
フランス語版への序文とあと書き
ロンドン、一八七二年三月一八日
市民モリス・ラ・シャートルへ
親愛なる市民!
『資本論』の翻訳を逐次刊行の分冊で発行するというあなたのお考えに私も賛成です。この形式によれば、この著作は労働者階級にもっと近づきやすくなるでしょうし、その点の考慮こそ、私にとって他の何にもまして大切なのです。
これはあなたのメダルのよい面ですが、しかしそこには裏の面もあります・・すなわち私が用いてきた、そして経済的諸問題にはまだ適用されたことのない研究方法は、はじめの諸章を読むことをずいぶん困難にしています。そこで心配になるのは、いつでもせっかちに結論に達しようとし、一般的原則と自分が熱中している直接的問題との関連を知りたがるフランスの読者が、はじめから先に進むことができないので、うんざりはしないかということです。
これは一つの不利な点ですが、真理を切望する読者に前もってこのことをお知らせし、心構えをしていただく以外には私にはどうしようもありません。学問にとって平坦な大道はありません。そして、学問のけわしい小道をよじ登る労苦を恐れない人々だけが、その輝く頂上にたどりつく幸運に恵まれるのです。
カール・マルクス
読者へ
J・ロウ氏はできる限り厳密で、逐語的でさえある翻訳をしようとされた・・彼はその任務をきちょうめんな厳密さで果たされた。しかし、まさに彼のきちょうめんさのために、私はよぎなく表現方法を変え、読者にもっとわかりやすくしなければならなかった。これらの手直しは、この本が分冊で刊行されたので、その日その日になされたのであって、同じ程度に念入りには行われなかったし、また文体の不統一を生まざるをえなかった。
いったんこの改訂の仕事をやりだしてからは、底本とした原本(ドイツ語第2版)にも改訂を加えることになってしまった。すなわち、若干のくわしい記述は簡単にし、他のそれは完全にし、補足となる歴史的または統計的資料をともない、批判的な評言をつけ加えるなどした。このフランス語版は、どんな文章上の欠点があるにしても、原本とはまったく別な科学的価値を持つものであって、ドイツ語のできる読者によっても参照されてしかるべきものである。
なお、ドイツ語第2版のあと書きのうち、ドイツにおける経済学の発展やこの著作で用いられた方法に関する個所を、以下にあげておこう。〔『全集』19〜28原ページ〕
ロンドン、一八七五年四月二八日
カール・マルクス