漫歩計の 

「東京漫歩」 第25回 青梅・吉野梅郷

2004年3月13日

 東京の西・奥多摩の玄関口にある青梅市内に、25000本もの梅が咲く里があります。いわば集落全体が梅一色に染まるこの里は、吉野梅郷と呼ばれ、関東有数の梅の名所となっています。今回は都内からちょっと足を伸ばして、この梅の里を訪ねてみました。

 JR中央線から青梅線に入り、青梅駅で奥多摩行きの電車に乗り継いで、日向和田駅で下車します。都内に通勤するのはやや遠いかと思われる距離で、住宅と共に田園と丘陵が広がる奥多摩の入口です。いつもは静かな里なのでしょうが、梅が見ごろの今日は駅も電車も大混雑、駅からは行列さながらに梅見客が続きます。道端には名産品を売る店や臨時のテントの店などが並び、まるでお祭のようです。

 しかし、それよりも驚くのは、この街が本当に梅一色であることです。「吉野梅郷」と言うのは、この地域全体を指す名前で、吉野梅郷と言う名の梅園がある訳ではありませんが、この街に着てみると梅郷と呼ばれる理由がよく分かります。
 駅から、吉野梅郷の中心「梅の公園」に行く道路の街路樹はすべて梅、周囲の道路もすべて梅、そして住宅の庭や商店の敷地内にも梅、梅、梅・・・なのです。それらの梅の木が一斉に紅白の花をつけ、ここぞとばかりに咲き誇る姿は、街全体が一幅の絵のようです。色鮮やかなばかりでなく、ほのかな香りが地域全体に漂うこの街は、まさに「梅郷」と呼ぶにふさわしいと思います。特定の梅園に梅がかたまってあるだけ、というのではなく、とにかく「梅一色の里」なのです。

梅の公園梅の公園

 紅白の梅を愛でながら、10分も歩くと「梅の公園」に着きます。斜面を利用して、1500本の梅が植えられ、遊歩道から眺めると紅・白・ピンクの梅が錦絵のように広がります。
 この公園は、宅地開発に伴い梅生産農家が減少していく中で、「梅の公園を作ってほしい」という地元からの強い要望に基づいて整備されたもので、昭和47年(1972年)の開園以来、今や吉野梅郷のシンボルであり中心施設となっています。梅以外の木はほとんどない、まさに梅の園です。

 しかし、吉野梅郷の梅は25000本(!)もあります。「梅の公園」にたくさん梅の木があると言っても1500本。梅の公園以外にも幾つも「梅園」があり、さらに梅園以外にも、道路にも一般の住宅にももちろん神社やお寺にも、とにかく四方八方梅だらけなのです。地域の方々の、梅にかける並々ならぬ愛着と意気込みを感じます。

満開の紅梅紅・白・ピンクの競演
満開の紅梅
紅・白・ピンクの競演

 梅の公園を出て、いい雰囲気の街を歩きます。あちこちに店が出て、玉こんにゃくを売っていたり、おでんや軽食、お酒、土産物を売っていたりします。しかし、観光地にありがちな雑駁な街ではなく、落ち着いた風情のある地域です。あまり商売気の感じられないところがそう思わせるのかも知れません。また、それよりも何よりも、至るところにある梅の木の数々が、その香りとともに優しい空気を作り出しているのかも知れません。

 この地域には、作家・吉川英治の記念館、青梅きもの博物館などの見どころもあります。日向和田駅から御岳駅あるいは二俣尾駅までのハイキングコースも整備されています。御岳に登ってさらに日の出山を経て吉野梅郷に下る登山コースもあります。人それぞれに思いのままの楽しみ方が出来る、いい里です。
 梅郷の名に恥じない、まさに梅の楽園そのものでした。


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