不眠症
不眠症とは
夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より2時間以上かかる入眠障害、一旦寝ついても夜中に目が醒め易く2回以上目が醒める中間覚醒、朝起きたときにぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害、朝普段よりも2時間以上早く目が醒めてしまう早朝覚醒などの訴えのどれかがあること。
そしてこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週2回以上)、かつ少なくとも1ヵ月間は持続すること。不眠のため自らが苦痛を感じるか、社会生活または職業的機能が妨げられること。などの全てを満たすと不眠症といえます。
精神的なストレスや身体的苦痛のため一時的に夜間良く眠れない状態は、生理学的反応としての不眠ではありますが不眠症とは言いません。なお、睡眠の役割はよく分からず、また不眠が健康を損なうという証拠もありません。
不眠の種類
入眠障害
入眠困難は通常,不安が原因である。情動障害(恐怖状態,うつ状態など),疼痛,呼吸問題,刺激薬,鎮静薬の離脱,睡眠衛生不良(例,睡眠スケジュールの変動),下肢静止不能症候群,睡眠時呼吸停止,遅延睡眠期症候群に関連する。遅延睡眠期症候群は,日周リズム障害であり,その場合患者は眠っている時間と目が覚めている時間がずれてしまい睡眠スケジュールを進めることができない(つまり,より早い目覚めの時間に伴ってより早い就寝時間に移ることができない)。
早朝覚醒
患者は正常に眠りにつくが翌朝早く目が覚め,再び眠りにつけなかったり,落ち着かない不満足な眠りを漂ったりする。このパターンは加齢に共通の症状であるが,ときにうつ病とも関連している。不安,自責,自己懲罰思考といった性向は,しばしば朝に強まることが多く,これが一因となることがある。
睡眠周期の逆転
通常遅延睡眠期症候群(例,時差ボケ),または間脳の視床下部領域の損傷(例,重症の頭部外傷や脳炎の後)によることが多い。鎮静剤の誤用,不規則な夜間の勤務時間,閉鎖性睡眠時無呼吸などがこのような逆転を起こす可能性がある。閉鎖性呼吸停止の患者は,朝の眠りは浅く,昼間時をかまわず睡眠やうたた寝をし,夜の睡眠は断続的に中断される。診断を間違えて鎮静剤の投与量が増すと,夜間に落ち着きがなくなり,気がふさぎ混乱状態になって徘徊するようになる。
反動不眠
普段からかなりの量の催眠薬を服用していた患者が,服用中止時に生じる。大部分の患者は,この結果を慢性の不眠症の再発と誤って考えている。
不眠症の種類
精神生理性不眠症 (Psychophysiological insomnia)
入眠困難タイプの不眠で、クリニックを訪れる人のなかで一
番多いタイプの不眠症です。何らかのきっかけにより、夜眠ろうとしても寝つけず、それ以来また眠れないのではないかという不安感と緊張が著しく強まり、眠ろうと焦り過ぎるため、かえって興奮して寝つきが悪くなることが繰り返される場合です。「完全主義で潔癖な性格の人」が多いようです。しかし、一旦眠ってしまうと案外異常もなく朝まで
眠っているものです。
筋肉の緊張、血管収縮増加など身体化された緊張も増大します。さらに寝室に入るとか、歯磨き、消灯など睡眠に関連する行動に対しても条件づけられた覚醒が形成されます。寝室では寝つけないが、就寝時のきまりから離れた場面、例えば居間のソファに座ってテレビをみたり、読書したりしているときには容易に眠り込んだり、睡眠検査室の中などではかえって良く眠れることがあります。このような条件化された外的要因は主観的には体験されないため、患者は不眠の理由を理解出来ないことが多いものです。
一晩でも眠れないと健康が害されたり死ぬの
ではないかと思い込んでいたり、決めた時刻に眠らないといけないとか、毎日決まって7時間以上眠らないと身体に
よくないと思いこみ、良く眠りたいと患者が強く意識すればするほど、逆にこの意識自体が睡眠を妨げます。患者は自らの睡眠問題だけに囚われて頭が一杯であり、不眠の直接のきっかけとなった外因がなくなっても不眠は徐々に発展し、自己増殖します。
治療
不眠が正常な不安によるものであるということが保証されれば,それだけでよくなる。患者と不安について話し合えば,苦痛を和らげ正常な睡眠パターンをとり戻せる。
簡単な手段が不眠を和らげるのに役立つ。
・安心感を与え,くつろぎ方を指導する
・布団に入り目を閉じてから「眠らなくていい、
いつまで起きていられるか」と逆に考えるように頑張ってみる
・日中にもっと運動をして昼寝を避ける
・温かいミルクを飲む
・布団に入る時刻はあらかじめ決めずに、少し疲れや眠気が出てきたところで適当に布団に入る
・布団に入ってテレビや本を見ない
・寝室は,暗く,静かで,適度に涼しく
・運動は睡眠を促し,ストレスを軽減する。しかし,夜遅くに行うと入眠の妨げになる
・アルコール,カフェインを含む飲料を避ける
・就寝前の読書や入浴はリラックスに役立つ
薬物療法としては夕方から抗不安剤を投与し、さらに就寝前に睡眠誘導剤を追加投与します。
加齢による睡眠障害
高齢者にみられる睡眠障害の訴えとして最も多いものは、熟眠困難、頻回の中途覚醒、早朝覚醒です。高齢者のうち15〜20%、高いものでは50%もの人になんらかの睡眠障害が自覚されており、その頻度は年齢とともに増加し、とくに女性に多くみられるのも特徴の一つとの結果が出されています。
高齢者のなかには身体的要因や精神的要因が見いだせない場合でも高度の睡眠障害がみられることがあります。このような場合に、高齢者の睡眠障害の背景に、加齢に伴う睡眠・覚醒リズムの障害が推定されます。
加齢によるリズムの変化としては、リズムの振幅の低下あるいは平坦化,1日の平均値の低下,位相の前進あるいは後退などの位相偏位があげられます。
睡眠・覚醒リズムの振幅が減少すると夜間の睡眠量が減少し、昼間にも睡眠がみられ、また一晩の睡眠構築では深睡眠が減少し、睡眠効率が低下します。
平均値の低下としては総睡眠時間が減少します。
睡眠の位相が前進すると一続きの睡眠が夜の比較的早い時期にみられます。
治療
朝早く目が覚めてしまう早朝覚醒の治療
・朝早く起きても布団の中でじっとしている
・タ方に外へでて大陽の明るい光を浴び、身体のリズムを遅い方向にずらす
・毎日一時間ずつでも就床時刻をずらしていけば、あまり苦労せずに睡眠の時間帯を遅らせていくことができる
・夜、暖かくして過ごす
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睡眠導入剤
ベンゾジアゼピン類
多くのベンゾジアゼピン誘導体は,著しい催眠効果をもっている。
・短時間作用するベンゾジアゼピン(例,トリアゾラム)は,初期不眠症には有用である
・中時間作用するもの(例,エスタゾラム,テマゼパム)は,睡眠持続不眠に有用である。
・長時間作用するもの(例,フルラゼパム,テマゼパム)は,早朝覚醒に有用であるが,特に高齢者では,日中の機能を損なうようである。
ベンゾジアゼピン類は,他の催眠薬に比し嗜癖の可能性が少ない。呼吸中枢や生命中枢に対し強い抑制を起こす投与量は,他の催眠薬よりもベンゾジアゼピンの方がかなり大量である。
抱水クロラ−ル
抱水クロラ−ルは比較的弱いが安全な催眠薬である。通常の経口投与は0.5〜1gである;必要であれば1時間後に0.5gを追加する。抱水クロラ−ルは,カプセルおよび液剤で入手できる。これは,耐性,嗜癖を起こす可能性や肝の薬物代謝酵素を誘導することがある。
バルビツール酸類
バルビツール酸類は耐性,習慣性,薬物依存性の傾向があり,他の催眠薬より自殺の可能性が高い。バルビツール酸類を中断しようとすると,離脱症状を起こして,薬物依存症を一層強めることがある。
抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬は一般的に催眠薬として使われ,ほとんどすべての一般医薬品としての催眠薬の有効成分である。しかし,抗コリン作用のため,特に高齢者に便秘,尿閉,口渇,起立性低血圧,ぼけ視,錯乱などを引き起こす。
メラトニン
このホルモンは,夜間に松果体から放出される。メラトニンは,時差ぼけの治療として使われるが、眠気を強める作用は非常に弱く、体温を下げる作用、軽い倦怠感をもたらす作用があり、そのため、間接的な睡眠導入作用があります。時差ぼけ対策などに、短期間の服用ならよいでしょう。
使用上の注意
・過剰に取った後は,物憂い気分,無気力,宿酔,健忘,不明瞭言語,共同運動障害,振戦,眼振などがある。
・服用後,車の運転,機械の操作は避けるべきである。
・肺機能不全の患者には慎重に使用する。
・まれに,皮膚の発疹(例,蕁麻疹,血管運動神経性浮腫,水泡性多形性紅斑),胃腸障害(例,悪心と嘔吐)が生じる。
・高齢者の場合,どの鎮静剤でも例え少量でも,情動不安,興奮,せん妄,痴呆の悪化を引き起こすことがある。
・他の中枢神経系抑制薬(例,アルコール,抗不安薬,アヘン剤,抗ヒスタミン薬,抗精神病薬,抗うつ薬)が同時投与されているときには減量する。
・長期摂取後に突然中止すると,重度の振戦やけいれんが誘発されることがある。
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