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対人恐怖症
対人恐怖症
対人恐怖症は,対人緊張・対人不安の度の激しいもので,人前に出ることを避けるという恐怖症。他人と同席するような場面において不安や緊張感を覚えることは普通の人にも起りますが、その程度が強く日常生活に支障をきたしたり、本人がそれに強く悩むようになってくると治療が必要になります。対人恐怖は,青年期の始めに一過性にみられる自意識過剰と関連があり,それが誇張されたもの。青年期前半発病し,30歳頃を過ぎる頃までには大部分は治癒・軽快します。恥ずかしがりの程度の強いものから,自己視線恐怖,自己臭恐怖のように関係妄想のみられるものまであり,後者は思春期妄想症として対人恐怖の重症型に分類されます。
種類
対人緊張は、社会生活の中で様々のタイプとして現れます。以下は、その代表ですが、これら以外にもたくさん見られます。
赤面恐怖
赤面恐怖症の人は、他人から注目されていると意識すると、緊張して顔が赤くなってしまいます。そして、他人に自分の顔が赤くなって精神的に混乱しているのを気づかれるのを恥ずかしく思います。または、顔を赤くすることにより他人にいやな感じを与えたのではないかと気に病みます。また、赤くなるまいと努力しますが、それがかえって赤面にこだわる結果となり、赤面をつのらせてしまいます。つまり悪循環に落ち入るわけです。そうして、自分の顔が赤くなりそうな場所に出ることに不安を持ったり避けるようになります。逆に「顔色が悪い」「青ざめているぞ」と言われてから、顔色にとらわれる例もあります。赤面恐怖は男性に多くみられますが、それは「男のくせに恥かしい」といった社会通念が背景にあるからだといわれます。これに反し女性の場合には赤面しても周囲が自然のものと受け止め、本人もそれに逆らう気持ちが少ないので赤面恐怖という心理的葛藤を起こすことがないといわれます。しかし、時代の変化でしょうか最近赤面恐怖は少なくなっているようです。
書痙・ふるえ恐怖症
人前で字を書く時に手が震えたりこわばったりしてしまう、あるいはお客さんにお茶を出す際にカップを持つ手が震えてしまうといった昔からよく見られる神経症です。ふるえを止めようと工夫すればするほど、ふるえがひどくなり、最後には、一人の時もふるえるようになったりします。職業的にふるえると困る人達がそれを苦にする場合があります。例えば理容師が難しいお客さんの顔を剃るときに手がふるえたり、歯科医師が治療するときに手がふるえるなどといったものです。「これでは仕事が続けられない」と思い込んで、深刻に悩む場合も見られます。
視線恐怖
人と視線を合わせられない恐怖症で、人と話す時の視線にとらわれ始め、ひどくなると会話中にどこを見てよいかわからなくなり、話をするたびに緊張して、会話が上の空になってしまう状態になります。
自己視線恐怖
他人を見てしまうことの不安で、他人と話すときに自分の視線をどこに置いたらよいか、相手のどこを見たらよいか、自分の眼が相手をにらむようになって不快な感じを与えないか、相手が嫌がって眼をそらせるのではないかなどと不安になります。自分の視線が相手を傷つけるように思い相手の顔を正視することができなくなります。
自己臭恐怖
実際には何もないのに自分の体から臭いが発散するため周囲の人に不快感を与えていると思うもので、その証拠に周囲の人がいやな顔をする、鼻をこすったり、部屋の窓を開けたりするなどと主張します。
醜形恐怖
自分の目付きがきつい、鼻の形がいやだ、マユ毛がおかしい、頬骨が突出しているなど自分の顔が醜いために他人に嫌われると思い込むものです。そのため形成外科などを訪れて手術を希望する場合もあります。
スピーチ恐怖症
仕事をもつ男性に多く、最近は女性にも増えています。会議などでの発言中に緊張しての失敗を契機に、同じ場面になると、また緊張して失敗するのではないかと予期不安が強くなり、その場面を回避したりするようになります。大学生がゼミの発表を機会になったり、スピーチの得意なはずの社長さんが、社長会での失敗をきっかけにスピーチ恐怖症になったりした例もあります。また、会社で部下の前で電話するときに声がふるえて恥ずかしい思いをして、電話恐怖症になった例もあります。
サークル恐怖症
女性、特に主婦に多い神経症です。たとえば小学校のPTA集会や趣味のサークルで、自己紹介の時に緊張して発言に失敗、それから、これでは皆の仲間に入れない、行っても恥をかくだけだとの思いが強くなり、集会やサークルに参加できなくなる、行っても緊張して発言できない、などの状態に陥ります。
会食恐怖症
若い女性に多い神経症です。人前で緊張して食べられなくなり、それを変に思われるのではないかとさらに緊張してしまうという症状です。恋人や婚約者など自分にとって大切な人の前で症状が強くなり、会食場面を避けてしまう、相手の家族に紹介されても、食事が怖くて家に行けないなど、重要な場面が特に困難となります。またのどがつまったようで、固形物が食べられない、スプーンやナイフが緊張してふるえてしまう、など身体の緊張症状がみられる場合もあります。
排尿恐怖
男子の公衆トイレで、人と並んで、あるいは後ろに並ばれるとおしっこが出なくなるもの。
表情恐怖
「自分が暗い表情をしているのではないか。明るい表情をしていなければいけない」と道を歩く時や電車に乗っているときに、自分の表情に違和感を感じ、それがきっかけで自分の表情が気になって、人前で話す時に緊張するようになりました。
薄毛恐怖
自分の髪が薄いのではないかとの不安を感じ、会話中に自分の髪の毛を見られているのではないか、相手の視線が髪にいっているのではないかとの恐れから、会話が苦痛になったり、緊張するというものです。
特徴
対人恐怖症は日本人に多い病気、日本では最もポピュラーな神経症です。しかし、アメリカやイギリスには対人恐怖症という病名自体が存在しません。他人に自分がどう見られているかにこだわりすぎる病気です。自分の表情が、視線が、動作が人の目にどう映っているか、それを意識しすぎることから対人恐怖は始まります。赤面、手のふるえ、表情のこわばりなどを心配したり、他人の視線や他人の存在そのものを恐れることが対人恐怖症の症状です。農耕民族を祖先に持つ私たち日本人は、隣近所との付き合いを重視する風土の元で、人と同じように考え、行動しなければならないという習慣が生まれながらにして、備わっているのかもしれません。目立てば人から変に思われるのではないかという不安があり、目立つことの良さより悪さの方が意識され、目立つことについての意識過剰から、対人恐怖症が日本人に起こりやすくなります。
恐怖症になりやすいタイプ
・自意識が人並み以上に強い人
・気遣いがある人
・何事にも慎重な人
・他人に何らかの判断をされることを極度に恐れる
・人前で恥をかいたりきまりが悪い思いをすることを極度に恐れ
診断
国際的診断分類(DSM−V、ICD−10)
社会恐怖として分類されるようになりました。
治療
薬物療法
外来では,少量のベンゾジアゼピン系抗不安薬を与えながら,悪い自己イメージを是正していきます。短期間に憎悪・軽快を繰り返すケースには,クロミプラミンが有効です。人前での緊張が余りにも強いケースには,プロプラノロールの投与が行なわれます。関係妄想の際立つケースには,向精神病薬も時に使用します。しかしこれら薬物の効力に期待しすぎないようにし,精神発達への配慮が大切です。
カウンセリング
自分を十分に表現し、自信を持って現実の人間関係をこなしていく。
こころの持ちよう
・他人を気にすることは誰にでもあります。誰でも気にすることなら、気にしていることを気にしても仕方のないことです。そう開き直れれば治ったのと同じことです。
・思春期的な問題を背景にしているので、30歳くらいになるまでには、自然によくなることが多い
・さまざま人間関係を経験していくうちに人への警戒心が薄れ、同時に、自意識も弱まっていく
・「人前では自分かくあるべし」へのこだわり、とらわれがとれると症状は急速に改善する例が多い
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