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  日本の住宅政策

  T賃貸住宅政策について

@    公営・公団住宅の不足について 

A    公営・公団住宅の問題点

(@)資金不足
(A)都市整備公団は解体せよ

  U 市場活性化

@    借家法

A    民間資金の参入

(@)賃貸住宅資金
(A)住宅取得資金
(B)賃貸管理規制

  V 家賃補助・家賃規制
     @日本の家賃水準について

    A補助 

W 持ち家政策
     @ローン減税インセンティブ効果
    A公共住宅の払い下げ
    B地公体による供給

X高速度交通機関

Y定期借家論

Z市場原理主義経済学者の言い分


新たな住宅政策の取組について(建議)


   T賃貸住宅政策について
   日本の公営住宅は国内世帯の5%分が用意されるに過ぎず、残りの賃借世帯は何れかの 民間住宅を探すか、あるいは公団住宅へ応募するしか方策が残されていない。    ところで、日本の賃貸住宅は全体として数的には足りているが(約1割が空室)、その質的な 水準と都市部での不足が問題となっている。    住宅土地統計調査

   @公営・公団住宅の不足について
  公営住宅の不足は極めて顕著である。世界的に見ても公営住宅の比率が5%というほど劣悪な国は少ない。また公営住宅が少ない国では、家賃補助などの手段が用意されるが日本ではこれもない。生活保護があるではないか とうそぶく「市場主義狂信者」も存するが、そもそも低所得者=生活保護という関係が成り立つわけではなく、低所得 で公営住宅の恩恵を受けない住民が都市部には多数存在することに対する対策がとられなくてはならない。

 (*)

住宅土地統計調査では全国平均で公営・公団住宅の比率は約5%、人口集中部で約8%となっている。

借家法による民間借家の保護を撤廃し、市場原理にまかせておけば住宅市場が活性化し、低所得者の住居も保護される というような議論は、低脳欺瞞を通り越して、まともな相手をするだけで口体が汚染されるような議論である。

わが国においては長く、住まいに関する権利が無視され続けているが、公営住宅におけるバックアップがない現状では 持ち家比率が高くならざるをえない。持ち家のない場合の老後の住宅事情が極めて悪いことが、人々を無理やりにでも持ち家 志向に走らせ、本来なら賃貸住宅に住みたい人々にも持ち家を強制してしまう。 住まいに関する不安を除去してはじめて国民の間で、賃貸と持ち家の選択可能性が生じてくると考えられる。

住まいに関する不安を除去する手段は公営住宅だけではない。資金力があれば不公平な取り扱いは受けないという「住宅に関する平等法」 を制定すれば不安はある程度は除去することはできる。しかしあくまでも最大の不安要因は経済的要因である。民間並みの家賃を負担できないものの、 生活保護による生活への公的関与も好まない人々への住宅政策・事情によりホームレス生活を余儀なくされている人々への緊急措置が求められる。
ホームレスは確かに多くの国で都市を中心に見受けられ、ホームレスのいない国は少ないかもしれない。一方で、ホームレスの人が路上で凍死しかねない状況 を見ながら、何も方策らしい方策をとろうとしない政治家がこれほど多い国もまた世界では珍しいということだ。

 (住まいの権利の無視の例)

  高齢者・障害者等の入居の権利保障の無存在

  ホームレス問題の放置



 A公営・公団住宅の問題点

 (@)資金不足

公営住宅の家賃は市場賃料との乖離が大きくなる。それが公的住宅の存在意義であるから。この部分を公的に負担しなければならないが、「現在の日本では、 これに充てるだけの十分な資金がない」ということが議論される。しかしながら都心部では、公有地を利用し、市場家賃の住宅と混合とすれば十分建設が可能となる。

(例)

   市場賃料 u 1,700円 のエリア (首都圏・関西圏などの主要都市 通勤圏)

   60uの住宅 家賃 102,000円/月

   公営住宅家賃     15,000円/月   で一棟の半分を公営住宅とすると

    建築費は u 550,000円   家賃は 55,850円/月(平均)

    金利を考慮しても10年内外で回収可能ということになる。

でこのように主張すると、「今は地公体も財政赤字で不要の不動産は処分してる」から無料で土地を借りるなんて現実的じゃないっていう答えがかえってきます。

(A)都市基盤整備公団(独立行政法人 都市再生機構)は解体せよ  都市整備公団 ご参照

都市基盤整備公団は16/3に地域公団と統合され、都市再生機構となった。主たる業務は従来の公団住宅の保有管理と、分譲物件の販売、都市再生に かかるコーディネイト業務で新規の分譲業務の着手は廃止された。
公団住宅といえば、連帯保証人不要・礼金不要・安価な家賃というイメージがあるが、少なくとも最近の賃貸物件は市場家賃で賃貸されており、その 国民福祉へのメリットは非常に不透明になっていた。
都市基盤整備公団は16/3末で、借り入れが13兆円、これに債券発行が3兆円ほどあって、支払い利息が3900億円あります。で政府補助金が賃貸住宅 を中心に510億円となっています。これも実は3年前には6800億近い金利を払って、補助金を1300億円支払ってましたから、小泉政権になって過去の やりたい放題がばれてちょっとびっくりというところでしょうか。
そもそもこの法人は賃貸住宅事業を70年償却計算で行ってきたものであり、過去何十年にもわたり、年間何千億円という補助金を受け取ってきた理由が不明で あるが、端的にいうと、市場金利を超えた異常な金利に大きな原因があり、あとはその陰に隠れて、天下り体質で運営経費が水ぶくれしていたということになる のである。 公団住宅運営で市場家賃を下回る家賃で住宅を供給していると主張するのであれば、どの物件でどの程度の市場賃料の物件をどのような所得の人に賃貸し、 結果どの程度の赤字が発生したのかを明確にする必要がある。この作業を行って、結果として500億円の補助金が必要でしたというのであれば誰も反対は しないのではないか。公営住宅を補完すべき公団住宅が、このような経営で「公」への信頼度を喪失し、結果として「非効率なので民間でやるべき」という論者 を勢いつけたのは不幸なことである。

   U 市場活性化

   @借家法

賃貸市場に民間資金を導入すれば、賃貸住宅の供給量が増加し、家賃水準を下げることができるとの議論がある。かつて、 「市場原理主義」を信奉する人々は、借家法による規制があるので、市街化区域農地の土地所有者が賃貸住宅を建設するこ とを躊躇し、賃貸住宅マーケットが拡大しない。借家法をなくせば、賃貸供給が増加し、質的にも良好なものが供給されるように なると珍妙な議論を声高に吹聴して回った。(*)
ところが、いざ日本の不動産市場にリートや投資ファンドが参入し、民間資金の住宅市場への参入(乱入)が始まっても、彼らの 中に、この借家は旧法ですか、新法ですかと確認したということはまず聞いたことがない。賃貸住宅の供給者はあくまでも投資採 算に興味があるのであって、旧借家法であれば投資採算が不透明で、定期借家であれば投資採算が透明ということは全くないの である。定期借家は、短期借家人に低廉な借家が供給されるなどの限られた場合を除いて、借家人にとって百害があって一利も ないのは明確であるが、その弊害が顕在化するのは家賃市場が上昇局面に入るときである。家賃の上昇局面では、家賃規制を もたない日本では、家主が提示する高騰した家賃を払えないものは借家を追放されることになる。商業用途の借家人をことさらに 借家法で保護する意味はないが、住宅用途の借家人は保護される必要がある。借家人の保護を行っていない国など世界のどこに もないのである。
(*)借家法をなくせという極端な主張から、正当事由を排除した定期借家権を既存の借家権と並存させるべきという主張まで幅は広 かったが、その主張はまるで「市場原理借家読本」でもあるかのように画一的で退屈かつ空想欺瞞的なものであった。現行の借家法 では貸す人が増えず、建て替えもできない(阪神大震災で被害者を増やしたのは借家法だという珍妙な解説が生じてくる)、権利金が 不要なのだから定期借家は貧乏人に優しく、更新時に引き上げられた家賃を払えないものはでていって、生活保護でもうけろというこ とになる。従来の借家人が、更新時に新借家希望者と利害関係に立つという発想自体が空想的な発想であるが、その空想に基づいて 「居住権」を否定する結論へ一気に突っ走るのは幼少時代の境遇によるものか、そのでたらめな理論構成よりも、論者の貧困者への嫌 悪感の理由こそ明らかにしたいものである。

   A民間資金の参入

   日本にはリート市場が構築され、投資ファンドも参入するなど、住宅市場にも民間の投資資金が投入されている。一般投資家の中に    も、低金利の預金市場から不動産市場へ資金をシフトさせる動きが見られる。

不動産は投資対象の中でもインフレに強い商品とされ、インフレ時に選好性が高まるが、昨今の不動産への選好はこれとは違った 動機が見られる。不動産投資は年間7%以上の投資収益が見込まれる場合が多くなっているが、日本ではこの水準の利回りである とキャピタルロスへの懸念が非常に小さくなるケースが多い。それは昨今の外貨投資信託人気でも明らかであり、単年度の収益性が 高ければ、為替リスクなどへの対応はあまり省みられない。一旦投資すると長期投資が前提となる日本の多くの投資家の行動形態の 特徴である。

   (@)賃貸住宅資金

   新規賃貸住宅の取得は従来、公庫融資または銀行ローンが中心である。不良債権をかかえる銀行は、賃貸住宅ローンには慎重なた め、信用余力が大きい企業・個人以外は公庫融資を利用するか、他の調達手段を用意しなくてはならない。

新しい流れとしては住宅不動産への投資ファンドの登場がある。投資ファンドの中には、ポートフォリオとして自己所有を行うものと、不動産 を裏付けとした証券を発行し、投資家へ販売する不動産投資信託形態のものがある。

賃貸住宅融資債権の流動化も進んでおり、賃貸住宅へのノンリコースローンを集めてMBS(モーゲッジバック証券)を発行する試みも行われている。

住宅金融公庫についてはこちらを参照

   (A)住宅取得資金

   住宅取得資金につき、公的な補助は多くの国でなされている。日本でも住宅金融公庫が中堅所得者の住宅取得資金融資に寄与している
とされているが、その貢献度はつぎ込まれる巨額の補助金の割には不透明である。

   (B)賃貸管理規制

   現在日本には賃貸管理に関する消費相談の専門機関が存在しない。早急にこの機関を設立する必要がある。

  V家賃補助・家賃規制

   アメリカにはsection8という家賃補助制度があり、ニューヨーク市やサンフランシスコ市などの大都市では賃料規制が行われている。
日本では、借家法が賃料規制の役割を代替してきたが、現在では事実上賃料規制がない状態である。


  @日本の家賃水準について

 住宅市場への過度の干渉が民間賃貸住宅市場を圧迫し、結果として市場縮小をもたらすことは一般的に認知されている。
 適正な賃貸住宅市場の形成のためには、市場にすべてをまかせるのではなく、合理的で透明性の高い規制が必要となる。
「市場原理主義者」が自由市場では供給が増え、家賃が下がるという一方で家賃の上限規制に反対する理由は不明であるが、(下がるんで
あれば賃料の上限規制に反対する理由もないはず)


   A補助(家主補助か借主補助か)
  (補助金か減税か)
   良質な賃貸住宅の供給に関しては、建築費の一部を助成する代わりに家賃限度額を設ける
特定優良賃貸住宅事業が実施されている。
   世界的にも、国庫が直接賃貸住宅供給を担うのはインドなど住宅供給が緊急課題となっている
国々であり、世界銀行でも住宅市場拡大のためには民間資金を導入し、国庫は金利補助等に回
るのが合理的とされている。
   国庫が金利補助等に回る場合、留意しなくてはならないのがその補助対象の効率性である。
長年我が国では住宅都市整備公団(現 都市基盤整備公団)が賃貸住宅市場において重要な役
割を担ってきたが、賃貸住宅により国民福祉に寄与するという名目で漫然経営が行われ、その赤
字が政府支出によりまかなわれたことは記憶に新しい。

  (借主補助VS家主補助)
阪神大震災後の復興支援でも話題となったが、我が国の政治家は個人の生活支援は資本主義原則
を逸脱するものと考えているようである。しかしながら、家賃の借主への補助はフランスを含め、広く諸
外国でもとられており、与党政治家が崇拝するアメリカ合衆国でもバウチャー制としてとりいれられてい
る。
  家主に賃貸住宅建設のインセンティブを与えるために家主の建設費補助を行うことは必要であるが、
同時に基準以下住宅に住むことを余儀なくされる層について家賃補助制度を導入することも必要な場
合がある。

賃貸住宅建設補助金
A)対事業主体

インセンティブ効果
本来、賃貸事業を行う意志が希薄な主体に賃貸住宅建設を行わせる効果
これにより投資を誘引することができる。減税を併用するとより効果は大きい
がインセンティブ効果の検証には難点が残る

B)対投資家
アメリカでは低所得者向け賃貸住宅への投資の一部が税控除の対象となる。

C)公有地の提供
NPOによる賃貸住宅建設に公有地を提供することにより事業採算を向上させ、民間
資金導入を容易にすることができる。
 

公営住宅が5%という寒い状況と賃貸住宅へのインセンティブが用意されない現状
で定期借家を導入すれば居住福祉が向上するというのは詭弁を通り越して、狂信
宗教に近いものがあるのでないか

 W持ち家政策
@ローン減税インセンティブ効果
  ローン減税の効果についてはいくつかの研究がなされている。
       経済企画庁  経済白書
       三和総合研究所
持ち家購入意欲を刺激するとともに、景気回復効果もねらうのであれば有効な政策とも考えられるが、
純粋な住宅政策として 減税にどのような効果があるのか?
  ローン減税は資本コスト引き下げ効果を持つので、結果的には金利引下げと同じ効果をもつが、対象が
現法制では限られており、市場における資本コスト引き下げ機能をはたしていない。減税財源は2兆円といわれ
るが、市場のローン残高15兆円(経済白書)には影響を与えない。

A公共住宅の払い下げ
  公共住宅の払い下げはイギリスをはじめ、社会主義圏の国々でも行われるようになっている。すでにイギリスにおいては
払い下げはほぼ終了している。
  このような政策がとられる背景には国際的に認知されたイネーブリングアプローチがある。イネーブリングアプローチでは
住宅市場にも市場原理が導入されるべきとされ、国は「直接の供給者の立場」から「市場を活性化する法制や原理を取り
入れる役割」にかわるべきであるとする。もっともこのイネーブリングアプローチでもその恩恵を受けない層に対し、手厚い
直接供給が必要であるとの留保もなされている。

B地公体による供給
   株式会社「神戸市」方式の導入
   株式会社「神戸市」方式とはいうまでもなく、地公体そのものがデベロッパーとなり、直接供給主体となるとともに、鉄道など
基盤整備も行うという手法である。結果として神戸市においてはその官民の競合から比較的低廉な住宅供給が行われてきた
とされる。
  世界的な流れとして、住宅市場は地方政府がより実態に詳しいことから、住宅予算・住宅供給は地方が担うべきとの思考法
が主流となりつつある。

(参考)
前田昭彦氏の論文では、建設費補助の効果は公庫の融資より優れるとされる。
氏によると、公庫を経由しての融資は、国庫補助がスルーするだけで、乗数効果はないとのこと。

住宅関連予算は一般会計で約1兆円。うち公営住宅と金融公庫がほぼ4千億ずつ。公営住宅は年間4万戸で一般会計からは
1000万円/戸 の計算。
驚くことに、金融公庫の4000億円の理由は、財政投融資からの借入(平均約5%)への支払い利息の穴うめ。さらに驚くのは
財政投融資自体が一般・特別あわせて約50兆円の運用に対し、2兆円を超える補助を受けているという事実。この事実の前
には、金融公庫の500億の事務委託費って何なんだという気もしなくなる。

もうひとつの都市基盤整備公団の方は10兆円の借入で支払い利息は7000億円。国庫補助が一般会計入れて250億。40
00億円の金融公庫よりましでしょというところで、職員給与が500億。

ということで日本の住宅が貧困な理由の一端は垣間見ることができますよね。

*金融公庫  資金運用部借入 約70兆円
*公団理事の退職金ていくらですか? 民間企業だと責任問題でしょうけど
(参考) 「財政システム改革」
          都市基盤整備公団及び国民?金融公庫ホームページより



X高速度交通機関



地価は都心への通勤時間と密接な関係を有している。

  以下の路線の改善について現在 私案(思案?)しています。

    例  宇都宮― 東京

        前橋― 東京

    現在の路線を改造し、表定速度を130Km/h 程度とし、本数を1時間に4本以上とすることができれば、相当規模の住宅用地を供給するこ

とができます。



Y 定期借家論



定期借家論者の常軌を逸した言い分
日本の住宅市場は家賃規制がまったくされてこず、また家賃補助もないという世界的に見てもめずらしい市場である。
また、入居者に対する国籍・年齢等による差別が公然と行われ、入居者・家賃も不動産屋が気分で決められる前近代的構造とな
っている。これはいうまでもなく、自民党支配勢力が町の不動産屋(宅建業者)と結託しているために他ならない。
現在の日本の公的賃貸市場の問題が、その絶対数の不足であるとすると、民間賃貸市場の最大の問題点はこの公然と行われる
入居者差別が「住む権利」をおびやかしているということであり、また諸外国にくらべ 異常な賃貸コスト高(礼金・仲介料)である。

いうまでもなく、公的な住宅供給が5%にとどめられているのはこの民間賃貸市場に賃借希望者を追いやるためであり、また民間で
良質な賃貸住宅が供給されないのは、この弱者に対し、劣悪狭小な賃貸住宅を高額で貸し付けることが採算的に効率がいいからに
他ならない。ファミリー向けの賃貸住宅とワンルームマンションとの収益性の違いを見てみればよい。借家が帰ってこないからファミリー
向けの賃貸住宅はいやだなどといっている地主が本当にいるのであれば、会ってあいさつしてみたいものだ。

都心に住めるようにとのデマ
Fという経済学者は借家法がなければ、都心のアパートの再開発が進み、都心居住が可能になるとする。都心に居住空間ができた場合
そこは都心居住の経済効率のいい人々から回帰していくことになる。ベンチャーでひとやまあてた社長・政治家・芸能人など時間当たりの
ペイがその主要な動機となるであろう。老人たちを追放した空間に経済効率のいい人々が回帰していく。これが正義であろうか?この論者
の議論に何か幼少時代の偏向性・貧乏人に対する嫌悪感を感じるのは私だけであろうか?


Z 市場原理主義経済学者の言い分


住宅政策について、市場原理主義者からの不必要かつ不適切な攻撃が続いている。賃貸借法制に関して、市場原理主義者は、現行の法制が

賃借人を保護しているのが気に入らないと声高に批判する。賃借人を保護することにより、賃貸住宅の供給が不足する結果を招いているという

訳だ。その言い分は「交通渋滞がひどいのは信号が原因なので信号をなくせば渋滞がなくなる」というのと同じで極めて単純な発想である。

そでに、このような市場原理主義的発想は世界的にも相手をされなくなっており、賃貸住宅政策についても、規制を撤廃すれば賃借人の利益に

なるなどの詭弁を論じるのは一部の家主団体の圧力を受けた政治家のみになっている。

そもそも、規制を緩和すれば供給が増えるであろうことは想像するに難くはない。一方で、賃貸住宅に関する規制にはそれぞれ歴史的な意味合い

があるのであって、規制をなくせば供給が増えていいじゃないかと開き直っても始まらないのは明らかだ。

彼らと賃貸借保護主義との対立の原因は明確である。それは彼らが「住まいの権利」を全く認めていないことに起因する。保護主義者は、賃借人

には「住まいを求める権利」また「住み続ける権利」としての「住まいの権利」の保護を重視するが、市場原理主義者はこのような権利を認めない

(あるいは知らない)。「住まいの権利」を全く認めない結果として、住宅はりんごやみかんと同じようになるべくその流通の阻害となる規制を撤廃

すれば供給量が増えて、単価が下がるということになる。契約期間が満了すれば、その時点での市場賃料を払って、住み続けるか、引き上げられ

た賃料が高いと思えば家を出て、路頭に迷うなり、安い家を探すなりすればよいということになる。りんご市場における消費者全体の厚生が規制緩

和を求めるのと同じ理屈を住宅に適用しようとする訳だ。賃貸人と賃借人の利害の調整という作業は経済学の対象とはいえるものでなく、諸外国で

もこの分野に経済学者が踏み込むことは少ないが、なぜか日本ではこの分野での積極的な発言が目立つ。

賃貸住宅に関しては、以下の問題点があると思われる。上に述べたように日本では公的な住宅が少なすぎる。これが結果として、日本における貧

困層及び住宅困窮者の住宅事情を極度に悪化させている。

第二には日本にフェアハウジングに関する法律が全くない点が問題である。賃貸住宅に誰を住ませるかは100%家主の自由とされている。市場

原理主義者が都合のいいときだけ引用してくるアメリカは(そもそも経済の分析は自分の都合のいいデータだけを取捨選択するものだが。都合の

合わないデータから再度モデルを構築し直すより、そのデータ捨てたほうが楽ですからね)フェアハウジングの規定を有している。人種や年齢・職業

国籍で入居者を差別してはいけない訳だ。日本では国籍や年齢・障害での差別が激しく、これらの人々で、公営住宅の入居資格がない場合は、

公団住宅に頼らざるを得なくなっている。彼らへの法的保護が早急に必要である。

第三には、日本には賃貸紛争に関する専門機関が存在しない点が問題である。諸外国では賃料や立退き料、その他賃貸借に関する紛争の解決

機関として働く、コンサルティング機関を有している。ところが日本ではこういうものが存在しない。市場原理経済学者は日本では借地借家法があっ

て、家賃の将来動向が不透明で、判例が継続家賃低廉主義をとるから住宅投資が活性化せず、優良な賃貸住宅が供給されないと主張するが、一

から百まで嘘としかいいようがない。その論者が善意の愚者であれば救いもあるが、貧者をより苦しめようという、彼らのイデオロギーからその発

想を生じているとすれば許されない主張である。

実際に日本の住宅家賃は、ほとんどの場合、市場賃料が徴収されている。新規募集時はもちろん、契約更新時に、家主から一方的に賃料改訂が

言い渡され、賃借人はそれに従うしかない。なぜならその賃料が高いと思っても、日本には相談する機関がないからだ。家主に文句を言いにいくに

しても、日本ではたいていは不動産屋が賃貸人管理を行っているので、彼らが窓口になる。家賃が高いといいにいっても彼らの方がデータを豊富

にもっているので、周りもこんなもんですといわれてはい終わりである。なんなら違う物件紹介しますから引越しますかなんてからかわれるかもしれ

ない。いや家賃を供託するはずだなんていっても、今の日本で住宅の家賃を供託してまで家賃を争う人は極めてまれで、しかもその先の非訟手続

きなり本訴まで踏み込む暇がなければ難しい。

従って、日本の家賃や立退き料に関する不透明性が高いという彼らの主張は正しいが、だから借家法の賃借人保護規定をなくしてしまえという主

張は本末転倒である。家賃や立退き料に関する専門的な紛争解決機関を設置し、問題が生じた際には簡易・安価な方法で解決が図れるようにす

るべきである。これに従来から反対してきたのは情報量で優位に立つ地主側である。現在の借家は賃借人に圧倒的に有利という市場原理主義者

の主張とは裏腹に、市場は家主が牛耳っており、政策も彼らの主張どおりに行われているといえる。さらに、日本では家主が敷金を返さない、修繕

義務を履行しないなどの問題についても相談する機関が存在しない。上記機関にあわせてこの機能を持たせることにより、日本の賃貸住宅をめぐ

る劣悪な環境の大幅な改善が期待できる。

(*)家賃紛争解決に際し、継続賃料低廉主義をとるかどうかについては こちらを参照

第四には、では市場原理経済学者が主張するような継続賃料低廉主義が新規の賃貸を阻害するケースはどのようなケースであるのかである。

日本で住宅家賃に継続家賃低廉が発生しているとすると、それは昭和40年代以前に建てられたいわゆる木賃アパート類であろう。ただ新規の

賃貸住宅が間断なく供給される現状で、これらの住宅の市場家賃がいくらであるのかは判定しにくく、継続家賃だから低いのか、それが市場賃料

なのかははっきりしない。市場原理主義者は明確には主張しないが、実は彼らがフラストレーションを感じているのは、都心の一等地にある木賃ア

パートに賃借人が住み着いているため、開発ができないというフラストレーションであるのではないかと考えられる。なぜなら郊外の木賃アパートの

一部で継続家賃が低廉化していようと、新規の供給が妨げられているとは考えにくく(郊外には土地は豊富にある。需要があればそれを使って供

給が行われるはずである。)、彼らの主張が合理的に適用できるのは需要が高いにも関わらず、土地の供給が限定される都心部ということになる。

都心部の木賃アパートに借家人が住み着き、しかも老人だったりすることによって賃料が払えないため継続賃料低廉主義が発生していることは彼

らにとっては我慢がならないことなのであろう。中産階級の子供として「弱者はその能力によって弱者となったのであるから、そのまま放置しておけ

ばよい。金も払えないなら、都心に住まなくていいんだ」というのが彼らのイデオロギーであり、彼らが代弁する不動産会社の発想である。

さすがにそれをまともに口にすると相手にされないのはわかっているので(相手にされない理由はわかっていないが)、阪神大震災で被害者は増え

たのは借地借家法が原因だなんて珍説がでてくる。

そうであればそう主張する方が話は早い。都市の開発に必要なので、借地借家法の一部を改訂して、彼らに退去してもらうような方策をとってもら

えませんかと。もっともこれは借家人に限った話ではなく、都心には10坪の自己所有の家があって、それが邪魔で都市開発ができないケースもあ

る。借地借家とは関係のない、あくまでも都市開発上の問題なわけだ。

第五には、上とも関連してくるが、老朽化住宅の問題がある。阪神大震災で被害者が増えたのは法律の責任ではなく、安全措置を施さなかった家

主に責任があるのは明らかであるが、家主にその能力がないのであれば行政がこれを代行するしかない。一定の安全基準を満たさない住宅につ

いては行政から改善命令を行い、これが履行されない場合は行政により代執行を行うべきである。日本では消防法や水質に関する規定は存在し

ても、一旦建築確認が行われると、どんなに危険な賃貸住宅でも利用が規制されることがない。これを規制するとここにしか住めない人々の住居

を奪うことになってしまうからである。賃貸住宅に関しては30年程度を経過したものについては3年に一回程度の安全検査を義務付け、家主に修

繕を義務付けるとともに、その履行がなされない場合は代執行をおこなうようにするべきである。家主に経済力がない場合は、先に述べた相談機

関が老朽化認定を行い、住宅の利用を中止するとともに、物件を強制的に販売し、その代価をもって入居者への立退き料を行う必要がある。この

際生じる当面の住宅は、公営住宅を持って行政が責任をもった対応をするべきであろう。

最後に、借地借家人の保護規定があると民間投資が妨げられるという嘘を批判しておきたい。先にのべたように、借地借家法が正当事由制度を

有しているから継続家賃が低廉化しているというのは全くの嘘である。ほとんどの民営賃貸では理論上払うべき継続家賃以上の市場賃料の支払

いを余儀なくされている。 (*)継続家賃だけ払えばよいのかどうかは別

現在、不動産市場には、金融商品に比べて有利な利回りに魅了されて多額の投資資金が投入されている。投入された資金の多くは、新規の賃貸

住宅供給へと向かっている。入居率の変動が大きい事務所ビルに比べ、入居率の安定している住居系物件は人気が高い。投資対象はほぼ建築

後20年程度までである。住居としての投資を考えている投資家にとって借地借家法が新法適用であるか旧法適用であるかは全く興味がない。市

場原理主義者が主張する、「正当事由をたてにした強い借家人」など存在しないのである。市場を有効化するためには、建築後一定の年数が経過

し、入居率が低下している物件を有効に活用する必要がある。これらの物件に関する情報提供のあり方を再検討することも必要であるし、資金を

需要の高いエリアに適正に向かわせるようなデータ提供も必要となる。

 

 


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