世界銀行から「東アジアの復興(East Asia Can Regain Dynamism)」が10月9日に発行された

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世界銀行       東アジアの復興  2002.10.9

 

世界銀行から「東アジアの復興(East Asia Can Regain Dynamism)が10月9日に発行された。この中ではアジア経済の現状と今後の発展の課題が分析される。

この文書は世界銀行の「市場原理主義・汎アメリカ主義」をベースにしているのであるから鵜呑みにする必要はまったくないのであるが、ひとつの提言として参考にするということもまた必要なのではないだろうか。

この文書ではアジアは98年秋に勃発した金融危機をほぼ克服したとの認識に立って、その上で、これらの国々は危機で浮き彫りとなった弱点を克服したのかという問題を提起する。その問題の克服には構造改革の推進と知的分野での開発推進が不可欠であるとされる。

 

 

アジア経済はすでに統合(integration)の時代に突入しており、そのメリットを享受できぬとして脱退し、後戻りをすることはできない。低所得国は中国という市場の生産性との真っ向からの勝負を強要され、また中高所得国とされる日本・韓国などは世界に勝ち残っていくため、研究開発に取り組み、世界レベルでの特許技術を開発しなくてはならない。

アジア市場は高貯蓄とそれを利用しての高投資で発展してきたが、いまや経済構造の改革(innovation)を進めるためには高消費がキーポイントとなる。欧米は娯楽・メディア・教育・医療などへの高消費で社会構造の改革を仕上げることができた。アジア市場の今後の成長にはこれらの要素が必要である。

また特に日本については企業や金融の不採算性の克服が必要である。ベイリー他の調査では日本の建設・小売の生産性はアメリカのそれの40%から60%である。金融部門についても規制の整備・外部格付け導入などで透明化を図らなくてはならない。

ICTinformation communication technology)技術でもアジアに優位性は見られる。携帯電話の絶対数は中国が世界一位で、人口シェアは韓国が一位である。日本でもアイモードなどの先端技術が開発されている。

 

                                                                                                          

第一章       national and regional development context

   アジアの中でも日本や韓国は先端技術開発にGDPの3%を超える資金を投入できる一方で、低所得国にはそれができない。アジアの中でも不平

等は広がりつつあり、不満も増大している。新産業への変革がうまくいっているのは韓国で、労働者の9%が新産業へ移行した。

アジア諸国では高い貯蓄率が高い投資率と工業化の進展を促し、輸出が需要の不足を補うという発展図式をもっていた。

   近年、アジアの新興国では生産拠点と近接した都市住民の需要が安定成長に貢献するという図式ができあがりつつある。その需要がまた生産者の形態を変革する。都市化の進展は医療・メディア・教育などのサービス関連の需要を拡大し、欧米のようにこれらの産業が成長と雇用を決定するというようになりつつある。

   日本は建設・小売の生産性はアメリカの同産業の40%〜60%といわれ、この部門のギャップを埋めることが急務である。

日本でも終身雇用・系列・株主権の海外への開放・不振企業整理などが進みつつある。

金融部門の規制の見直しもまた必要である。日本・韓国・マレーシアでは不良債権処理・自己資本増強・会計基準国際化・商法などの法制整備や他部門での規制緩和が促進された。

金融部門の民営化・外国への開放・外部格付けなどの導入が、金融機関の経営の透明性を高め、競争を促進し、さらにはその融資先企業の合併をふくむ企業再編を促進する。

 

アジア市場ではまた域内統合が進みつつある。WTOの機能が十分にはたらかない現状では二国間協定による貿易推進が進められる。

日本のアジア依存比率は生産で86年の51%から95年には55%に上昇した。これは中国への生産拠点移転などの影響もある。販売にしめる比率も同29%から32%へ上昇している。

 

第二章       国別及び地域別の開発の流れ

   アジア諸国型の輸出振興政策は見直されつつある。この地域では場合によりGDPの50%を超える高水準の輸出が発展を支えるというケースも

   見られた。資本の蓄積を促し、その力を輸出に注ぐこのような政策は、結果として国内の後進産業を生き残らせてしまうことになる。

   この地域は貿易障壁が比較的低く、マーケットはオープンであった。このことが直接投資を積極的に呼び起こし地域の発展を支えた。もっとも

   近年は、多国間協議による貿易振興は限界を見せ始めているため、この地域でも二国間協議がさかんとなっている。輸入品との競争は日本や韓 

   国の例が示すように国内産業の生産性を向上させる。オープンマーケットを経由しての直接投資はハイテク産業などへ流れ込み、これら業種の

輸出振興の役割を果たす。この地域の直接投資はアジアからのものが多く、日本などへの中間財供給の役割を担っている。

 

この十年、日本モデルは必ずしもうまく機能しなかった。グローバリゼーションは構造改革を求める。グローバリゼーションは地域の統合をま

た要求し、結果として各国は地域統合とグローバリゼーションに適した構造に改革する必要に迫られる。一方で、グローバリゼーションは既存

の圧力団体の影響力を弱める。構造改革は目に見える部分だけでなく社会のあらゆる場面で進行する。しかしながら日本や中国では国のサポー

トを受けていた旧来の勢力の抵抗がこの構造改革を妨げている。

 

第三章    変革の基礎

アジアの発展には良好なビジネス環境が不可欠である。関税引き下げや知的財産権保護法制の整備が必要である。現代においてグローバリズム

の波を逃げて発展を続けることは困難である。積極的に海外との取引を広げるため、これらの環境を整えることは、その産業を国際競争の中で

鍛え、技術向上と生産性の向上をもたらすとともに、その成果が他の部門にも波及し発展を促すことになる。

 

発展に不可欠なR&Dresearch and development)であるが、これは発展の条件であって、R&Dが発展を保証するというものではない。

私的には10〜20 公的には20〜60 で、GDPの2%のR&D投資は0.5%の経済成長を促すとされる。

R&D投資を促すことは先端技術が発展を決める現代では不可欠であるが、アジア諸国ではその保護のための知的所有権制度が日本などを除いて

十分とはいえない。中国は先にWTOに加盟したが、WTOではIPRintellectual poverty right)署名を所有権保護と同様に重要視している。

 

生産制度についてはアジアでは家族主義工場が多く、中国をはじめ、低生産性の工場が生き残っているが、マレーシア・フィリピンをはじめ各国で、特区という形での外資導入による生産性向上への試みが始まっている。

 

第四章   金融システム

 金融システム改革が必要な第一の理由は、それによって自己責任原則が認識され、経済原理に即した資産管理がなされるようになるからであり、金融システム改革が必要な第二の理由は、それが会計システムや法制度・企業統治の改革を促進するからである。

 現在の改革の重点は以下の4点におかれている。

     中央銀行の自治(autonomy)と銀行監視(superviser

     銀行資産の健全化と資本強化

     融資審査機能と強化

     銀行の強化と金融/非金融部門の協力機関設置

銀行監視の不徹底は銀行の安易な貸出や説明責任の怠慢を招いた。アジア諸国では日本や韓国をはじめ、他の国でもこのシステムの強化を進めている。

銀行資産の外資への売却などの手段も取られるようになった。

不良資産の処理は金融部門の再建の半分しか意味しない。資本強化及び銀行の体力強化が残り半分であり、アジア各国は国家予算の多くをこれに割いている。中国では4つの国営銀行の不良債権処理に国家GDPの6割を必要とした。

 

5

アメリカの90年代後半の成長はICT技術によるところが大きい。21世紀に入っての減速はICTの生産性向上への信頼を揺らがせてはいるが、亜東アジアの発展にICTは不可欠である。ICTがアメリカ経済の発展に寄与したのは以下の通りである。

 ICTのビジネス戦略へのインパクト

ICTがいかに効率的に活用されるかはビジネスモデルの確立に依存している部分が大きい。

ICTの進展は企業統合を促す。企業間契約のコストを削減する一方で、ICTではB2B活用による規格品の外部調達を促進する。

もっともアメリカでみられるこれらは鉛筆やコンピューターなどの間接品なのに対し、東アジアでは取引されるのは80%が直接品であり、組み立てられてユーザーの手に渡るものである。

ICTの経済への影響を判断するのは時期尚早である。

アジア危機は「系列」システムの限界を露呈した。

 

 インターネットの有効活用

 通信への需要

 インターネットアクセス料金

 インターネット バックボーン

 ラストマイル

 ワイヤレスアクセス

ワイヤレスインフラストラクチャー 競争と政策

インターネットによる経済成長 東アジア

インターネットは経済に寄与し始めているが、本格的な寄与はeコマースやeビジネスが導入され、金融・医療・娯楽・教育などさまざまな分野で活用されるようになってからであろう。シンガポールではこれらへのインターネット導入が進んでいるが、アメリカではこれをコスト削減・生産性向上に用いるためには大規模な導入が必要である。その持続的発展はこれらがどの程度中期的な期間で経済成長に寄与するかにかかっている。

東アジアでは政府の規制は、この分野にいくら投資されるか・世界のビジネスで統合されるのか・地域を横断した多種経済の標準と役割に調和するのかによって決定される。

第六章

FDIの多くは中国へ向かっている。

GEキャピタルによる日本リース買収やルノーによる日産買収など日本への投資も見られる。カルフール(仏)の日本進出は慎重に行なわれ、競争原理の導入により、日本の競争後進分野とされる流通部門改革により消費者利益をもたらした。Urata氏とKawati氏によると海外投資は低賃金労働力・インフラの質・良好な統治・適度な規模の市場の存在があげられる。特に中小企業は大企業よりこれら要因に敏感である。

この地域へのFDIの利益は人的資本・競争要因・サービス市場・サービス及び製造での変革などの補足的要因に依存している。これらの要因は、その輸出が地域内の他の地域の成長と平行している中国が、世界経済に統合されるのにつれて重要性を増しつつある。

ICTとの関連がまた重要である。ICTは消費者のニーズ変化への迅速な対応と製品の顧客対応(customization)を必要とする。

アメリカのファッション産業では、売れ残りによる損失を回避し、在庫保有コストを下げるため、徹底したITC活用が行なわれる。バーコードなどを利用した消費者の需要動向が製造工場に送られ、そのニーズにあった製品が即時に供給されることが要求される。製造コストだけがメーカの関心事ではなくなっている。製造工場はこれに対応したインフラが整備されてなくては立地できない。

台湾の企業は低賃金の中国に生産工場を移転するだけでなく、全体の工場でどのような生産が行なわれ、それがどのように輸送され、需要者に届くか管理するシステムを作り上げた。これはSCM(サプライチェーンマネージメント)といわれる。いくつかのSCMではプログラミング部門や技術専門家の養成部署も保有している。台湾の靴製造でも同じような過程が見られた。製造部門の細分化により多品種少量の注文へのきめ細かい対応が可能となった。これらの例はいわゆる「価値移転value migration」で、商業活動での付加価値の源泉があるところから他のところへ動く過程である。

利益は製造過程よりも組織・調整・需要の正確な予想能力などにより生み出される。

 

第七章       勝利への変革

アジア経済はもっとも工業化された経済で、GDPに占める輸出割合はどこよりも高い。アジアの5カ国は世界の貿易大国ベスト20にランクインし、この地域は多国間貿易協定を最近まで強く支持してきた。ここ30年、アジア経済は高貯蓄高投資・良好な経済政策・政治的安定で大きくまた早く成長してきた。いくつかの国はFDIを活用し、国内資源の動員・移転手段により成長を図った。他の地域では相互の成長を支えるような核となる経済を持つ地域はなかった。

この地域の90年代の発展は開放経済の恩恵であるとする考え方がある。1990年代の発展では変革の進展が強調されるが、社会統治機構の再構築ではICTの役割があらゆる場面で大事である。ICTは生産現場での効率性を第二の地位に落としつつあるり、競争に打ち勝つ知識と創造能力がその上に立ちつつある。変革が成長のスピードを決定するようになりつつある。

 

  東アジアは勝ち残れるか?

東アジアの先進諸国と他の地域を比べると以下のことがいえる。

東アジアの先進諸国では「テクノロジー」の大切さが認識されている。第二に、この地域では熟練労働者の比率が他の地域よりも高い。第三にはこの地域ではコンピューターの普及が進んでおり、ブロードバンドでウェブにアクセスする人やワイヤレス装置を使う人の人口比率が東ヨーロッパやラテンアメリカに比べ多い。第五にはこの地域の熟練労働者はハイテク分野に多く、第六には、この地域の変革は証券市場などの金融システムの恩恵によるものが顕著であり、第七にはこの地域の企業の成熟性に特徴がある。

 

  東アジアは何をなすべきか

東アジア経済は従来と違うステージに立っている。ICTを活用した競争強化により変革を乗り越え、5つの分野での政策を立案実行しなくてはならない。

銀行の改革と再建はいくつかの意味で重要である。弱体な銀行部門は危機を引き起こす可能性がある。これは将来の財政へ大きな負担となり、成長を遅め、競争に勝ち残れない企業への融資を温存し、新しい成長企業への資金流入を妨げる。最近では金融開発と成長の因果関係(casusality)が確認されている。

 東アジアでは経営手腕が未熟な会社では企業統治が停滞しており、また企業利益を最大化せよとの株主の圧力も強くない。法的・金融的に株主の利益を保護する機関の設立は経営能力発育に効果がある。知識をベースとした産業では変革を推進する能力のある労働者が必要である。東アジア諸国ではその数は増えているが質的な問題が残る。高等教育のあり方についても検討が必要である。

 コンピューター利用と通信利用も日進月歩であるが、eビジネスとeコマースには問題がある。これらにはカード契約の安全・ロジステックス・法サービスなどの完備が要請される。そのためには競争を促進する政策がとられる必要がある。

 東アジアが経済開放を歓迎したのは貿易の成功とFDIの利益によるものであった。変革が競争に必要な地域では開放への必要が高まる。金融危機のあとはグローバリゼーションへの疑念がわきおこりつつある。が、経済の開放は重要である。銀行部門の再建による長期外資導入システム確立は地域の発展に寄与するであろう。いくつかの警告を行なうと、アメリカ・日本・ヨーロッパのように供給刺激を行なうだけではいけない。変革の利益を享受するため、需要の拡大が必要である。東アジアでは輸出主導の限界がみられたあとは国内需要がこれにかわって経済を牽引する役割を担いつつある。日本では高貯蓄が経済を抑制しつつある。供給刺激手段は需要管理の裏付けがあってはじめて行なわれるべきである。

第二には変革の経済においてはある程度の寛容さが必要である。変革においてはすべてが成功するわけではなく、過去の経験も役立たない。寛容さがなくては変革をやりぬくことが不可能となる。

最後は、中国の役割である。中国が安い労働力で他国経済を凌駕してしまうとの懸念がある。しかしながら世界の中で東アジアが独自の地位を築いたように中国との間でも地勢的な分業体制を整え、相互の持続的な発展を図っていくことは十分に可能である。

 

 


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