
甲野善紀『古武術に学ぶ身体操法』岩波アクティブ新書
ひねらない、うねらない、ためない。西洋と出会う前の日本人の身体の動かし方を生かす。
走っていて、方向を90度変えるとする。ふつうは腰をひねって向きを変える。そのとき腕や脚を振り出す反動を使うかもしれない。西洋的な身体・操法では、ためとひねりを使う。しかし、甲野さんはそれは違う、という。
たとえば、大きな魚が小魚の群れを追って、向きを変えるときに、西洋的な動きを使っているかもしれない。ところが追われた魚の群れは、それぞれの小さな魚がいっせいに向きを変える。そのため、群れ全体の動きは、変幻自在となって、追う魚を幻惑する。
同じ動きが、ありうるというのだ。つまり、身体の各部がそれぞれ小さな魚のように、そこで向きを変える。体の各部がいっせいに動き始めるので、はるかに素早い動きができるのだという。
(走っていて90度向きを変えるときに、腕で反動を作り、腰をひねって向きを変えるのではなく、右膝の力を抜いて曲げ、体を右斜め下に落とすようにして曲がるきっかけを作ると、らくに曲がることができるという)
巨人のピッチャー、桑田真澄が、この方法を取り入れて、復活を遂げたのだという。ボールを投げるときに、体を鞭のようにしならせて、大腿部から腰の筋肉の力をボールに伝えるのがふつうだが、桑田はその投げ方を捨てた。まるで球を置きに行くかのように、腕で投げているように見える。一見、威力のなさそうな球だが、今までの投げ方よりも多くのバットを折っているのだそうだ。
普通の投げ方だと、足が大きく前に踏み出され、腰が追随し、ついで上体が前に倒れて、最後に腕が振り抜かれて、球が投げられるというように、動きが一連のうねりとなっている。そのため、打者からみると、タイミングがとりやすい。桑田のためない、うねらない投げ方ではタイミングが取りにくく、そのためスイートスポットを外して打つことになり、バットが折れてしまうのだという。
甲野善紀のいう『体が割れる』という難解な言葉は、一連の動きの連なりによる運動ではなく、一斉の動きによる運動を指すらしい。
とにかく今の常識に反する体の動きなので、なんだかよく分からないのだが、面白いことはたしかだ。なにしろ、マイケル・ジョーダンの動きには、この割れた動きがあるらしいのだ。
この甲野善紀の身体操法を取り入れて、成果が上がったのが、桐朋高校バスケットチームである。この進学校のバスケット部は、走り方、投げ方を変えて、パス中心のスピーディなバスケットを試み、弱小チームから変身、今では全国大会に出場するまでになっている。
ネットでいろいろ検索してみたら、次のようなサイトがあった。面白いのでリンクしておく。桑田投手については、新聞記事の特集がいくつかあった。こちらは有料サイト中心なので、検索は各自されたい。
の中の、『桐朋高校 金田伸夫先生の日記 Vol.1 』に始まる一連の日記に、桐朋高校でどのように甲野操法が取り入れられていったかが理解できる。
さいごに、
甲野善紀氏のページである。