主張するというのもおかしな話です。
2005年9月10日 日経 四半期開示 簡易監査導入で一致 会計審、年内に報告書
記事要旨:
企業会計審議会は9日、上場企業に 四半期 ごとの業績開示を義務付ける際の監査制度のあり方を議論する部会の初会合を開いた。現在より会計士の作業負担を軽くする簡易な手法を導入する方向で一致した。年内に報告書をまとめる。
金融庁は早ければ来年の通常国会に証券取引法の改正案を提出し、 2007年度決算から の導入を目指す。
(委員からは)決算が適正かどうかを会計士が断言するのではなく、「チェックした範囲内で問題は見当たらなかった」などと大まかにお墨付きを与えるべきだとの意見が出された。
コメント:
見出しで「簡易監査」といっているのは、いわゆる「 レビュー 」のことでしょう。レビューでは、手続が監査と比べて限定的であり、報告書に記載する最終的な結論も、限定的な手続を行った結果、財務諸表に 重要な修正を必要とする事項は発見されなかったといった文言( 消極的保証 )になります。ちなみに、監査においても監査人は財務諸表の適正性を「断言」しているわけではなく、虚偽表示がないことの「合理的保証」(わかりにくい言葉ですが)を与えているだけです。
実務では、東証マザーズ上場企業の四半期財務諸表に対する意見表明業務が、レビューの考え方で実施されています。会計士協会からは、マザーズ意見表明業務の研究報告が公表され、手続の例示や報告書のひな型が示されています。
記事によれば、四半期については、レビューを導入することで決着しそうですが、従来の中間決算の方はどうなるのでしょうか。たぶん、「中間監査」は廃止され、レビューに一本化されることになると思いますが・・・。
2005年9月10日 日経 日本IBM 企業の事務 全面受託 ITで効率処理
記事要旨:
日本IBMは企業や官公庁の事務作業を全面的に受託するサービス に乗り出す。ITを活用して各種届出や申請などを効率的に処理する。
第1弾として自動車リサイクル促進センターから自動車リサイクル料金の返還業務受託、運用を始めた。
米IBMはコンピューターやネットワーク技術を活用したサービスに軸足を移しており、米P&Gから 給与計算 や福利厚生事務など人事関連の業務を一括受注している。 金融機関の中核業務も受託 するなどサービス事業による収益を拡大している。
コメント:
日本版SOX法で内部統制監査が制度化されたときには、経理に関係する処理の一部を外部に委託している場合の扱いも考えなければなりません。委託先は当然別法人であり、子会社に該当するのでなければ、監査人が直接乗り込んでいって、内部統制をチェックするわけにはいきません。また、委託先からすれば、顧客は1社だけではないでしょうから、そのすべての監査人に対応するようなことができない場合が多いでしょう。
そこで、業務を受託している会社自身が、監査人と契約して、委託を受けた業務に関する内部統制をチェックしてもらって、お墨付きをもらうという考え方が出てきます。現行の監査基準委員会報告書でも、そうした基準(第18号)はあるのですが、利用している例はあまりないように思われます(信用金庫などは共通の事務センターを使っているので本来はきちんとやっているはずですが、どうなのでしょうか)。
内部統制監査が導入されれば、問題になる可能性があるので、上場企業やそれらの子会社の経理に関係する重要な業務を請け負っている会社は、内部統制の再点検、内部統制監査の実施など、今から対応しておくべきでしょう。米国のクレジット会社の業務委託先から情報が漏洩して、カードの不正使用が多数発生したという事件がありましたが、受託業務に関する内部統制に大きな欠陥がある会社は、契約を切られるおそれもあります。
2005年9月9日 日経 株主資本等変動計算書導入へ
記事要旨:
来年の会社法施行に伴い、株式会社に株主資本などの変動を開示する新たな計算書( 株主資本等変動計算書 )の作成が義務付けられる見通しだ。これに対応して企業会計基準委員会は「連結株主資本等変動計算書等に関する会計基準」の草案を公表した。
草案によると、連結ベースの株主資本等変動計算書の作成例は次のようになる。まず「純資産」を 株主資本と評価・換算差額等、新株予約権、少数株主持分の4つに分ける 。さらに株主資本を資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式の4つに分ける。
次に、各項目ごとに前期末残高、当期変動額、当期末残高を記載。当期変動額は変動した理由ごとにそれぞれの項目に記載する。株主資本以外の項目の変動額は純額のみの記載でもよい。
コメント:
株主資本の変動計算書を導入すること自体は、非常によいことだと思いますが、純資産の区分の方法が、少し変です。
基準案(変動計算書の案ではなく、純資産の部の表示の基準案の方です)では、 株主資本 、 評価・換算差額等 、 新株予約権 、 少数株主持分の4つに区分することになっています。少数株主持分が、親会社の株主の持分でないことは理解できますが、評価・換算差額(その他有価証券や時価評価による評価差額や為替換算調整勘定など)は、(親会社の)株主の持分ではないのでしょうか。
ちなみに、基準案では、わざわざ、子会社における評価・換算差額は、親会社の持分と少数株主の持分に分けて、少数株主の持分は、少数株主持分に含めるといっています。そうだとすると、残りの金額は親会社の株主の持分になるはずです。
新株予約権については、あくまで潜在株主の持分であって、現時点の株主の持分ではないと考えればわからないでもありませんが、行使価格より株価が高くて行使が予想される場合には、現株主の持分も新株予約権者(将来の株主)の持分も将来的には一緒になってしまいます。逆に、株価が低くて行使されそうにない場合には、新株予約権の金額は実質的に現株主の持分であるともいえます。株主資本とは全く別個の項目というより、株主資本の中の内訳項目にしてもおかしくないように思えます。
基準案の内容が、海外基準と比べてどのような差異があるのかは知りませんが、日本企業の決算書もアニュアルレポートなどで英語にする場合もあるので、変に独自性を主張しないでほしいというのが正直な感想です。
参考:企業会計基準委員会のサイトより( 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準(案)ほか 、 連結株主資本等変動計算書等に関する会計基準 (案)ほか )
2005年9月8日 日経 役員賞与の費用計上義務付け 07年3月期から
記事要旨:
企業会計基準委員会は7日、企業の 役員賞与を費用計上 するよう義務付ける新たな会計基準の草案を公表した。適用時期は「(来年春の)新会社法施行後に終了する事業年度から」としており、3月期決算企業の場合は2007年3月期からの適用となる。
新会社法では、役員報酬と役員賞与はともに、職務執行の対価として会社が役員に支払うものと定義。両方とも支給手続きを同じ条文で示している。このため、会計処理でも、役員賞与を役員報酬と同時に、費用処理する方法に一本化することにした。
コメント:
役員賞与の費用計上の強制自体は正しい方向だと思いますが、理由付けがよくありません。新しい会社法になるからといった、法的形式に会計処理を合わせるような考え方ではなく、役員報酬と同様の職務執行の対価であるという 経済的実質を根拠とすべきです。
基準案は、「役員賞与は、発生した会計期間の費用 として処理する。」というだけの非常にシンプルなものです。しかし、いつをもって「発生した」とするのかは、簡単には決められません。
実際に総会で承認された時点で発生したと考えるのか、支給対象期間(例えば前期1年間)を想定して、経過期間に応じて費用計上していくのか、どちらなのでしょうか。前者だとすれば、総会が開催される第一四半期で役員賞与が一挙に計上されることになります。後者だとすれば、前期の1年間をかけて徐々に費用計上し、期末には支給額分の未払費用が計上されることになります。ただ、そもそも、役員賞与に支給対象期間があるのかという点は疑問です。そういえば、従業員の賞与の支給対象期間を廃止した企業もありました。
ひまなときに、委員会設置会社でどうやっていたのか、事例でも調べてみようと思います。
参考: 企業会計基準委員会のサイトより 、 関連記事
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