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「東京漫歩」 第45回 小金井・江戸東京たてもの園

2005年6月5日

 梅雨も間近、連日雲の多い湿っぽい天気が続いています。今日も雷雨の予報が出ていて山は諦め、以前から行ってみたかった江戸東京たてもの園に行くことにしました。両国にある江戸東京博物館の分館で、武蔵野の小金井公園内に1993年に建設されたものです。

 JR中央線武蔵小金井駅からバスに乗り、公園西口で下車。都立小金井公園に入ります。西武新宿線の花小金井駅からでも行くことが出来ます。
 小金井公園は東西が約2kmに及ぶ広大な敷地に森や芝生広場が広がり、開放的な明るい公園です。見事な桜の並木道があって、春には素晴らしいお花見が出来ることでしょう。また、ジョギングや散歩にも最適。面積は77ヘクタールもあって、日比谷公園の4.7倍、上野公園の1.4倍にもなるのだそうです。川や水辺が少なく少し潤いに乏しい感じはしますが、森は豊かで、緑に中に浸るには充分です。
 江戸東京たてもの園は公園の北西部分に設置されています。

小金井公園たてもの園・三井邸
小金井公園
たてもの園・三井邸

 江戸東京たてもの園は、現地保存が困難な歴史的建造物を移築・保存して、貴重な文化遺産を次世代に残すために建設されたもので、30軒近い建物とこれまた30件ほどの屋外展示物があります。構内は7ヘクタールの広さを持ち、レトロバスも走っています。京都市の市電も展示されていました。
 建物は実にさまざまで、江戸時代の農家もあれば、二・二六事件で有名な高橋是清邸、財閥・三井家の家などの豪邸もあります。江戸から明治、新しい物では昭和中期まで、時期もいろいろ、様式も和風・洋風や和洋折衷と色とりどり。大正初期には珍しかった洋風の田園調布の家もあります。いつの時代も家というものは暮らしの原点であり、その時代の文化そのものと言えるでしょう。

 エントランス広場から、左回りに建物を見学し、北側の樹林ゾーンに入ります。高木が茂って気持ちのいい空間です。樹林には遊歩道が設けられており、古墳(一部はレプリカ)や縄文・弥生期の住居跡、供養塔などを見ながら歩くようになっています。

レトロバスも走る「子宝湯」
レトロバスも走る
「子宝湯」

 やがて右に高橋是清邸(内部には喫茶もある)が見える広場に出ますが、ここで左の小道に入り、野草ゾーンを通って、東側の建物群に出ます。この一角は街区全体がレトロな雰囲気になるように配置されていて、銭湯(子宝湯)、居酒屋、醤油店、仕立屋、文具店(三省堂)、荒物屋などが街を形作っていて、まるで明治か大正時代にタイムスリップしたような感じのする、楽しい場所です。特に銭湯は必見。

 「下町中通り」と名付けられた雰囲気のいい通りを南に下って、市電の置かれた広場へ。昔風の交番もあります。ここがレトロバスの発着所になっているようです。
 武蔵野の森と湧水を思い起こさせるような小川の流れる庭園があり、伊達家の門を左に見て、茶室の前を通り、先ほど通った高橋是清邸に戻って来ました。ここで、中の喫茶で休憩することにしました。
 喫茶室には邸宅の南面の広間が充てられ、庭を見ながら休憩できます。客はレトロな電話を使って注文を伝えるという方式。この家は港区赤坂から移築したものですが、実際に1936年(昭和11年)2月26日に、この邸宅で凄惨な事件が起こったのです。今の平和を感謝すると共に、時の流れを感じました。

レトロな街並み
レトロな街並み

 エントランス広場に戻り、園外へ出ます。この出入口の建物も歴史的建造物で、第二次大戦中(1940年)に戦意高揚の記念式典のために使われた建物だそうです。当時は国粋主義の時代で、「紀元2600年」を祝う式典だったとか。歴史的に全く根拠のない(と言うかでたらめの)「紀元」を国民に押しつけていたのですね。これも時を感じます。

 再び広い小金井公園の中を散歩します。家族連れや若者同士のグループなど、多くの人々がのんびり遊んでいます。この公園は桜で有名なほか、広大な雑木林、子供の広場、弓道場、サイクリングコース、テニスコート・野球場、それにバーベキュー広場もあります。駐車場も700台あって足の便も良いので、多くの人が訪れるようです。

 この公園の前身は、先刻触れた「紀元2600年記念事業」で計画された小金井大緑地。戦後の農地解放により面積はもとの60%になったものの、1954年に公園として一般開放。もともとのきっかけは軍国主義のもとで、国粋主義の鼓舞という狙いによるものだったのが、今は都会の貴重なオアシスとして市民に親しまれているのですから、皮肉なものです。

 6月ということでもう歩くと汗が出ます。もうすぐ梅雨、そして梅雨が明ければ夏本番。自然の悠久の歩みのように、いつの世も平和であってほしいものです。

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