*猪突盲進*




2005年5月29日 焦りだす 焦りだす夜に 夜にのみ開花する思考の花びらを回転させ 境界線の果てに居座る無謀という慰めのために いくつの無駄 いくつの現実 いくつの分からずやな感情を残して 逃避する時間の彼方に 似つかわしくも 似つかわしくもない 呆れ果てた困惑を混ぜて シュレッドされる日常の切れ端をいたたまれなくなって 見つめる もう一度行う その爪弾きにあった指先の毒のために シンドロームをかき集めて 積み木崩しの要領ですり抜けていく その隙間風に 色のついたものを混ぜる 意図的に
意図的にずる賢い生き物へと変貌する 意図されずして取り残される 繰り返しは妬まれたまま繰り返しの法則を失い繰り返される 繰り返されるがままに投げやりになり なすがままの無防備さに不快という感情を顕にして解き放たれることもなく飛び立ち不穏という空気の持ち主に飼い殺される

うさぎ


夢を見るように躾けられた従順なうさぎは思いを馳せることだけで充分で満ち足りた気持ちを夢想するだけで満ち溢れていた あの頃の悲しみの想い出は覆されないまま今も解放されている 夢のまにまに

夢のまにまに顔を出すおどけた顔をして見せた父のはらわた 内臓にこっそりと隠された人生という王道の憎しみと悲しみのマスカレード マーブリングされる演目は動作の一つ一つがもどかしくて不自然でしかしそれこそが表現であって滑り込ませるには充分に脚色のされた見事な按配でした
もう暗闇を恐れることはないよ 今夜こそ明かりをつけて見せよう ぼやっとするなよ 過ぎ去られてしまうぞ 幸運の女神はただの親父でしかないから 真正面から覗き込まないほうがいい あれは女装趣味のいけ好かない中年男だ 今度こそその残った髪の毛を掴んで毟り取ってやれ お前に幸運を司られなきゃいけないほど不幸はお前を味方につけたがったりなんかしないって いつでも不幸こそ幸運を見つけやすくしてくれるものはないさ お前が愛すべきなのは愚かな人間なんかじゃなくてお前の良きパートナーだ そうやって言ってやったら幸運の親父は涙を流して自分の着ているドレスから胸に着けていたパッドをとって走り去っていった そしてまた幸運の女神の前髪とやらは掴めないで終わった
どくだみの彼女が、今宵もまたひそひそと誰かを陥れているよ

時間を軽々しく馬鹿にして笑い転げるアリス それを無視して 飛び立つように逃げ惑えば 同じように軽々しく時間を馬鹿にする 生まれたての赤ん坊の泣き声も近くなる 狭間で揺れ動く動揺は 懐中時計を胸に仕舞い込む白兎の耳に そっと時報を吹き込み 長い耳ではなにもかも聞き漏らすらしくて 兎の耳からはいつも はみ出したばかりの真新しいノイズが渦巻いていた 日常という逃げ場のなさから必死になって掻い潜り 繭の中で味わう安心と窮屈さに堕落してしまう猿人 穴を掘って 次々と飛び込む姿勢に トランプの移り気が伝染してもおかしくはないね 女王 裏も表も知り尽くした顔でアリスを追い込み まるで時間を知らない子どもに教え諭すかのように殺戮を続ける猫のようだ 虎縞が黄色と黒の配置を入れ替える 背中を見ないままで背中を想像させる鏡のよう その背中に張り付いた「焦燥」を手なずけることはできない だから意のままに串刺しにするがいいさ女王 縦割りに悩んだ仕組みを恨もうともせず 引き裂かれてゆく原型を思い出しては ゆっくりと賞賛に酔いしれるがいい ここはとめどもなく澱んでいて その澱みこそが時間と対となって動く ついに兎も穴に飛び込んでしまったらしいよ 自分が奏でる時計とのコラボレーションに 納得がいかなかったって最後には自白していた 夢も希望もたいがいだね たいがい奴らはいつだって不健康で 健康そうな奴らを見ると 時間の隙間に連れ込もうとする アリス アリスはいい加減だ いい加減だからこそ類まれなる 紅茶もお茶の味なんかしないし お茶会のルールだって本当はでたらめで それが嬉しくて堪らなかった だって それこそが それこそが自由だ だってそれこそが自由だ 自由だ!!!


2005年5月19日 石段から転げ落ちる蜜柑に洗礼を受けて ひとつはみっつ みっつは四百と同じだけ腐る よくもまぁこんなところまで生き長らえたものだ そう言って老婆が足早に立ち去る 捕らえかけたものはなんだったか あの老婆は 一体私になにを伝えたがっていたのか 風にかき消された温もりは 冷え切った夜空と一体化して 二度と人肌と触れ合うことはなかった 遠方でただ独り、きらり そしてこちら側からもきらり きらり、きらり 波打つように自己主張を始めて さざめきたって流れてゆく そして逃げてゆく そしてとどまらぬ 上辺だけを撫でて温めあう居心地のよさに包まって 明日を見ればその明日はなんて明るいのだろう 誰も二度と私を見るな そしてとどまるな そして一生を私の残像と共にしろ  


2005年5月15日 音を映像に 言葉が映像に 想いを映像に 映像を映像に どこまでも青い宇宙とやらを かび臭い萎びた宇宙とやらを 
魚が泳ぐ
水槽の隅に体を摺り寄せて
水が足りない
水が足りない って思っている
ガラスに身を寄せていると
もうひとりの色とりどりの魚が見えて
どうしてそんなに口を尖らせているのか
疑問に思う

そうやっていると
真っ直ぐなところを通ろうとしても
尖った口が邪魔をして引っかかってしまう

あぁ、水が足りない
水が足りない
あんまり足りなくて
尖った口が乾いて嘴になってしまった

魚は嘴を持って
硬い水槽の角を突いた
これは進化
必要なものを必要な形にして
強化し続けた結果としての
これは進化

いろとりどりの魚
嘴を持って いつも水槽の壁にキスをしていた
ここは行き止まり
さしずめ 世界の果て

魚は世界の果てにばかり体を摺り寄せて
身動きの取れない場所に口をつけては
その向こうに見える自分の姿を追っていた
幾人かの魚は
世界の果てに口づけをすると
満たされた顔をして引き返してゆく
そして反対側の果てまで悠々と泳ぎきると
そこでもまた口づけをして
また別の角度へ向かって泳いでゆく
そして何週目かすると
色を増やして
また同じ角へやってきた
口が嘴になってしまった魚には
色が増えることはなかった
ただ嘴ばかりが硬くなっていって
誰かと口づけをしようとしても
硬い嘴が相手を傷つけるだけだった
だから魚はノックし続ける
世界の果てでひとり
(ガラスの向こうの世界へ飛び出すべく)
ノックし続ける


2005年5月5日 Yo。神さま、そんなところでなにしてんだよ。そういって神みたいなやつにドロップキック。そしたら神は長い髪と髭をくちゃくちゃにして一緒くたにしてごろごろ巻き込みながら転がっていった。そこをすかざす襟首を捕まえて神に懇願してみる。なあ神さま誰が汚いだなんて今さら言わないよ。どこに落ち度があるとか、そんなことはどうだっていいんだ。ただもう少し、もう少しだけ、みなが明るい顔をして胸を張って歩けるようにはならないのかな。なにかを信じることに頑なな人は、どうしてあんなにも純粋そうな顔をしているのかな。信じた上に拒否することが当然だと信じ込むその強情さは意地悪じゃないのかな。透明な針が何百本、何千本と空中を行きかう。そのさまはキレイかもしれない。生憎老人は目が見えないのでそれが分からなかった。神さまみなが神さまがいることに頼り切っている。もちろん神さまがいないと思うことにも頼り切っている。
想像だけで書けない言葉が身を抓む。
なにもしなくても孤独で、なにをしても孤独なのには変わりない。
誰かの苦しみ。自分自身の苦しみ。
気が狂った人の話。
本当に気が狂った人は、いたって健康です。
病気の人から「君、病気だね」と言われた。
病気の人をたくさん友達にもっている人に「(友人たちの誰よりも)これほど病的なのはいない、君くらいだ。君こそ本物だ。僕は本物が好きだから君も好きだ。」と言われた。
本物であるなら嬉しいと感じてしまうところが最早病気なんだろうか。

「その辺の詐欺師なんかより君は本物だ」
電車が加速してゆく
まどろみの人がドア越しに睨んで
視線の行く先の先の未来へと続く希望を。
失うことができるなら
どうして手に入れようとできるだろう
そそくさと裾を手繰り寄せながら
わたしと目を逸らして逃げ行く人々に
後ろから物を投げつけるのはよくないと言われ
せめて後ろから声だけでも言葉だけでも
と、そんなふうに懇願するような
愛らしさがあるはずもなくてね
夕暮れの赤さに隠れた
姿かたちの見えない微笑みの向こうに
ゆっくりと飛ばされてゆく紙飛行機
かく乱されて一筋の跡を残して
やがて消え行く
(こころと共に)

ドライフラワーをいただきました
それはかくて
私があなたにあげた黄色い薔薇の花束
全ての人に投げ撃った
弾丸のような咆哮
言葉という声は
声という言葉にはならなかった
優しさを噤む方法を
指折り数えて枯れさせてしまった
身近という最も遠い距離感を悟るのに
私では時間がかかりすぎる
乗り遅れた電車の窓から
あなたを見送る

全ての苦しみよ
報われぬままに

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