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漫歩計の 

「東京漫歩」 第31回  葛飾・柴又で寅さんに再会

2004年6月13日

 葛飾・柴又と言えば、日本全国知らぬ人のない「寅さん」のふるさとです。主演の渥美清氏が亡くなったのは1995年、はや10年近く前のことになりますが、今もフーテンの寅さんは色あせることなく生き続けているようです。
 今回は、その葛飾・柴又に「寅さん」を懐かしんで行ってみました。

 京成電鉄の柴又駅で電車を降りたその瞬間から、寅さんの世界が始まります。駅前広場自体がレトロな雰囲気があり、その真ん中に寅さんが立っています。そう、いつもの時代がかったカバンを抱え、帽子をかぶった、あの寅さんです。懐かしいなあ・・・。もちろんカメラを向けて写真に納めます。みんな記念撮影をしています。

 右へ、帝釈天への参道に入ります。もうそこは昔懐かしい時代に戻り、寅さんの世界そのものです。山田洋次監督が、映画の設定にぴったりの場所を求めて東京近郊を探し回ったもののなかなか見つからず、半ばあきらめかかったある日、やっとたどり着いたのがこの柴又だったとか。今や葛飾柴又は日本人の心のふるさとだとも言われるのです。

とらや(第4作までの撮影場所)帝釈天
とらや(第4作までの撮影場所)
帝釈天

 名物の草団子や煎餅を売る店、ウナギの香ばしいかおりを漂わす店、土産物を売る店がずらっと軒を並べ、「男はつらいよ」の映画のシーンがそのまま目の前に広がります。第1作から第4作までの撮影場所となった「とらや」、映画の中の女将のモデルとなったおかみさんが経営する「高木屋老舗」もあります。

 思い起こせば、初めて「男はつらいよ」の映画を見たのは高校生か大学生の頃だったでしょうか。その頃はただ面白い映画だとだけ思っていましたが、自分が学校を卒業し、就職し、家族を持ち、公私ともにいろいろな苦労を重ねて行くにつれ、映画を見ると目頭が熱くなるようなことが増えてきました。人生はまさにいろいろ、楽しいことばかりではありません。自分の思いが叶わず不遇をかこつこともあれば、やり場のない怒りやむなしさに落ち込むこともあります。ペーソス溢れる渥美清の演技にどことなく自分の姿が重なるような、そんな気がするのです。山田洋次・渥美清のコンビによる48作のシリーズは、日本映画史上では不朽の名作だと思うし、いつまでも日本人の心の中に残ることと思うのです。

 帝釈天にお参りし、堂内に入って彫刻ギャラリーを巡ります。このギャラリーは必見です。お堂の外壁に張り巡らされた木彫り彫刻群は、実に素晴らしい出来映えです。1929年(昭和4年)の作で、苦労してケヤキの巨木を集め、当時の有名彫刻家がこぞって制作したのだそうですが、生き生きとした彫刻群は今にも動き出しそうな躍動感を持ち、しばし見入ってしまう迫力を感じさせます。こんな素晴らしい木彫りの彫刻群は、私は今までかつて見たことがありません。時代が新しいので文化財としては指定されていませんが、歴史的な価値を持つ貴重な文化財だと思います。柴又に行かれた方は、これだけは絶対見ておくべきです。
 なお、彫刻ギャラリーとの共通券で、客殿と庭園を拝観できます。私も、美しい庭園を見ながらお茶をいただいて休憩です。

帝釈天の木彫り彫刻江戸川と矢切の渡し
帝釈天の木彫り彫刻
江戸川と矢切の渡し

 帝釈天から右へ出て、山本亭の庭園(大正末期の書院庭園)を通り抜けて、寅さん記念館へ向かいます。
 寅さん記念館は、2003年(平成15年)11月にリニューアルオープンした「寅さんのすべて」を展示する記念館。「男はつらいよ」の世界を13のコーナーに分けて紹介しています。中でも、帝釈天参道のミニチュアや、撮影スタジオ「くるまや」(もとは「とらや」と言った)のセットが現物で展示されている部分では、まるで自分自身が映画の中に登場したかのような錯覚を覚えるほどで、臨場感に溢れています。誰しもここに来れば不思議な懐かしさを感じ、再びあの「男はつらいよ」シリーズの映画を見たくなることでしょう。

 記念館を出て、エレベーターで階上に上がれば、そこは江戸川を一望できる柴又公園。暖かい陽光の中、家族連れが楽しそうに遊んでいます。川岸には、演歌で有名になった矢切の渡しの船着き場があり、対岸へ船で渡ることも出来ます。演歌の暗い世界からはかけ離れた、明るい川べりです。

 帝釈天参道に戻り、とらやと高木屋老舗両方の草団子を賞味し(食べ過ぎ?)、なぜか心が温まったような幸せな気分に浸って、帰途につきました。柴又はぜひまた訪れてみたい、下町情緒を感じさせる街です。

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