寄り合い小説

霧子と朝夫の物語

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第1章 師走の夜
 

 行き交う人の足も心なしかせわしく感じられて、横断歩道の信号が赤に変わった。 右足のブーツのチャックを少し引き上げて、霧子は、すっかりクリスマス飾りに包まれた街角の空を 見上げた。電光ニュースは、コンピューターの「2000年問題」とやらを仰々しく流している。
 やっと会社のコンピューターから解放されたのに、霧子は軽く舌打ちして、動き始めたまわりの 人混みと一緒にまた足を進めた。今夜は、すれ違いの多い朝夫とのデートの夜なのだ。
夕方からの冷え込みで、先を争うように光の帯に沿ってうごめく人々の吐く息が白く見える。 それにしても、今夜は少し朝夫をいじめなければと霧子は考えている。軽いユーモアのつもりで、 新しい女の名前でメールを送ったのに、朝夫は積極的とも思える文面で反応してきたのだ。
 しかも、大事な今夜の約束も忘れたような誘い方に、霧子は、「男って仕様がない動物ね」と思いながらも 面白くない。これまで二十八才の遍歴の中で、そろそろ落ち着こうと思っている朝夫にも、なんとなく 繰り返してきた苦い経験を思い出すことになったからだ。



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