■ニュースコメント[ 2004年01月分 ]
経済ニュースコメントのバックナンバーを保存したいと思います。とくに地域経済のコメントを重点的にしていきます。
ニュースソースは主にNIKKEI地域経済から引用しています。
リンク切れの場合を考慮して全文引用しています。
■アンテナショップをアンテナする[ 2004年01月29日 ]
■ガジェット、その魂の座[ 2004年01月22日 ]
■バッカス神のトリニティ[ 2004年01月15日 ]
■ミネラル不足のトリレンマ[ 2004年01月08日 ]
■当事者双方だけでなく[ 2004年01月01日 ]
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■アンテナショップをアンテナする[ 2004年01月29日 ]
アンテナショップのアンテナがキャッチしている情報は、文化を文明のコンテクストに再配置して、規格化する作用を及ぼす力である。つねに働いているその過程を企業内システム化して製品開発することがアンテナショップを開設する企業の目的である。
5W1Hを使いながらその目的を考える。
(引用開始)
森清タオルの子会社オルネット、東京にアンテナショップ開設
【四国】2003/12/05 NIKKEI地域経済より
森清タオルの子会社で、タオル企画・販売のオルネット(愛媛県今治市、森和子社長)は、東京都渋谷区内にアンテナショップを開設した。東京単独出店は初めて。小売りだけでなく、都市部での知名度向上や販拡活動の拠点としても活用する。新商品を売り出し、営業が軌道に乗ってくる2004年度は6000万円、05年度は1億円の売り上げを目指す。
開店した「オルネット東京ショップ」は代々木の高級住宅街にあり、店舗面積は約70平方メートル、投資額は1200万円。30―40代のキャリアウーマンを狙って400円のおしぼりから1万5000円の高級パジャマまで約60品目のタオル素材を使った製品をそろえた。
同店は各種の展示会や見本市への出展のほか、百貨店や新規顧客の開拓に向けた足場の機能も担う。今後はデザイン重視の商品や環境や健康に配慮し無農薬農地などで取れた綿を使った商品なども増やしていく。
(引用終了)
■アンテナショップを定義する(WHATその1とWHOその1)
アンテナショップとは、メーカー(製造業者)が自社製品の販売を量的(普遍化)・質的(規格化)に拡大するために、その製品を開発するに必要と思われる情報(想定される消費者の消費性向・ニーズがどのように変化しているか)を収集する目的で開設・設置した店鋪のことを指して云う。
通常、販売業者が開設する店鋪でアンテナショップと云うのはない。
■アンテナショップの目的とその形態(WHYその1)
ショップの開設それ自体からもたらされる収益が目的ではなく(その場合は直営店と呼称されるだろう)、ショップの開設でそこにもたらされる情報の収集に目的がある。
つまり、メーカーの目的が収益を上げることにある以上、アンテナショップとはメーカーの機能の一部である。
また、情報を収集する目的のための手段としてショップという形態を採用している。情報を収集するに足る効率的な別の手段があれば、アンテナショップは必ずしも要らない代替できる手段である。
ただし、アンテナショップを開設するということはメーカーに情報を収集する手段が内在していないか、乏しいかを示している。
■アンテナショップの登場する経緯(WHENその1)
アンテナショップは、メーカーが消費者の消費性向・ニーズから乖離していると感じたときに開設される。
メーカーもひとりの消費者のニーズとして創業するが、多数の消費者のニーズに支持されねば存続できない。また消費者はメーカーの独自性を支持もするが、その独自性を拒絶もする。ゆえにつねに乖離の危険性を孕んでいる。
■アンテナショップの設置場所(WHEREその1)
情報を収集するのが目的であるため、情報が量的に集積し、質的に変化することが確率的に高い場所に開設・設置される。
つまり居住人口が多く、可処分所得とGDPの高い大都市がその地点となる。また取引の人口が多く、利益と売上収入の高い商社含む問屋、FC本部、その他大企業は内部にその立地と同じ条件を備えている。
■アンテナショップの機能(HOWその1)
情報は流通する性質を持つ。流通するためには結節する必要が生じる。この結節とは点と線の集合であり、その集合に情報は集積する。また情報が流通するということは事物が伝達されるということでもある。伝達とは受信と発信のくり返しであり、その受発信のくり返しにより情報は変質する。
情報を変質させる作用を及ぼす力こそ、メーカーが収集している情報の本体であり、それをひとつの結節の交点・変質の力場として観測するのがアンテナショップの機能なのである。
アンテナショップが収集する情報が、情報を変質させる作用そのものであるとして、その作用はなぜ起きるのか、だれが起こすのか、いつどこで起きるのか、それをどう活用すればいいのか。
さらに文明と文化のコンテクストを踏まえながら考える。
■アンテナショップが収集する情報(WHATその2)
アンテナショップが収集する情報とは、文化を文明に変える力である。アンテナショップが観測しているのは情報の変質であり、その変質作用を及ぼす力こそが情報の本体であり、これを認識した場合にのみアンテナショップは情報を収集したと云える。
作用とは、各人各様の文化を各人一律の文明とする規格化とその更新であり、普及・普遍化した文化を解体・記号化して文明の文脈に再配置・再生産することである。
規格化とその更新ならびに記号化とその再生産のサイクルを把握して、企業内における製品開発のプロセスに組み込むことがアンテナショップで情報を収集する企業の目的となる。
■文化の規格化・記号化作用(WHYその2)
文化が文明の規格や記号に変質するのは、文化と文明がつねに対立と補完による相克の関係にあるからである。
この相克関係では、文明は文化を発見して摂取するし、涵養して排除もする。一方の文化は文明を受容して発展するし、拒絶して衰退もする。文化と文明を対比するとき、文化は具象的で土着性の傾向を有するが、文明は抽象的で普遍性を傾向とする。
■人のコミュニケーションとソリューション(WHOその2)
文化の規格化・記号化の作用は、文化と文明に属するすべての人が起こすが、それは人がコミュニケーションとソリューションをおこなうからである。
人はコミュニケーションという交点において互いの独自性を認識するし、ソリューションという力場において互いに普遍性を付与しあう。このコミュニケーションとソリューションは人が時間と空間のはざまに生存する限りつづけられる。
■時間的経過と空間的距離(WHENその2とWHEREその2)
人が独自性を識って存在了解するところに空間は現れ、人が普遍性を受け入れて非可逆的な指標を求めるときに時間は刻まれる。
文化と文明のいずれにおいても、空間的距離があるところと時間的経過があるときに具象的・抽象的な変質作用が起きる。ただし、空間的距離があるところに具象的変化が起きる傾向が、また時間的経過があるときに抽象的変化が起きる傾向があるのは、空間が他者との認識領域にあり、時間が他者との共有意識にあるからだろう。
■文明のサイクルと企業内のプロセス(HOWその2)
文明が持つ規格化・記号化のサイクルを、企業内の製品開発のプロセスに組み込むためには、情報の抽象化と具象化をプロセスとしてくり返す必要がある。
まず企業内でくり返される抽象化と具象化のプロセスは以下の通り。
- 情報の本体(抽象≒具象)
- 情報の認識(具象→抽象)
- 情報の分析(抽象⇔具象)
- 情報の還元(抽象→具象)
- 情報の普及(具象→抽象)
情報を変質させる作用の力こそが情報の本体であるが、それは抽象と具象のいずれにもあり、いずれにもない存在と云える。不可視の存在は、販売データなどの抽象化された指標としてひとまず認識される。数々の指標と自社の試作品とを対比分析していく過程で所与の問題点は解消されるだろう。指標と試作品が統合・還元されたひとつの製品として市場に普及するとき、またも抽象的な記号に分解されることにもなるが。
つまり企業は普及した製品が文明のコンテクストに再配置された瞬間にその製品がヒットした、と断言できるし、所与の目的を達成する。しかし企業が設置したアンテナショップのアンテナは、情報をキャッチしつづけることを課せられる。こうして文明と文化のサイクルは、企業内のプロセスをさらに取り込んでつづくのである。
参考URL
今治のタオルメーカー・森清タオルの販売子会社:オルネット
世界最大のタオル産地今治のメーカー約200社が加盟する:四国タオル工業組合
参照コメント
アンテナショップについてはこちら
雑貨にはライフスタイルとなるストーリーがある[ 2003年02月07日 ]
■ガジェット、その魂の座[ 2004年01月22日 ]
ソニープラザ、ロフトなど東京の雑貨専門店が相次いで地方進出する。地方の消費者にとっては、その店で雑貨を購入することが東京と接続する効果を持つ。その効果は、東京が政治・経済・文化の中心地であるために発現する。その発現の構造は、ポストモダンの神話でもある。
(引用開始)
ソニープラザ、金沢市に北陸初の直営店舗出店
【北陸】2003/10/11 NIKKEI地域経済より
輸入雑貨のソニープラザ(東京・港)は11日、金沢市内の商業ビル、香林坊アトリオの地下1階に北陸初の直営店舗をオープンする。約1万2000店に及ぶ欧米の雑貨を中心に販売する。アトリオは集客の核とする。
「ソニープラザ金沢香林坊アトリオ店」の売り場面積は約300平方メートル。菓子、文具、家庭用品、インテリア雑貨、化粧品、化粧雑貨、玩具、衣料品、衣料雑貨など多岐にわたる商品を販売する。同社は毎月、全店統一で販促企画を行う。今月は「ハロウィーン」がテーマで、関連商品を豊富にそろえた。そのほか、「カレンダー&ダイアリー」などの企画も順次行う予定。アトリオ店のオープンでソニープラザの直営店は全国57店舗となる。
ロフト、仙台駅前に大型店を出店
【東北】2003/10/15 NIKKEI地域経済より
生活雑貨専門店のロフト(東京・渋谷、安森健社長)は14日、仙台駅前のアムス西武跡地に出店すると正式発表した。売り場面積は7300平方メートルで、全国3番目の規模。書籍やCDなどの専門店テナントも入居する。4億円を投じて改装し、12月初めに開店する。新業態の大型店の進出で、駅前商業地の集客力は向上しそうだ。
ロフトは健康雑貨、文房具、家庭用品、インテリアなど約7万品目を取りそろえる予定。ロフト内にはジュンク堂書店や音楽ソフトのHMVなどの出店も決まっており、八階には飲食店が入る。年間50億円の売り上げを目指す。従業員241人のうち200人は地元から採用する。
ロフトはこれまで20―30代の独身女性を主顧客層としてきたが、「30―40代の主婦も視野に入れる」(金谷信之専務)としている。
東北ロフト1号店、仙台駅前に開店
【東北】2003/12/04 NIKKEI地域経済より
生活雑貨専門店のロフト(東京・渋谷)の東北1号店が3日、仙台駅前のアムス西武跡地に開店した。開店前から2000人の列ができ、初日の来店客数は同社の予想の倍の5万人、売上高は4000万円(推定)だった。安森健社長は、仙台出店を契機に東北で県庁所在地を中心に4―5店出店する意向を明らかにした。
開店した仙台ロフトは売り場面積7300平方メートルで、同社としては全国3番目の規模。ジュンク堂書店や音楽ソフトのHMVなど12のテナントが入居する。
今後、東北では1000平方メートル前後の小型店をショッピングセンター内などに出店する方針で、時期に関しては「仙台店の様子を見て検討する」(安森社長)としている。
(引用終了)
ガジェットは、象徴価値を内在するイコンである。
象徴価値は、権力(パワー)の生み出す神話である。
神話の中心である東京は、イコンを地方に付与する。
神話の外縁である地方は、イコンにより東京に接続する。
ボードリヤールの『消費社会の神話と構造』で指摘されるガジェット(無用物)の消費には、使用価値でも交換価値でもなく象徴価値が隠れている。神話の喪失がポストモダンの人をして、ガジェットに即物的な神話への接続装置の役割を付与する。権力や権威や富につながるストーリー(象徴価値)を増幅させるイコンとしてガジェットは鎮座する。
“鰯の頭も信心から”であり、記号としての差異を認識して体系付けたときに不可視の神が現出する。ガジェットに宿る物神は逆説的にアドヴェント(降臨を待つこと)している。
人は他者との関係性の中でしか自己を認識できない以上、なんらかの神話に参加せざるをえない。人もまたガジェットである。一神教も唯物論も過ぎて、仏教的な唯識論を見い出した時代がポストモダンである。
神話の発信地として東京は魂の座を持つ。地方でガジェットの消費が先行しない由縁であり、地方は東京に接続する装置を設けるほかない、地方の文化を文明の物神とするためにも。どの地方の製品・サービスも東京のフィルターを経由せねば他の地方に売り込むことはできない。
ポストモダンの現象として、ガジェットの消費がある。
ガジェットの消費は、消費の飽和と換骨奪胎の果てにあらわれる。
消費の飽和と換骨奪胎には、イノベーションをおこなう企業が要る。
イノベーターの例として、セゾングループを挙げる。
ポストモダンにおいて物神は遍在するが、神話は唯識することでしか現出しない。神話の体系化を助長する舞台が東京である。体系化をただ無用物を選び取るだけの無用人の行動に見い出すには、近代的な消費行動の飽和と換骨奪胎をおこなう祭司がいなければならない。
度重なる消費の飽和と換骨奪胎が内包される場所と時間にガジェットは存立するし、つぎなるガジェットも産出する。飽和も換骨奪胎も循環であって、単純な虚無ではない。
循環の過程では、飽和を促し換骨奪胎をおこなうイノベーター的企業が要請される。それは消費の中心地に存立する企業に見られるし、必然としてそうなる。現在では解体されたセゾングループが好例である。
西武百貨店(60年代)→パルコ(70年代)→無印良品(80年代)→ ロフト(90年代)までを各ディケイドごとに詳述して、21世紀の00年代から10年代の消費傾向を検証・予測してみたい。
消費トレンドの質量的飽和は、消費トレンドの換骨奪胎を要請する。
セゾングループの脱構築は、10年周期でおこなわれた。
消費財の拡大からイメージの消費への到達、イメージの飽和からコンセプトによる収束、コンセプトの分散から選択する意志の薄弱化までをとりあげて今後の消費トレンドを予測する。
ひとつの消費トレンドが質量ともに飽和すれば収束は不可避である。収束による売上減を避けるためには企業はむしろ積極的に換骨奪胎する。その脱構築の見本がセゾングループであった。渋谷西武(1968)から池袋パルコ(1969)と渋谷パルコ(1973)展開の頃には、製品・サービスだけでなく、記号化したイメージまで扱いはじめている。百貨を際限なくして無限貨にしたところにパルコの意義がよりあらわになる。
一方、無限貨を脱構築すると一貨に近づく。単一コンセプトによる製品・サービスの一貨店が登場する。無印良品のスタート(1980)と無印良品青山店(1983)がそれである。記号性の氾濫に対する記号性の排除が無印良品だが、氾濫させた張本人が記号性の不在という記号をつくる皮肉に消費の飽和から換骨奪胎までの典型を見る。
単一コンセプトの確立はコンセプトの拡散を誘引する。モノはガジェットとなり、かくてポストモダンがあらわれる。渋谷ロフト(1987)と池袋ロフト(1990)がその魂の場としてあらわれ、消費者はそれぞれに適したガジェットを選択して、それぞれの所属すべき体系の中へと自らを没入させていく。しかし際限なく体系化がつづくと、体系が淘汰されるよりも自ら体系を選択する人々の契機そのものが淘汰されていく。
消費の飽和に耐えきれず体系を選び取る自由意志すら放棄した消費者は、ふたたび一貨へ傾斜する。21世紀の00年代には百貨の減少・縮小が起きた。デフレ・二極化における100円ショップ/ユニクロ/マクド現象とブランド品現象である。10年代に揺り戻しがあるなら百貨の増加が起きる。高所得者層にはコンシェルジェ型消費が、低所得者層にはパワーセンター(複合化スーパー)が定着するのではないか。
参考URL
ソニーとソニー企業が出資する:ソニープラザ
西武百貨店、森トラストなどが出資する:ロフト
参考書籍
『消費社会の神話と構造』
著)ジャン・ボードリヤール 訳)今村仁司、塚原史
発行)紀伊国屋書店 初版)1979.10.31
参照コメント
パルコと無印良品についてはこちら
記号性からの逃亡[ 2003年02月26日 ]
■バッカス神のトリニティ[ 2004年01月15日 ]
100周年を迎えた日本最初のシャトー「シャトーカミヤ」の創設者・神谷傅兵衛は、現存する日本最古の洋酒バー「神谷バー」を開き、日本最初の洋酒ベースのリキュール「デンキブラン」、日本の甘味ワインの草分けのひとつ「ハチブドー酒」を考案した日本産業史の偉人のひとり。シャトーとは、城ではなく醸造施設まで備えたブドウ畑を指すが、現在ではシャトーカミヤにブドウの苗木は一本もない。ブドウ畑のないシャトーカミヤは、もはやシャトーと呼べないのではないか、またその事実は日本にワイン文化が100年間根付かなかった証左ではないか。
(引用開始)
シャトーカミヤ、100周年記念でワインまつり
【関東】2003/11/01 NIKKEI地域経済より
日本初の本格的ワイナリー(ワイン醸造場)として誕生したシャトーカミヤ(茨城県牛久市)が100周年記念ワインまつりを1日から3日まで開く。ステージなどでコンサートやジャズ演奏、ワインオークション、ワイングラス積み上げ競争、ワインテイスティング、古式ぶどう踏み大会などが開かれる。
シャトーカミヤは焼酎・清酒の老舗、合同酒精(現オエノンホールディングス)の母体となった神谷酒造の創業者、神谷伝兵衛が100年前に創設、城のような洋館などが当時のまま残っている。
ワインまつり初日の1日には先着500人に北海道旭川・大雪乃蔵直送の酒かすをプレゼント。園内ではワイン飲み放題(1人1500円)や模擬店が出店、各レストランでは100周年記念の期間限定特別メニューが味わえる(16日まで)。8日には地ビールをドイツ音楽とともに楽しむ牛久地麦酒会を予定している。電話029・873・3151。
(引用終了)
日本におけるワインの普及は、1980年代以降といって差し支えない。あまりにも急速な国内ワイン市場の勃興に、国内ワイナリーの多くは外国産原料で対応した。ジャパニーズウィスキーの認知に比較して、ジャパニーズワインの内外での低評価もうなずける。ここでふたつの疑問が湧く。日本において最近までなぜワインが普及しなかったのかという疑問と、一方でワイン同様に外来酒でありながらビールとウィスキーはなぜ国産品が定着したのかという疑問である。
日本でワインが普及しなかったことを理解するに2点踏まえたい。日本にはワインが文化としてはなかったことと、世界的にはワインが文明ではなかったことである。文化は各国単位で土着性とともに存するが、文明は各国一律に普遍性を持って存する。普遍性を持つとは、科学的な理論や装置に基づいた規格化にほかならない。規格化の理論と装置があれば、世界標準の味を提供できるし、各国民の嗜好に臨機応変もできる。明治時代に、文明としての規格化ごと導入されたビールはすぐさま巨大な市場を手にした。文化としてのビールは後から随伴である。くらべてワインは規格化ができず文化の段階に留まっていた。これがワインの導入を妨げ100年の格差となった。
しかし、文明としての規格化に乏しいウィスキーが普及した疑問は残る。ウィスキーは、製品出荷までに熟成期間を要する点でワインと相似だからである。規格化(文明化)による大量生産・大量消費にそぐわない(文化的な)土着化の過程があらかじめ製造工程に組み込まれる。そのためウィスキーを日本人に普及させるには、文化としての良い酒をつくる醸造家と文明としての市場に合った酒をつくる企業家を同時に必要とした。その両者の役割は、留学してモルトウィスキーをつくりあげたニッカの竹鶴政孝と宣伝とブレンデッドによって市場を開拓したサントリーの鳥井信治郎が担ったと言える。くらべてワインにはこの両輪が欠けていた。これがジャパニーズウィスキーとの認知度の違いとなった。
くり返すがワインは規格化がむずかしい。農作物としてのブドウがワインの規格に等しく、農業の文明化を必須とするからである。日本のワイン産業を興す者は、栽培家と醸造家と企業家の三位一体の立場を持たねばならない。今後の日本のワイン産業の動向は、栽培家としては、生食・醸造兼用(従来の甲州種と善光寺種)から文明としてのワイン専用外来種(カベルネ・ソーヴィニョンなど)の導入を進める。醸造家としては、山梨県でのワイン産業振興特区(農地貸し付け方式による株式会社の農業経営の参入容認)がエポックとなる。企業家としては、ブランディングとマーケティングの能力が求められるだろう。
参考URL
ワインの丘から麻井宇介のワイン余話
■ミネラル不足のトリレンマ[ 2004年01月08日 ]
ミネラルウォーター税の導入を希望する山梨県の主張には、県のミネラルウォーター業界への無理解と無策がうかがえる。本来、税導入には相互理解に立った業界の振興策が必要なのではないか。
(引用開始)
ビー・アドベンチャー、ミネラルウオーター売上金の一部を県に寄付
【甲信越】2003/11/18 NIKKEI地域経済より
健康・美容製品のビー・アドベンチャー(甲府市、水上茂男社長)は10月から販売した富士山ろくのミネラルウオーターの売上金の一部を山梨県に寄付する。環境・水質保全に役立ててもらうのが狙い。県が検討しているミネラルウオーター税には関連業界が強く反発しているが、同社は寄付金という形で業界と正反対の企業行動をとる。
寄付は県の森林保全施策、富士山の環境保全などに使ってもらうことを期待、県森林環境部の許可を得てラベルに明示した。寄付金額は県の新税構想である1リットル当たり0.5―1円を基準に年内にも決める。「わずかな額だが、水質維持に役立ててほしい」(水上社長)としている。
同社が発売した「バナジウムボディアクア」は血糖値を下げる効果があるとも言われるバナジウム成分を含み、薬局やコンビニなどのほか通信販売などで全国販売した。500ミリリットル入りで希望小売価格は180円と、類似製品より3割以上安い。
長野県、民間団体などと連携しアウトドア産業を振興
【甲信越】2003/10/23 NIKKEI地域経済より
長野県はウオーキングや山登りといったアウトドアの県内産業を振興する。関連する教育振興や市場拡大を目的とした民間団体、アウトドアズ産業教育研究会(滋賀県野洲町)などと連携してシンポジウムや商談会を開くほか、林道を利用したサイクリング・トレッキングコースを設定する。2002年で約2500億円の県外客の県内観光消費額の2倍増を目指す。
11月5―6日に茅野市で、アウトドアズ産業教育研究会と共同で「アウトドア・ビジネス・シンポジウム」を開く。ウオーキングや山登り、キャンプなどを含めた観光業に詳しい有識者らが集まり、県内のアウトドア産業の展望やビジネスプランを議論する。田中康夫知事も参加する。
県外のアウトドア用品メーカーや旅行会社、県内のホテル、リフト会社、市町村の観光振興担当者ら約300人が集まる。県内外の企業や自治体の協力や連携を深めることで、県内事業者による新しいサービスや旅行パックの立案につなげる狙いだ。アウトドア用品の商談会も開く。
「ミネラルウオーター税」めぐる山梨県と業界の協議は平行線
【甲信越】2003/10/29 NIKKEI地域経済より
山梨県が導入を目指している法定外目的税のミネラルウオーター税をめぐり、県の税務当局と業界関係者の初の直接協議が28日、県庁で開かれた。税の公正性などに問題があると反発する業界と県の議論は平行線に終始した。
この日の会合に参加したのは業界側から山梨ミネラルウオーター協議会の北村文直会長や日本ミネラルウオーター協会の花原卓弥専務理事ら5人、県側は入倉基公税務課長など職員5人。
県は9月に実施した県民アンケート調査(回答者418人)の結果を示した。税導入については「賛成」が14%、「負担の程度にもよるが賛成する」が49%で支持が多かった。「反対」は17%だった。
業界側は「一業種だけへの課税は不公平で業界の負担能力への配慮を欠く」など52項目にわたる意見・反論書を県に手渡した。県は「回答すべき点には時期をみて答える」方針。今後も直接の話し合いを持つことで両者が合意した。
(引用終了)
ミネラルウォーター税は妥当か不当か。それは、山梨県の主張にミネラルウォーター業界への理解と施策の裏付けがあるか、で判断できる。理解と施策のない法定外目的税は、特定業者への罰金に過ぎないからである。
税を課するにあたって県側の主張と対する疑問点は以下の通り。
第1の「地下水をそのまま使用しているので受益者負担」については、品質保全コストがかかる点に理解があるのか。
第2の「原材料がタダなので莫大な利益を得ている」については、参入障壁が低い分薄利多売になる点に理解があるのか。
第3の「法定外目的税に必ずしも新規事業は必要ではない」については、ここが一番重要なのだが特定財源でなく一般財源であるならばミネラルウォーター税とする必然性はない。“受益者負担”とはすなわちこれ“負担者受益”である点に理解があるのか。
最低限でも、特定財源にふさわしいスキームを示す方がミネラルウォーター業界を説得しやすいはず。むしろそれらがないことは、山梨県がミネラルウォーター業界に理解なく振興もせずの証左ともなる。1)
ミネラルウォーター税に妥当性を与えるには、県とミネラルウォーター業界の共通理解とそれらに基づくスキームを提供すればよい。理解と施策は表裏一体である。県側の理解と施策に多くを期待するとして、その例を以下に列挙する。
第1に地下水をそのまま使用する=“何も手を加えないという加工”との共通理解。施策としては、無添加を維持するための費用を補助。
第2に業界が構造的に薄利多売であるとの共通理解。施策としては、産地間競争・薄利多売から脱却するためのブランディング費用・コンベンション費用を補助。
第3に受益者負担における共通理解。森林資源の保護と活用の観点からは工業用地下水を使うすべての業者から徴収する方が公平だし、鉾先を変えてキャンピングに訪れる人から法定外目的税を徴収する方が(彼ら自身の自然保護の建て前と実際の政治力の不足・分散から)反対も少ない。
水源の管理だけならばミネラルウォーター業界のコンセンサスで行動した方が行政主導よりうまくいくかもしれない。また長野県のようにアウトドア産業の育成に取り組む過程でならば税を課してもさほど波風は立たないだろう。結局、理解には施策の裏付けを、施策には正しい理解を、ということになる。
もし課税を強行すればどのような連鎖反応がありうるか。その可能性を検証すると、リスクに敏感な企業と鈍感な自治体の姿が浮き彫りになる。
最悪を想定すれば、第1に企業は売上減と減益の可能性。税負担を価格に還元できず減益要因となるか、コスト削減が品質低下に及び顧客減少となる。
第2に自治体は税収減の可能性。生産量に比例した新税効果が生じるよりも、移転・倒産などによる法人税と失業による所得税の減少となる。
第3に消費者は健康不安と選択肢減少の可能性。品質悪化が細菌混入などの健康不安にまで及ぶか、銘柄の減少でミネラルウォーターにおける選択肢が減少となる。
どうやら現状のままミネラルウォーター税を導入したところで一税三方損の三重苦(トリレンマ)に陥るだけではないか。なかでも一番リスクに鈍感な自治体が一番リスクが大きい、と思われるが。まずはミネラル分を補給して相互理解につとめたいものだ。
引用URL
1)フードドリンクニュースより
ミネラルウォーター税金は本当に森林保全に使用される?(2003年4月6日)
参考URL
ミネラルウォーター売上金の一部を山梨県に寄付:ビー・アドベンチャー
参照コメント
室戸海洋深層水は、神の配剤か[ 2003年03月11日 ]
水は高きから低きに流れる[ 2003年05月08日 ]
海洋深層水の百水噴出[ 2003年08月14日 ]
■当事者双方だけでなく[ 2004年01月01日 ]
結婚するのは独りではできないのは確かだが、結婚式は当事者双方だけでできないのもまた確かである。葬式は独りだけだが、死んだ人が喪主をつとめることはもちろんできない。
(引用開始)
つくば市郊外に邸宅風ウエディングハウスがオープン
【関東】2003/05/31 NIKKEI地域経済より
静かな森で永遠の誓いを――。JR土浦駅から車で15分のつくば市郊外に邸宅風のウエディングハウス「ザ・ハウス・オブ・ブランセ」が31日、オープンする。貸衣装やスタジオ写真館を手がける丸紅(つくば市、飯野栄夫社長)が既存分野との相乗効果を狙って進出した。
ブランセの敷地面積は約1万平方メートル。八角形のパーティールームやチャペル、ブライダルサロンを回廊で結ぶ。建物の横には欧州風の庭園をつくった。敷地をまるごと草や木で囲み「外とは別世界の空間を演出した」(石見敏夫常務)という。予約は午前10時―午後2時、午後3時半―午後7時半の1日2組だけ。しかも土・日・祝日しか運営しない。価格は招待客60人の場合で150万―250万円。最近は自分たちだけの結婚式を挙げたいと思うカップルが増えており、ブランセでも「夏まで予約はいっぱい」という状況だ。
金沢全日空ホテル、婚礼てこ入れへ改装
【北陸】2003/08/22 NIKKEI地域経済より
金沢全日空ホテル(金沢市、太田正社長)は、1990年の開業以来初めて、大宴会場「鳳(おおとり)の間」(1000平方メートル)を改装した。金沢市では邸宅風の会場で結婚式を開く「ハウスウエディング」施設が相次ぎ開業しており、ホテル婚礼をてこ入れする。
同ホテルでの婚礼件数は98年度の379件をピークに、昨年度は200件強まで減少した。「鳳」は、金沢箔(はく)をイメージさせる金と茶・緑などのアースカラーを組み合わせた色のカーペットを新たに敷き詰めた。すでに小・中宴会場と宴会場ロビー「ホワイエ」(850平方メートル)も改装済みで、合計1億円を投資した宴会場のリニューアルを完了した。
別料金だった新郎新婦の衣装代を組み込んだ割安なプラン発売やフェア開催などと合わせ、婚礼受注を増やす。
板倉会館、女性向けにホテル全面改装
【北海道】2003/08/30 NIKKEI地域経済より
ホテル経営の板倉会館(深川市、板倉克宏社長)は、「プラザホテル板倉」(全22室)を全面改装する。同社が運営するリゾート地の結婚式場「イルムの丘 聖マーガレット教会」(同市)との相乗効果を狙い、客室などを新婚カップル向けに一新する。挙式前後の宿泊に同ホテルを使ってもらうことで、稼働率向上を目指す。
10月までに約5500万円を投じて客室やレストラン、宴会場などを改修する。ビジネス客の利用を想定していたツインタイプの部屋2室を「レディースルーム」とし、内装や寝具、備品などを若い女性の好みに合わせたものに変える。
「聖マーガレット教会」は、深川市を一望する丘に立つ英国クラシック調の施設。1999年の開業以来、リゾート地での結婚式を望むカップルの人気が高まっており、挙式数は年間約200組まで増加している。このうち6割が本州からのカップルで、結婚式の前後2、3日間を式場周辺で過ごすケースが多い。
伊勢甚本社、守谷市に郊外型結婚式場
【関東】2003/09/11 NIKKEI地域経済より
伊勢甚本社(水戸市、綿引昭好社長)は茨城県守谷市に、洋館や庭園を備えた郊外型の結婚式場「ウエディングヒルズ アジュール」を建設する。同社は茨城県内3カ所で結婚式場を運営しているが、つくばエクスプレス(常磐新線)沿線への進出は初。広大な庭園を生かし、人気の高い「ハウスウエディング」を提案する。
アジュールは約1万7500平方メートルの敷地に、チャペルと挙式・披露宴会場となるゲストハウス2棟を設ける。れんが調の英国風邸宅と、フランスの避暑地コートダジュールを意識した邸宅を建てる。庭園を舞台にパーティーも楽しめる。
10月に着工、来年6月に開業する。建設費は地代を含め約16億円。15日、守谷市内に予約サロンを設け、予約受け付けを始める。
伊勢甚本社は2001年、ひたちなか市にアジュール1号店を開業した。同社は「守谷市周辺は、つくばエクスプレス効果で人口増が期待できる。つくば市や千葉県柏市の結婚式も獲得したい」(アジュール開設準備室)と話している。
セレブリテ、低コスト結婚式場を関東で集中展開
【関東】2003/09/12 NIKKEI地域経済より
茨城県を中心に郊外型結婚式場を運営するセレブリテ(水戸市、水越信明社長)は2005年までに関東圏で約10店を集中出店し、その後全国展開に乗り出す。出店費用を抑えた低コスト運営をビジネスモデルとして確立し、2005年夏のジャスダック上場を目指す。
セレブリテの新規出店は原則リースバック方式。土地の所有者に建物を建ててもらい、それを借り受ける。同業他社が3億―20億円かける初期投資を1億5000万円から2億円に抑え、挙式費用を他社に比べて2―3割安くした。披露宴参加者80人で約230万円を想定している。
出店地域として狙うのは人口20万人規模の地方都市。04年は宇都宮市に1300平方メートル、栃木県小山市に800平方メートルの店舗を出す予定。05年は前橋市、群馬県高崎市、千葉県柏市などに、その後西日本に勢力を拡大する。資金調達は増資で賄う予定で、ベンチャーキャピタル数社と交渉に入った。
天朝閣、豪農の家をレストラン・結婚式場に
【甲信越】2003/09/27 NIKKEI地域経済より
豪農の家をレストランや結婚式場に――。冠婚葬祭などの天朝閣(新潟県水原町、古田真之社長)は笹神村の豪農の家「五十嵐邸」を譲り受け、レストラン・式場に改装する。1億5000万円を投じ、内装や庭を整備。2004年3月に「五十嵐邸ガーデン」として全面オープンする。
五十嵐邸は地元の豪農で歴史が古い。門や池のある和風建築で、明治、大正期の建物が現存している。最近まで住居として利用されていた。天朝閣は内装をクリーニングし、室内を一部改造。サロンやバー、教会などを設ける。建物の延べ床面積は約990平方メートル。年間150組の結婚式の利用を見込む。
天朝閣はすでに五十嵐邸の隣接地で地ビール製造工場を併設するレストラン「瓢湖屋敷の杜ブルワリー」(笹神村)を運営しており、同工場の地ビールで国際大会の金賞を受賞している。五十嵐邸ガーデンでは地ビールや地元産の食材を活用した特色のある料理を提供する。
マスダプランニング、老舗料亭「エルム山荘」を再生
【北海道】2003/10/09 NIKKEI地域経済より
ウエディング施設運営のマスダプランニングヨーロッパ(札幌市、増田幸夫社長)は、今年3月に閉館した札幌市内の老舗料亭「エルム山荘」の再生に乗り出す。落ち着いた雰囲気の建物や日本庭園を生かしながら、和風を基調にしたレストランやバーを設ける。結婚式を挙げられるホールも新設し、来年3月をメドに開業する。
新施設名は「エルムガーデン」。マスダプランニングが土地と建物を賃借し、1億8000万円をかけて増改築する。
延べ床面積1000平方メートルの木造2階建ての旧料亭は、和食をフレンチ風にアレンジした料理を提供するレストラン(34席)とラウンジバー(14席)に改装。3300平方メートルある日本庭園の一角には、最大120人を収容できるガラス張りのレストランホールを新設する。
藻岩山ろくの落ち着いた雰囲気を生かすため、外観などの基本構造は残す。食事料金は1人2万5000円以上した旧料亭の3分の1程度に設定し、顧客層を広げる。
日本セレモニー、福山グランドホテル跡地に大型結婚式場
【中国】2003/10/24 NIKKEI地域経済より
西日本で結婚式場や葬祭場などを展開する日本セレモニー(山口県下関市、神田忠社長)は23日、今年1月に営業を終了した都市ホテル、旧福山グランドホテル(広島県福山市)の跡地を取得し、大型結婚式場を建設すると発表した。来年9月末の開業を目指す。
名称は「ホーリーザイオンズパーク セントバレンタイン」。今月末からホテルの取り壊しに着手。敷地面積9800平方メートルに、スペインの古い修道院をイメージした鉄筋・地上3階建ての建物を造る。延べ床面積は7200平方メートルで、土地代も含めた総投資額は約38億円。
披露宴会場は80―150席の大型部屋3カ所、50席の小型部屋1カ所の計4カ所で、高さ52メートルの塔を持つ大聖堂も併設する。同社は全国に14カ所の結婚式場を展開しているが、最大規模になるという。年間売り上げ目標は20億円。
メモリード、長崎・稲佐山にコテージ型ホテル建設
【九州・沖縄】2003/10/25 NIKKEI地域経済より
冠婚葬祭大手のメモリード(長崎県長与町、吉田茂視社長)は長崎市内の稲佐山の中腹にコテージ型のホテルを建設する。眺望を生かして各コテージに展望風呂を設け、長期滞在客らの誘致を目指す。開業は2006年春を予定している。同社は五島列島で滞在型のリゾートを運営しており、観光事業を拡充する。
建設地は稲佐山南斜面で、敷地面積は約4万6000平方メートル。第1期工事として2006年春までにコテージ30棟とレストランを建設する。投資額は10億円を見込む。その後にレストランウエディングに対応できるように教会や婚礼施設を建て、美術館も併設する。第2期工事以降の投資額も10億円程度という。
建設地からは長崎港を挟んで長崎市街地が眺められることから、各コテージは夜景を見ながら入れる風呂を設置して、売り物にする計画。
(引用終了)
冠婚葬祭が共同体(ゲマインシャフト)の変遷にその在り方を左右されるのは、冠婚葬祭が共同体における認知儀式だからである。冠婚葬祭が共同体から遊離したかのような最近の現象は、共同体が流動化しているために起きているのである。冠婚葬祭の変遷が共同体の変遷そのものに左右されるのであれば、変遷の方向性を理解することで今後の冠婚葬祭をビジネスとする企業の対応も予測できる。戦前(地縁)から戦後(職縁)そしてバブル後(疑似縁または各種縁の共存並立)で、共同体(に含まれる各種概念も)は変遷を遂げてきた。農村(戦前)から企業体(戦後)そして都市近郊または趣味の範囲(バブル後)での結合、それらの紐帯には宗教が欠かせない。神道・仏教の慣習からキリスト教の慣習そして無宗教化へと変遷してきたことをまず理解したい。
以下、簡単に一般的な結婚式の変遷をまとめてみる。
共同体と信仰に見る結婚式の変遷
- 戦前
共同体:地縁(農村共同体)
仲人:土地の名士
宗教:神社仏閣の氏子檀家
場所:自宅
- 戦後
共同体:職縁(企業共同体)
仲人:会社の上司
宗教:チャペルで宗教形骸化・不一致化
場所:結婚式場
- 現在
共同体:疑似縁(共同体模索)
仲人:不在
宗教:無宗教化
場所:ハウスウェディング
人は必ず共同体に属する、共同体に属さねば(人は社会的に)人たりえない。共同体に属するに際してはメリット(役立つソリューションとコミュニケーション)・デメリット(役立たないソリューションとコミュニケーション)があり、負担に限界があるため複数の共同体に属することは通常ありえない。複数の共同体が混在している激変期であれば、どれを選択しようかと社会秩序に混乱が見られるのも道理である(共同体から認知されない趣向性を持つ人間が、固まって犯罪を犯すなど)。解決策としては、複数の共同体候補(地域・企業・学校・その他)のうちひとつをゲマインシャフト(共同体)として選択して帰属し、残余をゲゼルシャフト(利益集団)として利用するほかない。
必要なコミュニケーションとソリューションの相違が、元来の農村的共同体に企業勤めの新規住民が参加しえない理由であった。新規住民はもっぱら企業共同体に属す一方、農村共同体とはビジネスライクに付き合った。しかし、帰属意識を提供してきた企業共同体が崩壊して本来の利益集団に逆戻りすると、コミュニケーションをほかに求めなくてはならなくなったのがバブル後である。
コミュニティ参画が叫ばれても、一朝一夕で共同体が自分たちの望む形になるわけではない。そこでコミュニケーション自体をビジネス・企業の提供するサービスで代用する。
これがハウスウェディング(ハウスフューネラルも生まれるか)の誕生の背景であり、共同体に属していない人、または趣味などの結合による疑似共同体に属する人がゲマインシャフト的なコミュニケーションとゲゼルシャフト的なソリューションを同時に求める理由である。
こうしたハウスウェディング型の冠婚葬祭は、東京から首都圏の都市または地方都市から近郊へと展開していくと思われる。
参考URL
丸紅(総合商社ではない)の運営する:ザ・ハウス・オブ・ブランセ
ホテル婚礼をてこ入れする:金沢全日空ホテル
板倉会館の運営する:イルムの丘 聖マーガレット教会
もとは呉服店・百貨店:伊勢甚本社
結婚式場を関東で集中展開する:セレブリテ
天朝閣の運営する:スワンレイクブルワリー
マスダプランニングヨーロッパの運営する:宮の森フランセス教会
ホテル跡地に大型結婚式場を建設する:日本セレモニー
長崎・稲佐山にコテージ型ホテルを建設する:メモリード