拓郎日記(2話)
★拓郎日記★
(2話)

拓郎は久しぶりに2丁目に出てきた。健司から一人では出るなと、強く
言われてきたにもかかわらず、半年と我慢が出来なかった。
「ア〜ラ タクちゃん 久しぶり、あんたも男が出来たからって
全然ご無沙汰
なんて 随分イケズじゃな〜い」
とマスターが水割りを作りながら言った。
半年ぶりに聞くオネエ言葉は妙に新鮮だった。
「主婦よ・・・主婦・・・おとなしく主婦してたのよ・・・」
久しぶりに話すオネエ言葉で、拓郎は半年前の誰からも束縛されない
自由な自分に戻れた気がした。
もう一度そんな自分に戻りたかった。
「あたしんとこ電話入ったのよ〜掛けてきて〜」
そんな調子で健司から引いてもらった。電話番号を教えた。
 その後、拓郎は2軒目の店で30代半ばの男と知り会い、セックスをした。
初めての浮気だった。

 朝、拓郎は新宿5丁目の連れ込み旅館で男と別れて新宿駅まで歩いた。
新宿中央口コンコースは通勤のサラリーマンや学生が先を急いでいた。
そんなラッシュアワーを逆流するかのように拓郎は疲れ切った顔で
高円寺のアパートまで帰った。

 部屋の鍵を開けると、小さなテーブルの上に紙袋が置いてあった。
その下にはメモ用紙があった。それは健司の文字だった。
「何度も電話しても出なかったので、心配して来ました。どこに行ってるの
ですか?
冷蔵庫にジュースを入れて置きました。勝手に上がり込んで、ゴメン。
健司」
紙袋の中には、カップラーメンとパンがいくつか入っていた。
 その日、拓郎は連絡も入れずにアルバイトを無断欠勤した。
 湿った万年床の上でゴロゴロしていた。映りの悪いテレビでベルトクイズQ
&Qを
見ていた。しかしアパートの横を中央線が通過するたびにテレビの映りは更
に悪くなるので、
拓郎はテレビを消して、横になりそのまま寝てしまった。

 突然、電話のベルで目が覚めた。窓の向こうはうっすらと暗くなっていた。
拓郎は受話器を取ると、突然「お前、昨日はどこ行ってたんだ」のっけから
怒鳴り声の様な
感じで健司に問い詰められた。
「大学時代の友達と友達と飲んでいて・・・結局、終電逃がして泊まっちゃ
った・・・悪い!!!」
拓郎は上手にごまかした。
「電話くらいしてくれよ、俺、心配して、お前の部屋まで行っちゃったよ
まだ仕事中だから
後から電話するなっ」と健司は騙された事も気付かないまま電話を切った。

 西の窓から夕日がさし込んだ、拓郎は部屋の暗さに気付き、裸電球を付けた
。
黄色い光がどんよりと四畳半の部屋を灯した。
 拓郎はパンの残りを水道の水とで流し込む様に食べた。
 夕方になると、中央線の本数も多くなり通過するたびに部屋が子刻みに揺れ
た。
 拓郎は高円寺のパル商店街を通り銭湯に向かった。

 銭湯から戻ると すぐ電話のベルが鳴った。
「もしもし拓郎・・・俺、誠だけれども、今夜飲みに出ない、直樹も来るっ
て」
その電話は昨晩番号を教えた友達からの電話だった。
「う・・・うん、いいけれども・・・」
拓郎は健司の事が気がかりだった。
「何、その気乗りしない返事は、拓郎が来ないと主役がいないんだから
今夜9時にベースで待ってるから。。。遅れないでよっ」
誠からの強引の誘いの電話は切れた。
 拓郎は夜の健司からの電話が掛かって来る事が気が気でなかった。
また今晩も留守では弁解のしようが無い。ふらふらと夜遊びしている事が
ばれるのも時間の問題だ。
 8時を少し過ぎた頃、ベルが鳴った。
「もしもし、健司だけれども、今日残業で帰りが遅くなりそうなんだ、
夜11時頃また電話するよ・・・」
・・週末と言うのに、仕事、仕事で健司は時間を作ってくれない・・
俺はいつも孤独だっ・・付きあっているのに・・・仕事が俺より大切か・・
・
健司は・・・・
拓郎は迷っていた新宿に出る事に、更に拍車をかけた。
健司からのいつも一方的な電話に拓郎もうんざりしていた。
「ど〜せ、健司だって俺のカラダ目当てさ・・・」

「拓郎・・・遅いじゃ〜ん」
煙草の煙の向こうに誠の顔が見えた。。。
拓郎は誠と直樹の間に座らされた。
「アラッ!タクちゃん、連ちゃんなんて珍しいじゃない、男に振られたのか
しら?
タクちゃんだったら大丈夫、いいのくっつけてあげるわよっ!」
いつもの調子でマスターが水割りを作りながら言った。

 1時間もすると拓郎の前には他のお客からの色気の水割りが並んで、誠と直
樹を
凄ませた。もともと2人も色気で拓郎に近づいてきたのだった。

 時計を見ると、1時を過ぎていた。終電もなくなっている事に気付いた。

 そんな時、直樹が「ねえ〜大久保にある秘密クラブに行ってみない?」
「秘密クラブ」初めて聞く言葉に拓郎は身を乗り出して聞き返した。
「知らないの?職安通りにある、秘密クラブ」直樹が自慢げに話続けた。
「マンションの1室なんだけれども、ホモの人が裸で集まっていて、乱交し
ている
場所さっ・・・泊まる事も出来るし、やろうと思えばバンバン出来るし、若
い子だったら
入場料も安いし行ってみない??」

 拓郎はタクシーで高円寺に帰るよりもそこに泊まった方が安い事を理由とし
て
そこに向かった。。。。

3話に続く

「続き」:




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