全国直販流通協会

全国直販流通協会に加盟している組織

坂井清昭 著「マルチ商法問題の法律と実際―業界の健全化のために」(ダイヤモンド社、1995年12月14日 初版)より

《147〜149ページ》
全国直販協が生まれた背景
私がなぜ協会の理事長を15年も続けているのかというと、そもそものきっかけが16年前、訪問販売員教育登録制度の実施を前にして、いまなぜ訪問販売員の登録制度なのか、という本を書くために、通産省に取材に行ったのがきっかけだった。その本は『第三のセールス』(ダイヤモンド社刊)という書名で刊行されている。
(略)
通産省はこの実施のために、55、56、57年の3年度にわたって、教育の内容をどうするか(カリキュラム)とか、教育の具体的な方法、モデル教育の実施などについて約3億円の助成金を社団法人日本訪問販売協会に交付し、実施させたものである。社団法人日本訪問販売協会は日本割賦販売協会(現在のクレジット産業協会)、訪問販売協議会が分離独立して昭和54年に設立されたものであるが、教育した販売員の登録は、この日本訪問販売協会に登録し、日本訪問販売協会が登録証を発行、それぞれ加盟の団体、企業の名前で発行するようになっている。
したがってこの協会に所属していない企業、団体以外は受けられない。つまりアウトサイダーは駄目という制度になっているのである。通産省の取材によってこのことがわかったが、私の取材対象である中小企業、しかも新しい販売方法で登場した業界の人たちはまったく加入していなかった。たとえば印鑑の訪問販売とか、SF商法といわれる会場方式の販売方法、その他零細一般の訪問販売など。
そこで私は、
「こういう新興無店舗販売事業者や零細・中小企業はどうするのですか」
と、山田課長補佐に聞いてみた。すると、
「それが困っているんですよ。なにしろこの業界は一寸先は闇でね。どこにどんな事業者がいるのかわからないので」
という答えが返ってきた。問題が起こるとすれば、そういうアウトサイダー周辺からという可能性は強く、すでにつかみ切れている既存の業者、しかもすでにできている業界団体の会員になっている業者だけを土俵に乗せても、問題は解決しない。政府が補助金を出しているのに、何をやっているんだと国会やマスコミでやられたらどうするんですかということから、私ができることはお手伝いしましょう、ということになったのである。

《155ページ》
単に批判中傷が一人歩きしている間はいいが、直販協会の会員までそれを真に受けて、動揺し、警察の摘発で通産省には見放されるわ、日本訪問販売協会とはうまくいっていないわでは、こんな協会にはいられない。警察に目をつけられないうちに……と退会する大手の会社があいついだので、私もとうとう怒ってしまった。

《157ページ》
「課長が、あんな協会いらないのではないか、と言ったから、今度も出席は難しい」
と言う。私はびっくりした。田島課長や先輩課長たちが通産省の担当課長として目をかけてきた経緯や実績には目もくれず、単に警察の摘発を受けた会社が会員会社に何社かいるというだけで、あんな協会とはどういうことだろう。

《160ページ》
それで私は協会の理事長を辞める決心をした。しかし、(略)私は協会を再生することに尽力することにした。といっても、常勤は辞めた。週に一回しか協会には顔を出さない。これからは連鎖販売取引問題ばかりでなく、流通に関する執筆活動に力を入れようと行動を開始したのである。

高山俊之 著「マルチ商法・悪業の実態―システムのカラクリ、違法性、手口、被害実態を解明」(青年書館、1993年9月25日 9版)より

《107〜109ページ》
マルチ業者のコンサルタントをしている坂井氏との結びつき
新手のコンサルタント屋も、60年秋までは島津幸一氏と手を結んでいた。SF商法やマルチ商法系の130社を会員にしている「全国直販流通協会」(東京都港区赤坂4-13-5赤坂オフィスハイツ内)の理事長である坂井清昭氏がその人である。同協会には3名の副理事長がいたのだが、その一人だった島津氏が60年秋に辞し、現在、副理事長は林雅晴氏(下着の(株)シャルレ社長)と田井準一郎氏((株)ナチュラルグループ本社社長)の二人だけとなっている。
全国直販流通協会は、坂井氏が昭和56年につくった「中小企業流通研究協会」を、60年5月に名称変更したもの。島津氏は著書『リーダーシップ』の著者略歴によると、同研究協会時代からの副理事長である。同協会は、通産省を所管官庁とする社団法人・日本訪問販売協会に団体会員として参加しており、ここを通して「同省消費経済課の消費者保護に関する諸施策に協力する一方、自主規制基準づくりなどを行っている」と称しているけれども、評判はよくない。
「訪販協の団体会員になっているということで、通産省の看板を商売に利用している。公益団体を謳った全国直販流通協会のほかに、流通システム研究所を主宰し、建て前と本音の部分を使い分けている」と、全国直販流通協会の内外から反発を示す向きが少なくない。
流通システム研究所は、かつて9万8千円もする『無店舗販売戦略講座』を出版・販売したり最近では組織販売を行っている人たち向けの教材を作成したり、商売にも余念がない。
ついでに述べておくと、アーク・インターナショナルの篠宮茂行氏は(ただし61年1月退社)中小企業流通研究協会時代から同協会委員として参加しているが、篠宮氏はAPOの子会社・弘龍にいた人物である。
中小企業流通研究協会をつくった56年の翌年、坂井氏は協会内に「宣伝講習販売部会」なるものを設けた。仰々しい名称でカムフラージュしているけれども、先述したように宣伝講習販売とは、洗脳マルチ商法と本質的に同一のSF商法(催眠商法)のことに他ならない。
坂井氏はもっか、全国直販流通協会の中に新マルチ商法会社に関する部会を設けて自主規制基準をつくろうといった活動をしているが、人脈が広くパイプが太いのは、最初に組織化を手掛けたSF商法業者である。なかでも、東京・新宿のアップルは坂井氏のコンサルタントをかつて積極的に受け入れてきたSF業者の一つである。
坂井清昭氏は、昭和27年に明大法学部を卒業後、同年5月、リーダーズダイジェスト日本支社に入社、同年11月、日刊工業新聞社に転じ、36年に退社。44年に「生活経済研究所」を設立して以降、約10年の間に40数冊の金儲け話に関する本をものにしてきたという。1年間で4冊の執筆割合である。
36年から44年までの間は、著者略歴では「36年ルポライターとして独立」となっているけれども、興信録では「36年7月東神観光代表取締役となり新日本航空取締役を経て44年生活経済研究所を設立」となっている。
ともあれ、旧時代からマルチ商法には積極的にアプローチし、著書『第三の商法=無店舗販売は挑戦する』(ダイヤモンド社)では、「私はスワイプやエリナが日本に登場したときも半年以内という早い時点でキャッチし、取材したが、APOのばあいも45年3月に創業し、同年6月にはもうキャッチした。いろいろ資料を手に入れ、システムを分解し、研究してみたが、APO社の人と顔見知りができたのは1年後の46年6月ごろである」と書いている。
APO商法にはことのほか御執心だったようで、ある雑誌では、「外からでは判らないので、当時の金で60万円を投じてAPO組織に加入した」と述べている。
坂井清昭氏が主宰する中小企業流通研究協会および全国直販流通協会の二つを通して、島津幸一氏は協会副理事長を務めてきたのだから、かたや“消費者問題屋”、こなた“洗脳教育屋”とタイプは違っていても、この二人の経営コンサルタントは持ちつ持たれつの関係を保ってきたといってよいだろう。