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世界開発報告(2004)   「サービスが貧しい人々にもたらされるように」

 健康や教育・飲料水・下水や電気のような基本的なサービスが貧しい人々に行き渡らないと、貧しい人々は病気や文盲(illiteracy)から自由になることができない。この問題を解決しなければミレニアムゴールの達成は危うくなる。貧しい国々でもこれらのサービスの供給に成功した例と失敗した例があるが、成功したところでは、その受益者が受けるサービスの質と量の決定に関与しているという特徴がある。ウォルフェンソン総裁がいうように、「少女が学校に行くように促され、親戚や親達が教育過程に関与し、コミュニティが下水システムを有するとき、サービスは有効となる。母親の教育が子供の健康に役立ち、橋や道路の建設が子供の通学に役立つとの開発に関する包括的な視点を持つことができたときに有効となる。」と述べる。このレポートはちょうど、先進国がODAの増額を約束し、貧しい国々がミレニアムゴール達成のため、その政策を改善するよう誓約した時期に発表された。「人間開発を促進するためには、経済成長はもちろん必要であるが、それだけでは十分でない。」と世界銀行チーフエコノミストで経済開発上級副総裁のニコラススターン氏は述べ、「ミレニアムゴール達成のためには、外的資源の投入と、内外資源の効率的利用が必要であり、このリポートは資源のより効率的な利用の実際的な枠組(フレームワーク)を提供するものだ。」と述べている。

  

  サービスはなぜ貧しい人に行き渡らないのか

レポートでは貧しい人々がなぜ安物の(shoddy)サービスしか受けられないかについて触れている。ガーナのアダボヤでは村に学校があるものの、修理がなされていないため、子供たちは4キロの道のりを学校まで歩いていかなくてはならない。エルサルバドルのポトレロスラでは村の診療所は普段は医者も看護婦もおらず、週に2回、午前中に開くだけだと不満をいっている。ジンバブエのムタサ地区の郊外健康センターで出産した女性は出産の際にスタッフに暴行を受けたと訴えている。

このような話はいくらでもある。マリの子供は学校に行くのに平均8キロ歩くし、チャドでは郊外では診療所へ23キロ歩かなくてはならない。世界で10億の人々が水道に欠乏し、25億の人々が下水施設に困っている。

 貧しい人々が受益可能な場合でも、そのレベルは極めて低い。インドの200の小学校をランダムに訪問した際、授業が行われていたのはその半数であった。エチオピアでは教師の45%以上が週1日以上の休暇をとっており、10%は週に3日以上休暇をとっていた。バングラデシュの小学校の診察室では医師の不在率は74%であった。

 

「健康や教育の充実は人間開発に極めて重要である。なぜならこれより人間開発に資するより公的な支出はないから。」とジーンルイスサビブ高級人間開発副総裁は述べる。「中東や北アメリカ地域は他のどの先進地域よりも教育にお金を使ってきたが、世界でも文盲率は高い。この地域の少女の分盲率はサハラ以南のそれと変わらない。」

 

 サービスは貧しい人のために働くことができる

 レポートは成功例にもふれている。インドネシアでは1986年までに就学率を2倍の90%とするため、学校建設と教師雇用に集中的に資金を投下した。ウガンダでは5年間で小学校へ通う子供は360万人から690万人に増加した。メキシコでは貧しい人がクリニックの定期訪問と子供の通学に対し資金援助を行ったところ、子供の罹患率が20%低下し、少年の中等教育率が5%、少女が8%それぞれ上昇した。

 「サービスは貧しい人々がサービス制度の中心にいるときに、また提供者が貧しい人々に寄与するインセンティブをもち、その声が政治家によって聞きいられるとき低品位なサービスを回避し、機能する。」とシャンタジャバラジャン世界開発報告編集長は述べている。

 

 レポートがふれるサービス改善の3つの方策

1.            貧しい人々が、サービス提供者を監視し、制御できるよう、サービスへの選択肢と参加を増加すること。

学校バウチャー制度―コロンビアの貧困家庭向けプログラムやバングラデシュの少女奨学制度(学校に対し、就学する少女数に応じた援助を行う)は提供者に対する受益者の優位性を確立し、就学率を高めた。エルサルバドルでは父兄が定期的に学校を訪問するコミュニティ運営学校が教師の休暇率を低め、学業成果を高めた。

 

2.            投票や情報利用により貧しい人々の声をより拾うこと

インドのバンガロールでは貧しい人々への水・健康・教育・運輸におけるサービス提供が近隣の地域に比べ質的に劣っているという調査結果が、よりよいサービス提供への要求となり、政治家を動かすことになった。

 

3.            貧しい人々へのサービスの提供の効率性に報償を与え、非効率性に罰を与えること

内戦の余波で、カンボジアは主要保健所(primary health providers)を国内2地域に、地域の家庭の健康状態(独立調査に基づく)に応じ作った。これら地域での健康指数(貧困者の利用度)は他の地域に比較し、上昇した。

 

公的サービス対民間   無益な議論か?

コミュニティに保健・教育・他のサービスを提供することは、政府サービスの大型民営化との戦いという議論の真っ只中にある。レポートでは公的サービスには色々な問題があるものの、政府がすべてを民間にゆだねてしまうのはよくないと述べている。個人が自己調達のみに頼ってしまうと、その提供者は受益者が本当に望むレベルの教育や保健サービスを提供することはない。これは理論上だけでないのであり、子供の余命率の上昇や初等教育における顕著な進展を政府関与なしになしとげた国はない。

 

さらに、民間の保健・教育・インフラへの参入は特に貧しい人々の利用に問題がある。民間への過度の依存はいずれにせよ好ましくはない。

 

「民間対公的という議論に深入りするより、問題は主要サービスの提供メカニズムが、貧しい人々のサービス提供者に対する監視・制御(discipline)能力を強化しているか、政策決定でその声を拾っているか、家族に必要な効率サービスとなっているかである。」とリタ・レイニッカ

本報告副編集長は述べている。

 

報告では、「政府がそんなに非効率ならなぜ援助を増やさなくてはならないのか、民間への援助を選択する」といくつかの援助国がいっているとする。

 

このような態度は正しくないとレイニッカ氏はのべる。「援助が良好な政策と組織を持つ国では有効であるという主要調査結果があり、またこれらの政策・組織も改善されている。この報告でのべられた改革(被援助国と援助組織へ向けた)により、一層生産性は上昇させることができる。」とのべる。

 

政策と組織が改善されると、ミレニアムゴールような貧困削減の相互共通目的達成のため、援助は増えるだろうと報告はのべる。同時に効率性を追求しない公的支出増加は受益を増加させない。公的支出の生産性は多くの国で変わりつつあることが広く知られている。エチオピアやマラウィは一人当たりでは同じ教育費を支出したが結果は大きく変わっていた。ペルーとタイでは支出は全然違っていたが、得られた成果は同等であった。

 

報告では、ひとつの例がすべてにあてはまることはないとする。サービス提供のメカニズムは、サービスの性格や国内の環境に応じて決められる必要がある。例えば、免疫のようにサービスが監視しやすく、ノルウェーのような政策の貧困でない国であれば、サービスは政府により直接に供給されるか、民間委託される。しかし資源が縁故によって配分されるような国の政治で、監視しにくい学生教育のような事業では、受益者の力を最大限にできるような調整(arrangements)が必要である。コロンビアやバングラデシュのようなバウチャー制やエルサルバドルのコミュニティ運営学校、メキシコの「プログレサ」のような透明性の高いルールに即したプログラムが貧しい人々のために機能しやすい。

 

 

  

世界開発報告(1999/2000)より

1.包括的なフレームワークについて

 世界銀行では従来、ワシントンコンセンサスとよばれる自由市場至上主義を開発戦略の中心にすえてきた。しかしながら、市場開放による戦略は必ずしも効果的に機能せず、世銀が考えたようなスピードおよび効率性を発揮することが出来なかった。

貧しい国は市場至上主義において、経済の進んだ国より経済発展は早いはずであるが実際には1870年から1985年の間に豊かな国と貧しい国の一人あたり所得比率は6倍に拡大した。(P21)

世銀もこの事実は認めざるをえなかった。

現職のウェルフェンソン総裁はこのワシントンコンセンサスを放棄し、新しい包括的フレームワークとして「包括的フレームワーク」を採用する。

包括的フレームワークは下記の4原則からなる。

●援助機関ではなく、国が独自の開発戦略を有し、目標、時期、開発プログラムの順番を定めるべきである。

●政府は開発の要求項目を明らかにし、プログラムを実施するために民間部門、NGO,援助機関、および市民社会の組織と協力関係を築くべきである。

●持続可能な国家的支援をひきつけるために、要求項目と解決方法に関する長期的な、集合的な視点が統合される必要がある。

●構造的な関心と社会的関心が、マクロ経済的、金融的関心と平等にかつ同時に取り扱われなくてはならない。

DAC(OECD開発支援委員会)はこの包括的フレームワークを認めるとともに具体的に以下の4つの目標を設定する。

またこのフレームワークは以下の4分野からなる。

●構造的要因は公正で、有能な政府の汚職撲滅の公約、効率的で公正な法制度および司法制度によって支えられた強力な財産権や人権、透明で適切に監督された金融機関、強固なソーシャルセーフティネットが含まれる。

●人的資源開発は普遍的な初等教育と強固な中等、高等教育制度、家族計画と児童ケアに焦点をおいた健康制度を含む。

●物的問題は効率的な水と下水の供給が中心となる。安定的に電力を利用できること、道路、鉄道輸送および電気通信の利用しやすさ、物的な環境の保全、そして文化的、歴史的な遺産、固有の文化や価値を強化する建造物を保全することを含む。

●分野的要素には、総合農村開発戦略、強固な都市経営アプローチ、そして民間部門への可能性あふれる環境整備を含む。

包括的フレームワークの特徴は被援助国の主体性を認める点にある。この点ではIMFがいまだにワシントンコンセンサスに固執し、当事国の政府を無視した結果、経済復興を遅らせた反省がいかされている。

世界銀行のワシントンコンセンサスへの疑問はすでに91年の段階で認識され始めている。同年の世界経済報告は「市場は真空では運営されない」として市場の広範な不完全性に言及している。

世界銀行ではもはや市場至上主義が普遍の原理であるとの立場はとらない。政府による積極介入が経済発展をもたらす場合があることを認め、その例として日本を始め東アジアの経済発展形態をあげる。(P2、P25)一方で自由化安定化民営化政策が必ずしも繁栄を約束するもので無いことを認めうる。

世銀では開発に関してワシントンコンセンサスを放棄し、市場か政府かという議論は無意味だとする。現代的開発戦略について以下のようにのべる(P3)

●持続的経済発展にはさまざまな目的がある

●開発政策は相互に関連している

●開発において政府は主導的役割をはたすがどの国にもあてはまるルールというものはない

●政策の内容とともに実行過程も重要である

□地方分権

□住宅 

住宅に関しては、住宅が私的財産であることから、民間市場による供給が勧告され、政府の役割は市場が機能しない分野および市場の効率化に限定されるべきとされる。

(グローバルシェルター2000では民間開発業者、ボランタリー機関、地域社会組織およびNGOに住宅供給の役割分担を求めるとともに、コスト削減および需要変化への積極的対応のため土地、建材、資金調達、建設を含む住宅供給の多くの面を市場諸力にゆだねるとともに、地域社会組織の住宅供給における役割が強調される。)


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