短歌集「in the Jewel Box」


2005年8月13日以降の歌を収録しています。

2005.8.13
口実の代わりにあげる 好きな時いつでも我に会える特権

2005.8.13
からからに乾いた心で見るテレビ 真の笑いは幕から消えり

2005.8.13
触らなきゃいいでしょ?誰でも知ってるわ サボテンの棘が人を刺すこと

2005.8.13
上下のカーソルキーを押し続け進めぬ我はただ意気地なし

2005.8.13
憧れを持てば持つほど重くなる 我の体は雲には乗れず

2005.8.13
なぜここに生えてきたのか 雑草と出会う予定はなかった 君とも

2005.8.13
許可も得ず住みついている雑草に光も雨も味方している

2005.8.13
いつだって不意に扉を蹴破って我の心を支配する君

2005.8.13
だまりこむ君の隣を占拠する だませやしないと我は知りつつ

2005.8.13
「ありがとう」たった5つの君の声聞くためだけにお守りを買う

2005.8.13
言の葉を生やすだけなら簡単だよ 一重の薔薇を咲かせるよりも

2005.8.13
さあ今日はシンメトリーにしてみましょう 中心線で谷折る心

2005.8.13
目が覚めて心が君に囚われる 頬は自然と紅色になる

2005.8.13
同じものを同じ向きから見ていても実像は2つひっそりと立つ

2005.8.13
ヘッドホンつけて遮る 自分には要らない音を空に葬る

2005.8.13
離したくないけど話せない事情 マスクをつけてまで君を抱く

2005.8.13
星のない闇に目隠しして歩く 見えない方がいいことも多くて

2005.8.13
「変わる」のが美しさだとするならば美術で我を変身させたい

2005.8.13
水面に絵の具を流す 何色も流して混ぜれば邪心ができる

2005.8.13
誰にでも優しくなんてできないときっぱりと言う君は優しい

2005.8.13
足跡は辿って帰るためでなく自信をつけるために残れり

2005.8.13
笑えない心境だから笑わせる 君の笑顔で我は笑える

2005.8.27
青春の付録「不安」を捨てるため青の森へと足踏み入れる

2005.8.27
雨の槍 雷の棘刺してきて柔らかな芽は傷負えど伸びる

2005.8.27
我に似たような信号 停電し光放たず直されもせず

2005.8.27
間引きする指はためらう 残された葉と抜いた葉の緑比べて

2005.8.27
芽を出したものは全てが命だと知りつつ抜いて捨てる雑草

2005.8.27
根腐れのような関係 傷ひとつ見えぬがいつか枯れてさよなら

2005.8.27
哀しみや怒りはそっと葉の裏に隠す 呼吸を詰める覚悟で

2005.8.27
愛情は形で表せないと言い過剰包装するプレゼント

2005.8.27
果汁グミひとつ含んで迷う今日 昨日の自分では生きられなくて

2005.8.27
生物の循環を知る太陽は輪の中心でひとつ佇む

2005.8.27
後を追うことは気楽と知る我は追いかけっこの鬼になりたい

2005.8.27
じゃんけんに敗れた我がオニならば悔しくないよ 君が逃げても

2005.8.27
大輪のユリの造花をひとつ生け美は騙すためにあることを知る

2005.8.27
花にでも生まれればよかった 夢なんて見ないで済んだはずだったのに

2005.8.27
健康なときほど悪夢ばかり見る 現実のほうがずっと気楽で

2005.8.27
足元の露草の花踏まぬよう歩く 傷つきたくない我は

2005.8.27
わがままな君はいつでも不意をつき我との距離を真空にする

2005.8.27
注がれる君の滴はただ甘く我は白から朱に染まりゆく

2005.8.27
窓口に「希望」差し出し「永遠」行き片道切符2枚ください

2005.8.27
通勤の電車を2本やりすごす 何かを変えたいための抵抗

2005.8.27
種は芽を出すものと決め間引き後の穴に感謝と笑顔を植える

2005.8.27
可能性7割5分の夢ならば笑顔と共に秘めておきたし

2005.8.27
もう君は包囲されている 幾重にも重なる我の視線の軌跡に

2005.8.27
オレンジの陽が侵食する青空の下で愛され愛す挨拶

2005.9.11
水遣りを忘れた夏の数日が実りを遠ざけ さよならの秋

2005.9.11
目を閉じて生きているから君の目も夕焼けの色も思い出せない

2005.9.11
秋の午後やや黄に染まる公園に程よく似合う服を選ぼう

2005.9.13
建前も孤独も嘘のつき方も100円ショップで売っております

2005.10.10
生物の約何割が偶然の産物なのか月は知らざる

2005.10.10
届かないからこそ無心に信じよう 空にある雲 宙にある星

2005.10.10
濡れぬことが不可能ならば傘閉じて歩いた方が視界は広い

2005.10.10
30代後半地点に渋滞の予想あります 突き進む我

2005.10.10
凍結のヘアピンカーブでスピードを落とさず走る勇気をください

2005.10.10
「チョコ食べる?」難しくもない言葉だが時期が違えば告白となる

2005.10.10
真っ白なハートを浮かべたカプチーノ 君はどうして混ぜてしまうの

2005.10.10
唇の2センチ前で珍しく君から薫るキシリトールガム

2005.10.10
目を凝らし快晴の空に明日探す 見つからないから希望が持てる

2005.10.10
雑踏に我のペースは馴染まない 路地に逃げ込み歌ひとつ詠む

2005.10.10
意識してワントーン上げ受話器取る 我を知らない相手のために

2005.10.10
恋愛にも我にも興味がない君の心に仕掛ける化学反応

2005.10.10
紛争は生まれるばかり、と知るだけの我の背中の空気は重い

2005.10.10
上げかけた手をポケットに戻し入れ孤独を選ぶ雑踏の中

2005.10.10
ありのままにとらえられないような目はビー玉にとりかえてしまおう

2005.10.10
慰めや癒しは一種の思い込みとわかっていてもいつでも欲しい

2005.10.10
かざぐるま君が回せばあたたかな風が届くよ我の額に

2005.10.10
いち早くメールも電話も届けたい フェラーリ色の携帯を選ぶ

2005.10.10
つなぐ手に通う血管 葉脈のように静かにはりめぐらせて

2005.10.10
指先は君の全てを知っていてひとりシーツに輪郭描く

2005.10.10
食物は食べられるために作られる では生物は? 特に人類は?

2005.10.10
太陽を探して三日 向日葵は風に花弁を震わせて立つ

2005.10.10
君の名を呼べないことを重力のせいにしている受身の恋は

2005.10.10
秒針と君の鼓動が重なれば帰してあげる まだ早過ぎる

2005.11.6
玄関でコートを脱げばさっきまで肩先に居た星が散らばる

2005.11.6
カーテンを開けて眺める冬の空 無数の星を掃き集めたい

2005.11.6
ごまかさず でも慰めずついて行く 誰より優しい影になりたい

2005.11.6
文字でしか知らない人の成功の秘訣をあえて文字で斬る我

2005.11.6
夢を追いかけているのが幸せで 茨の道も適度な刺激

2006.1.5
トラックのヘッドライトに照らされて猫背で歩くわたしがふたり

2006.1.6
猜疑心抱えて「開かずの踏切」を待っているのはレプリカの我

2006.1.7
漆黒の闇に光の粒子舞う 結晶型の花開かせて

2006.1.14
成人を祝い舞う獅子眺めつつ肩に感じる「自己責任」の荷

2006.4.18
自分との戦いからは逃げるなと簡単に言う金曜の夜

2006.4.28
目に見えぬ光の在処を探すより雲の切れるを待つ方が吉

2006.7.9
淡色の花瓶は黙って受け入れる 真紅の薔薇も純白の百合も

2006.7.9
傷ついた少年の目は閉じたまま 陽光を待つつぼみの如く

2006.7.9
三十年余りかかった 正しいと思う言葉を声に出すまで

2006.7.9
公園のベンチにガムの包み紙ひとつ光ってSOS出す

2006.7.9
風鈴が鳴って気づいた この風を味方につけて歩いていこう

2006.7.9
地球儀をゆっくり辿る指先に増幅していく未知への希望

2006.8.4
引き出しの中の記憶を弄れば指を掠める鋭い破片

2006.8.15
「無理です」と言えずに仕事を背負い込む 強がるほどに感じる浮力

2006.10.30
全員が勝利者になることはない 空にぼんやり半月浮かぶ

2007.1.3
涙浮かべあなたが何を考えていようと川の水面は水面

2007.2.3
窓に咲くステンドグラスの花模様 夕陽とともに役目を終えし

2007.2.3
あるがままに空を切り取る水溜り 我の涙の理由は映さず

2007.2.3
スクラッチして真実があるならば我は硬貨を持って歩こう

2007.2.3
人として輝くことは光ることではなく己を磨くことなり

2007.2.3
咲くという悲しみもある 新しい風が吹くまでまたさようなら

2007.2.3
棘を持つ我に触れるな 血を流す君より我がもっと傷つく

2007.2.3
美しくなりたき我は薔薇の真似すれども似るのは棘の鋭さ

2007.2.3
五線譜の森へようこそ 風に乗る若葉は音符 新芽は休符

2007.2.3
目を閉じて膝を抱えた我の背に「充電中」のランプは灯らず

2007.2.3
足跡を消しに向かえばまた別の足跡がつく 過去は消せない

2007.2.3
「明日にはただの茶色い砂糖水」コーラはかすかな悲鳴をあげる

2007.2.3
人工の光の粒が夜を照らす 都会の夜の営業スマイル

2007.2.3
先刻まで毒を散らした口先を誤魔化しきれずにマスクをかける

2007.2.3
潔く風に任せて葉を落とす木々のようには生きられぬ我

2007.2.3
簡単にかなう夢などないことを教えるために現れる虹

2007.2.3
灰色の空は結局泣かなくて我の涙の理由にならず

2007.2.3
無知でいることも幸せ 本棚の百科事典に指紋はなくて

2007.2.3
「愛」が載るページばかりが傷だらけ 国語辞典に罪はないのに

2007.2.3
本を読む君と黙って君を見る我に等しく時間は流れる

2007.2.3
エンディングロールが流れ半券と共に無効になる我の恋

2007.2.3
缶切りで穴を開けたら何が出てくるのだろうか 冬の青空

2007.2.3
「絶望」という感覚を知った日の雲の速さを思い出せない

2007.2.3
一度目の朝のアラーム寝室に響く 短くそして虚しく

2007.2.3
「なぜ物は壊れるのか」と問う君の心の傷を我は知らない

2007.2.3
限りある命と知って「また明日」は挨拶であり約束であり

2007.2.3
希望持つ東の空にゆっくりと西の空から雲流れ込む

2007.2.3
同意することが得意な人だからこそ伝えにくい 愛の言葉は

2007.2.3
強風の中枯れ枝にしがみつく葉に欲深い我が重なる

2007.2.3
空を見る手段を持たぬ花なれど光を探し上へ伸びゆく

2007.2.3
ランナーのゴールを笑顔で出迎える我は未だにスタート切れず

2007.2.3
ピストルが聞こえぬことを言い訳にスタートラインを踏み越せぬ我

2007.2.3
現実へ引きずることを知っていて夢の中でも君を誘わず

2007.2.3
雨が落ち波立つ湖面 我が投げた石では何の影響もない

2007.2.3
左胸から相聞の同心円発生 徐々に熱くなる右手

2007.2.3
ラベンダーが咲きそろったから今週は風が強い日ばかりでいいよ

2007.2.3
雨粒がまばらに残る窓ガラス 晴れでも空がくすんで見える

2007.2.3
滑らかにつながらぬ我ら 黒鍵を間に持たない「ミ」と「ファ」のごとし

2007.2.3
連弾も慣れてきたのにいつだって一オクターブ先に居る君

2007.2.3
珍しく真顔で話しかけてくる君の本意を探りきれない

2007.2.3
携帯を持たない君には読み取れぬ二次元コードで想い伝える

2007.2.3
助動詞の力を借りて活用のある自立語に命吹き込む

2007.2.3
断りのメールひとつに絵文字五個 本当の理由を隠蔽するため

2007.2.24
見つからぬ四つ葉の栞 読みかけの本に挟んだ記憶も遠い

2007.2.24
アスファルトの間に咲いたタンポポの方が強いよ 人間よりも

2007.2.24
文明が進化を遂げる時代でも嘘を見抜けるのは人間だけ

2007.2.24
簡単に戻れはしない ビルの間を漂う我に吹く春一番

2007.2.24
春風が吹いているから会社には戻らずそのまま帰宅を選ぶ

2007.2.24
着忘れて虫に喰われたセーターは暖冬の記を我が家に残す

2007.2.24
春一番吹き荒れた日の翌朝は木々も根元を露にされる

2007.2.24
ジャケットの中に着る服選びつつ明日の気分もハンガーに掛け

2007.2.24
靴磨く日曜の夜 今週はより軽やかに歩けますように

2007.2.24
花柄のスカートを着て出社する朝は決まって憂いもまとう

2007.2.24
ポケットの中でふるえるアラームに踊らされている我の一日

2007.2.24
指折りてあなたを待っているうちに何かのチャンスが行ってしまった

2007.2.24
「君行きの電車のドアが開いたから乗り込んだ」のが別れの理由

2007.2.24
楽しげにカ行ラ行が反復し空き缶ひとつ道を転がる

2007.2.24
火葬場の煙ひとすじ立ち上る 計り知れない空までの距離

2007.2.24
一粒にレモン8個のビタミンC含んでいても噛み砕く我

2007.2.24
淡々と過ごしてみれば辛くない なぜなら日々はオートリバース

2007.2.24
落ち込んだ我の心にメール越しに不意に寄り添うあなたの言葉

2007.2.24
唇を開き吸い込む青空に雲は混ざらず 胸の靄消ゆ

2007.2.24
公園で遊ぶ親子は次々と色とりどりの感嘆符投げる

2007.2.24
期待などしていないけど鍵盤で半音階をたどる指先

2007.2.24
薄氷(うすらい)を照らす陽光 我はまだ心閉ざしたまま歩いてる