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漫歩計の 

「東京漫歩」 第38回  本郷・菊坂あたり

2005年1月15日

 文京区は、史跡の多い街です。中でも、本郷・菊坂近辺は、多数の文人が居を構えた場所として知られ、関東大震災や太平洋戦争などの災禍を経て、現在もなお昔の面影をとどめる街です。
 小雨模様の土曜日、ぶらぶらとその本郷・菊坂あたりを歩いてみました。

 地下鉄南北線の後楽園駅を降りて、東へ向かい、白山通りを渡り、文京区民センター(真砂町市場)の横を入ります。道が登りにかかって左へ曲がるところで、右側の階段を登ります。急な階段です。登りつめて右に曲がると、左へ下る雰囲気のいい坂があります。これが鐙坂(あぶみざか)で、角には言語学者・金田一京助・春彦の旧居があります。
 鐙坂を下り、二つ目の角で右へ曲がると、緩いカーブがくねくねと続く道に出ます。これが菊坂下道と言われる道で、すぐ横の一段高いところに平行して菊坂の中心の道があります。
 このあたりは標高25−30m程度の台地と、その間に形成された谷が複雑に入り組んでいますが、菊坂はいわば谷底に当たる部分で、台地から谷に下る斜面に沿って2本の道が付いているわけです。

鐙坂樋口一葉の旧居
鐙坂
樋口一葉の旧居

 菊坂下道を右(東)へ行くと、「樋口一葉・菊坂旧居跡」という案内板があります。新五千円札の肖像に描かれたあの一葉です。案内板横の細い石畳の路地を入ると、突き当りの階段の前に手押しポンプの付いた井戸がありますが、これも一葉が実際に使っていたものだとか。旧居自体は現在別の方が住まれていて見学は出来ませんが、石畳の路地にポンプの井戸のあるこの路地は、とても現代東京のど真ん中にあるとは思えない風情が感じられます。

 旧居あとを過ぎて、すぐの小道を右へ入ると、またまた階段です。これが炭団坂(たどんざか)と呼ばれる坂で、現在は整備された階段ですが、昔は雨が降るとすぐどろんこになる地道の坂で、転んだ人が炭団のように真っ黒になるから名づけられたのだそうです。それにしても、「炭団」など見たこともない世代には意味が分からないでしょうが、ゆかしい、いい名前ですね。
 炭団坂の上には坪内逍遥の旧居跡があります。この坂の上は見晴らしが良く、周囲の地形がよく分かります。

炭団坂伊勢屋横の路地
炭団坂
伊勢屋横の路地

 坂を登ったあとまっすぐ行けば、右に文京ふるさと歴史館があります。この歴史館は必見。文京区の地形、歴史、文化、史跡などが面白く紹介されています。入場料が100円とはとても思えない充実ぶりです。また、ここで売っている「文京区史跡さんぽ地図」(100円)も、良く出来た便利な地図です。

 歴史館で1時間弱楽しんだあと、真砂図書館横の小道を抜け、本郷小学校の前を左に曲がると、本妙寺坂です。本当にこの付近は坂だらけです。
 坂を下った四つ角をまっすぐ行けば、かつて下宿屋として営業し、谷崎潤一郎や竹久夢二、正宗白鳥ほか多数の文人が住んだ菊屋ホテル跡があります。
 四つ角を左に曲がると、菊坂の中心部です。右に長泉寺があり、菊坂の案内板があります。少し行くと、樋口一葉がしばしば出入りしていたという伊勢屋質店。冬には夏物の着物を、夏には冬物の着物を質入れしていたとか。このあたり、細い細い路地が縦横に走り、本当に明治時代にタイムスリップしたような感じがする場所です。

 雨の中、歩き疲れたので、角の「えちごや」という店で一服。この店も明治10年創業で、ガイドブックにも載る有名な店のようですが、実態は下町の食堂そのもの。気取らない気安さがいいですね。豆大福がとてもおいしかった。

胸突坂本郷館
胸突坂
本郷館

 えちごや前の胸突坂を登り、迷路のような複雑な道を行きます。明治時代そのままのような旅館「鳳明館」や、徳田秋声の居宅があります。明治時代には30数軒もの下宿屋や旅館が軒を連ね、多くの文人たちが住む街だったそうです。この付近は道が入り組んでいるので、名所を見て歩くにはガイドブックや地図が必携かも知れません。

 徳田秋声の居宅前の小道を突き当たり、左に折れると洋風の求道会館があり、さらに行けば左手に明治時代そのままの下宿屋、本郷館があります。100年前に出来た建物ですが今もそのまま下宿屋として使われ、学生たちが住んでいるのです。場所柄から、東大の学生が多いのでしょうか?

 本来はこのあと、東大の本郷キャンパスの中を散歩するつもりでしたが、雨がひどくなってきたのでここで中止。東大の構内も面白いものがたくさんあるのですが、次の機会にとっておきましょう。
 本郷・菊坂あたりは、雰囲気のいい坂がたくさんあり、随所に明治の面影が残る、楽しい街です。またいつか、天気のいい日にゆっくり歩いてみたいものです。

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