エピローグ

「お疲れですぅ、姉さぁん。」
 きゃぴきゃぴした黄色い声が、廊下いっぱいに響き渡る。
「あいよ。」足早に駆けていく新入り達にジョアンナが答えた。
 娼館を出ると、朝日が街を照らし始めていた。
 やわらかな日差し。地面から新緑が芽を覗かせている
 春の予感をひしひしと感じる。
 ジョアンナは早朝の空気を思いっきり吸い込んだ。
「ぷはあ――――、今日もよく働いたわぁ。」
 彼女は両手を上げて、大きく伸びをした。
「お疲れ様です。ジョアンナ姉さん」
 後から出てきたベッキーが、ジョアンナに声を掛けた。一年前は新参者だっ
たこの娘も、今では立派な稼ぎ頭である。
「お疲れ、ベッキー。」
 深呼吸を終えたジョアンナが返した。

 寮まで続いている街の大通りを、二人は並んで歩いていた。
「まだ心残りなんですか、リュークさんのこと…」
 ベッキーが口を開く。
「ん―――――。なんだろうねぇ」
 はぐらかすように、ジョアンナが答える。
「ギースさん、まだ待ってるらしいじゃないですか。可哀想ですよ。」
「ん。。」ジョアンナは、ばつが悪そうにしている。
「どうしてなんですか?もう死んでしまった人のことをそんなに…ジョアンナ
さんらしくないですよ。」
 ベッキーは真剣な眼差しをジョアンナに向けている。
「まだ死んじゃいないよ。」
 ジョアンナはきっぱりと、落ち着いた口調でそう言った。
「でも…」
「わかるんだ。なんとなくね」ジョアンナはベッキーの方を向くことなく、真
っ直ぐと前を見ている。
「リュークは必ず帰ってくる。そんでウチの店にやって来て、あたしを指名す
る。そん時あたしがいなかったら、あいつ、困るだろうからさ。」
 ベッキーはもう何も言えず、ジョアンナの話をただ聞いていた。
「それに、信じてるからね。」ジョアンナが続ける。
「何を…ですか?」
 朝日がゆっくりと空を昇っていき、二人の住む街並みを明るく照らし出して
いった。起き出した街の人々が、大通りを行き交いし始めている。

 歩きながらジョアンナはベッキーの方を向いた
 そして何も言わず、にっこりと微笑んだ。

                完