不安障害
- 全般性不安障害
- 従来「不安神経症」とひとくくりにされていたものを2つに分けて、慢性的な不安に悩まされているなら「全般性不安障害」、急な不安発作を繰り返すなら「パニック障害」と診断されるようになりました。
全般性不安障害には急な不安発作はありませんが、常に不安な気分、身体的な不安症状が消えません。しかも、自分でもどうしょうもないほど強い不安感にさいなまれるのです。
ほとんどの場合、ほかの疾患と合併して起こり、とくに心身症、パニック障害、うつ病などと一緒に起こる事が多いと言えます。
診断基準
自分でもコントロールできないほど強い不安や心配が原因で、6ヶ月以上、日常生活にさしさわりが出ていること。また、細かい症状としては、次の6つのうち、3つ以上が当てはまります。
- 落ち着きのなさ、緊張感や過敏。
- 疲れやすい。
- 集中力の低下。
- ちょっとした事にひどく驚くなど、刺激に反応しやすい(易刺激性)。;
- 筋肉の緊張。
- 睡眠障害。
治療
心理療法では「力動精神療法」を用い、根本的な解決をはかるため、無意識に存在している“不安の根源”を探り当て、それをコントロールする事を学びます。「認知行動療法」も用いられます。
薬物療法では抗不安薬、交感神経遮断剤であるβブロッカー、ケースによっては抗うつ剤やSSRIなどが効果があります。
- パニック障害(PD)
- パニック発作を繰り返し起こす精神障害。パニック発作の頻度と強度はさまざまです。数ヶ月間、中等度の発作が頻回に続いたり、短期間(例えば1週間)、
毎日頻回の発作が起こったりした後に、次の発作まで何ヶ月も間があくことも稀ではありません。また、広場恐怖を有する事もあります。
診断基準
次の13項目のうち、4つ以上が同時に起こればパニック発作と呼びます。
- 動悸、心気こう進。
- 発汗。特に手に汗をかくことが多い。
- 身体の震え。手の震えが一番多い。
- 息切れ、息苦しさ。
- 窒息しそうな感覚。
- 胸の痛み、または胸部の不快感。
- 吐き気、または腹部の不快感。
- めまい、または気が遠くなる感じ。
- 現実感がなくなる、または離人症状。
- 「このまま気が狂うのではないか」という恐怖感。
- 「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖感。
- 皮膚の異常感覚がある。たとえば感覚麻痺、ズキズキする、違和感があるなど。
- 身体全体の皮膚が冷たいか、熱い感じがする。「冷たい感じ」という場合がやや多い。
治療
薬物療法は、日本ではまず抗不安薬が使われるのが一般的です。さらにβブロッカーや抗うつ剤のクロミプラミン(アナフラニール)
などを加えると、だいたいおさまる事が多いと言えます。
心理療法では,[認知療法」によって、ストレスの原因になるものに対していつの間にか身に付けた“ゆがんだ考え方”を見つけ出し、修正する事を目指します。
そしてある程度、発作の回数が減ってきたら、あえて外へ出て行き、電車に乗ったりデパートへ行ったりといったトレーニングが必要です。
- 特定の恐怖症
- 自分が苦手な場面にでくわすと、恐怖を感じパニック発作のような症状が出現します。
広場恐怖や特定の恐怖症はパニック発作がきっかけとなる事が多く、社会恐怖は思春期に多くあらわれます。
日本人に特有とされている対人恐怖は、学校や職場での些細な出来事がきっかけで起こり、周囲の人に苦しさを訴える事もないまま「引きこもり」のような重症例に
発展する事があります。
- ひじょうに広いところ(広場恐怖)
- エレベーターや電車、バス、密室など閉ざされた空間(閉所恐怖)
- ビルの屋上や飛行機などの高いところ(高所恐怖)
- 会議や大勢の前で発表するなどの状況(社会恐怖)
- 人と付き合うこと(対人恐怖)
- その他、嫌いな動物や昆虫をみたり、注射や血を見たりすること。
- このような場合、多くの人は、多少緊張したりするものですが、恐怖症の人の場合は、症状が強く、日常生活に支障をもたらします。
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- 外に出ると、激しい動悸、息切れ、胸の痛み、手の震え、めまいなどに襲われ皮膚が冷たくなったりします。
広場恐怖の患者は外に出るときに誰かが一緒にいないと、不安で出られないことが多いです。
「逃げられない場所にいると考え、激しい恐怖に襲われる」と感じます。(バス・地下鉄・橋の上・トンネルなど)
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閉所恐怖
- 会議をしようにも、会議室のドアを閉めてしまうと不安でたまらなくなったり、そっと自分で開けに行ったり、飛行機に乗ることが出来ない、
電車に乗ることが出来ないほど、日常生活でさまざまな不便が生じてきます。
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高所恐怖
- 遊園地などに行っても、ジェットコースターなどに乗ることが出来ず、また乗らなくてはならない状況になると、パニック発作のような症状を起こす事があります。
小さいときに階段から落ちて怖い思いをしたなどと原因がはっきりしている場合もあります。
- 対人恐怖
- 特に日本人に多い不安障害。青年期において自覚される事が非常に多いです。
「あらゆる人に恐怖を感じる」というよりもむしろ、「少し知っているが、深くは知らない」というあいまいな人間関係の相手に対して抱きます。
診断基準
特に作られていません。
(対人恐怖のほとんどが日本人にしか見られないものなので、DSM-Wでは診断基準が記されていません。)
治療
フルフェナジン(フルメジン)など軽い抗精神病薬を使うこともありますが、むしろ集団生活に慣れること、
グループでディスカッションするすることなどがとても大きな役割を果たします。そして、一人でも友達が得られれば、自然に対人恐怖は解消していくものです。
日本人は多かれ少なかれ対人恐怖の傾向をもっているものです。患者は自分だけでないと勇気づけられることによって、治そうという意欲も湧いてきます。
- 社会恐怖
- 他人の視線が気になるあまり、人前で話をしたり、いっしょに食事をする事が出来ない。
無理強いをするとパニック発作に陥る場合もあります。相手が誰であろうと、人と接するのが苦手。
診断基準
- 人の注目を浴びるような状況に激しい恐怖や恥ずかしさを感じるために、人前に出ることを極端に恐れる。
- 人が集まっている所に出ると強い不安に襲われ、パニック発作を起こすこともある。
- 実際には大して危険でも脅威でもないと本人も頭ではわかっているのだが、激しい恐怖に打ち負かされてしまう。
- 人が集まっている状況を避け、恐怖に襲われないようにしいている。または強い不安や苦痛を感じながら、そういう状況に耐えている。
- 人前に出るような状況を避けたり、苦痛に感じたり、あるいは「不安に襲われるのではないか」とおびえたりするために、日常生活や仕事、
社会活動や対人関係に支障がある。
治療
薬物療法は抗不安薬やSSRIなどが一般的ですが、他の抗うつ剤なども使われています。パニック発作を伴う場合にはβブロッカーも加えられます。
心理療法として、もっとも効果が高いのは「暴露療法」でしょう。あえて少しずつ、恐怖を覚えるような場面に身をおいて、慣れていくプログラムを作り、だんだん恐怖を乗り越えていくのです。
また「力動精神療法」「支持療法」「家族療法」などが一般的です。
- 強迫性障害 (強迫神経症)
- 強迫性障害は「強迫観念」と「強迫行動」の2つに分けられます。
多くはうつ病を併発します。
強迫観念
- 「ある一つの考えやイメージが浮かんできて、自分でも止められない」という状態。一番多いのは、
「不潔」「汚れる」、次が「自分は人に危害を加えてしまうのではないか」と恐れるものです。実際にはありえないことだと自分でわかっていても、止められません。
続いて、身体に関するもの、宗教的なもの、セックスに関するものなどがあります。
強迫行動
- 「ある行為を延々と続けなければ気がすまない」という状態。一番多いのは、「確認強迫」(鍵をかけたか、ガスの元栓を閉めたかなど何度も確かめます)、「
手を洗いつづける」、続いて「数を数える」、質問癖、「左右対象を正確にしようとする」、買いだめ、などが順位として並んでいます。
診断基準
- 強迫観念、または強迫行動のどちらかが見られる。
<強迫観念とは>
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- ある考え、衝動、イメージが繰り返し浮かぶ。自分でも理屈に合わないとわかっており、止めたいが、どうしても浮かんできてしまう。強い不安や苦痛を引き起こすときもある。
- その考え、衝動、イメージは、現実の生活について過剰な心配をしているものである。
- その考え、衝動、イメージを無視したり抑えようとしたり、他の考えや行動によって和らげようとする。
- 自分でもその考え、衝動、イメージは自分自身の心の産物にすぎないとわかっている。
<強迫行動とは>
- 同じ行動を繰り返す(例/手を洗う、順番に並べる、確認する)、または「心の中の行為」を繰り返す(例/祈る、数を数える、声を出さずに言葉を繰り返す)。
本人は決して望んでやっているわけではなく、強迫観念に反応して、または厳密に運用しなくてはならないと思うルールに従うべく、駆り立てられている。
- その行動や「心の中の行動」は、苦痛を防いだり和らげたり、または何か恐ろしい出来事や状況を避けることが目的である(例/今、自分が新聞を読めば、明日起こるはずの大地震が防げる)。
だが実際にはそれで苦痛が和らぐことも、ある状況が避けられることもない。しかも、明らかにいきすぎている。
- 本人は強迫観念・行為がいきすぎたものであること、理屈に合わないことがわかっている。
- 強迫観念・行為のために、本人は強い苦痛を感じており、時間を浪費している。また日常生活、仕事など社会的な活動、人間関係などで支障がある。
治療
薬物療法ではSSRIというセロトニンに作用する薬がきわめて効果が高いことがわかっています。ハロペリドール(セレネース)も有効です。
心理療法では認知行動療法、特に「暴露療法」がもっとも有効だと報告されています。アメリカのカリフォルニア大学では薬物を使わず、認知行動療法(暴露療法を含む)
だけで治療して成果を上げているほどです。
- 外傷後ストレス障害(PTSD)
- 病名にある「外傷」とは、心理的な外傷のことで、「トラウマ」とも言われるものです。精神分析の創始者フロイトが最初に用いた概念で、後に精神障害を引き起こすような脅威的な出来事の体験、またその体験で受けた心の傷を意味します。
生死に関わるような衝撃的な出来事を体験したり目撃したりすると、ある期間を経て出来事がフラッシュバックして苦しむなどの障害が出ることがあります。これが外傷後ストレス障害です。
診断基準
- 次のような体験をしている。
- 自分か他人がもう少しで死ぬか、重傷を負うような体験をした。
- その体験をしたときに強い恐怖や無力感、戦慄を覚えた。
- その出来事を、次の1つ以上の形で再体験しつづけている。
- 苦しいから思い出したくないのだが、どうしてもイメージしたり、考えたり、思い出されるような物事に目がいってしまう。
- その出来事について、繰り返し苦痛な夢をみる。
- その出来事が再び起こっているかのように感じたり、行動したりすることがある。たとえば、その出来事を再び体験しているような感覚、錯覚、幻覚がある。
- その出来事を思い出させるようなことがあると、強い苦痛を感じる。
- その出来事を思い出させるようなことがあると、生理学的な反応が起きる。たとえば、動悸が速まる、ひどく汗をかく。
- 次のうち、3つ以上が当てはまります。
- トラウマに関係する考え、感情、会話を避ける。
- トラウマを思い出させるような活動、場所、人物を避ける。
- トラウマの重要な側面が思い出せない。たとえば、交通事故やレイプにあった場所や時間の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっている。
- 仕事やサークル活動、新聞を読むなど、日常の様々な活動に対して関心が薄くなり、参加しなくなる。
- 自分が独りぼっちで、孤独しているように感じる。
- 何事にも関心が持てず、人から話を聞いても驚いたり、感動したりすることがなくなる。
- 将来に希望が持てない。たとえば、仕事や結婚に希望が持てなかったり、自分がごく普通の一生を送れると考えられない。
- 過度に興奮した状態が続いており、次のうち2つ以上が当てはまります。
- なかなか眠れない、眠っていても何度も目が覚めるなど、睡眠障害がある。
- 興奮しやすく、突然怒りを爆発させたりする。
- 集中力の低下。たとえば、テレビをつけていてもただ眺めるだけ、新聞を開いても見出しを眺めるだけで中身が頭に入ってこない。
- 過激な警戒心。たとえば、大震災を経験したあとに、住んでいるマンションの上階からちょっと大きな音が聞こえただけで、すぐに屋外へ飛び出してしまう。
- ちょっとしたことにひどく驚く。
- 2〜4が1ヶ月以上、続いている。
- 1〜5のために、実際に激しい苦痛を感じていたり、社会的、職業的、そのほか重要な場面で支障がある。
治療
薬物療法では、抗うつ剤やSSRIなどが使われています。とくに恐怖が激しい場合には、抗精神病薬のハロペリドールが使われることがあります。
心理療法では、「力動精神療法」によって、そのストレスに対応する力がつくようにします。
これは、ストレスを認知し、克服し、洞察できるようにしていくものです。
さらに行動療法、認知療法、催眠療法なども用いられています。とくに行動療法としては、あえて外傷体験を思い出させるものに触れる「暴露療法」も効果があります。
また、戦争や災害などによって、多くの人と同時に災厄に直面した場合には、同じ体験をした人たち同士が集まる「集団療法」も重要な治療法と考えられています。
- 急性ストレス障害
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原因や症状はPTSDとほぼ同じですが、違うのは、
@ 症状が2日間〜4週間続く。
A 外傷的な出来事から4週間以内に起こる。
の2点です。