「コンクリートの劣化を防ぐ、屋上防水工法」

                国井 玄雄

                 (有)KBL


1.はじめに

  わが国の都市部では多くのコンクリート造りの建物が建設されている。

コンクリート造の建造物に雨水が透水すると、急速に劣化が進み耐久性が

損なわれる。

  透水を防ぐ目的で建物の屋上には各種の工法による防水対策が施されて

いる。しかし、防水効果がコンクリート構造体の耐用年数と同等の期間持

続する工法は未だない。本工法はコンクリートの劣化を防止する屋上防水

対策を施し建物の耐久性を向上させることを目的とする。


2.従来の防水工法

  従来の屋上防水工法は、アスファルト防水、シート防水、塗膜形成防水等があ

る。これらの工法はコンクリートの表面を覆い雨水を遮断することを目的に施す。

コンクリート自体には透水を防ぐ抜本的な対策を施こさない。

  又、従来の防水材は有機物であるため、どのような工法で接着しても無

機物(コンクリート)とは一体にならない。

  コンクリートと防水材は熱による伸縮率が異なるため、寒暖の繰り返し

により接着面が分離する。しかも何度も重ね合わせる程早く分離する結果

となっている。さらに風雨、酸化、紫外線、微生物等の影響で防水材(ア

スファルト、高分子仕上材)が劣化し剥離する。1)2)3)

  コンクリートと防水に使用する材料のミスマッチが原因で発生する分離

や剥離は、施工技術を向上させても防ぐことは難しい。

  したがってどの工法による防水対策も10〜15年毎に改修を繰り返し

ている。


3.浸水と微生物によるコンクリートの劣化

  コンクリートの練り水は打設後、比重の差により分離してbleedingし、

硬化が始まると水和反応に使われるため、再び内部に戻る。この現象によ

りコンクリート内部「水みち」ができる。表層から内部に貫く「水みち」

はコンクリートが硬化した後entrapped air等と共に内部で空隙となり雨水

の透水路になる。

  コンクリートの劣化は透水や酸化ガスの影響により表面から進行する。

劣化の最大の原因は吸水と放水の繰り返しが引き起こす酸化の促進とアル

カリ分の流出によるpHの低下である。

  コンクリートの表面が酸性に傾きpHが9以下に至ると微生物(カビ、

細菌、藻)が繁殖しやすい条件域になる。微生物類が繁殖すると急速に酸

性化が進み、劣化が加速される。

  コンクリートの防水対策を完全に施す工法と微生物による劣化を防ぐ工

法とは相通じる。


4.本工法のコンセプト

  本工法はコンクリートの表面に貼り物や塗膜を作らず、コンクリート自

体が吸水と透水を防ぐことを特徴とする。

 

本工法の三つの特徴

A.本工法はコンクリート自体が透水を防ぐ機能を付加する。

B.コンクリートの表層部を緻密なセラミックに変換して吸水を防ぐ。

C.コンクリートの劣化要因を光触媒反応で分解して耐久性を高める。


5.吸水を防ぐ浸透性プライマー(C−30

  コンクリートの透水を防ぐには「水みち」から内部の空隙に至る透水路

を遮断することがもっとも重要なポイントになる。

  本工法はコンクリートスラブの表面にプライマーC−30を塗布し「水

みち」から内部に浸透させて、内部の空隙で硬化させ表層をセラミック化

し吸水と透水を防ぐ。

プライマーC−30の物性

 イ.本剤は二種類のシロキサン化合物とシランカップリング剤からなる

   常温硬化型の無機塗料であり,硬化後無色透明で硬い(7H)塗膜

   を形成する。

 ロ.本剤に硬化促進剤を5%配合すると指触乾燥時間を8分間に短縮す

   ることができ塗布後2時間で5Hに、3時間後に6Hに、50時間

   後に硬度7Hの塗膜を形成する。(JIS K5404)

 ハ.本剤はエタノールをベースにしている。その表面張力は水の値の3

   分の1以下であり溶剤型塗料の主成分(トルエン)の値よりも小さ

   い。したがって本剤は溶剤や水が浸透することができないほど微細

   なピンホールや毛細管の内まで浸透して硬化する。各液体の表面張

   力の比較を、表1に示す。

 ニ.本剤はコンクリートの成分と同一成分(ケイ素)を含む。塗布後双

   方のケイ素が結合して硬化しコンクリートと一体になるため分離も

   剥離も起きない。

 ホ.本剤をガラスに塗布した試料を水中に500時間漬けた後に塗膜の

   硬度を測定した結果、7Hであり、3.000時間漬けた後でも6

   Hを保ち硬度の低下が殆どない。又試料を2〜3時間乾燥させると

   、塗膜の硬度は元の7Hに戻る。(写真1)

 へ.本剤をコンクリート容器の内側に塗布して硬化させた後、水を入れ

   500時間後でも,表面に水の滲みがなく完全に吸水と透水を防止

   した。(写真2)

(写真1)

水中に3000時間漬けた試料(ガラス)に塗布した塗膜の硬度を測定

(写真2)

防水加工をしたモルタル容器に水を入れ防水性能を試験。未加工の容器からは水が滲み出している。

表1 表面張力の比較

物質名 表面張力(dyne/cm)
73
トルエン 28
エタノール 22.27

 


6、耐水性のトップコート(光触媒塗料)

 本工法は、プライマーC−30の上に耐水性の光触媒塗料を塗布し、疎

水性の表層を形成してコンクリートの表面を保護する。疎水性の表層部に

は水が付着しても中にまったく吸水しなくなる。 写真3)

 

(写真3)

防水加工をしたコンクリート板は水を吸収しない。未加工の板は水が浸透して変色。

耐水性光触媒塗料の性能(KBLコートGC) 6)

 イ.本剤はプライマーC−30と同じくケイ素を含み硬化後はプライマ

   ーと一体となるので層間剥離を起こさない。

 ロ.ガラスに塗布すると鉛筆硬度7Hの硬い塗膜を常温で形成する。こ

   の試料を水中に1.000時間漬けた後の硬度も7Hであり塗膜の

   硬度低下がない.この塗膜でコンクリートの表面を覆うと風雨によ

   る物理的劣化と酸、アルカリ、塩分、酸化、紫外線、等の影響で起

   きる化学的劣化を防ぐことができる。各種の塗料が形成する塗膜の

   硬度を表2に示す。

 ハ.光触媒反応による酸化力でコンクリートを腐食劣化する微生物(カ

   ビ、藻、細菌)を殺菌し繁殖を長く抑制する。

表2 各塗料の塗膜の硬度比較

塗料の種類と用途 塗膜の鉛筆硬度
外装用アクリルシリコン塗料
床用ウレタン塗料 2H
屋根用シリコーン塗料 3H
家具用硬質塗料 3H
超耐候性フッソ樹脂塗料 4H
浸透性プライマー(C−30) 7H
耐水性光触媒塗料 GC 7H

7.透水防止対策

 万一、コンクリートの表層部が破損し水が浸透した場合に備えて本工法

で使用するコンクリートには空練時にベストンAを6%配合しておく。ベ

ストンAは水和反応時にコンクリート中の水酸化カルシウムを吸着して珪

酸カルシウムに変換し、ゲルの膨潤によりコンクリート中の空隙を充填し

て水密性を高めて透水を防ぐ。ベストンAは30年以上前から建物や構造

物に使用されている実績がある。


8.施工方法

A.ベストンAを配合したコンクリートを打設する。

B.養生期間を経た後プライマーC−30を塗布し内部に浸透させて硬

化させる。(200t/u=30g〜60g)

C.プライマーC−30が硬化後(4〜5時間)耐水性光触媒塗料(GC)

を塗布する。(150t/u=15g〜40g)

 本工法は短時間で防水層を形成することができるので工期を大幅に短縮

することができ、乾燥後の防水材の重量は100g/uと軽い。又、本工法

は従来の塗膜防水と同等の価格で施工することが出来る。


9.本工法による防水効果

 本工法に使用するプライマーC−30はコンクリートに浸透して一体に硬

化し、表層部が高密度のセラミックに変換するため、その後水が浸透するこ

とができなくなる。さらに耐水性の光触媒塗料で覆われた表層部はまったく

吸水しなくなるため、寒冷地でも凍害による破損が起きない。(写真4)

 さらにコンクリートから白華の発生がないのでpHの低下もない。塗布面

に光が当たると光触媒反応が起きコンクリートを劣化させる要因(微生物、

化学物質)を分解するため耐久性が飛躍的に向上する。又、本工法による防

水材はコンクリートの内部で一体に硬化するため,建物解体時に防水材の廃

棄物が発生しない。

(写真4)

防水加工をした水槽に水を入れ裏底からの透水をモニター


11.むすび

 多孔質の物体の表面に水の浸透を防ぐ保護層を形成すると、劣化を促進す

る要因が排除されるため、耐久性が飛躍的に向上する。本工法により施工を

した防水材はコンクリートと一体であるため防水効果は,構造体のコンクリ

ートの耐久性と同等の期間持続することになる。本工法による吸水と透水を

防ぐ工法はすべてのコンクリートの保護に応用することができ、さらにコン

クリートの二次製品、人造石、自然石の防汚と劣化防止にも応用することが

できる。今後は光触媒防水協会を設立し、実証施工を重ねて広く普及させた

い。

 

本文は「建築仕上技術」2月号、工文社(2002年)に発表した論文です。


 

参考文献

1井上真由美:“微生物の知られざる世界”p161〜172),

        アグネ承風社(1992)

2鶴田    :“ポリマー含浸コンクリート製品の開発の経緯と適用例”

        土木技術,vol.55.no,2(2000)

3,福島敏夫:“地球環境問題に対応した建築用高分子仕上塗材の寿命予測”

        マテリアルライフ学会,第6回研究発表会(1995)

4山崎 武:“セメント,コンクリートQandA”

       (財)セメント協会,(1996)

5国井玄雄、井上真由美: “PCタンクに発生するカビ対策”   

         マテリアルライフ学会,5「4」(1993)

6,国井玄雄井上真由美  :“超耐水性の常温硬化型の光触媒塗料”

         建築仕上技術,VOL24,NO,286(1999)

7長田雅夫:“設計事務所から見たポリマーセメント系塗膜防水”

         PROOF,VOL15,NO,180(2001)

 

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