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「短歌人」に書いてきた作品を掲載します。
いつも作品を見てくださる三井ゆきさんに感謝しながら。
2004年
11月号
すずらんの白は花壇で揺れるまま 水色の影つけて描かれる
ちりちりと炎となりてサルビアは夏の暑さを助長させゆく
泡立て器 力まかせに鳴らすとき増えるメレンゲ掛け算のよう
付きまとう影の長さに比例して我の自信の無さも揺れたり
磨いても磨いてもなお君は居ず 窓の向こうは白重き霧
花束を作るためにと茎を折る 残された根はまだ地を潜る


2004年
12月号
ぜんまいを誰かが巻いて立ち去りし 知らずに泣いているオルゴール
輝けるものへの羨望持ちつつも眩しすぎると直視できない
黒い髪に黒いペンで書くような恋には覚悟が必要である
秋冬を越える自信は持てぬから最後の一葉を見るのはよそう
千枚の嘘を重ねて押し込めば過ぎし思いも層となるらし


2005年
2月号
過去を使い果たして今を生きている 拠り所なき一本勝負
ひとりっきり部屋で過ごせば振り返る意味も静かに泣く意味もなく
逃げたいと思う心に比例して足裏を引く強き重力
青信号でも進めない臆病な我を追い越す年老いた犬
一瞬の沈黙さえも待てなくて始めたばかりの恋はせっかち


2005年
3月号
静寂の中で揺らめく分子たち時は確かに刻まれている
水晶を覗き込みても見えぬものありて夜風に向かう場所訊く
夕闇が降りると我の影は消え 夢を見るのも見ぬのもひとり
オリオンは制限速度で追ってくる 我は決して孤独になれず
明日にはまた立ち並ぶ霜柱 また壊されるガラスのビル群
嘘を寄せ固めたゼリーを切り分ける欺瞞の味をおひとついかが?


2005年
4月号
玄関のドアに朝露連なりておれば開けるをしばしためらう
新品のノートの最初に書くように君への想いを吟味している
定型の一日終えて眠りつき定形外の夢で目覚める
冷たさを優しさとして受け止めることは勇気か臆病なのか
削られぬ白色鉛筆 六年も端にいるだけただ長いだけ





2005年
5月号
最速のエレベーターでたどり着く最上階の孤独な景色
緊張の糸は日増しに細くなりやがてたるんで「慣れ」となりゆく
四面楚歌ならば見上げてみよう まだ空は味方でいてくれるかな
春雨は静かに木々を抱き込んで生まれたての葉を鮮やかにする
淡色の春景色の中新しい自分探しを始めてみよう





2005年
6月号
歯車でいられることの喜びを否定しようと野心は燃える
寂しさを紛らす日暮れの散歩道 等身大の影ひき連れて
Tシャツが肌になじんでくる午後に君と会うのは少し気まずい
正確に君の温度を測ろうとすれば二枚の布が邪魔する





2005年
7月号
焦点を合わせることができないよ 君の笑顔はジェラシーの種
これ以上後にも先にも進めない我等に似ている波の戯れ
思い出は小さな箱に片付けて依存防止に鍵をかけよう
火傷した舌をかばって一か月 新しい恋にまだ踏み込めず





2005年
8月号
はつなつの風を含んだカーテンに守られている 孤独な我は
見下ろせば濡れた土にも表情はあるのに我は立ちつくすだけ
やわらかく流れる雲に叫ぶ声 来られるならばここまでおいで
日焼けした腕で真白な君を包み黒にしたいよオセロのように
空白の多い解答用紙にも未来を信じ裏返しする





2005年
10月号
生乾きの白いシャツ着て外に出る 青空色に染められたくて
青空に放たれた矢は放物線描いて我の願いを叶えず
ドーナツの穴のぞきこむ この中で溺れるような恋がしたいな
三日月に乗ろうよ ふたりでゆらゆらと揺れていようよシーソーみたいに
下を向くひまわりをそっと抱き起こす 曇り続きの八月の朝





2005年
11月号
生物の循環を知る太陽は輪の中心でひとつ佇む
自分には必要のない音だから空に葬る先生の声
じゃんけんに敗れた我がオニならば悔しくないよ 君が逃げても
「ありがとう」たった五音の君の声聞くために買うお守りがあり
通勤の電車を二本やりすごす何かを変えたいための抵抗





結局、この年の欠詠は3回。
最初の年にしては、上出来か。
しかし、歌の出来はどうだろう?
三井さんに、助詞など細かいところをいつも直していただいている。