
この作品は4つの物語で構成されている。古代バビロニアの滅亡、キリストの処刑、聖バルテルミーの虐殺、そして現代(といっても本作が製作された頃の話であるが)。以上4つの時代、4つの場所で、"不寛容"(原題)がもたらす4つの悲劇が、別々のオムニバス形式で語られるのではなく、並行して、適当にカットバックされながら、同時進行で展開していくのである。
紀元前539年の新バビロニア王国。男まさりの”山の娘”は王子べルシャザルに恋をし、永遠の忠誠を笹う。王子はハーレムにて”最愛の姫”と夢のような日々を過ごしていた。一方、王室のイシュタール神信仰を嫉むべル神の高僧は、外敵ペルシアのキロス2世と密通し、王国の滅亡を謀る。高層に仕える吟遊詩人からそのことを聞いた”山の娘”は王子に知らせるべく…。
紀元前4年のエルサレム。ガリラヤのカナの町で、婚礼の宴の最中にワインを切らして困っている新郎新婦の前に”ナザレの人”と呼ばれる若者が現れ、水をワインに変えた。その後、彼は各地で奇跡を行い、教えを説いたが、これがパリサイ人たちの反感を買い…。
16世紀のパリ。ユグノーの娘ブラウン・アイズは恋人プロスぺルと婚約し、聖バルテルミー祭の日にそれを発表することになっていた。一方、国王シャルル9世の傭兵の一人が彼女に横恋慕し、密かに彼女をわがものにしようと機会を窺っていた。そして、運命の日はやって来た。
今世紀初頭のある西洋の町。人権の向上を目指して団結した進んだ女たちのグループ「17人委員会」があった。彼女たちは活動資金の援助を、大資本家ジェンキンズ氏の妹ミス・メアリー・.ジェンキンズに依頼し、快諾を得る。ジェンキンズ氏のエ場の労働者を父に持つ”かわいい娘”。同じ工場で働く”青年”。おりからの労働争議が、のちにこの若い2人を結び付けることになるが、彼らには思いもよらぬ過酷な運命が待ち受けていた。
(原田雅人)
●ディヴィッド・ワーク・グリフィス…1875年生まれ。アメリカ映画創生期を代表する巨匠。劇壇から映画界に入り、1908年の『ドリーの冒険』で監督デビュー。『イントレランス』で映画史上に金字塔を打ち立てる。194O年没。他に、『国民の創生』『散りゆく花』『べッスリアの女王』
●リリアン・ギッシュ…1896年米オハイオ州生まれ。D・W・グリフィス監督に認められ、彼の多くの作品に出演、スターの座をつかむ。本作では、4つのエピソードを結び付ける〈揺りかごを揺らす女〉をあたかも聖母の如く演じている。
●新バビロニア王国…前625年〜前539年、チグリス=ユーフラテス川流域に栄えた国。首都はバビロン。ネブカトネザル2世のときに最盛期を迎えるが、アケメネス期ぺルシア帝国に滅ぼされる。
●ハンムラビ法典…古バビロニア王国(前19世紀〜前16世紀)のハンムラビ王が編纂した、くさび形文字による成文法。強者から弱者を保護することが原則とされていた。
●パリサイ人…ユダヤ教の戒律主義者。学識はあるが偽善者が多かったため民衆のひんしゅくを買った。彼らが祈っている間は周囲の者は動きを静止しなければならない等、形式のみを重んじ、イエス・キリストの迫害者となった。
●ユグノー…16世紀中頃、宗教改革によってフランスに広まったプロテスタントの一派カルヴィン派の新教徒。カトリック系の旧教徒との対立は、やがてユグノー戦争(1562年〜1598年)を引き起こす。
●聖バルテルミーの虐殺…1572年のフランスで起こった事件。ユグノーの指導者コリニー提督が国王シャルル9世と親しいのを快く思わぬ摂政カトリーヌ・ド・メディチ皇太后は、王の弟アンジュー公と結託、8月24日の聖バルテルミー祭当日、王妹マルグリ一トと新教派のアンリ・ド・ナヴァールの婚礼のためパリに集まった約2千人のユグノーを虐殺した。
16年アメリカ/162分 モノクロ
製作・監督・脚本/D・W・グリフィス
出演/リリアン・ギッシュ