第7回オホーツク地域創造フォーラム

   −ふるさと銀河線の問題を中心に−

 

         ●と  き    2006年2月25日(土)

         ●ところ    北見芸術文化ホール 中ホール

               オホーツク地域自治研究所

 

 

      【フォーラム・スケジュール】

       12:30〜        受付開始

       13:00〜13:15   開会式

       13:15〜14:45   基調講演

       14:45〜15:00   基調報告

       15:00〜15:10   休憩

       15:10〜16:20   パネルディスカッション

       16:20〜16:50   討論

       16:50〜17:00   閉会式

 

 

       【目   次】 

  フォーラムへ参加されたみなさんへ

    オホーツク地域自治研究所理事長 金倉 忠之

 

  1.基調講演:「全国の鉄道存続と銀河線廃止の特徴」

          清水 孝彰氏(NPO法人全国鉄道利用者会議理事長)

 

  2.基調報告:「再生ネットワークの活動について」

          下斗米ミチ 氏(ふるさと銀河線再生ネットワーク代表)

 

  3.パネルディスカッション

      @「過疎・高齢社会の交通政策」

           中川 功 氏(ふるさと銀河線再と生ネットワーク事務局長)

 

      A「鉄路を活かした観光事業と陸別町の活性化について」

           平等 志成 氏(陸別町商工会事務局長)

 

      B「えちぜん鉄道再生と岐阜市内線の復活」

       清水 省吾 氏(NPOふくい路面電車とまちづくりの会(ROBA)事務局長)

 

   <資料>

      ふるさと銀河線再生ネットワークの活動資料など

 

     ■このフォーラムは、「平成17年度生涯学習振興奨励費補助事業」

             (北海道教育庁網走教育局)として開催されます

 

1.基調講演:「全国の鉄道存続と銀河線廃止の特徴」

      ―ふるさと銀河線の問題を中心に―

          清水 孝彰氏(NPO法人全国鉄道利用者会議理事長)

 

1.全国の地方鉄道存廃問題

・存廃論議中の鉄道と存続を決めた鉄道

・鉄道の廃止問題とは

・鉄道存続再生の条件

 

2.銀河線の存廃論議と存続運動

・2003年度…関係者協議会(道庁主催)での廃止方針表明、住民による存続運動の開始→結論1年延期

・2004年度…関係者協議会での存廃論議の進行、存続運動連絡会議での運動展開→廃止決定、代替交通の結論出ず

・2005年度…地元協議会(道運輸局主催)・沿線自治体等連絡協議会(道庁主催)での代替交通論議、再生ネットワークでの運動展開→バス転換決定

 

3.銀河線存続再生への提案−地域再生構想・特区構想

・地域再生構想「知床・オホーツク・十勝観光へはふるさと銀河線で」

・構造改革特区構想「ふるさと銀河線DMV特区構想」

・簡易高速化、DMV導入、地域通貨、コミュニティファンド

・バス転換による赤字額試算

・費用便益分析

・道路への鉄道敷設の規制緩和

・地方鉄道の活性化及び日常運行のための補助制度の整備

※DMV(Dual Mode Vehicle):道路と鉄道の両方を走れる車両。JR北海道が開発中で、本年中に実用化予定。

 

4.地方鉄道・LRTに関する制度の充実化

・公共交通の整備・運行の法制度の現状…施設保有と運行を同じ会社が担うのは、鉄道のみ。

・上下分離とは…施設保有と運行を分離、施設維持に必要な経費は「赤字」ではなく社会資本の維持管理費と考える。

・2001年度…都市計画法による都市計画道路の「特殊街路」にLRT軌道敷を追加。路面電車走行空間改築事業創設。

・2003年度…国の基本方針を示す「地方鉄道復活のためのシナリオ」発行。国土交通省鉄道局に「地方鉄道対策室」を設置。

・2004年度…地方鉄道等活性化支援事業(地方鉄道再生事業+LRTシステム整備事業)創設。都市鉄道等利便増進法制定。

・2005年度…「まちづくりと一体となったLRT導入ガイダンス」発行。安全対策・災害対策緊急事業拡充。

・今後の焦点…道路財源の一般財源化

※LRT(Light Rail Transit):車両と施設を改良し、高速走行を可能とする新型路面電車。鉄道との相互乗り入れも可能。

 

5.銀河線に類似の鉄道−秋田内陸縦貫鉄道の存続

・秋田内陸縦貫鉄道の状況

・秋田内陸線沿線地域交通懇話会での存廃論議

・秋田内陸線サポーター、存続を考える会による運動

・バス転換による赤字額試算

・費用便益分析

 

6.銀河線廃止の特徴

・会議の開催数の多さ(関係者協議会、地元協議会、道庁協議会)

・長期に渡る存廃論議と存続運動

・北海道ちほく高原鉄道(株)の姿勢

・地元自治体の温度差(両端部 vs.中間部)

・道庁とマスコミ(札幌 vs.沿線)

・沿線住民の温度差(十勝 vs.北見)

・国庫補助受けず、全額地元負担でバス転換(初期投資)

 

7.バス転換で起こる問題とは?

・利用者逸走の理由

・積雪寒冷地でのバス転換に伴う問題

・長大路線のバス転換に伴う問題

・のと鉄道代替バスの事例

・銀河線代替バス運行計画の検証

 

8.廃止された鉄道の復活運動

・JR可部線

・名鉄岐阜市内線

・のと鉄道

・高千穂鉄道

 

 

 

【しみず清水 たか孝あき彰氏・プロフィール】

1971年12月   埼玉県行田市に生まれる

1995年10月 気象予報士資格取得

1996年 3月 金沢大学大学院理学研究科修士課程修了

1996年12月 (株)MTS雪氷研究所入社

2004年 4月 NPO法人 全国鉄利用者会議設立、理事長

 

・大学在学中に白山や金沢の自然環境保護運動に関わる。1997年、COP3京都会議の市民団体イベントに参加したことがきっかけに、(任意団体)全国鉄道利用者会議入会。

・地方鉄道・路面電車の存廃問題が全国に広がり始めた頃から、各地の鉄道存続再運動の支援を始める。主にふるさと銀河線、秋田内陸縦貫鉄道、のと鉄道の地元支に関わり、費用便益分析やバス転換との比較などの経営データの分析、存続再生や止に関する法制度、各地の事例などの情報提供を実施してきた。

・ふるさと銀河線については、2003年「特急を走らせる会」会員、2004年「存運動連絡会議」理事、2005年「ふるさと銀河線再生ネットワーク」顧問として、地元と共に存続再生運動を行なっている。

・その他、北区荒川市民会議委員、北区子どもの水辺協議会事務局、NPO法人 山の自然を考える会運営委員など。

 

○著作

・ 鉄道まちづくり会議編(2004) どうする?鉄道の未来−地域を活性化するために、 緑風出版(共著)

○論文

・Takaaki Shimizu, et al(1998) The role of sexual and clonal reproduction in maintaining population in Fritillaria camtschatcensis(L.)Ker-Gawl.(Liliaceae), Ecological Research 13, 27-39

○学会発表(最近10年以内)

・雪粒子特性に注目した屋根雪の堆雪シミュレーション、日本雪氷学会大会(2004、 彦根) 登山道の荒廃と高山植物群落との関係についての定量的評価、日本生態学会大会 (2004、釧路)

・出入口部の風圧と雪の吹き込みに関するシミュレーション、寒地技術シンポジウム (2003、釧路)

・栄養繁殖と種子繁殖がクロユリの集団維持に与える影響、日本生態学会大会 (1997、札幌) クロユリの個体群動態、日本生態学会(1996、八王子)

 

 

 

  2.基調報告:「再生ネットワークの活動について」

    下斗米ミチ 氏(ふるさと銀河線再生ネットワーク代表)

報告要旨

83歳をすぎた婆さんが歳を忘れて、絶対にちほく高原鉄道「ふるさと銀河線」を廃止にしてはならないと、若い人たちと一緒に燃えているのは、高齢者や通勤者・通学生の足を守ることは勿論ですが、目先だけの事ではなく、遠い未来を考え「人間と自然の豊かさを守るため」には、これ以上過疎の地域をつくってはならない、そのためにはこの銀河線は必要不可欠と確信しているからです。

 

この鉄道は、前田駒次さんたちが手弁当で東京まで何度も通い、政府にお願いし、ようやく実現した鉄道です。沿線の開拓は勿論ですが、軍事用としても大切な鉄道だったと聞いております。

人跡未踏の密集した原始林を切り開き、短期間で開通した鉄道で、その頃は全国のあっちこっちに鉄道を敷いていた時代で、そのための枕木や電柱になる原木が密林から切り出され、貨物としても活躍し、他にも日本の統治下にあった中国(当時の満州)や韓国にも送られていたということで、沿線のみならず、北海道・日本の財産としても大切な鉄道だったのです。

 

鉄道によって誕生した元気な沿線自治体が、なぜ過疎が進んでいったのか、それは戦後の政治にあり方が間違っていたのだと思います。

とにかく日本政府は「金」が欲しいと工業に力を入れ、農・林業を冷たく切り捨てきました。加えて大学教授・評論家などの、いわゆる文化人といわれる人たちも口を揃えて「金にならない農業はいらない、木材は安い外材を輸入すれば良い」と言っておりました。実際、現在日本の食糧自給率は約40%と恐ろしい時代になっています。

当時、農家の人が作った短歌に、

「田を休ませ 金をばら撒く農政の あやまちわれら許してならじ」

「米食えば 馬鹿になるなどと おどかして 大学教授誰に媚びうる」 というのがありますが、やり切ない怒りや悲しい思いが伝わってきます。

 

その工業に力を入れることが出来たのも、優秀な製品を作り出すことが出来たのも日本人の技術は勿論ですが、日本にはきれいな水が豊富にあったからということに、行政は気付いていなかったのではないでしょうか。

中卒、高卒の働き盛りの若者たちが集団就職と言って、工場が集中する都市に集められ、そして、殆どが再び故郷には戻って来ませんでした。

国のためと若者たちを送り出し、ふと気が付いてみたら、足、腰の神経痛に悩みながら、荒れ果てた森や田畑の中のあばら家に、自分たちが食べるだけの野菜を植え、老人だけが寂しく暮らしています。その森や田畑の荒れた結果が崖崩れ、汚水、渇水につながるということに行政や学者が気付いたのは平成になってからと聞きます。

 

たしか東北地方だったと思うのですが、「カキ」の養殖をやっている橋本さんという人が、森、田畑、川、海のつながりに気付き、全国の漁業者に声をかけ、山に木を植えはじめたのが平成元年、その橋本さんの訴えも行政は「科学的根拠があるのか!」と冷たくはねつけたそうです。

その橋本さんが京都で開催された環境問題のフォーラムでパネラーとして登壇し、「森は海の恋人」、「川は森と海の仲人役」と発表し、その言葉に感動した京都大学の某教授が、大学に招き、何回か講義をしてもらい、今その研究が進んでいると聞いています。

オホーツク海の漁港、常呂漁協の女性部の皆さんが、置戸町の奥の山に植林を始めたのが平成2年、今も常呂川沿に木を植え続けています。

土佐の高知では「森林税」を特別徴収し、森を守ることによって四万十川の清流を保っていると聞きます。戦後、農業を切り捨てたことが、漁業も切り捨て、つまり第1次産業を省みなくなった中央行政が地方の過疎化を進めたのです。

 

今、道東の鉄道は殆ど消えております。バス転換になっても過疎化は止まりません。「ない袖は振れない」と冷たく言う道政に「札幌周辺だけが北海道ではない!」と大きな声で叫びたいです。

一昨年、仲間で作った地域再生構想「知床・オホーツク・十勝観光へはふるさと銀河線で!」を、銀河線なら申請すれば許可が出るでしょうと内閣府の職員のエールも、北見市長からは、そんな言葉は中央省庁の「リップサービスだ!」と言って、申請直前で冷たくはねられました。一方で、内閣府では、バスに補助金が出て、鉄道には出ないのはおかしいと国土交通省に掛け合ってくれて昨年「地方鉄道再生制度」ができたのも私達の運動の結果と自負しています。

また、線路と陸地両走行できるDMV(デューアル・モード・ビィークル)の導入の提案をしても、まだ先の話だと無視されましたが、昨年の10月には北見―女満別空港間を試走行しました。

さらに、昨年6月のちほく高原鉄道(株)の総会の席で、神田社長は、承継会社があれば交渉のテーブルに着くと約束してくれましたので、私は仲間のみなさんと岡山市の岡山電気軌道(株)に、ぜひ北見においでくださいとお願いにまいりました。結果は、住民の熱意など4つの条件を出されましたが話し合いに応じてくださるということで喜んで帰り、すぐさま承継誘致のための署名行動を行い、短期間で1万5千筆の署名を集め、ちほく高原鉄道会社(神田社長) ・北海道運輸局・岡山電気軌道にそれぞれお渡ししましたが、神田社長のみが会わずに、現在に至っております。 多分に政治的なものが働き、まさに「上意下達」、住民の声を聞く耳を持たぬ行政に悲しくなります。

 

最近テレビで、米国のブッシュ大統領が、石油に代わるエタノールの生産をはじめると言っておりました。また、日本経済新聞にアサヒビールが沖縄に工場を建設し、エタノールの生産をはじめるという記事も掲載されておりました。沿線自治体ばかりではなく、北海道の資源(農・林・漁業)を上手に活かしての過疎地の活性化も夢ではありません。

今、本州では新幹線の線路を客車が走らない時間帯に貨物列車が走り、CO2削減のために寄与していると聞きます。銀河線もCO2削減に大いに寄与できます。しかも冬の長い北海道にとって鉄路はもっとも安全安心の交通手段です。

その銀河線の廃止と引き換えに、高速道路の建設を公言する政治家に頭を傾げたくなります。その費用が1300億円とかそんな大金があるなら、なぜ3億円の補助金が鉄道に出せないのか不思議に思います。既存の北見―足寄間の国道242号線も走行車はまばら、しかも高速並のスピードで走っています。

 

鉄道は効率や利益を目的とするものではなく旧鉄道事業法で『鉄道は国民の福祉に寄与するものである』とあります。赤字だから廃線とはならないということです。

また、いつ廃止になるか分からないバスよりも、観光客や移住者も取り込める鉄路は沿線の宝です。さらに、北海道の雪質も湿気を含んだものに変わりつつあり、バス運行の危険度は鉄路よりはるかに大きいと考えられます。何より、猛吹雪の中、野ざらしのバス停で待つことを考えますとバスの逸走率が70%超えるのも時間の問題、バス撤退も時間の問題のような気がいたします。

 

昨年 知床が世界自然遺産に登録され、国内は勿論ですが、外国からの研究者、観光客も増えています。千歳空港から石勝線―銀河線―石北線など乗り継ぎをして、ゆっくりと道東の自然を堪能していただくことが、北海道観光にも寄与することになります。加えて、1市6町の農林漁業から生産される特産品は全国にも誇れるものと確信しております。それらを組み合わせ、少しでも沿線自治体が潤い、さらには住民のみなさんの収入にもつなげることを考えるのも行政の責務と思っております。

 

行政は、自家用車使用者論理で、机上のそろばんを弾いて判断するのではなく、現場を見て、住民の声を聞き、将来の北海道を考え判断してほしいと願っております。そうすれば「ふるさと銀河線」が十勝とオホーツクを結ぶ大切な幹線鉄道と気付くはずです。

私たちは、これからも行政にはたらきかけ、「銀河線」が再生されるよう、沿線のみなさんと一緒に運動を続けていきたいと考えています。それには休みない全国の多くのみなさまのご支援を心から願っております。

 

【しもとまい下斗米 ミチ氏・プロフィール】

1923年 9月24日 北朝鮮 新義州市に生まれる

1938年 3月 北見市中央小学高等科卒業

1959年 9月 北見市3条西2丁目に書店開業

1971年 4月 (株)福村書店代表取締役就任 現在にいたる

 

・北見市法人会理事・北見市法人会女性部顧問・北海道中小企業家同友会オホーツ支部相談役・北見市社会福祉協議会評議員・オホーツク地域自治研所副理事長・ふるさと銀河線再生ネットワーク代表

・著書 北の町に本を届けつづけた女社長のふんばり人生『母さんの風呂敷包み』(扶桑社)

 

 

3.パネルディスカッション

 

      @「過疎・高齢社会の交通政策」

           中川 功 氏(ふるさと銀河線再と生ネットワーク事務局長)

 

あらためて、申し上げるまでもありませんが、銀河線沿線自治体は過疎と高齢化現象に見舞われており、そのなかで銀河線は、自治体存立の核として欠かすことができない社会資本であるといえます。

また当たり前の話ですが、過疎地は人口密度が低い地域でありますから、公共交通の企業の経営上、非常に効率が悪く、銀河線の経営は全国で最も悪いといわれています。すべて、企業は黒字でなければ存立し得ないわけですが、公共交通の場合、単純にそのように考えることができません。たとえば、JR北海道内で黒字区間は札幌・旭川間、札幌・函館間のみであり、他はすべて赤字であります。

そのようななか、スーパー特急は札幌を中心にして函館方面、稚内方面、帯広・釧路方面、それに旭川まで運行されています。ところが、北見・網走方面にはスーパー特急が走っていません。つまり、現状においてさえ、北見・網走地方は鉄道後進地であります。これについて、私たち住民自身がこれに気づいていないこともありますが、この地域の市町村長、国会議員、道議会議員も、問題意識と行動がないといえるかと思います。そして誤解を恐れずに言うなら、知事や道庁にも長期的視点に立った公共交通政策、とりわけ鉄道政策がないということができます。

このまま推移するなら、今年4月20日で銀河線は廃止されます。その後自然災害によって、もし石北本線常紋トンネルが崩れて、その復旧に何十億円もの費用が必要になった場合、JR北海道は不採算路線のトンネルの復旧工事はしません。そうしますと石北本線、留辺蘂・網走間は鉄道が走らない地域となります。鉄道の専門家の話によりますと、トンネルの耐用年数は60年だそうで、常紋トンネルは築後約90年を経過していますから地震がないにしても、通行不能の事態が起こり得る可能性があります。道庁にはこのような事態を想定した鉄道政策が、ひとつも用意されていないところに、北海道の交通政策の貧困さがあります。

道庁には交通企画課がありますが、過疎地域の住民の「交通権」をいかにして守るかとの立場で仕事はしていません。それは銀河線に対する道庁の姿勢を見れば一目瞭然です。赤字なら廃止せよ、との立場です。これは全国的に見てもきわめて特異な姿勢であり、他県では知事が積極的に鉄道を守る姿勢を示しているのと対照的です。

知事・道庁がそのような姿勢でありますから、沿線自治体は共同して、交通政策を持たなければなりません。長野県上田市には、「地域交通政策課」が設けられており、私鉄である「別所線」存続のため、政策立案と実践が行なわれていますが、この地方では、残念ながらそのような専門の課が設けられている自治体はありません。今日、自治体は具体的な公共交通政策立案の組織と能力を持たねばならない時期に来ています。

 

次に高齢社会の公共交通政策がどうあるべきか考えてみたいと思います。

人は運転免許を持てない18歳までの間と、人生最後の運転ができなくなる10年間、少なくとも合計28年間は公共交通機関に頼らざるを得ません。しかし、現代社会を支配している人たちは車依存世代であるため、バス・鉄道政策が重要視されていない現状にあります。

昨年6月、国土交通省北海道運輸局へ銀河線廃止にかかる意見陳述書を提出する機会がありました。そのなかで、北見の方から、次のような陳述書が提出されました。

※ 55歳男性の陳述書から

私の母は置戸町で1人暮らしをしており、月に2回北見に通院している。その母から、銀河線が廃止になったら、バス通院ができないと思うから、息子の私に自家用車で送迎してほしいとの話を持ちかけられた。勤め人である私が月2回会社を休んで送迎するわけにはいかないから、銀河線はぜひ残してほしい。

このような内容でした。

銀河線が廃止になって通院が困難になった高齢者は、子供の所へ転出するか、老人ホームなど高齢者施設に入る以外にありません。このような高齢者は沿線にはたくさんおられるわけです。

いま、1人の高齢者が、老人ホームなどに入所すると月60万円の社会的支出が必要であり、それは年間720万円となります。銀河線廃止によって、このような人が40人増えたとしますと、約3億円の社会保障費の支出が増大します。銀河線廃止後、自治体にとって赤字補填の必要はなくなりますが、介護保険会計の赤字の増加は避けられません。

聞きなれない言葉だと思いますが、ヨーロッパでは「クロスセクターベネフィット」という政策が1980年代から実行されています。これは、高齢者や障がい者に、バス・鉄道などの交通手段を保障することによって、社会保障費用の節減を図ろうとする政策です。働ける障がい者には働いてもらい所得を得てもらう、また高齢者にはできるだけ通院してもらい自立の期間を長く保ってもらうことにより、老人ホーム等の入所費用の節減をしようとするものです。これのために、厚生担当大臣は社会保障費の一部を公共交通政策費として運輸担当大臣に支出し、最終的に国全体の支出を抑制するものです。

残念ながら、タテ割り行政の日本では、この政策は採用されていません。しかし、この政策を実行すべきだと自治体首長が決断すれば、介護保険会計から、銀河線赤字補填財源として支出することも可能となります。

 

次に銀河線を廃止して、代替バスの運行させた場合の逸走率について報告します。

逸走率とは、いままで銀河線に乗っていた人が代替バスに乗らなくなった割合をいいます。

今回道庁は逸走率を6%としています。つまり、100人のうち94人はバスに乗るとしています。結論からいうと、この逸走率は必ず破綻します。全国では70%の人がバスに乗りません。日本一寒い銀河線沿線で、吹きさらしのバス停で20分も30分も待ってバスに乗る高齢者はきわめて少ないと思います。高齢者はトイレに通う回数が多く、代替バスにはトイレがありません。これで通院することは困難です。

昨年、石川県 のと鉄道能登線が廃止され、バス転換しました。しかし、定刻通りバスは来ない、目的地までの時間が長くなった、商店街の売り上げが激減した、観光客は2割減となった、など…。能登町長はバス転換が失敗だったと公式に認めています。来年の今頃、銀河線沿線でこのようなことが聞こえないことを祈りたいものです。

 

次に、私たちは住民運動として2年間何をやってきたかについて報告します。

その前にちほく高原鉄道の土地資産のことについてお話しします。

会社には641万平方メートル約14億円の土地資産があります。通常の会社の場合、経営が苦しいときには資産を売却して、生き延びようとします。ところが会社はこれを売却しようとはしません。私たちは株主総会でこの14億円土地資産を半額の7億円で沿線自治体に売却せよ、そうすれば2年間の運行資金が捻出できると提案しました。しかし、それは聞き入れられませんでした。運行資金がなくなったから、銀河線を廃止するのではありません。昨年3月27日の取締役会で廃止が正式に決定されましたが、その2週間後「銀河線の線路をはがして高速道路建設する」ことが発表されました。つまり、銀河線廃止の真の原因は高速道路建設であります(資料参照)。

この14億円の土地の資産は、今後無償で沿線自治体に払い下げられる可能性があります。そうなった場合、北見駅裏の市役所建設予定地も無償で北見市が手に入れることも可能です。しかし、このような土地処分方法は商法254条の3違反となります。株主総会では、この指摘もしましたが、無視されました。

話を元に戻します。会社も道庁も、表向きは廃止理由を赤字と言っておりますから、私たちも2年間この赤字をどうすれば、解消できるか真剣に考え、具体的対策を提案してきました。赤字解消の具体策は乗車運動による運賃増収、経費節減、赤字補填しかありません。

 

まず経費節減ではDMVです。下斗米代表も話しましたから重複を避けます(資料参照)。

次に、減価式地域通貨を発行することによって赤字補填財源を作ろうとしました(資料 参照)。

さらに、ゼロ金利で借りた自治体基金を1%で他自治体に融資するコミュニティ・フアンドにより財源を作ることを提案しました(資料参照)。

私たちはこれらの対案をまとめ、2004年6月、地域再生構想として提出し、内閣府から地域再生の趣旨にふさわしいと評価を得ましたが、首長の拒否で葬られたのは下斗米代表の報告のとおりです。私たちはこれで諦めることなく2004年11月第6次構造改革特区で、DMV、ミュニティ・フアンド特区を提案し、国交省・総務省・金融庁・法務省からほぼ全面的に認める回答を得ましたが、道庁・北見市は出資法違反の疑いがあるとなどとして拒否しました。しかし、私たちが地域再生構想で提案した「地方鉄道活性化及び日常運行のための補助制度の整備」は「地方鉄道再生制度」として制度化され、2005年度から、秋田内陸縦貫鉄道を初めとする全国の地方鉄道で採用されています。

このように私たちが提案した対策は、道庁・北見市から拒否されましたが、国土交通省、総務省、金融庁などから、現行制度下で実施できるとの回答を得て、中央省庁の政策変更を引き出しました。

次に、私たちが行なったことは、岡山電気軌道の誘致です。これも下斗米代表報告でふれていますから省略します(資料参照)。

 

さらに、今年1月20日、北見市は国庫補助を受けずに代替バス購入の補正予算を可決させました。補助申請書さえ提出すれば2億円の補助金が得られたのに、これを行なわず結果的に住民に2億円の損害を与えました(資料参照)。

 

このように、私たちの運動は実を結ぶことはありませんでした。最後に銀河線廃止後、

自治体はどのように変化するかそして今後の展望を含めて5点にまとめてみました。

1. 北海道の自治体は鉄道とともに発展してきました。銀河線廃止後衰退は避けられません。のと線と同様、商店街の売り上げ激減、人口流出、そして土地価格の下落が起きます。

2. 鉄道は、まちづくりの核です。その核を失うことは、自治体のあらゆる計画の根幹をゆさぶります。各自治体の総合計画の策定はきわめて困難になります。

3. 代替バスの逸走率が70%を超えると、バスの撤退が起きます。

4. 陸別など内陸の自治体における大量の人口流出は集落の崩壊をまねき、大量の耕作放棄地、手入れされない森林を生みます。これにより、土砂流出を起こし、下流の洪水の原因をつくります。

5. 暗い見通しを4点話しました。しかし地球環境を守る国際世論の盛り上がりにより、CO2排出量の少ない鉄道が見直されるのは目前です。

 

将来、「鉄道復権は目前であったのに、なぜあの時銀河線を守れなかったのか」と子や

孫から批判されないため、今後、私たちはあらゆる可能性を追求していきます。

 

 

      A「鉄路を活かした観光事業と陸別町の活性化について」

           平等 志成 氏(陸別町商工会事務局長)

 

1.はじめに

 北海道には、それぞれの町に素晴らしいシーズがある。このシーズをどのように掘り起こして育てていくか、どのようなニーズと結びつけるか、このことが町づくりの課題であると考えてる。既存の事業の中から新たな事業のシーズを見つけて、既存のニーズに適応した事業の発掘を図る必要がある。

 昨年の6月に、商工会を中心として『まちづくり委員会』を発足させた。商工会内部で進めてきた様々な課題に対する調査研究を踏まえて、新たなシーズの発掘に向けて活動している。

 今までは、研究会や委員会を中心に事業化等に向けた検討が行われてきたが、最後まで完遂した事業や継続している事業が少なく、後一歩がなかなか出ていなかった。

 その第一歩が出せたのが、この1月に設立登記が終わった新会社である。陸別町の浮沈に係ることであり、何としても事業の成功を期すべく、商工会会員に出資をお願いした。その結果、個人及び企業から合計44名の出資者を募ることが出来た。このことは、新会社に対する期待感が大きいものと判断し、商工会として重く受け止めている。

 新会社の事業の一つに、『鉄路を活用した観光事業』があり、鉄道車両の動態保存をベースに新たな事業展開を模索中である。

 

2.新交通システム

 ふるさと銀河線が、この4月に廃止されることが決まった訳であるが、廃止の話題が出てから今日まで、陸別町商工会として手をこまねいていた訳ではない。

 平成15年度までは、十勝管内商工会は、銀河線の存続について、北海道に陳情要請活動を行ってきた。特に銀河線沿線の4町では、廃止に伴う経済的影響は、莫大なものがあり、存続を望んできた。しかし、平成15年11月には、北海道がバス転換の意向を示し、平成16年6月に、平成16年度末までに銀河線の存廃について結論を出すことになった。

 銀河線が存続することは、我々町民にとってベストではあるが、北海道の意向、更には沿線1市6町のそれぞれの思惑で、最終的にはバス転換で落着くであろうと想定し、新たな対策を検討してきた。

 公共交通機関である銀河線の廃止は、陸別町の過疎化を加速するだけでなく、陸別町全体を疲弊させることになるために、陸別町商工会として、平成16年の秋から新しい交通システムの検討を開始した。平成17年2月に交通システム検討委員会を設置し、3月までに精力的に7回の委員会を経て、新交通システムを構築させた。

 陸別町を基点として、陸別−置戸間、陸別−足寄間の小型バスの運行計画と町内バスの運行を併せた計画を組立てた。勿論、バスの運行については、都市が拠点でなければならないため、現行法では難しいことは充分理解して居り、もし事業を申請して却下されれば、特区申請により事業化を進める計画であった。

 3月下旬には、北海道庁に説明する予定で根回しを進めていたが、陸別町行政との事前調整では、北海道に話すことに待ったが掛かってしまった。

 

3.鉄路の活用

 銀河線が廃止され、バス転換となる報道が出た時に、東京からコンサルタント的な業者が銀河線を存続させる方法があるとして、沿線の市町行政等に提案してきた。銀河線沿線の町の状況も理解せずに事業を起こすという乱暴なもので、沿線の町の活性化に向けた具体的な試案が何も出されていなかった。陸別町商工会では、沿線の住民の利益に繋がる様なものは一切ないと判断し、陸別町内の鉄路を活用する事業の検討に入った。

 その中で、青森県大畑線の跡地を利用して、ディゼル車輌キハ84型の動態保存を行っているNPO法人代表に出会う機会があった。

 彼等からのヒントとアドバイスを得て、銀河線廃止後、陸別駅構内の活用の一つとして、駅構内でSLを動かすことを視野に入れてた。しかし、SLを陸別町まで輸送するのには、時間と費用が掛かるため、将来に向けて検討することとして、先ずは、銀河線で現在運行している車輌を譲り受けて、その活用方法を企画することである。

 又、旧美興線がある美深町のNPO法人がトロッコの運行しており、道内外の鉄道ファンや観光客を集めていることから、陸別でも同様な事業展開を図ることが出来ると判断して、鉄路の有効利用の一案として掲げている。

 

4.鉄道車両の動態保存

 陸別町では、寒さを逆手にとった『しばれフェスティバル』を25年も続けており、今回の銀河線の廃止もプラス思考で進めていくべきであると考えている。逆手に取るためには、北海道で、又、日本で注目される様なことを企画すべきであると考えている。

 現在、日本の鉄道ファンは、約2000万人とも言われ、鉄道旅行を始として、模型制作、写真撮影、グッズのコレクターなど幅広いジャンルに広がっている。

 また、全国各地には、SLなどの鉄道車輌を展示しているところが数多くあるが、整備しながら動かせる状態で保存しているところは、数が少ない。

 鉄道車両を動かせる状態で保存しているところ、所謂動態保存をしているところは、群馬県の碓氷峠鉄道文化村(運行距離:600m)が最大規模で、青森県の大畑線キハ85動態保存会(同:300m)、石川県のなつかしの尾小屋鉄道を守る会(同:約500m)、岡山県の柵原ふれあい鉱山公園(片上鉄道保存会)(同:300m)などがあり、この他にも千葉県、京都府、福岡県にもある。

 陸別では、展示だけする静態保存のものと動態保存とを組み合わせて、車輌を動かして乗ってもらったり、触ったり、運転したりと一日中遊べるメニューを作る計画である。

 銀河線の廃止後に、現在銀河線で運行しているディゼル車輌や保線車輌、関係機械・機器などを譲り受けて、これらの保存と旧国鉄で使用していた車輌を陸別に集約して、北海道の鉄道の歴史が一目で解る鉄道公園を作ることが我々が実現できる夢と希望である。

 陸別で計画している動態保存が実現できれば、9.8kmを約1時間掛けて往復することになり、世界的にも初めてのことと思われる。

 鉄道ファンだけでなく、道内外の多くの人に楽しんでもらえることを期待すると共に、銀河線の歴史を後世に伝えることも陸別町商工会の役目であると考えている。

 この事業を進めるためには、莫大な費用と人的エネルギーが掛かり、又法的手続なども必要である。陸別町行政と連携を取り、関係諸機関の協力お願いしながら、出来ることからスタートさせ、一歩一歩着実に前進して行かなければならないと考えている。

 

5.陸別町の観光事業による活性化

 観光事業だけでは、町の活性化を図るのは難しいことであるが、上士幌町糠平温泉では、観光を含めた事業展開で、活性化を進めている。近年、糠平温泉では、観光客が激減し、かなりのホテルが廃業している。新たな観光資源開発に目を付けたのが、旧士幌線のアーチ橋である。昭和53年に旧士幌線の一部が廃止になり、森林資源開発のための鉄道のアーチ橋の使命が終わた。レールが撤去され、アーチ橋が無用の長物となったが、東大雪の自然との融合を考えた民間団体が、行政と共にアーチ橋の保存による観光資源を生み出している。このアーチ橋は、北海道遺産に認定され、糠平温泉の観光事業も順調とはいえないまでも回復傾向にある。

 一方、陸別町には温泉も無く、これと言った観光資源が無い。しかし、東大雪程ではないが、手付かずの自然がある。日本の公開されている中では、最大級の直径1,150mmの反射望遠鏡を備えた天文台もある。

 銀河線が廃止になって、この鉄路を剥ぎ取ってしまうのではなく、既存のものとの融合により、鉄路を活用した総合的な観光資源の開発をすべきであると考えている。陸別駅構内での静態保存と動態保存、トロッコ運行などによって、そこから生れる新たなシーズの掘り起こしにより、新規事業の開発が可能となる。このことが、陸別町の活性化に繋がるものと確信している。

 自然と鉄路を組み合わせた新たな観光資源を一つ一つ大切にして、行政、民間企業、町民が一体となって、これらの事業を推進することが不可欠であると考える。

                       以 上

 

 

      B「えちぜん鉄道再生と岐阜市内線の復活」

       清水 省吾 氏(NPOふくい路面電車とまちづくりの会(ROBA)事務局長)

 

■2001年当時の福井の交通事情

■ヒゲ線廃止問題と トランジットモール構想

■路面電車とまちづくりを考えるフォーラム

■京福電車存廃問題が発生

■「負の社会実験」

■ROBAの情報提供活動

■ROBAの提案

■市民団体による「乗るしくみづくり」 

■えちぜん鉄道による「乗るしくみづくり」

■県による「乗るしくみづくり」

■福井市による「乗るしくみづくり」

■全国都市再生モデル調査事業

■トランジットモール社会実験

■日本と世界の路面電車展

■福井鉄道の隠れた存廃問題

■存続・LRT化へ

■福鉄の新しい動き「再生・LRT化」

■ROBAの「LRT化推進活動」

■持続可能なまちづくり

■京福電鉄存廃問題がもたらしたもうひとつの動き

■その後の動き

追加報告 名鉄岐阜3線の存廃問題と存続運動・再生の取り組み

■岐阜市内・揖斐・美濃町線存廃問題と存続運動の経緯

■岐阜市内・揖斐・美濃町線再生の取り組み

■名鉄岐阜4線廃止の影響

 

 

 

【しみず清水しょうご省吾氏・プロフィール】

1960年     大阪市生まれ、富山県育ち

1984年     甲南大学経済学部経営学科卒業

 

・ディベロッパー勤務を経て2000年より市民活動に参加。現在、特定非営利活動法人ふくい路面電車とまちづくりの会(ROBA)事務局長。および、路面電車と都市の未来を考える会・高岡(RACDA高岡)幹事、特定非営利活動法人全国鉄道利用者会議理事を務めるなど多くの市民活動に参加している。これまで福井県における京福電車存続運動など全国的に鉄道の再生の活動に携わってきている。

・著作は「どうする? 鉄道の未来―地域を活性化するために」(鉄道まちづくり会議編・緑風出版2004年共著)、「月間自治研9月号」(自治研中央推進委員会事務局発行2005年「地方鉄道の抱える経済的障壁」の執筆を担当)など

 

 

<資  料>

 

2005年11月12日長野県上田市

第2回全国鉄道まちづくり会議上田市大会

報告資料

北海道「ふるさと銀河線再生!」活動報告

報告者 ふるさと銀河線再生ネットワーク

事務局長 中川 功

 

氓モるさと銀河線の紹介

1. 旧国鉄 池北線(池田〜北見間140km)1910年開通

2. 1989年 第三セクターふるさと銀河線運行開始

3. 沿線1市6町の人口約15万人 年間乗客数45万人

4. 北海道ちほく高原鉄道 (株) (社長 神田孝次北見市長)

・資本金約5億円 ・従業員87人

5. 年間赤字 3億3400万円(2004年度)

6. 2005年4月21日 北海道運輸局に廃止届を提出

7. 基金の状況 第三セクター発足時82億円

・2003年度56億円

 

赤字の原因

1. 自家用車の普及、沿線自治体の人口減少、通学高校生の減少による乗客数の減少

(1989年度90万人 ・2004年度45万人)

2. 会社の放漫経営、増収努力不足

3. 施設・車両などの維持更新費用の発生

 

オ廃止届提出の背景

1. 国のゼロ金利政策により、基金の利息収入が見込めなくなった

2. 第2、第3基金の枯渇

3. 高速道路(足寄~北見間)建設(工事費1300億円)との取り引きで銀河線廃止が提起

4. 起終点自治体関係者の存続熱意の欠乏

5. 起点自治体(北見市)が会社経営も基金も握る集中構造

6. 沿線の世論が道庁所在地まで届かない広域自治体としての特質

 

「存続再生派と廃止派との攻防

○存続派と廃止派の構図

・廃止派@北海道庁…高速道路建設のため、廃止を強く主張。

A廃止派自治体…自治体内にJRがあるため、銀河線不要論者が多い(2自治体)。

B中間派自治体…自治体内に銀河線しかないが、存続の熱意がない(2自治体)。

・存続派3自治体…銀河線廃止は一層の過疎化を招くと危機感をもつ。

・ 存続派住民組織…地域別組織―「ふるさと銀河線存続運動連絡会議」→ふるさと銀河線再生ネットワーク」

○前期の攻防(04年3月まで)

・「ふるさと銀河線関係者協議会」…道庁と1市6町首長で構成

・1市6町…第4回関係者協議会に簡易高速化構想を提案(03.11.23)

※ 第5回関係者議会協議会で「年間赤字額の1/4負担」を表明(04.2.11)

・道庁…03年度中に廃止結論を出す予定をあきらめ、1年先送り決定(04.3.21)

・住民組織の結成

@ ふるさと銀河線応援団(陸別・札幌;03.8)。

A ふるさと銀河線に特急を走らせる会(陸別・本別・他;03.10)。

B ふるさと銀河線の存続を願う足寄の会(足寄;03.11)。

C 地域通貨を考える会(置戸;03.12)。

D 鉄路を考える会(北見;04年2月)。

E ふるさと銀河線存続運動連絡会議(沿線の組織が一堂に会して設立;04.3.6)。

・住民組織の活動

@『簡易高速化・特急導入構想』提案,第4回関係者協議会に議題提起。

A費用便益分析試算公表(約13億円)。

B道知事の試乗に合わせた要請行動。

C地域通貨による財源創出提案。

Dバス転換の甘い罠(逸走率を考慮した赤字額2.5~2.8億円)公表、第5回関係者協

議会に問題提起。

E大規模な存続決起集会を開催。

○中期の攻防(04年4月〜05年3月)

・「ふるさと銀河線関係者協議会」…13回の協議会で廃止結論を強行(05.3.27)

・存続住民組織…「ふるさと銀河線存続運動連絡会議」による活動展開

・住民組織の活動

@知事・会社社長へ公開質問状提出。

A「残そうよ!ふるさと銀河線」募金活動。

B内閣府へ「地域再生構想」提案(詳細口述)、説明会開催。

C地域再生計画提出を沿線首長へ要請。

D第6次構造改革特区で「DMV特区」「コミュニティ・ファンド特区」提案。

E銀河線パックツアーを主催。

F「銀河線は残せる」の財政シミュレーションを意見広告。

G16億円鉄道用地の自治体への売却による運行資金確保の提案。

H大規模な廃止反対集会を開催(3回)。

○後期の攻防(05年4月〜現在)

・「ふるさと銀河線再生ネットワーク」結成(05.4.17)

・住民組織の活動

@ 学習会の継続的な開催(現在まで述べ5回)。

A 運輸局の意見聴取会に150人の陳述希望書提出。

B 道庁・沿線自治体は廃止繰上げ賛成、銀河線再生ネットは廃止繰り下げを主張、国土交通省は廃止繰上げを認めず。

C 住民組織は会社株主総会で、社長から「継承会社があれば交渉に応じる」との言質をとる。

D 新鉄道会社 (株)「銀河の森」設立要請(不調)。

E 国会質問、質問主意書(荒井聰議員・紙智子議員・松木けんこう議員)。

F 道議会質問(自民・民主・共産・フロンティア)。

G 新鉄道会社出資予約運動。

H 岡山電気軌道 (株)誘致運動。

I 国土交通省鉄道局要請活動。

J 知床世界自然遺産登録で銀河線エコツーリズム振興を斜里町長に要請し理解を得る。

K 「岡電」・道運輸局・会社への署名運動実施(3週間で約13.000人署名)。

L 道庁に@バス基金(50年分)要求 ADMV運行の場合の赤字額試算要求。いずれも拒否回答。

M 第1基金49億円のバス転換などの違法支出をめぐり住民監査請求提出(詳細―後述)。

・今後の重点活動

@ 知床への観光客の分散を図るため、銀河線を活用したエコツーリズムの振興。

A 岡山電気軌道(株)の誘致と新会社出資予約運動の継続。

B 住民監査請求によるバス転換・鉄路撤去の阻止を支援。

 

」住民組織の対案活動

・基本的視点―これまでの全国の自治体政策のなかに、抽象的交通政策はあっても具体的鉄道経営

政策はなかった。このため、鉄道廃止反対だけではなく、鉄道経営の赤字補填の財

源創出を研究し、提言した。しかしいずれも不採用。以下はその対案。

1 地域再生構想(04年6月内閣府へ提出)

内閣府が所管する「地域再生構想」は、特区認定や支援措置を講じることにより、国が地域の 取り組みを支援する仕組みで、個人や民間団体も提案できる。内閣府が構想を認め、自治体が「地域再生計画」を提出すれば、事業を実施できる。私たち住民 組織は「知床・オホーツク・十勝観光へは ふるさと銀河線で!」を主題とし、

@札幌〜 北見〜網走〜斜里への直通特急の運行と

ADMV(後述)導入により知床をはじめ北海道全体の観光客の増加と分散化を図り、銀河線の運賃増収を図ることとし、さらに減価式地域通貨(後述)とC「コミニュテイ・ファンド」(後述)の導入により銀河線赤字を補填しようとした。内閣府は私たちの構想を「地域再生の趣旨にふさわしいと評価したが、一部沿線自治体の反対によって、日の目を見ることができなかった。

 

2. 減価式地域通貨

1932年、オーストリア・ヴェルグルの町で実施した地域通貨を再現し、銀河線の赤字補填財源を創出しようとするもの。この地域通貨は、毎月1%下落させるもので、これを導入したヴェルグルの町ではこれを財源に1500人の町民の雇用を創出した。かりに銀河線沿線7自治体で10億円の地域通貨を発行したなら、1億2千万円の財源を生むことができる。地域通貨の複数回流通は2003年、北海道留辺蘂町が第2構造改革特区で提案し容認を得ている。

   現在、私たちは「乗車券付地域通貨」(5回程度通常の地域通貨として市中を流通させ、最後に銀河線乗車券として消費する)を研究中。

 

3. DMV(デュアル・モード・ビィークル)特区

2004年、一部自治体の反対で「地域再生構想」が実現できなくなったため、私たちは同年11月、第6次構造改革特区で、「DMV特区」「コミュニティ・ファンド特区を提案。DMVとは、JR北海道が開発した道路と鉄道を走行する車両である。1両1億3千万円の客車と比較して、マイクロバスを改造したこの車両は2000万円と安い。道路も鉄道も自由に走行可能であるため、列車からバス等への乗り換えは不要となり、高齢者の通院には最適な乗り物である。また観光での利用も期待されている。私たちは、このDMVを銀河線で運行させるための特区を提案した。国土交通省は最終的には法律改正せずに現行制度で走行することを容認した。

  DMVは現在、JR北海道により石北本線北見〜網走間で試運行中、06年秋にも実用化する見通し。04年11月道庁はこの提案を「実現性に乏しい」と拒否した。

 

4. コミュニティ・ファンド特区

  現在、自治体基金(預金)は、ゼロ金利 の 決済用預金として銀行に預けられている。「コミ ュニティ・ファンド」は複数の自治体が基金を持ち寄り、右図のように環境政策を重視する自治体に1%の利息で10 年間融資する。現在国債(10年物)金利が1.5%だから借りる自治体も金利を節約できる。この特区提案に対し、総務省は 直ちに容認、金融庁は・法務省は出資法違反の疑いがあると抵抗したが、第3次回答で「現行制度で対応可能」と容認した。

  したがって、右図コミュニティ・ファンドは 銀河線にかぎらず、全国の地方鉄道はもちろん 一般の自治体でも財源創出として活用できる。ただし、右図のうち、個人からの貸付金は認められておらず、今後の課題である。

 

5.住民監査請求

 銀河線には、北海道と沿線1市6町が積み立てた49億円の第1基金がある。17年前、これを当時の利率5.4%で銀行預金し、この利息2億6千万を赤字補填財源とした。今回、道と沿線自治体は、基金の元本を取崩して、代替バス・レール撤去費用に充てようとしている。これは基金の目的外使用であるにもかかわらず、道は道議会の決議を経ることなく支出しようとしている。このため10月17日「銀河線住民監査請求の会」は、これを地方自治法96条、237条違反として住民監査請求した。

   銀河線再生ネットは、49億円の基金の1部を活用し、1〜2年間の継続運行を求めている。そして、その間に上記の対案を実行し、銀河線の永続運行に繋ぎたいと考えている。

 

 

     メッセージ   

〔ご紹介〕北海道教育大学 助教授(地域交通政策論担当) 武田 泉

 

「池北線からふるさと銀河線への軌跡を見つめて」

 東京生まれの者にとって、北海道の鉄道とりわけローカル線へは、格別な思いがあった。その不思議な魅力は一体どこにあるのか探求しようと言うことで、いつの間にか北海道民の端くれとなってしまった。

北海道に移住したのが丁度、国鉄改革により分割民営化したJRが発足した当時のことで、その際道内の鉄道地図から相当数の路線が一気に消え、背骨だけの寂しい姿になったことが昨日のことのように感じられる。

「長大4線」とされた池北線や名寄本線等についても、池北線を除いて全てバス転換された。中央での政治決着(当時「金丸・田辺会談」とされた)を受け地元が決断した結果と伝えられたが、第三セクターとしての鉄道存続とバス転換との差異がどこにあるのか、について研究しようということで地元の役場回りをしたのだが、ついに決定的な要因を見出すまでには至らなかった。

そして今回の、第三セクター鉄道としての鉄道存廃をめぐる論議が、いかに紆余曲折したのかに繋がる。とある行政機関の「オウム返し」のさえない返答、道内での地域間対立と温度差、「熱しやすく冷めやすい」道民性、道都札幌に伝わらない無念さ、津軽海峡で分断された有益な情報……、この2年間、悔いても悔やみきれないことは沢山ある。

道外に目を転じても、廃止され錆付いたレールが散見され、大変残念なことである。しかし、銀河線の命運はまだ終わってはいない。あと1ヶ月は列車が走り、大勢の人が乗りに来る。また、陸別では保存鉄道の構想もある。とにかく今はレールを剥がすことなく、保存することが大切ではないだろうか。

環境重視社会における鉄道の新たな役割の発見、そうした政策の転換や時代の転換点は、すぐそこまで来ている筈である。我々はもう一頑張り、奮闘できないものだろうか。レールを保存し、鉄道を復活させる運動を全国的に連帯し、展開させることは出来ないものだろうか。

道路特定財源や道路建設のあり方が問い直されている今こそ、全国へ向けて強く訴えていくべきではないだろうか。

 

全国鉄道利用者会議HPより(清水省吾)

地方鉄道の問題について

 ■表面化した問題

国土交通省が地方鉄道の維持のあり方を検討する専門委員会を設置しました。廃線案が浮上している上田交通別所線をモデルに、今年度末までに地方鉄道の再生に向けた提言をまとめるそうです。

この、上田交通の廃止問題というのは、実は京福越前線の存廃問題でも出てきた鉄道総研による「安全検査」(正式名称が別に有ります)の問題です。京福越前線の存続に必要な金額の見積もりが114億円から一気に150億円超に跳ね上がったのと同じものです。

鉄道総研は、今年度と来年度の2年間で全国のすべての地方私鉄で、この「安全検査」を実施します。上田交通ではそのため親会社の東急が事前調査を実施した結果、鉄道総研から指摘されるであろう箇所の補修に15億円かかることが判明しました。しかし上田交通ではその費用負担を行う財力が無く、東急も地方子会社の支援は行わない方針で、沿線唯一の自治体である上田市も負担できる状態ではなく、そのために廃止が浮上したというのがこの上田交通問題です。ちなみに上田交通は鉄道部門は赤字であるものの、会社としては黒字を保っており、地域において立派に機能しています。

道路の補修なら、地方交付税の基準財政需要額というところに算入して国に必要額を申請すれば、そのまま地方交付税として降りてきます。しかし鉄道への投資は基準財政需要額の算入対象ではなく、また、黒字の地方鉄道は近代化補助の対象外で、鉄道に税金が投入される道筋がありません。

※グレードアップを伴わない補修は赤字路線でも近代化補助の対象にはなりません。

全国の地方私鉄は黒字でも赤字でも線路状態は同様で、安全検査によって必要となる費用は十数億から数十億、百億といった単位になると考えられます。よって今のままではこの2年間で多くの地方私鉄が廃線に追い込まれることが予想されます。

この問題は私がうかがった某県の某電鉄会社も例外ではなく、安全検査が今年実施されますが、親会社も資金的援助は行わない方針で、県総合交通課もこの安全検査の実施を理由に「LRV導入どころではない」という立場をとっています。

そこの鉄道部長さんも国土交通省に交渉に行かれたそうで、「普通は地方私鉄には補修を行う体力が無いが、指摘項目を補修しなくても運行しても良いということか」「そういうわけにはいかない」「では補助制度を創るのか」「それはしない」「ではどうするのか」「・・・・・・・」という会話が行われたそうです。

実はJR可部線の廃線問題も耐用年数を過ぎたトンネル・橋梁・崩落危険箇所の擁護壁の更新を行う枠組みがJRにも地方自治体にも国にも無い状態の中で、それぞれの同意によって廃止を決めた側面があります。これも地方交付税制度の問題で、跡地を道路に造りかえれば国から地方交付税が必要分だけ降りてくる事になり、どうしても地方としては鉄道廃止・道路整備を選択することになります。そしてこれは全国の地方線区全体の問題です。

実は国やその周辺が動いているのはこのあたりの問題が表に出てきたからで、今までのように実状を伏せて問題を処理することが出来なくなっているということのようです。われわれとしても、ここであと一押し、二押しが必要というところでしょう。

■利用者もサポーターに!

私たち、鉄道の利用者は、鉄道の利便性が向上すれば、日常の移動に鉄道の利用を選択する機会が増えると思います。また、多くの人に鉄道を利用してもらうためには、車両の改善、地域整備と連動した、多くの人が使える便利な駅の設置等、もう少々魅力が必要だと思います。私たち利用者はそのために鉄道に税金を投入することに同意する必要があります。サポーターとしても協力する必要があります。"乗る運動"と"ハード整備"は車の両輪です。

現在の鉄道維持の仕組みも、地域(住民と市町村)が自らの意思で、税金を投入し、利用促進を行って鉄道を残し、支えると決めた場合は、都道府県もそれを支援し、国も支援するという形を採っています。

鉄道はもともと大きなポテンシャルを持っています。きちんと行政が関与して整備し、ポテンシャルを引き出すことが重要です。そして、私たち鉄道の利用者はその鉄道をますます利用し、自分たちで支えて行く必要があります。

■案外知られていない事実

今各地で問題にされているのは鉄道の赤字ですが、そもそも鉄道の独立採算制は世界的に見て異例です。また、日本でも独立採算制が成立したのは過去のことです。というのは、現在、地方の鉄道のほぼ全てが赤字なのです。どこも赤字でありながら大きな役割を果たし、社会資本として現在も地域の経済・社会に貢献しています。実は、バスの経営状態はもっと深刻です。全国のバス会社の約8割が赤字で、全国のバスの利用者の減少率は鉄道の利用者の減少率よりはるかに大きく、路線撤退も鉄道よりもバスのほうがはるかに多いのです。鉄道の廃止路線を引き継ぐ代替バスの乗降客数は一般に鉄道時代の5割ぐらいに減るといわれていますが、岐阜県で最近廃止された名古屋鉄道の路線では代替バスの乗降客数が鉄道時代の約1割に落ち込んだ例もあります。公共交通の捉え方を変えなければ全ての地方から全ての鉄道とバスが失われます。

今、全国的に鉄道に税金を投入することを考える時期に来ています。国土交通省も鉄道行政を見直す時期に来ていると指摘しています。中部運輸局も、鉄道は鉄道として、バスはバスとして残すことを考えるべきだと指摘しています。

ところで、国と地方の道路予算は11兆円、鉄道予算は1500億円で道路予算の1.4%程度(平成13年度予算)。そのうち約半分が新幹線、約半分が地下鉄。地方鉄道は微々たる金額に過ぎません。また、道路予算の50%超は一般財源で、道路特定財源は道路予算の50%未満です。鉄道全体の輸送分担率は25.8%、マイカー普及率の非常に高い某県でも鉄道の輸送分担率は2.7%(平成11年度)あります。地方を含め、鉄道への税金投入は決して不合理ではありません。今後、国にまず、予算配分と地方交付税制度の変更について検討してもらわなければなりません。最終的に必要なのは、各県における交通施設の整備状況を勘案しながら、国から地方に財源を移譲し、各県の判断で、必要に応じて、道路と鉄道への公共投資を選択・配分できるようにすることかも知れません。

いずれにしても、実状を知れば誰もが「おかしい」と感じるような今の政策をもうそろそろ、改めなければならない時期にきたのではないでしょうか。

(清水省吾)

 

 

 

 

 

 

 

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