杉本健郎医師(小児神経科)による、NHKスペシャル「奇跡の詩人」批判

2003.04.01. by saihikarunogo
2003.04.29. by saihikarunogo


スギケンのホームページ

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149 re(1):写真

2003/2/24(月)12:45 - スギケン

また入れました。でも今度はちょっと違うでしょう。
真ん中にいる奴は僕です。回りの意見は見ない、聞かないが、
口はちゃんとあります。ふさいでいませんよ。


*参照 NHKスペシャル『奇跡の詩人』映像サイト

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新不定期日記

5月11日 「奇跡の詩人」・日木琉奈君についての NHKspecial

なんとも寂しい、そして悲しい番組でした。内容が寂しいのではなく、あまりにも思いこみの強い一方向的な組立の番組だったからです。思いこみの強さは、母親であり、番組担当者です。でも母親が息子にいろいろな想いを持つのは否定しませんが、その親の姿を見て、寂しさだけでなく悲しさを感じたのです。子どもの人権を守る立場からみても問題がある親の姿勢と思いました。さらに「日本国営放送」が専門性を抜きにして、障害に対する「思いこみ」だけで作り、ゴールデンタイムに放映したことは、大きな問題と思います。
書きたいことはたくさんあります。でも少しにしておきます。
まずはポイントをまとめます。

1) 母親が障害を持つ我が子に強い想いをもっている。母親自身が詩人では
2) ドーマン法の効果のなさについてはすでに結論がでている。
3) 脳障害の原因は残念ながら重い。脳のCTは胎生期の脳形成障害では。
両側の脳室の形や前頭葉の脳回(しわ)が萎縮ではなく、不規則な形成障害とボクは判断しました。できればMRIがみたい。専門家は無い物ねだりをする。
4) 発達心理学や小児神経学の科学性を全く否定している。その否定に説得性は全くない。認識力は画面で見る限り、果たして1歳半を越えているか。幼児期の前半であることは確かと思いました。難しい概念の言葉がどうして使えるのか?
5) NHKは国営にちかい放送局。鑑賞した視聴者への影響をどう考えたか。

とにかくオープニングの画面から、母親の紙を持つ右手が起用に動き回り、他の人が(琉奈君も含めて)文字を読みとれる状況ではありません。即ち母親の意志で右手が動き、左手で我が子の手をもち、左右の動きが連動しています。これは母親の大脳の指示で統一されていないとできないことです。
琉奈君の目線が時々離れ、しかも彼の眼球運動は放映画面だけからでも両内斜視とともに追視が途切れるような障害をもっていることがわかります。動く紙の文字を読みとる以前の問題です。
母親が語る言葉で感動を呼ぶ内容に構成されています。でも何故か母親の表情には楽しそうで我が子を愛しているような優しさを感じ取れません。障害受容ができていないように思います。
琉奈君の表情が彼らしい表情になるときは、妹を見たときの目と、風呂に入って気持ちよくなったときの表情でした。
話は少しそれますが、琉奈君の妹の今後のこころの成長に不安を感じた専門家も多いのではないかと思いました。
この物語をNHKのナレータのいうように事実の出来事として位置づけ、タイトルのように「奇蹟」として認知するなら、医学とは、科学とは、そしてボクが学んできた専門性は一体何なんだ??と叫ぶ内容だということをこの番組の制作者はわかって放映したのでしょうか?
それ以上に全国の障害児をもつ多くの母親がドーマン法に向かわないと「障害児の母でなし」という「常識」ができあがらないことを祈ります。

番組が放映された直後から、二桁近い小児神経のドクターから、かってアメリカ小児科学会がドーマン法について効果のない訓練法として正式に意見したように、直接の会話やメイルで異口同音に「この番組は専門学会として抗議すべきではないか」という意見が寄せられました。
知る限りでは、週刊文春や朝日新聞でも批判的な論調がありますが、障害児者本人や保護者と日常的に接している人間として、この番組は看過出来ない影響があると思いました。親の生き方にとやかく言うつもりはありません。信仰の自由も保障されています。今回はNHKが全面肯定で放映したことが問題なのです。
もう一つ、障害をもつ子どもの人権を守る立場からみてもあのやり方は問題があります。欧米では、1980年代の「不快な容赦しない訓練法」を子どもに押しつけることは過去のものになっています。

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5月19日 奇跡の詩人 その後

てるてるさんをはじめ、本当に沢山の方々から書き込みやメイルを頂き、なんとかNHKの姿勢を正そうとのお誘い。医者としていっしょに抗議をしてほしいとのことです。申し訳ありません。ボクの意見は書き込みの通りです。
いまだになんの行動も起こせていません。
ボクは未だに、なんか「さみしくて、むなしくて」・・・その後もボクの持っているビデオをまわりの小児科医が多数鑑賞しました。いえ、まともに最後までみた医者は殆どいません。49分間もテレビのおつきあいはできない。そんな価値はない・・・と。 正直、あほらしくて、馬鹿らしくて・・・抗議や批判などというレベル以前の内容とみんな一笑に付しています。多くの医者はみんなそういう意見だと思います。
でも、なんで天下のNHKが、あのような質の低い内容を放映したのか?本当に信じ込んでいるのか? ならば宗教ではないか。
まあ、このような放映をするかぎり、受信料は支払わなくてよいという自分のなかでのはっきりした口実ができます。
今、子どもの人権宣言の勉強をしています。我々小児科医はもっともっと子ども達の立場を尊重する姿勢を学ばねばならない時期と思っています。どうしても親の意見に耳を傾けてしまう傾向が強くあります。
今回の「奇跡の詩人」も琉奈君の人権は本当に守られているのでしょうか?「否定されない・・・」などという詭弁ではなく、またカードをさしての親の口を利用した?意見表明ではなく、彼なりのサインをどれだけ受け止められるかが一番大切なことと思います。
1週間前と同じ内容を繰り返してしまいました。

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6月2日 頭に蚊がとまる

昨夜(30日夜)は我が家(部屋)に大型の蚊がたくさん侵略してきました。 東山の中腹の谷合いにある我が部屋は毎夏蚊に悩まされます。このところ寝不足のぼんやりした頭のてっぺんの「薄い」ところを狙って襲ってきました。嫌な奴だなーと思いつつバシッと頭のてっぺんをたたきました。乾いた音とともに一匹の蚊がポロリと落ちてきました。

 目が覚めました。3日前のことでした。

 静観していました「奇跡の詩人」への原稿要請を受けよう。躊躇する理由もない現状だし・・・。たとえば教授選挙を控えていたり、そのような目的が近い内にあるときは、静かにしておかなくては、差し障ります。でも、もういつのまにか53歳になり、「上昇志向」は失せています。医療の面では本来の専門家として少しでもお役に立てればいいし、逆に53歳という年齢になったから、大きな顔して発言できることもあるのかもしれません。昔から同じ事を話していても、50歳すぎたからまわりが耳を傾けてくれるという解釈の方が正しいかもしれません。それなら学生時代に訴えいたようなことを初老期(認めがたいが)にもう一度怒鳴ってみようとも思っています。

 滝本弁護士や有田さんの作られる検証本に投稿しました。あまり迫力ないかもしれませんが、正直な気持ちなどを書いてみました。5月の不定期日記と同じような内容です。

同時代社「異議あり!『奇跡の詩人』」
滝本太郎(弁護士)+石井謙一郎(週刊文春記者)/編著

 もう一つボクの書いた「北欧・北米の・・・障害児医療」という本の中に書いています内容を紹介します。

 1995年のNHKスペシアル「生と死の選択」という番組がありました。これはテキサス自然死法を意識して作られた番組でした。重い障害を持つ我が子の命を回復する見込みがないとき、餓死させても合法という筋書きでした。当時は直接抗議しました。言い訳だけが帰ってきました。その辺のことが拙著の24から27頁に書いています。

 てるてるさんの書き込みにもある障害児者のコーディネーターの話しは、一応我が国でも厚労省指導でおこなわれつつありますが、専門性という点、重度の脳障害の場合などはとても対応できていません。スウェーデンでは、障害を持つ親などへのカウンセリングが専門的に行われています。さらに学校でも地域でも一番専門家の中で必要性が高い人(障害によって異なる)がコーディネートしてスタッフ会議をします。もちろん親や本人の参加もできます。このことは拙著では183頁あたりにも書いています。もう一つの編著の「医療的ケアネットワーク」のスウェーデンの作業療法士の河本さんの文には詳しく書かれています。我が国では乳幼児期は保健師さんです。学校の時期は?卒業後は?

障害が重く、複雑であればあるほど対応は必要なのですが、逆になくなります。どうしてでしょうか?

 それともう一つ、母親をきっちり専門的にカバーしてあげるべきという意見ですが、これは難しい。母親(父親)の生き方や認識力だけでなく、子どもの障害の種類(肢体不自由か知的が主かなど)や地域の公的機関の専門的力量、そして何よりも最初に出会う医師・病院の対応もおおいにその後の道の選択に影響を与えます。最初に医療不信が生じると親は宗教などへ走る傾向があります。これも医療の責任でしょう。

 これまで何度も書いてきましたが、我が国は北欧などと比較して障害への公的サポートが貧弱です。日本は子どもの権利条約を批准していても、こどもは親のもの、いいえ親が子どもの面倒を見なければならないという考えがしみついています。これは秀吉から徳川に至る儒教思想(裏返せば身分差別)の徹底によるものです。みんなこのことを当たり前と思っていますが、北欧等へ行くとこんな考えはありません。

 今回の「奇跡の詩人」を通して、障害を持つ家族の苦労の一端に理解がむけばいいのですが、ドーマンで一生懸命「努力」すれば奇跡がおこるという筋書きは本当にトキシック・毒性的な報道と思います。

 もう一ついうなら、ルナ君の母親の受容度は、キュプラーロスの死を迎えた時の心の段階論にたとえると、「取引」のレベルです。訓練に集中することで、自分の(親の)不安を押し込めようとしているのでしょう。このことで子どもが犠牲になることをあまり意識していないのでしょう。いいえ障害受容をあえて避けているのです。

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6月9日 新しい本

 一週間毎に本屋さんへ行きます。本屋は京都駅周辺のプラッツの旭屋が主で、ときどきアバンティの本屋へいきます。

売れている本のベストテンや正面の一番よい場所に例の「奇跡の詩人」の本が並んでいます。すごい売れ行きのように思います。やっぱり家族4人の生活がかかっているから、いっぱい売れなくては食べていけないでしょう。でも障害児は琉奈君だけではない。みんなが本を書ける訳ではない。しかも琉奈君が詩をのべているとはとうてい考えられない。本を見ると複雑な想いになります。全国のたくさんの障害児と母親がみんな本を出せたらいいのにと思います。

以前からご紹介していた堺市百舌鳥養護学校分校の本ができあがりました。

ボクはこの学校がなんとか存続して欲しいという想いの一つの表現として学校の歴史を本に残し、この本を武器に存続の運動を進めようとみんなに呼びかけました。ボクとしてはこの百舌鳥分校での講演や訪問を通して、このようなちいさな地域に根ざした学校こそ21世紀の養護学校と考えました。本の最後に「百舌鳥分校の教育を世界的視野で検証する」と題して新たな文を書き下ろしています。養護学校の今後を書いたつもりです。是非お買い求めの上ご一読願うと共に、百舌鳥分校存続の支援をお願いします。

学校のみんなが、そして保護者の人たちが一生懸命書いた本です。琉奈君の本よりもずっとずっと重みのある真実を語る素晴らしい本です。

10冊以上でしたら2割引になります。ボクへ連絡頂いても、HPから直接クリエイツかもがわへ申し込んで頂いても結構です。よろしくお願いします。

いのちキラキラ重症児教育――堺市立百舌鳥養護学校分校からの発信

 

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http://web.kamogawa.ne.jp/~sugimoto/bbs/index.htm

384 「奇跡の詩人」放送1周年・日本小児神経学会機関誌「脳と発達」に掲載
2003/4/29(火)07:02 - スギケン

2002年10月29日にNHK 海老沢会長宛に提出しました日本小児神経学会の公開質問状
の全文と同年12月26日付けのスペシアルNHK番組部長天城氏の回答の全文が「脳と発達」
に掲載されました。35巻第3号の281〜282ページです。

 

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日本小児神経学会からのNHKへの公開質問状とその回答
(日本小児神経学会誌「脳と発達」第35巻第3号掲載)
日本小児神経学会理事長
日本小児神経学会社会活動・広報委員会
(委員長:岡田伸太郎、委員:荒井洋、石川悠加、石川幸辰、伊藤正利、小野次朗、亀井淳、北住映二、北原佶、栗原まな、神山潤、小枝達也、小西徹、小西行郎、郷間英世、真田敏、杉田克生、杉本健郎他)

NHKスペシャル-奇跡の詩人-報道について(登録:02.11.20)
日本小児科学会倫理委員会
(理事:河原直人、杉本健郎、田中英高、田辺功、田村正徳、仁志田博司、幹事:谷澤隆邦)


*参照*

ドーマン法を考える
小林泰三さん作成の、ドーマン法の問題点をまとめた最新サイト

arsvi.com「脳性マヒ(Cerebral Palsy)」

脳性麻痺医療の立場からの、NHKスペシャル「奇跡の詩人」批判
千田顕史「なぜ日本の脳性麻痺医療はおくれてしまったのか」など(整形外科)

ドーマン法以外の障害児者療育の一例
2002年12月16日:「いのちキラキラ重症児教育〜堺市百舌鳥養護学校分校からの発信〜」からの引用

2ちゃんねるにおける小児のリハビリテーションについての議論〜特にボバース法について〜
〜2003年2月24日〜26日、「介護福祉、ボランティア@2ch掲示板」の、小児の中枢神経疾患に対するアプローチは福祉のテーマか、医療のテーマか、という議論から〜

Facilitated Communication (FC) と Doman Method海外文献翻訳資料集


NHKスペシャル「奇跡の詩人」関連リンク集

NHKスペシャル「奇跡の詩人」〜日木流奈くんについて〜

小林泰三の不確定領域「駄文24 NHKスペシャル」


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