
ワニとともだち、そして、恋人、そして……
「大阪のワニさん」(http://members.tripod.co.jp/saihikarunogo/machikanensis.html)で歯の丈夫さを誇示した、わに(alligator and / or crocodile )は、こどもの本の世界でも、大活躍です。
まず、わには、歯医者さんがきらい。
マーガレット=ドリアン・文・絵、光吉夏弥訳、「わにのはいた」(大日本図書、1983年)
http://www.city.ichikawa.chiba.jp/shisetsu/tosyo/honpok/hnpk3-1.htm
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びょういんでは しばらく まちあいしつで、またなければ なりませんでした。
その うち、アリは すこし いらいら して きて、
「かんごふさんを かもうかな」
なんて いいました。
「だめだよ。そんな ことを しちゃ。 あの ひとは、ぼくの なかよしなんだもの」
と、ぼうやは とめました。
「それじゃ、あの おくさんを かもうかな?
わにがわの ハンドバッグなんか もってるんだもの。」
「あれは ビニールの わにがわだよ」
と、ぼうやは いいました。
(p.43-44)
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どうぶつえんのアリは、ある朝目を覚ますと、歯が痛くて、ほっぺたがはれあがり、朝御飯を食べることもできませんでした。飼育係のおじさんは、温かいミルクと絵本を持ってきてくれました。その次の朝、動物園の園長さんが、アリに、歯医者さんに行くようにと言いました。でも、アリは、歯医者さんがいやでたまらない。わざとか偶然なのかわからないけど、歯医者さんへ行くバスをまちがえて、他の町へ行くバスに乗ってしまいました。隣の席にすわった男の子は、歯医者さんの息子。そうとも知らないで、アリは、男の子のうちへ行って、一緒に遊びます。夜になると、また歯が痛くなって、次の朝には、もう、がまんできない。とうとう、男の子のおとうさんの歯医者さんが勤める病院に行くことになります。アリが歯医者さんへ行くのを嫌がるのは、
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「きが いらいら して、あたまが へんに なっちゃいそうなのが こわいんだよ。
もし、そう なったら……。」
「そう なったら?」
「ひとを かむかも しれないんだ!
そんな ことを したら、えんちょうさんは、ぼくの ことを わるい わにだと おもって、アフリカへ おくりかえして しまうかも しれない。 そう なりゃ、ぼくは もう、日よう日に どうぶつえんへ やって くる こどもたちにも あえなく なるんだ。」
(p.40-41)
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しかし、アリは、虫歯ではありませんでした。智恵歯が生えてきたのでした。
智恵歯が生えたと知ったアリは、すっかりおりこうさんになり、今度は、胸をはって、バスを乗りまちがえないで、動物園に帰って行きました。
アリは、虫歯じゃなくて、智恵歯でしたが、ほんとに虫歯になったわにさんは、歯医者さんとお互いに、
「ゆっくり あそんでいたいけど いかなくちゃ いけないね」
と覚悟を決めます。
五味太郎「わにさん どきっ はいしゃさん どきっ」(偕成社、1984年)
http://www.atsugi-dental.or.jp/library/wanisandoki.html
「どきっ」「どきっ」(びっくりまなこ)
「どうしよう……」「どうしよう……」(観葉植物の陰に隠れる・椅子の陰に隠れる)
「こわいなあ……」「こわいなあ……」(歯をおさえている・おなかをおさえている)
「でも がんばるぞ」「でも がんばるぞ」(めじりをあげる)
「かくごは できた」「かくごは できた」(顎を開く・歯を喰いしばる)
「いたい!」「いたい!」(一匹と一人の身に、何が!)
「もう ひどいじゃないか」「もう ひどいじゃないか」(歯をおさえている・腕をおさえている)
「おこっていても はじまらない」「おこっていても はじまらない」(治療続行)
「もうすこし がんばれ」「もうすこし がんばれ」
「ほっ」「ほっ」
「たいへん しつれいしました いずれ また」「たいへん しつれいしました いずれ また」
「いやいや もう にどとは あいたくないね」「いやいや もう にどとは あいたくないね」
「だから はみがき はみがき」「だから はみがき はみがき」
このように、おとなのわには、礼儀正しい生き物です。そして、人間同様、わにも、こどもたちのお行儀の悪さには、手を焼いています。そう、
あの口でお食事の作法も気になります。
ラッセル=ホーバン文、ジェイムズ=マーシャル絵、さかい きみこ訳、「わにのアーサーおよばれにいく」(偕成社、2001年)
http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3b6414ed735de0104e81?aid=p-morioka00730&bibid=02084259&volno=0000
お行儀よくすれば、おともだちもできます。
エドゥアルド=ウスペンスキー著、児島 宏子訳、「新訳 チェブラーシュカ ワニのゲーナとおともだち」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582831303/qid%3D1041695116/sr%3D1-3/ref%3Dsr%5F1%5F2%5F3/249-2178135-4265150
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「あなたのお知らせに、三つのまちがいがあったわ」と少女はいいました。
「まさか!」ゲーナはさけびましたが、まちがいは、十八ぐらいはあったかもしれない、と考えました。
「一番めは、ワニのワをウと書いてあったわ。二番めは、五十さいにもなって、若いなんて!」
「ワニは三百年も生きるんだ。だから、ぼくはほんとうに若いんだよ」
「おなじことよ。もっと正しく書かなければね。では、自己紹介をしましょう。わたしの名前はガーリャ。子ども劇場ではたらいています」
「ぼくはゲーナ。動物園で、ワニとしてはたらいています」
(p.21)
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ゲーナは毎朝、アパートのへやで目をさますと、顔を洗います。それから、朝ごはんを食べて、動物園にでかけます。ゲーナは、動物園で、ワニとして熱心にはたらいています。
仕事場につくと、ゲーナは上着をぬぎ、ぼうしをとってかけます。ステッキもおきます。そしてプールのところで、日光浴をします。
(p.17-18)
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しかし、ワニとおつきあいするには、とても用心深くしなければなりません。
なぜなら、ワニはとてもくいしんぼうだからです……
アンドレ=オデール・ぶん、トミー=ウンゲラー・え、いけうち おさむ・やく、「かめのスープはおいしいぞ」(ほるぷ出版、1995年)
http://www.art.hyogo-u.ac.jp/fukumo/Chisato/sub2-5.htm
Kleopatra Faehrt Schlitten
Copyright 1982 by Diogenes Verlag AG Zurich
「クレオパトラのそりすべり」(ほるぷの紙芝居 2 たのしい海外秀作シリーズ)
http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3b6414ed735de0104e81?aid=p-morioka00730&bibid=02142469&volno=0000
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「ねえ、クロムウェルさん、お手数ですが、この油をわたしの背中にぬっていただけないかしら? ガラスみたいにピカピカにしていただきたいの」
クロムウェルは、しめた とおもいました。そこで大きなかめの背中に油をぬって、せっせとみがきはじめました。一生めんめいみがきながら、クレオパトラのうしろ足に顔をちかづけ、クイッ とかみつきました。かめの肉ってものは、とてもおいしいものですからね!
「クロムウェルったら、くすぐったりしないでちょうだい!」
クレオパトラは、いそいで足をこうらの中にちぢめました。
まる一時間かかりました。クレオパトラの背中は朝陽をうけて、ピカピカに光っています。このあいだにも二度ばかり、クロムウェルは前歯でそっと、クレオパトラの足にかみつきました。そのたびに足はスッとこうらの中へかくれたのです。
すぐ近くでクロムウェルの叔父のベオウルフがねていました。いや、ねてはいなかった。ねたふりをして、一部始終をじっとみていたのです。かめのクレオパトラが背中をピカピカに光らせ、うれしそうに立ちさったあと、ベオウルフは甥のクロムウェルにいいました。
「かめのスープをしってるかね。ほっぺたが落っこちるほど、おいしいぞ。かめのスープほどおいしいスープは、この世に二つとあるまいさ」
「もうこんなに、よだれがたれてきましたよ」クロムウェルはのどをゴクリと鳴らしました。「でもクロパトラときたら、ぼくたちふたりをあわせたよりも重いんだ。どうやっておなべにいれるの?」
「自分からとびこんでもらおうじゃないか」
(p.4-5)
レオポルド=ショヴォー著、出口裕弘訳、「年をとったワニの話―ショヴォー氏とルノー君のお話集〈1〉」(福音館文庫、2002年)
「年を経た鰐の話」
「年をとったワニの話」は、第二次世界大戦前に、山本夏彦氏によって翻訳されているそうです。
http://www6.plala.or.jp/natsuhiko/wani.html
2003.03.14. by saihikarunogo 2003.03.18. by saihikarunogo
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そのうえ、ワニは、とても長生きです。ふつうのワニの寿命は、300年だということですが、ワニのなかには、青春時代にピラミッドが造られるのを見て、十二本足のタコといっしょにスエズ運河を泳いだという、つわものもいます。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4834019004/249-2178135-4265150
Historie du Vieux Crocodile and three other stories by Leopold Chauveau Text & Illustrations Leopold Chauveau 1923
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「ずいぶんたくさん、足があるんだね」
「そうね、十二本ばかりあるわ」
「十二本!」
「ふつう、タコは八本しかないの。でも、あたしは十二本」
「かぞえてみたのかい」
「もちろんよ。あたし、十二までかぞえられるの」
「ずいぶん、時間がかかるだろう」
「まあね」
「その十二本の足で、なにをするわけ?」
「だれでも、足を使ってすることをするわ。たとえば、鼻のあたまをかいたり、背中をかいたり、歩いたり、泳いだりするの。お魚もとるわよ。ほら、このお魚、ほしい?」
「ほしいね」
「はい、どうぞ。はい、もう一ぴき。」
「もっとくれ。もっとくれ」
タコは、できたての友だちに、ヒラメだの、エイだの、カレイだの、小ザメだの、大ガレイだの、タイだの、アナゴだのを、どっさりとってきて、ごちそうした。
そのあと、二ひきはぐっすりねむりこんだ。
ワニは、さきに目をさました。たちまち、よくない考えが頭にうかんだ。
<このタコ、食べてもいいかな>
<いいとも>と、ワニは自分で合点した。<しかし、食べちゃうと、昼めしのごちそうに、ぴちぴちした魚を、とってもらえなくなるな。だめだ、だめだ。さあ、聞きわけをよくするんだ。おれは食べないぞ。でも、彼女、おいしそうだな。ほんのひときれだけ、食べてみたっていいんじゃないかな。ちょっぴり、あした目をさまして、あの娘が、なんにも気がつかないくらい、ちょっぴり、まあ、たとえば足を一本ってとこかな。足が十二本! 十二本もあって、いったい、なんの役にたつんだ。一本へれば、彼女、身のこなしがかろやかになるし、ずっと器用にもなるはずだ。そうだ、そのほうが、かえって彼女のためなんだ>
(p.187-191)
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ワニのほうは、ひとつまではかぞえられたので、突然、自分用の食べものに、足が一本しかなくなっているのに気がついた。
<もうおしまいか>と、かれは考えた。<十二本っていうのは、もうすこし、たくさんあったはずだけどなあ>
日が落ちて、タコが寝入ってしまうと、年をとったワニの心のなかで、おそろしいたたかいが、くりひろげられた。タコに対するワニの愛は、二種類あった。タコは性質がけだかくて、つつしみぶかく、よくひとにつくすし、知恵だってたっぷりある。そういうタコへの愛がひとつ、もうひとつは、タコの腿肉がかきたてる愛だ。
その晩、タコの最後の足が消え去った。
(p.203)
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「あたし、なんだか、足が、一本もなくなったみたいな気がするの。もしあたしが、数がかぞえられなくて、十二本とも、ちゃんとついているって、たしかめられなかったとしたら、足が、ぜんぶ、なくなったんじゃないかと考えるところだわ」
「そのことは、もう考えるのはおよし」ワニが、タコのことばをさえぎっていった。「安心しなさい。きょうは、わしが魚をとりにいこう」
ワニは、恋人のタコに、好物の魚をとってきてやり、ちょうど日かげになった岩のくぼみのところへ、タコを運んでいって、ひやっこい海草のベッドに、そっと寝かせた。
タコには、ワニの愛情が、身にしみてわかった。しあわせな気分で、ねむりについた。
夜になると、タコを愛しているワニは、とてもふしあわせなワニになってしまった。恋人を食べたいという欲望が、あまりにも強くて、どうしても、食べずにはいられなかった。なんとも、あわれなワニだ。
タコは、とてもおいしかった。
だが、食べ終わってしまうと、ワニは後悔のなみだを流した。
(p.205-206)
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1924年、『中央公論』昭和14年4月号(春の特大号)に掲載されたとのことです。
山本夏彦ファンのサイトで紹介されています。