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 精神障害の中でもっとも重いものを呼ぶときに、「精神病」という言葉が使われてきました。どれを「精神病」と呼ぶかにはいろいろな説があるのですが、ここでは「精神分裂病」をそうだとしています。また「器質性精神障害」も精神障害の典型といえます。どうしてこの2つが最も重い精神障害なのかというと、精神病状態とは一言でいえば、「現実と非現実の区別がつかない状態になること」だからです。幻想や妄想といった、非現実的な世界が混入して、日常生活に困るようになるのです。

分裂病の種類とおもな症状

タイプ 発病年齢 主な症状
解体型
(破瓜型)
比較的若い
20歳前後
人格の変化、生活態度の乱れから幻覚・妄想を
へて放置すると人格荒廃にいたる。
緊張型 比較的若い
20歳代
急激に発症する。興奮や昏迷などの激しい症状。
ストレスの影響が大きく治りやすい。
妄想型 人格が完成して
から30歳前後
妄想が生活の全てを支配するようになる。
知的レベルは高い人が多い。
識別不能型       上のどれにも属さないタイプ。
残遺型       分裂病の後遺症が残っているタイプ。
単純型     破瓜型に似ているが、人格変化は軽くとどまり、
幻覚・妄想がない。

精神分裂病および他の精神障害
精神分裂病
 かつて精神分裂病は“不治の病”とみなされ、いったんそうとしんだんされたら、一生を病院で過ごすのが当たり前とされていました。しかし、1950年代後半にクロルプロマジンという抗精神病薬が作られるようになったことで“治療できる病気”となり、以来、通院して治すケースがが増えてきています。
 分裂病は全人口の約1%がかかるといわれており、これは世界各国どこでも、またどの時代でもほとんど変わりません。
 発病の時期は、男性が15歳〜25歳、女性が25歳〜35歳がもっとも多いとされています。
 急性期には、幻聴、妄想、興奮、昏迷といった派手で目立つ症状を示し、慢性期になると、自発性の減退や無為、感情の鈍麻や、平板化、自閉、思考の貧困化など、地味でとらえにくい症状があらわれてきます。
幻聴
幻覚の一種。ほとんどの場合、人の話し声が聞こえてくる(幻声)という形をとります。自分の考えが声になって聞こえたり、複数の人の声が自分の悪口を言い合って射る会話が聞こえる、「お前は馬鹿だ」と直接語りかける声がする、といったものです。
妄想
妄想の中身はさまざまで、なんの根拠もないのに、「知らない人が自分のあとをつけている」「誰かが自分の部屋に盗聴器を仕掛けている」「テレビで自分のことを話している」などと主張します。妄想がはじまると、周囲の人が論理的に否定して説明をしても、聞き入れる事はありません。かえって、疑いの目を向けたり、不信感を抱くようになります。
被害妄想――自分に悪意や危害が及ぼされると感じる。
微小妄想――自分を過小評価する。
減裂思考
思考が支離滅裂で、まったく話が通じない様子。感情は自然さを失って、平板になり、全く何も感じていないかのように表情がありません。また、かりに表情を見せたとしても、その場にそぐわないちぐはぐなものであったりします。
作為体験
自分の意思ではなく、幻聴、テレパシーをはじめ、何らかの手段によって他人から操られているという体験の事です。「宇宙からの電波で、地球を救えという指示がでている」といったことを訴え、「砂を食べろ」などという指示通りに行動してしまう事もあります。その他にも他人の考えが自分の中に入り込んできたり、逆に自分の考えを他人に読み取られたり、吸い取られたりしているように思うこともあります。
診断基準
@ 次にうち、2つ以上があてはまります。
  1. 妄想がある。例えば「自分のことを悪く言っている」「自分をおとしめようとしている」「自分を見張っている」「誰かにあとをつけられている」「誰かがテレパシーで自分に指示して、動かしている」など。
  2. 幻覚がある。特に幻聴が多い。例えば、誰もいないのに耳元で「自分の噂をする声がする」「からかう声が聞こえる」など。他に、「UFOが見える」「霊魂が見える」といった幻視、「自分の肌に何か電気のようなものが伝わってくる」といった体感幻覚がみられることもある。
  3. 思考に一貫性がなく会話が支離滅裂。
  4. 極端に緊張した行動が見られる。これには2タイプあり、全く反応しない(緊張病性昏迷)か、興奮してまとまりのない行動(緊張病性興奮)を示す。
  5. 感情が平版化し、思考が乏しくなり、意欲がなくなる。
A このため、職場や学校で、あるいは対人関係で急激に適応力が落ち、支障が出ている。
B 症状が6ヶ月以上続いている。
治療
抗精神病薬を使うのが主流です。これまでは、特にハロベリドールやクロルプロマジンが使われてきましたが、最近ではリスペリドン、クロザピン(アメリカやイギリスなどで使用)といった新しい抗精神病薬が中心となりつつあります。
 というのは、もちろんハロペリドールやクロルプロマジンは今でも効果があり、重要な薬なのですが、これらの薬で起こる副作用がリスペリドンやクロザピンにはあまりみられないというメリットがあるのです。
 たとえば、筋肉が固くなって手が震えたり、姿勢が前かがみになるパーキンソン病のような症状、眠気、肥満、アカシジア(じっとしていられず、絶えず動きまわってしまう)、舌の動きの異常(舌がペロペロと自動的に動く)、眼球挙上(眼球が上を向いてしまう)といった、副作用です。時には「悪性症候群」といって、高い熱を出し、筋肉の硬直、意識障害が起こり、死にいたるケースもありますが、現在では十分な医学的なケアがあれば助かります。
 心理療法は1対1の個人両方が基本です。中でも、支持療法といって、患者の気持ちをくみ取り、自尊心を守ってあげ、そのうえで適切な指導や助言をする方法が一般的ですが、患者によっては積極的に病気の原因を探して、「なぜ病気になったのか」「どうすればいいのか」と理解を深めていく力動精神療法を用いる場合もあります。
 また、行動療法、集団療法、家族療法なども用いる事もあります。家族療法では、家族が患者に対して、理解を深める事が欠かせません。そこでは患者を批判するのも禁物ですが、かまってやりすぎるのも再発を招きやすくするため、避けなくてはなりません。
解体型
  かつては「破瓜型」と呼ばれたタイプで、人格の荒廃が著しくみられます。体が不潔でも気にならず、服装もだらしなくなってくる事が多いようです。悲しみや喜びなどの感情に動かされる事がなくなり、何があっても、表情が変わらず、自分の内面にも、周りの状況にも無関心になります。とても感受性の強い部分が残っているため、些細な事で混乱する事もあります。
   一人でニヤニヤ笑ったり、意味もなくしかめっ面をしたり、しきりに独り言をいったりします。
  考え方が幼稚になり、子供のようなばかげた行動や、衝動的な行動をします。
 発病年齢が低い事が特徴で、発病当初はほとんど周囲に気づかれず、深く静かに潜行し、病状が慢性的に進んでしまいます

 分裂病の典型的な症状のほとんどが現れるのがこのタイプです。分裂病の中で人格崩壊にいたることが最も多いといわれてきたのがこれです。

緊張型
 このタイプは、特に理由もなく興奮して、やたらと動き回ったり、逆に周囲の働きかけに全く答えないなど、意思発動の障害が特徴です。
  症状は激しいものの、薬剤や電気ケイレン療法によく反応し、比較的完治しやすいタイプです。
  ただ、精神に欠陥が残ったり、発病と小康状態を繰り返しながら,次第に人格が障害されてしまうこともあります。この緊張型はさらに2つの型に分かれます。

<昏迷型>
意識がはっきりしているのですが、全く反応しなくなります。一日中よこになって天井を見つめているので、家族が心配して声をかけたり、食事をもっていったりしても、何の反応もありません。何か指示をしても、強く抵抗して拒絶する、同じ姿勢をずっととり続けるといった様子がみられます。このような昏迷状態にあっても、本人は何が起こったかは、詳細に覚えているのです。

<興奮型>
取り立てて興奮するような刺激もないのに、何かソワソワと落ち着きなく動き回ったり、大声を出したり、しゃべり続けたりします。これは、本人のみがわかる心の中の不安や何か差し迫った感じに支配されるもので、興奮がきわみに達すると、自分の着ているものをビリビイに引き裂いたり、相手に対して攻撃的になったりすることもあります。
これらの症状は、周囲の事柄には全く無関係で、誰か特定の人に襲いかかるとか、特定の条件で混乱するとかいった一貫性はありません。


<他の症状>
カタレプシー
座った姿勢で、誰かに腕を高く持ち上げられても、そのままの姿勢でいつづけます。 
反響動作
相手の発弁や動作をそのままおうむ返しにまねします。
常同
廊下を何度も往復したり、同じ事を何度もいうといった、意味のない行為を繰り返します。
衒奇(げんき)
つま先立ち出歩くなど、奇妙に見える行動が見られます。
拒絶
食べ物を勧められても頑として食べないなど、働きかけに拒否する態度をとりつづけます。
妄想型
妄想が患者の思考の大部分を占めています。妄想を語らなければ、一見分裂病だとはわからないようですが、幻覚・妄想が日常生活の隅々まで支配しているため、会社や学校に行けなくなったり、生活に支障をきたしてしまいます。他のタイプに比べると、人格は荒廃しにくいといえます。
 発病年齢はだいたい30歳前後です。
 「なんとなく周囲が自分に敵意を持っているような気がする」といった根拠のない被害者意識から始まることが多いようです。そこから妄想は次第にエスカレートし「会社ぐるみで意地悪する」などという誇大妄想に発展します。妄想に支配されて、「周囲の人に敵意を持たれている」といって警察に駆け込んだりするようなことはあっても、治療すれば人格そのものが強く犯されることはありません。しかし、適切な治療を受けずに放置すると、長い間に人格に影響を及ぼすケースも少なくありませんので、早めの受診・治療が効果的なのは言うまでもありません。
識別不能型
 解体型・緊張型・妄想型のどれにも属さない、こん然一体となったタイプです。
 一貫した妄想と断続的な妄想が併せて現れたり、解体型に特徴的な子供っぽい振る舞いと、一貫した誇大妄想が併存したりします。専門医でも判断のつかない未分化の型です。
残遺型
 これは分裂病にかかった後にみられえる症状で、言ってみれば“後遺症”です。幻覚。妄想はなくなっているか、あったとしてもわずかなのですが、感情の動きの鈍さや、考え方は病的なままです。
 時折おかしな行動をとったり、意味なく声を発したりしますし、思考のつながりも論理的ではありません。話をしていても、つながりが明確ではなく、時々飛躍したりするのです。
 中にはうつ状態を併発するものもあります。
単純型
 人格の異常ではないかという意見もあります。解体型と似ていますが、幻覚や妄想はまったくありません。ただ、部屋に閉じこもって、人との接触を極端に嫌います。意欲もなくなって仕事や通学も出来なくなります。考えはまとまらず、そういう意味では解体型と同じような経過をたどり、人格が変化してしまうこともあります。
 ただ、人格に影響を及ぼす前に病気の進行が止まることが多く、もともと知的、人格レベルが高い人の場合には、日常生活の自立は出来ます。
分裂感情障害
 感情障害のようでもあり、分裂病のようでもある病気。「躁かうつの気分に支配される」といった感情障害の症状と、幻覚や妄想の症状がありますが、感情障害の症状がないときでも精神病症状が見られるものを分裂感情障害といいます。
 うつの症状はだるい、よく眠れない、食欲が落ちる、集中力がなくなる、自分を責める気持ちにさいなまれる、自殺念慮(自殺したいという気持ち)などが典型的なものです。反対に、躁になると、気分が高ぶって活動的になりますから、やたらと動き回ったり、おしゃべりになります。
 なお、躁とうつが交代交代に現れるタイプを、「双極型」、現れるのはうつだけというタイプを「抑うつ型」と呼びます。
診断基準
  1. うつ病か躁うつ病の症状と、幻覚・妄想といった精神分裂病の症状がある。
  2. 2週間以上、うつや躁(感情障害の症状)が出ないときに幻覚・妄想が現れたことがある。
  3. ほとんどいつも、ゆううつな気分や疲労感といった感情障害の症状がある。
治療
 治療効果があがりやすく、とくに心理療法は効果的です。分裂病の患者に比べると、はるかに治りやすいといっていいでしょう。
 薬物療法では、抗精神病薬を使います。特に「双極型」の場合には、感情調整薬の炭酸リチウム(リーマス)や抗てんかん薬のカルバマゼピンなどを使っています。

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