検証・不良債権問題
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<不良債権問題

検証・不良債権問題

  2007.4.21改訂

国費による銀行自己資本注入

@問題の所在  

A銀行の将来

B地獄への道 自己査定・金融庁検査

Cりそな国有化

 

不良債権問題概観

1997  山一證券破綻で金融システム不安顕在化

1999/3  金融安定化法により資本注入 1兆7456億円

   主要銀行全行健全との見解(金融再生委員会)

2000/3  金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律

                   7兆2592億円

   長銀および日債銀以外の銀行は健全と認定

   東京三菱は資金注入を拒否

2002/10 金融再生プログラム

 

 

     問題の所在

私は2001.8銀行の将来 について小論を書いています。

「不良債権問題」は何が問題だったんでしょうか?「銀行が不良債権を抱えて貸し出しを渋るから中小企業が困っている」 ってことですか?あるいは「銀行の経営が悪化すると預金者保護に問題がある」ってことですか?
問題の本質が何であるかによって対策もかわってきます。結論からいうと銀行が貸す・貸さないは個別銀行の経営判断であり 、不良債権問題という「問題」があるとすればそれは預金保護の上での問題ということになるのでしょう。

政府はどのような立場なのでしょうか。金融再生プログラムでは「主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生」という副題 がつけられており、政府は銀行の不良債権問題(=金融システム危機と呼ばれる場合もある)が景気低迷の原因であるとの立 場を貫くとともに(平成16年経済財政白書でも同趣旨が述べられている)、金融システム保護で守られるのは借り手や預金者 であるとして、不良債権問題対策の保護対象は預金者でもあるかのような表現をしています。
後にみるように、銀行規制は預金者保護を目的に行われるものであり、銀行が破綻すると借り手が困るとか、銀行が中小企業 への貸し渋りをするので銀行へ資金を注入しなければならないという議論は国際的な議論とはいえません。日本では不良債権 問題がシステム的に発生しており、世界でも例のないことなのだとの主張や、日本は間接金融の比率が高いから特別な対応が 必要なのだという主張もありえましょうが。

経済での議論としては、金融行政で保護されるのは預金者の利益のみです。借り手の保護は議題にも上りません。借り手は金 融機関がおかしくなろうと期限の利益を有していますし、その経営が正常であれば他の銀行にいって融資が受けられるはずだ からです。どこへいっても融資が受けられないのであれば、そもそもそのような企業こそ市場が排除しようとしている企業な のであって、ことさらにこのような企業への融資を円滑にすることに何の意味もないからです。

小泉政権の下で、不良債権問題の処理を銀行に自発的に求めることは、構造改革を遅らせることであり、銀行に資本を注入して でも、不良債権処理を急がせることが日本経済のためになるとされ、ハードランディング政策とされました。不良債権処理を強 制的に押しすすめる政策は実は金融行政の範疇を超えるものです。多くの不良債権を有したままでは預金者保護に問題があると いう議論はもちろん諸外国でもあります。アメリカでは国または地方による規制が実施され、上場銀行についてはSECによる チェックがおこなわれます。

不良債権問題を無原則に拡大解釈し、議論を進めることは好ましいこととは思えません。日本は法治国家であり、資本主義陣営 の一員であるはずです。金融庁が金融再生プログラムで自己査定の強化を主張したことは明らかに「後出しじゃんけん」なので あって、このようなことが無原則に認められると企業経営は立ち行かなくなります。

しかし金融庁の今の銀行への対応を見ていると、その政策が「借り手」の保護には見えません。リスクのある借り手への抜本的な対策を求めています。これは「問題ある借り手」を切り捨てることにより「銀行」の健全化を図り「優良な借り手」への潤滑な資金循環を確保するということなんでしょうか。

私の目には「主要行の不良債権問題解決を通じた経済再生」というよりは政府による産業支配の強化のための金融恐怖支配といった風にしか見えませんが、これはうがった見方なんでしょうか。

 

○過小資本

 

 

民主党なんかの議論は単純で、

不良債権問題は銀行の過小資本が問題

    ↓

過小資本解消のための貸しはがし(資産圧縮)

    ↓

過小資本が解消したらどんどん貸す

 

という具合ですが、不良債権問題が単に過小資本の問題であるなら、増資によって問題は解決したはずです。しかしそうはなっていません。(不良債権問題が解決したとはいわれません)。過小資本が解消されれば銀行がどんどん貸すという根拠はどこにあるのでしょうか。

この辺の事情は日本共産党のほうがよっぽどまともな見識で、「不良債権問題があるから景気が悪い」のではなく、「景気が悪いから不良債権問題が生じる」と正鵠を得た指摘を行っています。

 

日本の銀行の資本増強については金融論の第一人者であるダイヤモンド教授が「借り手が優良で、貸し手も優良である場合でなければ意味がない」と述べている。過小資本に陥った銀行は市場において何の優位性も持ち合わせないためそういう事態になった訳で、そのような銀行が増資を行っても、市場の原則からまた同じ事態に陥る可能性が高い。金融庁もこういう認識から金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律により主要行へ資金注入する際、経営健全化計画の作成を命じたわけです。

 

銀行の金融仲介機能が景気のよい、不必要なときに強まり、必要とされる景気の悪いときに機能しないのは銀行がもつ内在的な矛盾点(借主に取っての矛盾)なのであって何も今に始まったことではない訳です。今、不良債権が増えたからといって資本注入や国有化を行っても何の助けにもならない。景気が悪化したときに信用リスクが高まり、融資行動を抑制するのは銀行の本能なのですから。日本経済の問題は景気が悪いことが問題なのであって、「銀行の過小資本に端を発した金融システム不安が景気を悪くしている」というのはあたらないということです。この議論は銀行への過剰な保護を正当化したい自民党や、逆に原理主義を一気に金融業界に導入し、日本経済の原理主義化を進めたい民主党原理主義派のためにする議論に過ぎないと考えられます。

 

○金融再生プログラム

政府の金融再生プログラム(200210)に対してはなかなか風あたりが強いようです。このプラグラムは具体的には@不良債権比率を2004年度中(2005/3)に半減する。A資産査定を厳格に行うB自己資本の充実を図るCコーポレートガバナンス(企業統治)の強化を主要な内容としています。これに対しては、このような政策がいわゆるハードランディング政策であるとして反対する意見も根強くありました。その意見は、急激な不良債権処理は、企業倒産を招き、却って不良債権を増加させるのではないかというものです。また構造改革という政府の旗印と銀行への試算査定強化の整合性への疑問も提起されました。穿った見方をする人の中には、財務大臣が日本を外資にたたき売ろうとしているとの声もあがりました。

 

この政府方針を受け、UFJ銀行以外のメガバンクは早急に資本増強策を決定しました。三井住友銀行は1500億円の増資をゴールドマンサックスに依頼し(同ホームページ)、みずほフィナンシャルグループは取引先に増資を依頼しました。

不良債権処理を加速しようとする主張の背景には、日本経済の生産性への危惧感があります。日本の金融機関が、採算性が悪く本来市場から撤退するべき企業への融資を続けているのを強制的にやめさせようという政府の思惑があるといわれます。当然その主張に対しては失業問題への対応を問われるので、政府は「セーフティネット整備」や「再雇用のための教育」「起業支援」などの政策を提示したわけです。

 

金融再生プログラムが提示されてから、各銀行は不良債権処理を加速するために、上記のような資本増強策をとるとともに、不採算取引の解消及び処理財源としての収益確保のため、貸出金利の引き上げを行っています。また資産査定強化のため、不良債権としての認定を受ける可能性のある融資の忌避も明確になっています。

 

○景気と金融システム不安

構造改革(structural adjust)を進め、企業の生産性を高める(生産性の低い企業を市場から排除する)ため、不良債権処理(資産査定強化)を進めるという議論は一見正論には見えますが、はたして資本主義国家の中で、このような議論は成り立ち得るのでしょうか?R&D(研究開発)を進め、生産性を高めたり、国際競争を積極的に導入して、生産性を高める政策や、国民貯蓄を勧誘する政策を国家がとるというのは聞きますが、政府が銀行に関与して、その貸し出しを妨げるというのはあまり聞いたことがありません。ましてや今回の三菱東京FGとUFJHDの合併を政府が主導するということも聞いたことがありません。政府が国内の民間銀行を目の敵にするということ自体あまり前例がないのではないのでしょうか。

そもそも、構造改革は対外債務の大きい国が、破綻を免れるためにIMF(国際通貨基金)から借り入れを行う際に強制され(今や過去の遺物)た政策で、公共サービス低下による財政支出の削減・国際貿易障壁の撤廃・減税・規制緩和などがパッケージ化された「構造調整」と非常に似通った内容となっています。

 

○銀行規制のあり方

国際的な議論としては、不良債権問題は銀行の規制の問題として論じられます。銀行は預金者から預金を預かっていますから、銀行が破綻すると預金が返せなくなり、預金者の利益に反します。これを防ぐために政府による銀行経営への一定の関与が正当化されます。通常は各国において、預金保護は預金保険という形でセーフティネットが用意されています。しかしながら預金保険だけでは預金保護に十分ではないため、銀行資産の行政による査定が正当化されるのです。しかしながら今日の巨大組織となった銀行の資産を行政がすべて把握するのはコストがかかりすぎ、またそれは行政が銀行の経営者に成り代わるものであって、必ずしも資本主義社会において正当化されるものではありません。そこで、通常は銀行における資産査定システムの「評価方法」(モデル)を行政がチェックしたり、あるいは一部の大口の資産だけを行政が査定することが妥当であるとされるようになっています。ただ、行政が過度に関与することは、経営者の責任を軽減し、モラルハザードをもたらす恐れがあるため、銀行に関しては一部の保護される資産(預金)と破綻時に保護されない資産(預金)を分割し、預金者も銀行を選別する必要があるという議論がなされるケースもあります。

 

○資金還流

金融システム不安が景気を低迷させているという主張に重複する主張として、金融システムの機能低下により企業への資金還流が阻害され、景気低迷の原因となっているとの主張があります。一方で、銀行サイドからは資金需要がないから貸さないだけとの主張もされますが、政府は財政経済白書の論調にも見て取れるように、企業の資金需要は高まっており、金融システムを早期に健全化しないと景気の足を引っ張りかねないとの立場に立っているようです。

ベースマネーを引き上げたにもの拘わらず、銀行貸出が伸びないのは問題だという議論には説得力がありませんし、貸す・貸さないは銀行の独自の経営判断なのです。銀行貸出が伸びない原因は現在の経済環境は銀行貸出が伸びる状況ではないというだけなのです。無論、銀行の貸出基準は銀行の経営状態と密接に連動していますが、銀行にむりやり増資や国費注入を押し付け、それで審査基準を引き下げてやろうなどという議論は国際的にも稀有な議論であるといわざるを得ません。どうしてもニューマネーの流通を促進しなくてはならないのであれば、それリスクマネー供給策として別途論じるべき問題なわけです。

 

次に「金融再生プログラム」の中身についてふれていきます。

金融再生プログラムの評価

金融再生プログラムは不良債権処理を加速し、資産査定を厳格化するとともに、繰延税金資産の計上なども厳格化し、これに耐える体力のない銀行には公的資金を投入しようとの内容をもちます。このような発想は一般的にハードランディングと呼ばれ、市場原理主義にたつものと考えられています。もっとも、このプログラムは市場に政府が圧力を加え、その市場の力で、銀行の淘汰を進めようとするもので、その中身は政府と結託した一部銀行による金融の国家独占化ともいえるものです。プログラムは、現在機能停止している(と政府が思っている)銀行の機能を復活させようとするもので、一般融資先にさほどの反対があるとは思えません。

これに反対しているのは

       自分たちの自主的経営を続けたい銀行経営者たち

       国有化されると融資を打ち切られる可能性があるゼネコンなど

       一部の市場原理主義者

であると考えられる。一方、これを推し進めようとしているのは

       銀行機能の復活により融資を得られるかもしれない経営者・企業

       金融界の独占支配を狙う勢力(外資を含む)

               ということになる。

現在の銀行経営はまさに「どんずまり」の様相を呈しており、このまま自主経営を続けさせても不良債権の山がいっそう膨らむだけであるのは明らかである。とすれば、徒に銀行経営者に不要な時間を与え、不良債権を増加させるよりは政府による関与を急いだ方がまだ害(=国費投入)は少なくてすむといえるかもしれない。しかしながら、景気の低迷期にルールをかえて、不良債権の認定を厳格化し、その処理の加速を強制する、国際的にも常軌を逸脱したこのプログラムは歴史の評価に耐えられるでしょうか。

 

A銀行の将来

前記の小論では銀行の今後について

@貸出ボリュームの低下

A持ち合い株式の解消  

を指摘している。

ここではこれに追加してB 銀行の長期金融へのシフトを指摘したい。

 

@については大企業による自発的な借金返済の進展と中小企業への貸しはがしの推進が要因であるが、すでに日本の銀行の貸出はピーク時の470兆円から400兆円を切る水準へ低下している。(16年7月現在)

 

(億円)

1993.1

4,491,232

1994.01

4,538,409

1995.01

4,558,185

1996.01

4,634,448

1997.01

4,663,339

1998.01

4,735,569

1999.01

4,741,279

2000.01

4,522,958

2001.01

4,485,045

2002.01

4,347,384

2002.02

4,344,551

2002.03

4,314,529

2002.04

4,272,005

2002.05

4,239,370

2002.06

4,236,409

2002.07

4,228,631

2002.08

4,234,704

2002.09

4,192,933

2002.1

4,194,506

2002.11

4,210,303

2002.12

4,237,849

 

銀行が経営上、貸出収益依存から手数料収益依存へ経営資源をシフトしボリューム追求から手を引き、取引採算の追求へ 移行すること自体は世界の銀行のあり方を見ても当然の成り行きである。

 

世界の銀行経営は国境を越え、金融各部門が複合化した金融コングリマット化へと向かっている。この中で日本の銀行のように個人も法人も住宅ローンも全部引き受けますというのは極めて異質な存在である。

 

     みずほ銀行はこのような流れを受け、法人担当のみずほコーポレートとリテール中心のみずほ銀行を設立したが、みずほ銀行も実際には法人取引を担当しておりこの峻別は中途半端といわざるをえない。

 

参考資料

シティコープと東京三菱の経営指標から分析を試みた

ニッセイ基礎研究所論文

日銀 全国銀行平成12年度銀行決算と経営上の課題

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下は日本の銀行の収益構造を示しています。収益段階での構成比率であるが銀行収益にしめる資金運用収益比率は70%内外に低下していることがわかります。

                          全銀協 資料より

 

億円

H13

比率

H12

比率

H11

比率

H8

比率

経常収益

198,342

 

231,267

 

302,210

 

427,790

 

 

資金運用収益

141,272

71.2

160,134

69.2

187,367

62.0

326,776

76.4

 

役務取引等収益

19,162

9.7

18,560

8.0

17,116

5.7

17,267

4.0

 

特定取引収益

3,663

1.8

3,509

1.5

1,931

0.6

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特定取引収益は平成10年度決算より導入

 

 

 

上記は収益であるので費用控除後の業務純益を意味するものではない。

資金運用収益が減少しているのは金利低下及び資金ボリューム減少が主因である。

 

Aの持合株式の売却についても相当のペースでの売却が進んでいるが、株安に追い討ちされ有価証券含み損は拡大している。

B長期金融へのシフト

日本では1999年1月から2004年6月にかけ、長期貸出(証書貸出)の比率が64%から76%へ上昇しています。これはアメリカとは逆の現象です。アメリカでは、長期資金のうち、大企業向けは社債・中小企業向けは銀行、短期資金のうち大企業向けはCP・中小企業向けは銀行との色分けがあったが、近年長期資金の中小企業向けはジャンクボンドにより市場が奪われており、中小企業向けの短期資金市場が銀行の活躍の場となっています。Straphan

借り手である企業の側でも1997年の金融システム不安の顕在化以降、借り入れの圧縮に努めている。この間70兆円近い資金が銀行に返済されているが、そのほぼ全額は短期資金(手形貸付 約40兆、当座貸越 約30兆円、他手形割引など )でした。(データ 日本銀行)。民間企業では土地その他資産の売却により調達した資金で運転資金の返済を行う一方で、設備投資については利益・減価償却によってまかなっているといえます。今後は、処分可能な資産の減少や景気回復による資金需要の回復により短期資金の回収ピッチは落ちるとは考えられますが、傾向としての長期金融シフトは続くと考えられます。

 

     資本市場改革の必要性

日本では、金融システム不安がいわれながら、その問題点が十分認識されることなく今日まできているように思われます。それは金融システム不安が当然のことながら、景気低迷時に顕在化したため、資金の出し手としての銀行の問題点が表面に出てこなかったという不幸があったのが理由だと考えられます。日本の金融市場の最大の問題点は、間接金融の比率が高い点にあります。間接金融は、個人が十分な企業内容に関する情報を有しないため、それになりかわって審査を実施するという企業審査機能と、流動資産を集めて企業に分散投資するポートフォリオ分散機能により正当化されますが、不良債権問題に見るように、日本の金融機関の審査能力には大きな疑問があります。金融システム不安の解決策として、徒に銀行の不良債権問題に拘泥するのではなく、新たな社債市場の開拓による企業向けの新たな資金チャネルの開拓が必要です。

 

B地獄への道  自己査定・金融庁検査

日本に不良債権問題が存在するとすればその主犯は 自己査定と金融庁検査というシステムである。自己の有する資産の内容を自ら査定する自己査定自体には問題はない。しかし今日の自己査定は特にモラルの低い銀行においては金融庁対策としての自己査定となってしまっている。

 

アメリカの上場金融機関も月次で資産内容の報告をSECに行うことになっているが、資産内容の把握は公認会計士基準にのっとって行われており、SECや他の監督官庁が自己査定のマニュアルを作成するということは行っていない。一時竹中金融担当相がアメリカはDCF法だと吹聴し、日本でも大いに議論されたが、何もアメリカの公認会計士基準は債権評価にDCF法を定めているわけではない。むしろ体力のある一部銀行が、DCF法を導入しても安全なことを前提に一部債権の評価に導入しているのである。

 

Cりそな国有化  上記

D不良債権と倒産動向(もうひとつの不良債権処理策)

不良債権処理のための金融機関向けスキームは金融再生プログラムにより方針が決定された。これに従い国の資本注入を受けるべき銀行としてりそな銀行へ公的資金が注入される予定である。

不良債権処理の問題はスキームの問題として捉えられがちであるが、もうひとつマスコミ等がふれたがらない重要な要因がある。それは「不良債権化債権の出口問題」即ち、不良債権となったマネーはどこにながれているのかである。この日本特有の資金の出口問題を解明し、資金の流出を抑えなくては、まるでざるに公的資金を注ぐように税金がブラックホールへと消える状態が続くことになる。

  表3            (兆円)

年度

リスク管理債権

倒産負債額

処理損

1994

12.5

   5.6

5.2

1995

28.5

       9.2

13.3

1996

21.8

       8.1

7.7

1997

29.8

14

13.2

1998

29.6

13.7

13.6

1999

30.4

13.6

6.9

2000

32.5

23.9

6.1

2001

42.1

16.5

9.7

2002

           34.8

13.8

       6.7

2003

26.2

10.2

5.3

200417.57.32.8
200513.16.10.4

翌3月末      元データ   金融庁   東京商工リサーチ

表3は金融庁公表資料と民間調査機関の調査による倒産企業負債額を表にしたものである。

1995年(平成5年度)に平成不況が本格化し、倒産負債額が60%増となる。これに対応 して銀行側では債権処理を13兆円まで増やす一方、管理債権を28兆円まで増額する。

不良債権問題へ真摯に対応しようとしていたことが伺われる。住専国会の前年のことである。

その後も金融機関では倒産負債額に近い水準の処理を続けているが、1999年のデータに特徴的なのは大型倒産が連発し、倒産負債額が依然高水準に関わらず、管理債権額は増加し ていない。むしろこの年に銀行側では損失処理を半減している。まさにこの年の決算こそ、 圧倒的な不良債権の前に銀行側がまともな経営をあきらめ、不誠実な経営の道に落ち込んで行 った年といえるのであろう。

2000年には倒産負債額は実に20兆円を超過するが管理債権の増加は2兆5千億円にとどまり、 処理損は前年割れの6.1兆円である。この2年間に蓄積された処理不足10兆円(*)及び2001年 の処理不足額5兆円(2001年<平成13年>の倒産負債は16兆円・処理損は年度で9兆7千億円) の処理を進める必要が生じた。平成13年(14年3月期)は金融庁の不良債権の査定が厳格化されため 管理債権は42兆円と史上最高額を記録した。前年比3兆円増の9兆7千億の処理でなお32兆円から42 兆円まで管理債権が増加したのでありすさまじい数字である。 この年に登場したのが小泉で、その後倒産負債額は減少に転じ、不良債権額も減少に転じていく。さまざまな解説が なされるが、ここでは3つのポイントを指摘したい。 第一は、マーケットの環境の改善である。海外の市況悪化で下落を続けていた鉄鋼販価が15年3月期、正確には には14年9月以降上昇に転じる。日銀交易指数 鉄鋼産出指数参照 主たる理由は中国市場の空前の好景気、建設ラッシュで中国・韓国産の鉄鋼が品薄になったことがあげられる。 第二には、企業再編の進展である。14年3月期に金融庁の貸付金査定が強化され、 第二には業界再編がある。重厚長大産業の筆頭である鉄鋼業をはじめ、製造業においても化学・機械などで事業再編が進んだ。一方、小売業でも百貨店・スーパー業界の再編が進んだ。電機については事業再編は遅れたが、各企業はフルラインナップ体制を見直し、収益性の高い事業に特化することによる収益改善を図りつつある。  事業再編といえば聞こえがいいが、これは一方で産業での寡占化の促進でもある。再編による寡占化の促進は価格競争力の強化という形で産出物価格にはねかえる。もっともそれが最終消費財でない場合は、購入者自体も寡占化で価格交渉力を強化しているという面も否定はできないが。  現在、格差問題が取りざたされているがこれは至極当然の成り行きである。産業の寡占化が進めば、市場はいびつな構造になり合理化されえない不平等を生じる。  市場が世界規模で進んでいる以上、日本に特段の選択肢がないのもまた事実である。    第三には、企業の債務圧縮の加速がある。 国民経済計算によると ピーク時の533兆円から370兆円まで下落している。 (SNAの16年確報はHPではストック編がありません。図書購入させるためですか?) 企業の営業余剰はH16年で6兆円増加してますが、家計の給与所得(自営業含む)は横ばいで、これが まさにいま進行しつつある格差社会の実態でもあります。 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h16-kaku/18annual-report-j.html 企業は産業再編と債務圧縮、雇用者への支払いの圧縮で収益性を引き上げる一方、雇用者の所得は引き上げられていないわけです。 ここでは悪し様に企業をののしることにより一時的な快感を味わおうとしているのではありません。この状況自体が世界規模で進行しつつあるのであって、そのことを日本人として認識しなくてはならないということです。 さらにいうなら国内での格差同様、世界規模で格差は拡大しているのであり、収奪の場となったアフリカではGDPの縮小がはじまっているわけです。アメリカと結託した日本がその一因であることはいうまでもありません。

 

*)倒産負債額のうち担保保全部分があるので、全額が回収不能となるわけではない。

  金融庁調査では銀行貸出の担保保全率は50%となっている。

  なお貸倒引当(間接処理)により処理年度と不良債権発生年度にはずれが生じる。

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