
ギースと対等になるために。俺はどうしても名を揚げる必要があった。今
ではあいつは、ちょっとした英雄扱いだ。俺は悔しかった。何としても、あ
いつと同じ高みに上りたかった。
そして俺の知る限りで、その方法がひとつだけ存在した。
「不死の護符」を手に入れることだ。
卑しくも戦争で飯を食っているものならば、その名を知らぬものはないだ
ろう。強力な魔力を持ったこの護符は、手にした者に不死身の肉体を与える
力を有している。六百年程前、無敵の戦士としてその名を世界中に轟かせた
伝説の剣闘士が、高名な死霊使いに造らせたと言われている。剣闘士はそれ
以後、どれ程の傷を受けても命を落とさず、実に三百年に渡ってあらゆる戦
争に参加し続けたと、歴史書には記されている。
その後剣闘士は「不死王」を名乗り、バルメキア南部に聳える氷穴山脈に
迷宮を築き、今も暮らしているというのが専らの噂だ。事実護符を我が物と
し、不死身の肉体を得ようと目論んだ多くの戦士達がその迷宮に向かったが、
誰一人として生還する者はなかった。数年前にはバルメキア王が、噂の真偽
を確かめる為に軍隊を迷宮へと差し向けたが(無論バルメキア王も、不死の
肉体を欲していたのだ)生還した者は十名に満たず、護符を持ち帰ることも
無かった。生き残った兵士達の証言によれば、迷宮内は屍鬼の巣穴になって
おり、おびただしい数の生ける屍達が徘徊しているとの事だった。
俺はこの護符に自分を賭けてみることにした。迷宮に巣食う無数の屍鬼共
は、恐らく護符を求めて迷宮に入った戦士たちの成れの果ての姿だろう。
「不死の護符」は、死霊使いの邪悪な儀式によって産み出されたものだ。不
死生物と何らかの関係があっても不自然な話ではない。大量の屍鬼が迷宮内
を徘徊しているという事実は、護符が迷宮に存在してることを裏付けている、
と俺は判断した。
無論これは推測に過ぎない。そんなあやふやなものに命を賭けるなんて、
馬鹿げているのかもしれない。だが、俺はもう傭兵を続ける気がないのだ。
このまま傭兵を続けていては、ギースと対等になることなどできない。あい
つと気兼ねなく付き合う為には、自分を高みへと引き上げてくれる「何か」
がどうしても必要なのだ。俺の考え付く限り「不死の護符」以上にふさわし
いものは無い。あれを手にすれば、俺は戦士としての絶大な名声を手にする
だろう。
「不死の護符」は、あらゆる戦を生業にする者にとっての憧れである。
それだけは、揺ぎ無い事実だった。
だから俺は、「不死王の迷宮」へと出向いたのだった。