
いつの間にか五月になってしまった。
五月と言えば、会社の産業医の先生に「うつ」の診断を受けたころだったと思う。
彼女とつきあい始めたのもそうだ。
去年の五月なんて遠い昔だ。
僕の友だちが、薬をもらい始めた。
彼も、けっこう思いつめがちなところがあって、前からちょっと気になっていたが、とうとう来てしまったか...と思った。
僕らのような商売の人間には多い病気だろうとは思うけど、一つの職場なのに1年経たないうちに、二人も同じような状態になるのは、どうなんだろう。
そこまで追い詰められないとできない仕事なんだろうか。
そういえば、僕が休む前、何度か上司に、こんな状況になるんじゃないかと言った覚えがあるなぁ...
木曜日にちょっとあって話した。
でも、なんか、あまりいいアドバイスはできなかった気がする。
結局のところ、自分の中で、良くなった感じが戻るのを待つしかないんだ。
その感じは、当の本人でないと、解らないことなんだ。
でも、あきらかに、悪い時と良い時はちがう。
なおっている感じも、解るんだ。全然違うから。
でも、他人には、何がどうなってるのか見えないと思う。
医者でさえ解らないんだから、普通の人に解るわけがない。
じっとして、エネルギーがたまって来るまでは、待たなきゃいけないんだ。
書きながら、自分に言い聞かせてる感じだ。
このところは、かなり上向き加減だった。
色々なことが、ちょっとづつ出来るようになってきた。
いろんなこと、といったのは、物事をつくり出すことだ。
創造する作業は、すごくエネルギーがいることなんだって言うのを、病気になって改めて思った。
それを無理矢理、絞り出し続けてると、本当に枯れてくる。
まさに「枯渇」っていう感じだ。
調子が良い時には、本当に自然に、生み出すことができるんだ。
絞り出したり、火であぶったりしなくても。
コンピューターのグラフィックソフトのIllustratorを久しぶりにいじった。
オステオパシーの先生が「カンバンを考えてくれ」っていってたので、ちょっとやってみた。
金曜日が診療の日だったので、プリントアウトしてもっていった。
話しているうちに、なんだかプレゼン口調になりかかった。
まだ、この感覚を覚えていたんだという感じだ。
部屋の片づけも、少しずつ出来始めてる。
でもなぜか、このところ体の方は、「気」がまわっていないみたいにどんよりだ。
薬の影響かも知れない。
歩きにあんまりいけなくなってきた。
オステオパシーも、なんか効きが悪い感じだった。
顎の矯正具が、調子が悪くなって、歯医者に修繕にあずかってもらっていて、はめてないので、余計になのかも知れない。
うちに長い時間いても、イライラすることが少なくなっていた。
なんか、やれることをやっているだけで、それなりに落ち着いていた。
でも、ちょっとしたきっかけで崩れてしまった。
金曜日に、ちょっとしたことで、怒りがおこって、調子が悪くなった。
水道料金の手続きで、ちゃんと引き落としの手続きをしてあるのに、督促状がきて、水道局に電話した。
前にも督促状が来て、確認したら向こうの手違いで、銀行から引き落としがうまく出来ていなかったことがあった。だから、今回も間違いがないのかどうか、ちゃんと確認したのだ。
そうしたら、まるでこっちが払わないのが悪いみたいな態度で、しかも二人にたらいまわされて、そのたびにはじめから説明した。
挙げ句の果てに、向こうがぞんざいな態度で「払って下さい。こちらの『機械』で出てますから。」みたいに言われ続けた。
普通の会社のサービスセンターとか銀行だったら、「すいません、こちらの機械の手続き上の都合でエラーになってしまいました。大変お手数ですが、こちらで処理できないので、お払いいただけないでしょうか?」ぐらいなことはいう。
ひどいもんだ。やっぱり、役所だ。
そのあとから、どんどんみぞおちが重たく、痛くなってきた。
あんな程度のやつだ、って、軽くやり過ごそうとしたけど、全然ダメだった。
そのうちに、彼女(一応)の事も考え始め、やりきれなくなってきた。
あっという間に部屋が乱れてきた。
土曜日はカウンセリングだった。
重たい気分のまま、時間ギリギリでいった。
水道局の事をはなした。それからずっとおかしいって事も話した。
それから、いろいろ話したつもりだけど、良く覚えてない。
先生がいってた。
「あなたがこういう風になる時には、あるパターンがあるようだね。
自分に非がないのに、悪いようにいわれたり、無視されたり、
ないがしろにされたりすることに対して、すごく敏感なんだね。
どうやら、これは、あなたの古傷みたいな物なんだろう。
古傷といっても、ほとんど良くなっていて痕だけになっているような物もあれば、
口は塞がっているんだけど、中で未だ、膿みたいに残っているような物もある。
あなたの場合は、膿の残っている方なんじゃないか?
過去にそう言うことが何度もあったんじゃないか?」
そうなのかも知れないと思った。
その後、いくつか思い出したことがあった。
仕事や、対人関係で、ないがしろにされたり、見放されたりしたことが何度か重なって、その度に奈落のそこへ突き落とされたような気分になっていったっけ。
そうしているうちに、どんどんそれが溜まっていって、這い上がれなくなったことも。
カウンセリングが終わって凄く疲れた。
でも、ちょっと気分が軽めになっていた。
なんでだか解らないけど、カウンセリングがうまくいった時は本当に気分がかわる。
ただ単に、状況を把握しただけのようなものなのに、なんでだろう。
夜になったら、またちょっと調子悪くなった。
いろいろ迷いながら、彼女に電話してみた。どうせ繋がらないだろうと思った。
でも繋がってしまった。
たいしたことも話さなかったし、なんかいっていることもメチャクチャ。
そして、やつの反応も、ノレンに腕押しって感じ。
「なんか言いたいことある」と最後に聞いてしまったが、「別にない」っていうことでした。
怒りすらも感じないのかも知れない。
ぼくはいったいなんなのでしょう。
いつの間にかねてしまって、起きたら日曜日の昼間だった。
夕方になって、ようやくすこしましになってきた。
ちょっと開き直ってきた。
カセットテープからMDへ、いくつかダビングした。
ようやく少し、良い音でダビングできるコツがわかってきた。
だからなんだって感じだけど、機材をいじる感覚をもどすのには役立ってる。
エキサイターとリミッターとノイズリダクションをかますと、けっこうきける音になるのだ。
それからカセットも捨てられる。
カセットは過去なんだ。