心身症の続き
過敏性腸症候群
殆どの動物は強いストレスを加えると糞を排泄する習慣を生理的に持っているのです。人間が、社会生活の中で強いストレスを受けた場合、腸管の緊張を高める方向に作用し、急性下痢や痙攣性便秘につながります。したがって、過敏性腸症候群の特徴のひとつは、ストレスの無い夜間睡眠中には腹痛や便意は殆ど生じないということがあげられていますから、夜間に腹痛で目が醒める場合は他の病気である可能性が高いでしょう。
過敏性腸症候群の分類
過敏性腸症候群は、心理との関係で以下のように分類されます。
@神経症タイプ=身体的要因より心理的要因が強い
このタイプは、実際に便通異常がそれほど客観的に認められないのに、便秘や下痢に強くこだわり、過敏性腸症候群というより腹部神経症や心気神経症と表現されるべきものです。
A心身症タイプ=心理的・身体的要因ともに強い
このタイプが本来の過敏性腸症候群と言えるものあり、便通異常をきたしやすい体質的要因に心理的な刺激が加味されることにより、病態が悪化します。心理・身体の2要因が複雑に絡み合い心身の交互作用により悪循環的に症状が持続します。
B身体因
このタイプは、元々腸管が刺激されやすく、冷たい飲料や身体的疲労により、容易に便通異常を招きます。心理的な関与もある程度認められますが、それ以外の様々な身体的、物理的要因により症状が変動します。神経症的なパーソナリティは認めない場合が多い。
過敏性腸症候群は症状から、以下のように大別されます。
@下痢型=急性の下痢と、しぶり腹をきたす
A下痢便秘交替型=下痢と便秘を交互に繰り返す。
B便秘型=老年者の弛緩性便秘と異なる痙攣性便秘である。
Cガス型=頻回に放屁(ガス)が出る。呑気症との鑑別が大事。
D粘液疝痛型=腹痛を伴って粘液状の便が出る。この型はまれである。
特に、下痢型とガス型では、症状の出現を恐れて、登校や出社、外出が制限されるという事態が生じ、トイレのない場所へ行くことを極度に恐れます。
治療
治療の基本は、他の心身症同様に心のリラクゼーションと安定なのです。心理・身体両面からのアプローチが過敏性腸症候群では大切です。治療目標は、とりあえず薬剤などの力も拝借して症状をセルフコントロールしながら社会生活を維持できる状態に持っていくこと。
1)どのような食物が症状増悪につながるか自己記録も大切。さらに過敏性腸症候群と思っていても、実は食物アレルギーによる胃腸症状という別の病気だったという場合もある。
2)規則正しい排便習慣を心がける。朝食後に排便訓練を行うのが理想的です。便意があってもなくてもとりあえず便器に坐って、3〜5分程度腹圧をかけてみる。
3)朝の通勤・通学時間帯の便意に対しては、薬の力を借りて通勤・通学を続けてます。薬物は外出の30分前に頓用で、気分を和らげるための精神安定剤と腸管運動抑制剤を用います。生活の内省や背後のストレス対策はその後じっくり時間をかけて行います。
4)職場・学校・家庭などでのストレス状況の解消する。
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心因性嘔吐
心因性嘔吐には、不安を引き起こした,驚いた,またある意味で“不愉快”になったと感じたような状況で,自己誘発的にあるいは不随意に起こる。
吐き気が主体で嘔吐を殆ど伴わないもの、激しい嘔吐が頻繁に繰り返され点滴をしながら1日中寝込まねばならない重症のもの、治療中に摂食障害(拒食症・過食症)へと移行していくものなど何種類かの病態が含まれ、ひとつの疾患単位というより症候群としてとらえるべきである。一般に、症状は日によって大きく変動する。症状のため職場や学校へ行けない日と殆ど症状のない日が、不規則に繰り返されやすい。また元来、乗り物に酔いやすい、風邪や発熱時に吐きやすいという体質の人に起こりやすい。
発生要因として、職場、学校、家庭などで本人にとっていやな現実が生じ、それを契機に原因不明の吐き気や嘔吐が生じてくる場合が多い。ただしそのいやな状況を周囲どころか、本人自身すら自覚されない場合も多いようである。身体症状が前面に表現されることによって心理的課題を敢えて気づかずにすむ、という心身の力動的なカラクリが背後にあるわけです。身体症状と心理的要素の関連に気づくことを、「心身相関の気づき」と言いいます。この気づきは、本来「悩み」として抱えるべき問題を「心」の側が受容できる態勢が整わないと、なかなか促進されません。つまり、ストレスを心が自覚できなくても、身体が正直に反応し症状化しているということになります。心の問題を身体症状に置き換えて表現されることを「身体化」とも言いますが、嘔吐は文字通り「受け入れがたい現実を、身をもって吐き出す」現象であると、精神分析的な解釈もなされるわけです。
治療
「異常はありません」や「問題は感情的なものですよ」というコメントは避けるべきである。病因がどうであれ,患者が苦痛を感じている点が大事で,その症状を和らげる方向で治療を進める。短期間の症状の緩和に制吐薬を試してもよい。長期間にわたる扱い方としては,患者を援助するために定期的に外来に来させて,その間に患者が背景となる問題を解決するような手助けをする。
薬物療法
重症の場合は、入院治療が必要です。
心理療法
どのような生活のエピソードや変化で発症したか、病気の経過中に症状が軽快した原因は何だったか、経過中に症状が増悪した場合の原因は何だったかを把握する。症状と環境の相互作用が見えてくれば、症状を軽減させるために、日常の何を回避し、何を大切にすべきかという事柄が見えてきます。職場での人間関係、夫婦関係、家庭環境、嫁姑の問題、恋愛関係などの問題が要因して浮かんでくる事が多い。
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痙性斜頸
首や肩の筋肉が自分の意思に関係なく収縮し、顎がどちらかの肩に引きつけられて不自然な姿勢を示してしまう病気です。
発症の原因はまだわかっていません。遺伝、薬物、他の病気などの原因を特定できる場合もありますが、多くは原因不明で発症します。また、精神的ストレスや疲労が症状を悪化させ、横になると症状が軽快するというのが一般的です。痙性斜頸の患者さんは、首や肩に痛みを伴っていることが多いのですが、肩こり体操のような運動も、逆効果になることがありますので注意が必要です。
早期の治療が重要です。痙性斜頸では、ときに自然に治る患者さんもありますが、その多くは若く病歴が短い(発症後1年以内の)患者さんです。一般には徐々に症状が悪化し、ある段階で進行が止まるというケースが多いとされています。痙性斜頸では、発症後時間が経過するにつれて筋肉や周囲の組織がだんだん固くなり、機能が損なわれていくことがあります。そのような状態になると、治療の効果が得られにくくなりますので、できるだけ早期に適切な治療を受けることが重要です。
痙性斜頸は、30歳代から50歳代に発症することが多く、80%以上が50歳以前に発症します。また、海外とは異なり、日本では男性の方が多いといわれています。
治療
手術療法
首や肩の筋肉を支配している運動神経を切断する方法
薬物療法
抗コリン作用薬やベンゾジアゼピン(特にクロナゼパム)、筋肉弛緩薬,三環系抗うつ薬が試みられていますが、効果は十分でないことが多いのが現状です。
バイオフィードバック療法
筋肉の運動を音に変換する機械や鏡などを使って、首や肩の位置を正常に保つように訓練する方法です。比較的症状が軽い場合や精神的な要因が強い場合に効果があるといわれています。
マッサージ
痙縮の頭部回旋と同じ側のアゴに軽微な触圧を加えるマッサージ行う。
MAB(Muscle Afferent Block)療法
麻酔薬と少量のエタノールを筋肉内に注射する方法で、初回の注射では短時間しか効果が持続しませんが、注射を繰り返すことにより、徐々に持続時間が長くなり、10回程度の注射で持続的な効果が得られる場合が多いとされています。
ボツリヌストキシン療法
収縮している首や肩の筋肉にボツリヌストキシン(商品名ボトックス)を注射し、筋肉を弛緩させることによって、痙性斜頸の症状を抑える治療方法です。ボトックスを患部に筋注すると、末梢神経から筋肉への神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を抑え、異常なねじれやそれに伴う頸部の痛みを抑えることが出来るという。患者のおよそ70%において1〜3カ月の間に頭部の位置を改善し,疼痛性の筋痙縮を軽減している。
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