アガリクス本の体験談は架空 食品会社社長が筆者に指示

2005年10月6日
朝日新聞

 アガリクス商品の広告をめぐる「史輝(しき)出版」(東京都港区)と健康食品会社「ミサワ化学」(新宿区)による薬事法違反事件で、事件の対象となった2冊に書かれた体験談はすべて1人のフリーライター(44)が創作していたものだったことが、警視庁の調べでわかった。この2冊は、私立大学の名誉教授(75)が監修しており、同庁は近く、ライターと監修者の2人を薬事法違反容疑で書類送検する。ミサワ化学は、史輝出版とのこうしたタイアップ商法などでアガリクスの加工食品を販売し、01年12月からの3年余で約20億円を売り上げていたという。

 書籍は「即効性アガリクスで末期ガン消滅!」「徹底検証!末期ガンに一番効くアガリクスは何か」の2冊。

 本の中で、がん患者や家族ら約70人が、ミサワ化学が販売するアガリクスの加工食品を飲んで「2カ月でガンが消えた」「抗がん剤の副作用が止まった」「『余命3カ月』の父が1年たっても健在」などと「証言」。本の帯には「ガン抑止率100%!」と記していた。

 1冊につき70万円の報酬で体験談を書いたライターは「以前出版された本を参考にしたり、図書館でがんの症例を調べたりして書いた」などと供述。出版前の編集会議では、今回逮捕された史輝出版元取締役でミサワ化学社長、三沢豊容疑者(58)が「アガリクスが売れる本を書け」などと文章に商品名を盛り込むことなどを具体的に、ライターに直接指示していたとみられる。

 三沢容疑者はもともと史輝出版の社員で、ライターとして架空の体験談を同社の書籍に書いていたこともあったという。

 監修者の名誉教授は、警視庁の調べに「アガリクスの販売促進のための本だとは分かっていた。薬事法違反との認識もあったが、本に名前が出ることで有名になると思った」などと話し、監修料として20万〜30万円を受け取っていたことを認めているという。

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 史輝出版は健康食品などをテーマにした書籍を多数出版している。厚生労働省は昨年5月、同社の本が健康増進法で禁じる虚偽・誇大広告にあたると指摘。同社は新聞広告で、18冊について「法に違反する広告であり、絶版、回収した」としていた。

 今回の摘発対象となった2冊のうち、1冊は01年12月に出版され約5カ月間で約1万7000部、もう1冊は02年12月に出版され約1年半で約2万4000部売れた。

 北陸地方に住む50代の男性は、このうちの1冊を読み、アガリクスの健康食品を飲んでいた。

 「本に書かれた内容をもとにこの健康食品を選んだのに……」

 03年2月、大腸から胃に転移した末期がんと診断され、病院で手術を受けた。入院中、友人や家族が持ち込んでくれた健康食品に関する本を読みあさった。その一冊が、史輝出版の「徹底検証!末期ガンに一番効くアガリクスは何か」だった。

 ページをめくると、「効いた」「ガン細胞が消えた」といった患者の体験談が並んでいた。

 数種類の健康食品を比べたが、体験談が多く、ほかの商品よりも「効きそうだ」と感じた。大学の名誉教授が監修者だったことも「信頼できる」と思った理由だった。

 男性の闘病生活は、続いている。

 「患者は限られた情報をもとに、より効くと思うものを探す。医学的知識を持つ監修者や出版社の責任は、重い」と訴えている。

http://www.asahi.com/national/update/1006/TKY200510050411.html